7-4.とまったのは久遠
こうして、久遠の一言により実施競技の全てが決まった企画部。
実行委員会の全体会議でも決定され、いよいよ企画部としての行動が本格化していった。
ここからは、各競技の参加人数の割りあてやルール決め、それらを他部署と連結して詰めていく作業となる。
今日も活動場所は会議室だが、生徒たちの動きはいつもより活発だ。
目標がはっきりしてきたからだろう。
何人かのグループになり、競技ごとのルールについて積極的に話しあっていた。
これはこうした方がいいのでは?
いや、あれはやめた方がいいと思います。
そんな会話が重なって聞こえてくる。
『生徒会長、こんな感じでどうですか?』
男子生徒が、右手にプリントを持って前へときた。
すると長机でデスクワークをしていた神崎先輩は、シャープペンを置いて白く綺麗な手を伸ばす。
火曜日の会議から、同席目的で企画部へきている神崎先輩。
今ではすっかり頼りにされ、いつしか企画部の仕切り役となっていた。
生徒たちからは、こっちの方が評判がいい。
俺としても異論はないし。
『……この部分は変えて欲しいわね。人数が減ると、競技時間が長くなってしまうでしょう?』
しばらくしてチェックが終わったのか、神崎先輩はプリントから目線を上げた。
『は、はい……』
自信がある内容だったのか、男子生徒は声を小さくして肩を落とす。
実施人数が足りなかったのだろうか。
それまで経験がなかった以上、何が正しく何が間違っているかを判断するのは難しい。
まして一年生、つまり去年の体育祭を知らない生徒も半数近くいる。
指摘されるのは仕方のないことだ。
『あなたは、実行委員をやるの初めて?』
『そうですね。ちょっと、やってみようかと思って……』
『そうなんだ! 一生懸命やれているから心配しないで。これだって、人数以外の箇所には全く問題はないわ』
グループで意見をまとめるのは大変だと思うけど、がんばってね!
そう声をかけ、にっこりと微笑む神崎先輩。
つられるようにして、男子生徒からも笑顔がこぼれる。
『もう一回、話しあってきます!』
そして軽く一礼し、ぱたぱたとグループメンバーの待つ場所へ戻っていった。
さすが神崎先輩だな。
問題点をしっかりと指摘しながらも、その後のフォローを忘れない。
せっかくわいてきたやる気――モチベーションを、失わせないための行動が自然にできているのだ。
あれは人を束ねていく上で、とても大切だと思う。
いくら才能があっても、能力を持っていても、人数がいても、やる気がなければ何も生まれない。
しかしやる気さえあれば、形はどうであれ前へと進んでいくことができる。
前へ進めば足りないことが把握できるし、それまで見えなかったものが見えるようになってくるのだ。
それを知っているのだろう。
生徒会長たる神崎先輩は。
いや、元から持っている一種の才能みたいなものかもしれないけど。
いずれにせよ、神崎先輩のおかげで企画部はその活発さを維持し続けているのだ。
『久遠さん、要求予算の計画を組んでみたけど、どうかな?』
『そうですね、これでいいと思います』
忙しそうな神崎先輩の隣には、右手のペンを忙しなく動かしている久遠の姿がある。
能力の高さと座っていた位置も相まって、神崎先輩の補佐に追われていた。
送られてくる書類の整理、他部署との連絡役……
神崎先輩は実行委員会の副委員長のため、他の部署から呼び出しがかかるときがある。
そのためか、神崎先輩がいないときの代理までやっていた。
それでこなしてしまうのだからすごい。
ちなみに、本来のリーダーは何をやっているのかと言えば――
『ポイントAはスタートライン上で……ポイントBは第一コーナー手前……』
長机をまるまる一つ占領し、大きめのプリントを広げて何やらつぶやいている。
どうやら体育祭で撮影する写真、その位置を決めているのだそうだ。
……神崎先輩曰く、「すでに決定しているから意味はない」らしいけど。
さすが神崎先輩、どうしようもない人間まで使い切る能力すらも持ちあわせているようだ。
「こら西ヶ谷、ボーっとしないの」
「え? ああ……次は何をやるんだ?」
俺はといえば、富士村よりは使えると判断されたらしく、神崎先輩の補佐である久遠、そのさらに補佐を任されていた。
正確には久遠にやれと言われため、断れなかったのであるが。
これって下請けの下請け、要は孫会社ってことですよね?
零細企業は親会社の言いなりなのでした。
「タイムテーブルの変更、やっておいて」
タイムテーブル――つまり、体育祭本番での時間設定のことだ。
最初の競技は何時から何分間、何分の休憩を挟んで、次が何分から。
そんなことを決定し、書類にして提出するのだ。
これによって、プログラムに印刷される時間が変わるらしい。
実はこのタイムテーブル、ちょっと前に提出してはあったのだ。
ところが、そのときには全体競技が最終決定していなかったため、とりあえずその分の時間はカットされていた。
学年競技からも、いくつかで時間配分のやり直しをしたので、決めなおしたものを再提出するらしいのだ。
それで、時間配分の変わった競技を書き込んでいかねばならないのであるが……
「神崎先輩に聞くのが一番かな」
俺は競技のことを把握していないから、はっきり言って変わった箇所がわからない。
久遠なら知っているだろうが、わざわざ俺へと投げてきたのだ、そんなことに構っているヒマはないのだろう。
となると、それらを知っている人物。
忙しいのは承知の上だが、神崎先輩に聞くしかない。
俺は椅子を下げ、プリントを持ったまま立ち上がった。
その時、
「ごめん西ヶ谷、これ行ってきてっ」
さっと久遠が書類を投げてきた。
「予算要求の申請書類なんだけど、会計部は今日までしか受けつけてくれないみたい」
「本当かよ、会計部ってどこにいるんだ?」
「三年生の教室。行けばわかると思うからっ」
言葉が断片的になっている。
そして俺の方を見向きもせず、せっせとペンを走らせていた。
次々にやってくる競技関係の書類を片づけているようで、かなり忙しいのだろう。
ご多忙なのは十分伝わってきたので、タイムテーブル変更の書類を机に置き、会議室から廊下へと出ていった。
九月も第二週に入ったが、そう簡単に季節は変わってくれない。
昨日に雨が降ったせいか、空気は多湿でむわっとしていた。
そして活発な会議室内にいたせいなのか、廊下が静かに、寂しくも感じる。
ちょっと不思議だな。
そんなどうでもいいことを考えながら、東側の階段を使って二階へと上がった。
三年生のフロアーである二階も、一年生や二年生のフロアーと同じく、東側から普通科のA組、B組、C組……と順番に並んでいる。
その二つ目、B組の教室には十人ほどの生徒が集まっていた。
どうやら会計部はここみたいだ。
それなりの規模があるお金を扱うため、予算関係は三年生が仕切っているのだろう。
コンコンコン。
「失礼します」
軽く三回、ノックをしてからドアを開ける。
すると、ドアのすぐ近くにいた女子の先輩が気づき、対応をしてくれた。
「予算の要求書類ね。どこからかしら?」
「企画部です」
俺が渡したプリント――予算の要求書類をしげしげと見つめている。
不備がないか、提出字にチェックをしているのだろう。
といっても、神崎先輩が作成したものだし、会話からして久遠も目を通している。
ミスがあるようには思えないけど。
「うん、いいわね。じゃあこれを持っていって」
渡されたのは別の書類。
上方にやや大きめの字で「予算要求の確認」と書かれた、ちょっと小さめのプリントだ。
「では失礼します」
思ったよりも、早く終わったな。
久遠が任せるくらいだから、もっと時間がかかるのかと思ったけど。
とりあえず、書類は提出した。
このプリントを久遠に渡せば、おつかいは終了だ。
西ヶ谷 一樹、初めてのおつかい――なんちゃって。
初めてのおつかいを終わらせた一樹くんは、寄り道せずに帰ることができるのでしょうか。
しかし、そんな視聴者の期待を裏切るかのように、俺は無事に会議室へとたどり着いてしまったようだ。
視聴率は真っ逆さまですね。
どうやら一樹くんには、芸能人やタレントとしての才能はないみたいです。
「ただいまっと……」
ドアを開けると、さっきのにぎやかさが耳へと戻ってきた。
あちらこちらで会話が飛びかっている。
「久遠、行ってきたよ」
「ありがとう。確認の書類は神崎先輩に渡しておいて」
手元から視線を上げず、そのままの姿勢で返事をしてきた久遠。
やりとりを聞いていたらしく、右手を伸ばしてきた神崎先輩に書類を渡した。
さて、久遠も俺をつついている余裕などなさそうだし、続きをやるかな。
さっき渡された、タイムテーブルの書類を……
「あれ……あれ?」
ない。
タイムテーブルの変更書類が消えている。
会議室を出る前、たしかに机の上へと置いたはずなのだが。
神崎先輩も久遠も、忙しい中ではあるが整とんがきちんとできている。
だから長机の上はそこまで散らかっていないし、どこかへ埋もれるとは思えないけど……
「西ヶ谷、次はこれっ」
「え? はいはい」
久遠から、次の仕事が飛んでくる。
まあ隣にいるのは久遠だ。
一見は忙しそうでも、時間を見つけてタイムテーブルの書類を片づけてくれたのだろう。
会計部のある三年生の教室に行くまで、それなりの時間があっただろうし。
俺は椅子に座ると、投げられてきたプリントに目を通した。
今度はクラスごとに座る席の割りあて、その確認書類か。
組ごとに分けられ、中央に三年生、両脇を一、二年生が座る形だ。
場所によっては、汗がだらだら流れてくるくらい暑い思いをするんだよな……
去年のことを思い出しながら、生徒たちの位置を示す小さな四角形のマークを確認していった――
そんな忙しい日々は、どんどんと過ぎ去っていく。
土曜日、日曜日、敬老の日、秋分の日と続いた四連休は、あっという間に終わってしまった。
どうしてだろうか。
俺は休日は基本的に暇だ。
やることもないし、やりたいこともない。
昼過ぎにようやく起きて、ブランチの後にはダラダラとゲーム。
たまに読書。
ごくまれに、一年に一日、一分くらいは勉強。
そんな、充実とはほど遠い休日を過ごしているにもかかわらず……
どうしてなのか、なぜなのか。
休日が終わると、それが恋しくなって仕方がない。
特に連休明けの平日ほど嫌なものはなく、朝はそのまま不登校になりたいくらいだ。
授業中は睡魔との戦いに苦しめられるし。
全ての授業が終わっても、これが明日も続くのかと思い、鬱な気分になってしまう。
「はぁ……」
雑務部室にある木目調の長机に突っ伏し、俺は長いため息をついた。
今日は水曜日、か。
放課後の部室は、会議室とは打って変わって非常に静かだ。
聞こえてくる音といえば、相変わらず扇風機の駆動音くらい。
一応、窓を開けてあるので、外からの運動部の声とかは遠く聞こえてくるが。
訪ねてくる人もほとんどいないし、常に会話をしているわけでもない。
だから、企画部のときみたいに声が飛びかうような活発さはないのだ。
ただ今日は、それにちょっともの足りなさを感じてはいるが……
そもそも、なぜ雑務部の部室にいるのか。
それは生徒会の方で、特別な会議があるからである。
企画部の活動がとまっちゃうね、と言われたが、気にしてはいない。
むしろ息をつくことができたので、ありがたかった。
毎日のように会議が続く神崎先輩には、本当に頭が下がるけど。
ちなみに内容は「次回生徒会の選挙について」だそうだ。
そういえば、そろそろ生徒会長も代わってしまうのか。
神崎先輩が会長というイメージが強いので、どうも他の人が生徒会長になるのはしっくりこないな。
いやまてよ?
正面にいる、この人物なら現実味が……
「な、なによ?」
目の前で本を読んでいた久遠が、視線を感じたのか俺の方を向いてきた。
「いや、次期生徒会長様になれそうだなーと思って」
「なんで私が生徒会長なのよ……」
あきれるようにして、ふたたび視線を手元へ落とす久遠。
二人そろって部室でくつろいでいるという、久しい雑務部の日常だ。
お互い、大して会話をかわすこともないが、別に不満はなかった。
ここにいることが目的のような感じがする。
家というか、自分の部屋に友達を呼んでくつろいでいる感覚。
話しかければ返事が戻ってくるわけだし。
たまにスルーされるけどね。
「今日も読書か。またガー、ガー……ガーデニング?」
タイトルが思い出せず、疑問系で言ってしまった。
もっとも、こんなタイトルではなかったと言い切ってから気づいたが。
「Guardianよ。タイトルくらい、ちゃんと覚えていなさいよ」
英語のタイトル相手に、それは無理な相談ですね。
毎回「b」と「d」を逆に書くほどの英語クオリティですので。
最近ようやく、過去形というものを覚え始めた程度ですから。
……小学生にも勝てる自信がない。
俺のミスを訂正しつつ、また自分で確かめろ、という風に久遠は本を上げて見せた。
白地にカラフルな数本の横線の入った表紙。
そこに黒字で書かれていたタイトルは、「手芸――編みもの特集」というものだ。
「編みもの? なんでまたそんなものを……」
「いいじゃない。私が編みものをしても」
おかしいかしら?。
そんな目で、にらみつけるように俺を見てくる。
いやそういうことじゃないって。
珍しかったんだよ、久遠がそんな本を読んでいることが。
俺からすれば、何でもできるイメージを持っている久遠であるが、できないこともあるんだな。
もっと上のレベルを目指して、という目的で読んでいるのかもしれないけど。
それに、久遠が編みものをしている姿が想像できなかった。
場所は洋風の建物。
パチパチと音をたて、薪が燃えている暖炉。
上がっている炎から出ている、オレンジ色の光。
近くで揺れる、深い茶色をした大きめの揺り椅子。
その上で赤い膝かけをしつつ、毛糸を伸ばして編みものをしている、久遠の姿が……
あれ?
意外と似合いそうだな。
久遠の容姿や雰囲気が、どういうシチュエーションでもあうように感じられるのかもしれない。
美男子とか美少女というのは、どういう状況でも絵になるからいいよな。
こっちなんて、暗くて片づけていない部屋でパソコン相手にしているくらいしか想像されないというのに。
俺は別に、オタクや引きこもりじゃないんだけど。
……ちょっと引きこもり成分はあるかもしれない。
「編みもの、か」
背もたれに寄りかかると、パイプ椅子がギイッと音をたてて軋んだ。
編みものって、毛糸だよな。
作るものといえば、マフラーとかセーターが思い浮かんでくる。
それも女子が、好きな男子に送る場面と共に。
「んっ?」
ヴーっという、バイブレーションの男が聞こえた。
俺は反射的にポケットへ手を突っ込んでみたが、スマホは震えていない。
音はそのまま、しばらく続いた。
「久遠、携帯鳴ってないか?」
その言葉に、久遠が顔を上げる。
手元て開いていた本をぱたんと閉じ、スカートの左側から携帯電話をとり出した。
やはり着信がきているようだ。
赤、橙、黄色……と、イルミネーションの光がバイブと共に変していた。
「ちょっと、失礼するわね」
一言告げた久遠は、携帯を開きながら部室の外へと出ていった。
『はい、もしもし久遠です』
マナーを考えているのはいい心がけだが、別にいいのに。
俺は他人の電話を気にするような性格ではない。
それとも、あまり聞かれたくない相手だったのだろうか。
そういえば、久遠へ電話がかかってくるのは珍しいな。
誰だろう。
赤外線通信で番号とアドレスを交換できるのを知らなかったあたり、電話帳の登録数はそこまで多くないはずだ。
静清ホームの人?
それとも佐々木先生?
もしかして……?
体育祭の実行委員会関連だろうか。
久遠は神崎先輩の補佐をしているため、他部署にも顔が知れてきている。
一部で調整役もしているからだ。
そこから考えれば、お互いの情報伝達を円滑化するために、連絡先を交換していてもおかしくはない。
仕事上仕方なく……というならば、久遠も交換を了承するだろう。
そして実行委員の男子の中には、久遠が好みだという者もいる。
容姿は疑いようのない美少女だし、冷たい性格が好きだという男子だっているだろうし。
そこからが仲がよくなり、友達つきあいを始めたとか。
まさか、編みものの本を見て覚えようとしていたのは、プレゼントするつもりで……?
いやいや……
まだ実行委員会が始まってからカウントしても、二十日たっていない。
久遠が神崎先輩の補佐を始め、他部署の生徒と会うようになった日から計算すれば、わずか五日くらいだ。
そんな短期間で、手作りの編みものをプレゼントしようと考えるほど、仲がよくなるだろうか?
そもそも久遠自身、不特定多数の人間と関係を持ちたがらないし。
ありえない。
あるわけがない。
でも……。
ずっと雑務部員として一緒に行動していた俺と久遠も、役割の関係上、分かれて動くことが多くなった。
だから久遠の行動を、逐一把握しているわけではない。
つまり、久遠が誰と交流しているのか、わからないのだ。
俺が見ていないところで、他の男子と……?
「……」
ちょっと待て。
なぜ、そんなに気になるんだよ。
別に久遠が誰と会おうと、俺には関係ないじゃないか。
誰と友達になっていても。
誰と一緒に行動していても。
誰とつきあっていても。
むしろ人間関係に疎い久遠に友達が増えているのだから、喜ぶべきことじゃないか。
それなのに……なぜだろう。
なぜか嫌な気分になる。
俺は何にイラついているんだ?
何が嫌なんだ?
そんなに、久遠が他人と交流することが……
ガラッ。
ドアがスライドする音。
久遠が通話を終え、戻ってきた。
少しうつむきながら、左手で携帯電話をポケットに戻し……
「あっ……」
短く小さな声。
同時に、少し驚いた顔を見せる久遠。
左手から携帯電話が滑り落ち、スカートを触れながら。
カタン!
音をたてて床に落ちた。
静かな部室に、その音が響く。
折りたたみ式のガラケーだし、閉じていたから、画面が割れることはないだろう。
落ちた高さが少しあったから、外装には傷が入ってしまったかもしれないけど。
「……」
久遠は右腕をお腹の前に置き、膝を屈め、左手を伸ばして落ちた携帯電話を拾う。
しかし手に取ったそれを、少しの間ボーッと見つめていた。
傷を気にしているようには……見えないな。
裏面や横を確認していないし。
見つめているというよりも、固まっているように感じられた。
携帯電話へ向けられている視線も、緩いというか元気がない。
どうしたのだろうか。
久遠があんな行動を見せたことは、今までになかった。
「どうした久遠」
軽く問いかけてみた。
「えっ? あっ……何でもないわ」
いや、何でもなくない。
いつもの久遠なら、そんな焦ったような返事はしない。
冷静に返してくるどころか、おまけで皮肉ってくることまであるはずだ。
それが、今は明らかに動揺している。
通話の内容が気になった。
何の話だったのだろう。
あの久遠が、焦るようなこと……?
ポケットに携帯電話を収め、俺の正面へと戻る久遠。
そのまま開いている窓から、ボーッと外を眺めていた。
虚ろな目。
少し閉じ気味のまぶた。
力なく机に倒れている右腕。
本、読まないのかな。
本当に、どうしたんだよ……
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