生まれる
「……転生じゃ!」
なるほど。よくわかった。
声をかけようとしていたそのモーメントを正座になることに消費して頭を下げた。
「おおぉ、神よ」
神はやはりロリだったのか、汚い私をお許しください!
「うむ、いろいろ! わかっておるようでなによりじゃ、お主をえらんでよかったのじゃ」
夢にまで見たネット小説的展開がいまここで展開されている!
たとえ幻覚である可能性が今もまだ捨てきれないとしてもこのビックウェーブには乗るしかない!
「ははぁ、ノージャ神様! 『私がなぜ! もしや死んだのかぁ! この死神め!』 とか『なぜ前世には神の存在が確定されていないのですか、これは新手の宗教詐欺ですか?』などと無粋なことは聞きませせぬ。私の使命は何でございましょうか」
なんか時代劇みたいなノリになってしまった!
「うむ、よろしい。実際に見てもらおうかのう」
そういうとノージャ神さまは俺の背後に立ち、指をパチンとならした。
すると周りの視界が歪み出した。
地面の景色が変わり、だんだんと暗くなった。
「星々、いや……月でございますか?」
宇宙空間に景色を一瞬に変えたようだ、月が見える。
まだひれ伏してるためにそれ以外はわからない。
「頭を上げるのじゃ、二度はいわぬ」
どこかのネット小説で偉い人の提案は一度断るのが礼儀と書いてあったなぁと思いながら正面を見る
「ははぁ、おお……地球ですか? 青くてきれいな星、おおー日本が見えますね」
そこにはきれいな青い星があった。
「正確には違う。これはお主が行く世界の過去の映像なのじゃ」
どこか悲しそうに神様が言うと、その映像に異変が起きた。
まず数か所で爆発が起きた、オーストラリアの位置だ。
映画やドラマなんかで見たような光景だと思った。
映画やドラマではその光景は核爆発だった。
そして次に視界の下側がきらりと光った。月から何かが発射されていくのが見えた。
それに気を取られていると今度はヨーロッパのあたりとアメリカのあたりの合わせて数十か所に爆発が起きる。
しばらくすると月から発射された何かが大気圏に突入していくのがみえた。
そして地上からも突入しているものと似た何かが発射されていく。
何だろうかと目を凝らすと映像がズームされる。
その何かは……形はそれぞれ様々な空中に浮かぶ船達だった。
宇宙戦艦か、量産されたのか月からの船は均一だったが、地上からの船の形は様々だ。
両者はそれぞれ砲火を交え爆発。
生き残った船がロシア、中国、南米、ドイツの位置に落ちた。
そして地球中と月の一部で爆発が立て続けに起きた。
「これは過去なのじゃ。魔法のせいでこうなったのじゃ。じゃが魔法をなくすなんてことはしたくないのじゃ」
そして雲は黒く、赤くなった地球が高速で回転し始める。
すぐにまた緑と青の星になる。
ああ、美しいと思う。
この一連の映像が。
そういえば星が青いのは水の反射なんだっけか大気圧のせいなんだっけか。
そして神様は俺の前に立って、目には涙を浮かべて言った。
「お主にならわかるはずじゃ! 魔法のない現代で、魔法に憧れているお主なら! どうかこの世界を破滅の運命から救ってほしいのじゃ!」
俺も知らぬ間に涙を浮かべていた。
現実感のない映像だったがこうして神様とはいえ女の子が泣いているのをみて一気にさっきの映像のグロテスクさを感じた。
一体何人が死んだんだ?
爆発前にあった地上の光は?
「わ、おええええ、はぁはぁわかりました。やれるだけの事はしてみますが……」
いろいろと聞きたいことがあるんですが。と言い切る前に俺の体は目の前の地球に吸い込まれた。
それは徐々に落下感に代わりながら日本、沖縄あたりに吸い込まれる感覚を受けながら意識が落ちた。
この日、空に一筋の流星が流れた。
「ばぶばぶ、あうあう……あう!?」
な、なんだ………もう転生したのか!?
いろいろ聞きたいことがあったのに……というか女の子の前で吐くとか、サイテーだ。
それにそのせいでとっさに転生させられたとかないよな?
って寒い? う? なにかに包まれている?
なるほど。どうやら俺はかごの中に入れられてるらしい……星空がきれいだなーお、月がみえるぞ!
って、寒いし身体も動かないし、やばいだろ!
「おぎゃー! おぎゃー!」
だれかー!たすけてー!
「あら、また捨て子なのね」
女の人の声が聞こえた。
「おぎゃ! おぎゃあ!」
「大丈夫よ、泣かないで? これからは私、ジンジャーがあなたのお母さんよ。さっさと精霊診断をして体を洗おうね。」
俺の籠を覗きながら、女の子、顔つきは日本人で16歳ぐらいだろうか、がそう言ってきた。
どうやら言葉は既に理解できるみたいだ。
顔でかっ! いや俺が小さいのか。
サイズの違いや身動きの取れない事に恐怖しながらも俺は転生した。
詳しい事は聞けなかったが、さらば前世。
この世界で必ずとも現代知識を活かして転生物主人公のようにチートで活躍して幸せになってやる。