ミカサの日常パートその2
酒場は戦場
とある仕事終わり、いつもの軽い仕事をこなしギルマスとの明日の打ち合わせを済ませ別れた後仲間のケットシーとともに我が家である酒場へと帰る。
最近では名前もよく知れ渡りよい意味でも表を堂々と歩くことができたのだがそれでも肩を縮めて路肩をこそこそしながら歩く…色んな人に呼び止められるが軽く笑って会釈するくらいで愛想無いともとれるどこか素っ気ない雰囲気を出していた。
そしてとある酒場の前へとたどり着く。鼻を動かせば中から肉の脂の匂いそれに混じって同じように仕事終わりに杯で乾杯し和やかな笑い声がドアの奥から溢れていた。俺の隣にいるケットシーで相棒のぺローと顔を見合わし仲良く宴の始まっている酒場に遅れながら登場した。
「お帰りなさいませ♪いつもの席、とってありますよ!」
「どうもレナーズ、先に部屋に戻って荷物おろしてくるよ。とっておきの土産話を聞かせてあげるよ!!」
ぺローと仲良さげに話しているレナーズはある依頼で保護した…一応奴隷のような身分ではあるがこの酒場でウェイターとして働いて貰っているラミア族という上半身は人間の女性だが下半身は蛇の胴体というモンスターである。そしてその時に同じように保護した…
「お仕事お疲れさまです!!オットット…はわわ~!」
忙しそうに…まだ仕事を覚えたてばかりで危なっかしいところはあるものの愛想よく客の注文を受けることからこの酒場の名物になりつつあるロリサキュバスのメリアン。可愛らしい見た目から仕事の疲れが癒されると男性のリピーターが多く出ている。モンスターという人とは違う種族の二人、その頑張る姿からモンスターという偏見は取り除かれこの活気ある酒場の雰囲気に一役かっているのは言うまでもない。
「おーうメリアン、調子はバッチリみたいだな~笑顔が素晴らしい!ほら、向こうのお客さん。ご注文だぜ?ほらほら」
「はっ!今行きまーす!!お仕事!お仕事!」
忙しそうにホールを行ったり来たりする二人の仕事ぶりにふっと胸を撫で下ろす。
「おい、ぼーと突っ立ってないで部屋へ行こーぜ?
もう腹がへこんで背中とくっつく!」
「はいはい~小うるさい姑みたいな猫ちゃんだこと全く俺に気にせずお先にどーぞ」
「ヤツがおる」
「へー…話題を急にそっちに持っていかないでくれるかな?俺の気分が実に悪くなる」
ぺローはやれやれと呆れたように俺を置いて入り口入って横の階段を上がっていく。
「今日の献立はスペシャルメニューよ~!早く下りてきてね~!」
「わかってまーす!ユニファーさん!今夜も楽しみだ♪」
ユニファーさんはこの酒場のオーナーで精霊術の師匠でもある。そうなんといっても特徴は誰もが惚れるあの美貌~エルフという種族は皆美形だと話には聞くがユニファーさんは特に美人だと俺は思う。それに料理の腕と人を思いやる心遣い…何度俺はユニファーさんに救われたことか…
ルンルンとスキップしたい気持ちを抑え、階段を上がって行くとなにやらぺローが部屋の前で誰かと口論している…おっと?相手と目があった…キザな野郎だよ全く!俺が大嫌いな隣人で仕事仲間…史上最強の名を欲しいままにした猫の獣人で顔だけ見れば純和風美女な…
「今仕事終わりですか?こちらもです。さきほどマスターには話が終わったところです」
……さっきだと?少なくとも話が終わったのはこちらが先なのに到着したのはあちらが先?相変わらずチート級のスピードをお持ちのようだ。そして嫌味ったらしい口調もそのままだ。
「今日は別々だったが…久しぶりに仕事が捗ったよおたくがいないほうがスムーズに事が進む…」
「そうですか、こちらは散々でしたが…また下で会いましょう。今日あったこと…お話、私も興味ありますので」
「はいはい…ぺローから聞きなよ。たくっ…姿すら見えなかったとは」
隣人の名はミカサ、最強だったが俺が偶然、運よく勝利してからあーやってなにかとストーカーまがいの行動を繰り返している。ぺローともそりがあわなくさっきも部屋の前で喧嘩していたのだろう。
部屋の前で険しい顔しているぺローの頭を軽く叩いて鍵穴に鍵を差し込む。
「ほら、立ってないで荷物置いて下に行こうぜ?」
「言われんでもそうするわい!!お前が開けるのを待ってたんだ!!」
キレられた…
「それでよー…ひっく…それでよー…ひっく」
完全に酔っぱらうぺロー、最初は観客にはやし立てられ機嫌よく話を進めていたが時間が経つにつれ酒が進んだぺローは(俺が浸けたマタタビ酒)呂律が回らなくなり最終的に俺が話している始末である。ぺローは自分が何回も同じことを繰り返していることさえ気づいていない。満足した客は宿へ帰っていったのだった。レナーズとメリアンはテーブルや床の掃除、客がカウンター席より他にもう誰も座っていなかった。ユニファーさんは食器の皿洗い、俺の話を聞きながら時おり質問を挟み楽しく会話を進めていく。ぺローはもう酔いつぶれた。
「そこでユウがバシーッと決めたわけだな」
「まぁそうです。こいつ(ぺローを指差して)の手柄になってますけどね」
「フッフッ…それは褒めてやらんとな♪」
頭を痛いくらいにごしごし撫でる。ここら辺では有名なギルドのマスターでミカサと同じ獣人だが耳は虎模様、虎の獣人で名前はアイサ。俺の特等席に座り込み俺は…アイサさんの膝の上にしょうがなく座っている。他の席はお供の方で埋まってしまっていたからである…それとぺローとミカサで。俺の活躍を語っていると尻尾を振ってよろこんで我が子のように可愛がり、褒めて褒めて褒め倒す。気持ちが高ぶってかぎゅーって抱き締められるのも多々ある。
お連れが止めにはいるが、俺は胸が当たるのは別に嫌ではない。ユニファーさんとは古い仲で今夜もこうしてここで一杯やっているのだ。
「なんだよ~ユウ!お前も酒飲めよ~」
「俺が生まれたとこではお酒は二十歳になってからでしたから」
「前みたいに酔って甘えてきたっていいんたぞ~?お姉さんはいつでも大歓迎だ!」
「もうユウ君にはお酒はだしません!」
「いいじゃないか~ちょっとくらいあげてやれば」
そうです…このユウ!お酒で大失敗やらかしましてその…酔って寝てただけなんだけど俺は…どうやら自分の指をその…子どもみたいにしゃぶってたみたいで…ぺローの尻尾の先とか見境なしにしゃぶってたんだけど眠りこけた俺を部屋に運ぼうとしたアイサさんが悪戯で自分の胸を…知らず知らずのうちに失礼なことをしていたようだ…謝ったけども…
「あのときのユウは純粋に可愛かった…赤ん坊のように夢中になって…なにもでないのに頑張ってな」
「やめてくだちい…いじめないでー」
「ユニファーとミカサが邪魔しなけりゃーな、無理矢理剥がしたからユウが夜泣きしてやまなかったんだからな?機嫌よく吸ってたのに」
「やーめーろー!?ギャァァァァァァァ!?これ以上は俺の精神がヤバイ!!ストップ!!ストップ!!」
俺は…顔を真っ赤にして必死になって隠す…そんな俺を面白がって抱いてよしよしするアイサさん…これからはこの人の前では酒は飲まないと決めた。それと眠らないことを…
「人の傷を掘り返すのは良くないわよアイサ?」
「へいへい、この店に出入りできなくなって…ユウに会えなくなるのも困るしな~?」
「う~」
一方その頃、会話からつま弾きにされたミカサ、俺が話題を振ってもじきに睨みながら黙れオーラを出していたがそれは照れ隠しであったのにそれからユウはミカサをガン無視し、ミカサもユウに対してなにもしゃべりかけなかった。だから隣にいるのにも関わらず孤立してしまったのだ…それから悲しく一人でコップを両手に持ちアルコールは全くダメなのでミール(この世界の果実酒の一種でアルコール度数が極めて低い)をちびちびと煽る。少し飲んだだけで酔った気分になれたが気分は晴れない。
違う女にとられてはっきり言って寂しくて甘えたいのに恥ずかしいしプライドが高いに加え知り合いの前で喉を鳴らすことなんて絶対にできなかったので飲む合間合間にチラチラと視線を送るも全く目線が合わない。今のミカサの心境はアイサとっとと尻尾巻いて帰れだった。何度アイサと場所を入れ換えて追い払おうと考えたかわからない。ただ燃えたぎる寂しさを晴らす嫉妬の炎を燻らせていた。その時が来るのをじっと待つ…
「マスター…あの、そろそろ」
「ん?そうか、そんな時間か。ユニファーお勘定~
ユウ!また明日も付き合えよ?」
「うへぇ~勘弁してよ~(涙)」
来た!
キタキタキタキター!!時は来たり。やっと到来したチャンス!!ただここはじっとこらえ、何事もはっさずいつもの無関心さを装いなに食わぬ顔でミールの残りを一息で飲み干す…
「またね~ユウちゃ~ん♪」
アイサは部下を連れて満面の笑みで酒場を後にした残ったのは宿泊客でもある三人と店員…
俺は酔いつぶれたぺローを拾い上げると明日のこともあるしユニファーさんとレナーズとメリアンにおやすみを告げるとちんたら一人酒するミカサを捨てて二回の自分の部屋に戻る。ぺローをベッドに放り投げ俺もそこら辺に防具を脱ぎ捨てベッドに潜り込んだ。眠りに落ちるのにそう時間はかかることはなかった。
高ぶった心を抑え、表情は相変わらずだが内心舌舐ずりしながらユウの部屋を通り過ぎ自分の部屋に戻る。高ぶった心を抑えきることはできず鎮めるにはもう方法は残されていなかった。
次にミカサが現れたのはユウの部屋の前、愛用の枕を手にし、堂々と言うには少し頼りなく仕切りに周りを見渡し更に耳を使って人がいないことを確認してドアノブに手をかけた。しめた、今日は開いている♪疲れた様子で階段を上がっていたのでかけ忘れたのかもしれないこれは…私が閉めてあげないと♪
ギィィィ…
木の扉は普通に開けると気にならないがゆっくり開けると音が気になる…長く大きく音がなっている気がするのだ。顔を覗かせると今の音では誰も起きてこなかった。そっと胸を撫で下ろす…覚悟をきめて潜入するとやはり男の部屋だ匂いでくらくらしてきたがそれは若い健康的な雄の香りにミカサの雌が反応してしまったのだ。忍び足で入るとユウが脱ぎ散らかした鎧が足に引っ掛かった。
手にとると自然と顔を引っ付けて無心で匂いを嗅いでしまっていた。くんくんくんくん…本能に従いもっと匂いの強い場所を探し当てた。無限ポーチの横に脱いでたたんである洗濯物ぺローの隣にユウのがある。それをほっくりほっくりし、崩して目当ての物を探し出す。ゴッドアイテム、パンツだ。
匂いで堪能、噛んで伸ばして弾力性を楽しむのもよし何よりユウが決して触れさせない本来なら見ることさえ禁じられた物であるがゆえに背徳心に心痛みながらも胸の谷間にそっと隠す。これは後で十分に楽しむとして目当ては他にある。瞬足でベッドに移動からの~ベッドに潜り込む…どうしても試したいことがあったのだ。ユウの寝顔を拝む…ふむ実に可愛らしい寝姿に心キュンキュンするミカサだが残念ながら指はくわえていない。
「(してない)」
しょげるミカサ、そして気付けよ俺、侵入されてるぞ俺?下着泥棒が平然と隣にいるのに悲しいかな?
起きない。
ミカサはとりあえず隣で眠れることに満足する…そして事件が…
「………」
ユウが胸をつかんで離さない。ミカサは思った。これがアイサが言った母性本能をくすぐらせるユウの甘えたさん攻撃か…と。良い(鼻血出しながら)
お腹の上に乗って甘えるユウにミカサの脳は溶けていた。本人は無意識の行動だがそれが余計にいつもの刺々しさとのギャップで…クセになっている…
「ユウ~可愛い…ふふふ…」
「むにゃむにゃ…ママ?ママなのか~?」
「ママですよ~♪」
そして次の朝…幸せに包まれていつもより清々しい気分に浸りながら自分の胸に眠る可愛いユウを…ユウを探す…
ミカサは…自分の胸に乗っかる小汚ない糞猫に視線を向けた…どう変化したらこんな猫になるのか?
隣をみたらいつの間に入れ替わったのかユウがぺローの枕と自分の枕とを使って抱き枕をしながら幸せそうに眠っている…自分が寝ている間に胸の中にいるのはユウだと思ってたのは実はぺロー。真っ先にユウの寝床を占拠する猫に怒りの鉄槌を下す…
まだ眠るぺローの首根っこをつまみ上げ窓に向かってスパーキング~
破片は朝の日差しに照らされて寝起きの猫は思わず泣きながら混乱しながら落ちていった。
「ふぁ~ん?おい、なんでテメェーが俺のベッドで悠々自適に寝てやがんだ?あ?」
ミカサはユウの顔を見ずに一言
「貴様には過ぎた幸福…地獄に堕ちろ糞ねこ…」
いつもとなんか違うミカサにこれ以上なにも言えずただガクガクと震えていた。
はい、今日も元気に行ってみよーう…はぁ…やだな何だってこんな…
「なんでそこまで乗り気じゃないんですか?ユウが
私を知る数少ない機会じゃないですか?これを気にもっとお互いを…」
はい黙れー質問に入りたいと思います。ミカサのお姉さんであるシュラについてです。強いよねーシュラはね。
「私は四姉妹の一番末の…」
おい!ちょっと待てや…
「なんです?」
四姉妹ってなんやねん、俺の聞き間違いか?
「あと上に三人いてシュラお姉様は三女となるわけですね。長女の…」
フザケンナァァァァァァ!?ギャァァァァァァァ!?ワオォォォォォォォ!?これ以上なにがいるってんだこの化け物どもがぁ!?
注意、ミカサは四女、あと上に三人います。一人がシュラ、そしてあとは後々ということで。
「あの…私から質問してもいいですか?質問というか実践してみたいことがあるのですが…」
まぁそれは事による。
「遺骸?の能力を使って子どもたちの顔をみてみたいなーてっ…(もじもじ)」
はぁ?それはそっとしとくべきだろが…おい、どっから又兵衛の聖ニコラウスの両目持ってきた?おいはめんなよ…勝手に左手持つな!!おい!抱きつくな!!また美香出てきたらどうすんだーてっ…やめい!!
「あっ…赤ちゃん」
おっおお…可愛い!!可愛いじゃないか!!また失敗したんだなーもぅ!!
ピョコン(猫耳出現…)
たぶん俺の子じゃない…ミカサと他人だ。
「いえ、美香が同じようにでてきたのですから恐らくは…それに」
ぼてっ
おいおい、なんだそのお腹!!
「ですから新しい命が宿って…」
嘘だー!?
「はい、嘘です。仕込んでおいた布です」
………テンメェー(怒)
「ふえーん!!オギャー!!オギャー!!」
「おーよちよち♪パパがいきなり大きな声出して驚いちゃでちゅね~パパ?めっ!」
なにがめっ!だ!!ぶっ殺す!!その子を渡せー!!俺はパパじゃない!!もとの世界に返してあげるんだ!!凶悪猫耳悪女め!!
「私の子どもですから私が育てます」
世界を乱すなー!!
この後無事にもとの世界に戻りました。
「こっちの世界の第一子はいつ頃でしょうか?」
夢見てんじゃねよーよ!!ぜってーありえない!!




