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028 (閑話)お姫様とドラゴンその1/2

 昔々、正直者が暮らす大きな国がありました。

 この国の王様には代々『真実の瞳』という『神様の祝福』とも云える特別な力がありました。

 その力は、真実を見極める事ができ、公正な審判を下す事ができるのです。

 『真実の瞳』による正しい審判のおかげで人々は争いもなく平和に暮らしておりました。


 ある年に不幸にも、流行り病で多くの国民が命を落としてしまいました。

 『神様の祝福』も病にはかなわず、残念ながら王様も王妃様もお亡くなりになってしまいました。

 ただ1人残されたお姫様が『真実の瞳』を受け次ぎ、新しい王様となりました。

 しかし、お姫様はまだまだ幼く国を治めることができません。

 大人になるまでの間、セバスと名乗る初老の執事が国を治める事になります。


 

 セバスのおかげで長い間、お姫様も人々も平和に暮らしていおりましたが、とうとう、

『真実の瞳』が必要な事件が起きてしまいました。

 これまで『真実の瞳』は幸せの象徴と信じていたお姫様は、残酷にも『真実の瞳』の真実を知る事になります。

 審判を受ける罪人の畏怖と不安と呪いが入り混じった眼に睨まれ、恐怖に怯えます。

 幼く純真なお姫様は残酷な現実に打ちのめされ、お部屋から出ることができなくなってしまいました。


 不幸なお姫様の心を知ってか、お世話をしているメイド3人がお姫様に救いの手を差し伸べます。

1人のメイドが話します。

「罪を罰する力を私が引き受けましょう。人々の呪いを私が受けましょう。そうすれば、

 お姫様は人々に慈愛をお与え、人々から愛される事になりましょう」

 他の2人も続いて話します。

「善悪を判断する力を私が引き受けましょう。人々の不安を私が受けましょう。そうすれば、

 お姫様は人々に慈愛をお与え、人々から愛される事になりましょう」

「過去を調べる力を私が引き受けましょう。人々の畏怖を私が受けましょう。そうすれば、

 お姫様は人々に慈愛をお与え、人々から愛される事になりましょう」


 お姫様は人々に愛されたい一心にメイド達の話を聞き入れます。

 そして

 『(つるぎ)の巫女』

 『(はなり)の巫女』

 『(ときざみ)の巫女』

 『慈愛の姫様』

 と呼ばれることになります。

 罪を許し慈愛を差し伸べるお姫様は次第に人々から愛されるようになります。

 しかし、この時以来セバスの姿はどこえともなく消えてしまいました。


 そして時は経ち、お姫様は成人の儀を経て正式に王様になる前夜に、ふと気付きます。

 ここ暫く人々と会う機会が無かったことを。


 翌日、お姫様が儀式を受けるために国民が集まるお城のバルコニーに立ったその時に

 事件は起こります。巨大なドラゴンがお城を攻めたてる勢いで降りてきます。

 国民は慌ててお城の庭から逃げ出しました。


 ドラゴンは、誰もいなくなった庭に降り立つと直ぐにお姫様を襲いかかります。

 剣の巫女は振りかざしたものの鱗に弾かれてしまいました。


 ドラゴンはお姫様を手に抱え、遠く遠くへと飛び去ってしまいました。



 ここは森深くになる湖畔にあるボロ屋。

 ただしくは朽ち果てて残った別荘だった物。

 ドラゴンに拐われたお姫様が暮らすお城。


 お姫様は7匹?のくま・・・のぬいぐるみと暮らしていました。

 目覚めた時は動くぬいぐるみが怖くて怯えていましたが、今はとっても仲良し。

 くまさん達は7色のスカーフを首に巻いていましたので、色毎にでお名前つけました。

(赤あか→橙とう→黄きい→緑みどり→ 青あお→ 藍らん→紫むらさき)


「あかくまさんはおこりんぼ。とうくまさんはどろんこで、

 きいくさまんはりょうりずき、みどりくまさんはおにわでごろごろ

 あおくまさんはつりじょうず、らんくまさんのそうじはきれい

 むらさきくまさんはまとめやく。」

 歌いながら、お姫様はくまさん達と一緒にシーツ干したりお掃除したりはおてのもの。

 今までメイドさん任せだったハウスキーパーもちょっとですができるようになりました。

 くまさん達はお話しできませんが、身振り手振りで教えてくれています。

 

 

 ある日、山菜摘みから帰ってきたら、藁敷のベッドに小人さんが落ちておりました。

 お姫様の悲鳴と、くまさん達がポコポコと叩くので目が覚めた小人さん。   

 自分より大きな少女に小人さんはビックリ。みんなでバタバタ、まるで踊っているよう。


 小人さんは話します。

 長く長く落っこちて、気がつくとここに落ちていました。

 記憶はありません。名前もわかりません。どうしてここに居るのかわかりません。

 小人は名前が無いのは不便だと『一寸桃太(いっすんももた)』と名乗りましたが、言い難いと断られて、

 お姫様から小人にちなんで『オビト』と名前を貰いました。

 今まで声に出してお話しできる相手が居なかったので、お姫様はとっても嬉しそう。

 

 2人と7匹は仲良く暮らしていおりました。

 ある温かい日にお姫様から湖でに行こうと誘われます。

 水浴びするからと裸になったお姫様にオビトは焦りまくり。

 結局はお姫様とあおくまさんで水遊び。

 裸姿のお姫様を見ないように離れた草むらで寝転んでいたオビトに棒が飛んできました。

 棒を拾ったオビトに6匹のくまさんが同じく棒を持って囲みます。

 どうやって持っているのか不思議ですが、怒らせてしまったのでしょうか?オビトは悩みます。

 あかくまさんが一通り剣を振るうように棒を振り回した後に、みんなでオビトに襲いかかります。

 ボコボコにされたオビト。

 水遊びから帰ってきたお姫様は目を回しているオビトに驚いて、濡れた裸のまま抱きかかえて小屋へ帰ってきた行きました。


 その日以来、(すき)あれば襲ってくるくまさん達。

 始めはボコボコにされていましたが、今ではなんとか凌げるようになりました。

 剣が使えるようになったと思ったオビトは、お姫様にどうしてくまさん達と一緒に暮らしているのか初めて聞きました。


 国のみんなを心配するお姫様。だけどそれを知る方法はありません。

 オビトはお姫様の為に国を探して国を見る旅に出る事を決意します。

 くまさん達は反対してボコボコにしようとしますが、今ではなんとか対応できるようになりました。

 くまさん達はオビトの決意を認めることになりました。



 ある朝くまさん達は何処に有ったのか一振りの剣を担いできました。

 そして、オビトの回りでクルクルと周りながら怪しい踊りをすると、ボワンと煙が立ち上がりました。

 煙が消えるとそこには年相応の大きさのオビトの姿がありました。

 お姫様は青年のオビトを見上げると、今まで人形かぬいぐるみの様に思って暮らしていた自分の記憶に赤面します。オビトもつられて赤面します。


 一通り旅支度が終わり旅立つオビトを、お姫様とくまさん達は見送ります。



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