背中のソレ
「君の背中にいるソレを君は気付いてるかい?」
『背中に?』
「そう、背中に」
「人は皆、誰でも大小はともあれ、ソレが背中に巣食うんだよ」
『それが僕に?』
「君はいつも笑顔だし、周りも見えてるし、それに人に気も使える」
「でも…それのせいで自分の姿が見えすぎてる」
『かいかぶりだよ』
「僕は全然褒めてないよ、寧ろ危惧してる」
「君の背中にいるソレ。君の心を食べて育つんだ」
「そして、周りが見えれば見えるほど、君は自分の背中にいるソレが見えなくなる」
「君の背中のソレはとても肥大化してる。君は心を食い破られ、荒らされ何も感じなくなりつつある」
「しかも、自分がソレに変わってしまったことに気が付かないなんてね」
「まあ――こんな話をしてもわからないだろうね」
『うん、わからない』
「ソレは、簡単に言うと君自身なんだよ。自分自身で自分自身を壊してる」
「そこの君、君と話すのは初めてだったかな」
『はい』
「所で、その背中にいるソレに気付いているかい?」