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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
92/135

コレジャナイ、ミカサ

「フフ…フフ…もう終わりでいいか?」


皆肩で息をしながらうずくまる俺を睨むも考えると助けに来た仲間をボコボコにしたことに少しは申し訳なく思ったようで…


「ご…ごめんなさい」


普段優しいユニファーさんでさえ凶暴化して襲いかかってくる始末でいざ冷静になるとやってしまった感で皆ざわざわし始めた。ぺローだけは笑いながらやってましたけどね…立ち上がると皆の顔をみる前に口を開く前に魔力が尽きる前に俺の前に魔法の壁を召還する。透明なドーム状の幕に覆われ現状の掴めない皆はポカーンと口を開けて固まるが俺の背後にゆらゆらと揺れながら近づくヴァンパイアエルフをみて全て想像がつく。


「ここは俺の戦場だ。最初から一人で生きていくべきだった…誰も犠牲になってなんかもらいたくないのに捲き込んでしまった!!散々紛れ込んだ後ですまないがここから先は俺一人で戦う。生きてくれ皆」


ドームに向かって自分の思いを告げる。辛くて吐きそうだ。許されることなんかじゃないのはわかる。我が儘過ぎるのも知ってる。俺がぺロー側の立場なら相手の事情なんて無視してでも隣で戦うはずだ。

あいつらなら気にするなとか危険なのは当たり前だろとか言って何時までも俺を助けてくれるだろう?

それが辛い、心を磨り減らすようで耐えられない。

俺のせいで、自己嫌悪と言うか罪の意識に人一番敏感なのか、友達とか、(自分の )物でもなんでも失うことが嫌なんだ、俺の側にいるならきっといつか今みたいなことになってたと思う。


「寿命削って奪って得た魔力なんてほんの僅かだ。だからこの結界も何時までも持たないし、壁としての機能も弱いから衝撃で簡単に壊れるかもしれないだからもし無くなったのなら逃げてくれ。聖都でもどこでもいい。逃げてくれ、見捨ててくれそれが俺の願いだ。わかったろ?俺と来ても安全なんかじゃない。嫌な思いしかしないしないし、危険すぎるから…」


皆なにか言いたそうに結界を叩くがそんな衝撃では破壊なんてできない。向こうの声は聞こえないように防音していて何も聞こえない。でも言ってることはわかる。ありがとう、十分だ。まだ生きてていいって言われて友だと言ってくれて俺と一緒に来てくれて…


「俺は幸せだ。今本当にそう思うよ。だから一人でも寂しくない。だから俺は犠牲になって戦えるんだ!!無責任上等!だから全員死ぬなよ…」


背を向けた。顔を合わせると考えが変わりそうで目はずっと爪先を見たままだった。だから皆がどんな顔をしていて何を言おうとしていたのかもわからない。自分の後ろに仲間がいる。だから戦える。


「よーお前も可哀想だよな、お前が死んだら悲しんでくれる人はいるのか?」


迫るヴァンパイアエルフ、目は血走り赤くなっている。知能は無さそうに見えても喜怒哀楽はある。痛め付けられ縛られた恨みは確りと持っているようで

怒りが伝わる。俺はこの化け物に対してどうやって戦おうか…


「そりゃ怒るよな、でも俺も怒ってる。お前にじゃないが八つ当たりさせてもらうぞ。俺は死にたくないし痛いのも嫌だ。でもな俺には戦う理由がある。そのためには死ぬことも痛いのも喜んで受ける。お前にはそんな人がいるか?」


「グギギギギ」


「そうやって感情を殺されて操り人形でいるのと死ぬのとどちらがいい?まぁお前は俺が殺させてもらうけどな!恨んでもいい、許してもらわなくても結構だが勝たせてもらう。何がなんでもな!!」


俺は走る、覚悟は決まった。化け物だから殺すんじゃない俺が皆を守りたいから殺すんだ。


グラムを振り下ろす。大振りで見切りやすくこのヴァンパイアエルフのスピードなら必ず避けるであろう攻撃…ボケてる訳じゃない。繋げるんだ、振り下ろす。ヴァンパイアエルフは急停止、刃先は悲しく宙を切る。からのヴァンパイアエルフの急発進、パンチが飛んでくる。溜めからの右頬を狙う一撃、ヴァンパイアエルフの間合いはグラムを持つ俺の間合いはより遥かに近い。だからと言って攻撃も出来ず殴り殺されるなんてことにはならない。振り下ろしたまま地面に突き刺さる。普通なら間に合わないのにグラムを引き抜き攻撃する。それかグラムを離しヴァンパイアエルフの攻撃を避け殴り合いに移行するかだ。俺は飛んでくる拳が命中…届くまでなにもせず待った。時間にしては瞬きほどの時間しか残されてないほど早いが今の俺ではあくびが出る。


頬を抉るであろうパワーを秘めたパンチ。俺は待った。遅くてイライラする、対応できるスピードだからこそイラつくのだ。早く来い早く来い…

ヴァンパイアエルフが放ったパンチが顔面に当たる感覚。針の先ほどの面積しか当たっていないが当たって抉り込まれる前に足を払う。ギリギリまで粘って放ったのはただの足払い。しかしそれは大きな効果を生む。グラムは地面に突き刺したまま、空中のヴァンパイアエルフを殴る。衝撃は体内の骨格を通じ全身を巡り体内へ放出される。


「ギギギ」


歯軋りにも似た奇声、あのダークエルフは言葉さへも奪ったていた。自分が今何をされてもなんの感情も持たないだろうが喜怒哀楽があるくらいだ。少し位は残っているだろう。死ぬ恐怖ってやつが。


「わざわざグラムで切り刻んでもよかった。どうせ切ったところで再生するんだしな、躊躇せずグラムを使うべきだろうな。殴っても無意味だもんな、でも俺はそうしたいんだ。その無意味だと言う行為に俺は自分の命を賭ける、どうだヴァンパイア?これでは終わらせない」


宙を浮く体もやがて重力で落下する。落下する前に殴るその繰返し…だがだんだんと殴る感覚が短くなる、一撃一撃だったのが連続して殴ることができるようになる。空を割くパンチ、ヴァンパイアエルフは受け身なんてことすらしない。受けるだけだ、攻撃に全て徹するが守りにはいるべきだった。ヴァンパイアエルフの攻撃は入らない、踏ん張れる足場もない自分の腕力だけのパンチと俺の力が劣るパンチじゃまだヴァンパイアに勝敗があがる。一撃で勝負を決めるならな…


「どうした?まだ決定打が打てないか?自分の置かれてる現状がやっとわかった?攻撃ができないから当たらないからと言って卑怯だなんて言うなよ?ヴァンパイアのお前は俺から見れば卑怯だ。でも俺は羨ましいとは思わない。自分の勝る部分で勝負すればよかったんだ。お前のターンはこれで終わりだ。

ありがとう、もういいんだ。お前は悪くない後は俺が背負うことにするよ」


殴る、その衝撃は吸収されるから衝撃では突き放すことはできない。拳を打ち込み押し上げることで体を浮かせる。攻撃動作を早くすることで全てを可能にした。打った後に勢いよく手を下げる、攻撃を早く終わらせることで次へと繋げる。下げるだけでも大きな意味がある。ただ下げるだけならもったいない。素早く引くことで空気を引き寄せることすら可能とさせる。するとヴァンパイアエルフと俺の間に腕の分だけ真空空間が現れる。それを埋めるために空気が吸い込まれる。空気が真空空間に入り込む、周りの空気が引き寄せられるのに連れてヴァンパイアも引き寄せられる。そしてまた打ち込む。連打連打連打だ。衝撃が体外へ抜け出る前に衝撃を与え続ける。


「ガギギギギ」


「まだまだー!!」


衝撃を外へ流せないから骨を伝わり全身を駆け巡り続ける。衝撃とは震動、それが溜まり続ければやがて限界を超え…


空気を入れ続けた風船のようにボンッ!と音をたてて背中から爆発する。装備している装甲の下、皮膚が裂けてそこから震動が外へと伝わる。空気を揺らしてそれが地面を揺らし地震が起こる。ヴァンパイアは跡形もなく吹き飛ぶが骨格より中は原形を留めている。周りの衣服と肉が弾け飛んだようだ。飛び散った肉片も再び戻ろうと集まって来る。


「お前は悪くない、俺も悪くない。俺が強かったから殺すんだ。ただ生きているだけで、お前も好きで争いたい訳じゃないのもわかる。ヴァンパイアに堕とされて悔しいのも痛いほどわかる。ごめんな…」


ただエルフとして生きて死ねたなら幸せだっただろう。エルフは真っ直ぐな種族だ、純粋で美しい、それを他人から血を得なければならない体となりただ戦いの道具として操られることがどれほどの侮辱となるか人間の俺には全部はわからない。でも許せないんだ、こんなことが許されていいはずがない。


ヴァンパイアへ歩み寄る。半壊といえど噛みつく力は残ってたようで魚のように跳ねて首を狙う。俺は避けない、左腕の手甲で貫く…胸に当たりそして貫く、そのまま心臓を抜き取る。元凶はわかっていたから…石のような骨のような…心臓にはいくつも釘が突き刺さっていた。エルフをヴァンパイアにする術か…見習いたくもない外道の術だ。


「ありが………とう」


蚊の羽音にも負けるほどか細い声だったが確かに俺の耳に届いた。牙は首筋まで届いていた、しかし俺が胸を貫くほうが早かったから…まだ回復しきっていなかったぼろぼろな体を抱き締める。自分がした最善の事だろう、敵を殺し仲間は負傷者は無しそれに自分は生きてるなのに渇く、満たされない気持ちでいっぱいだ。抱き締める力を緩めない。エルフの体はやがて塵となって消えた。塵は風に運ばれ消えていく。森の中は暗く木々の間を吹いた風はやけに優しく吹いたので髪がふわふわとなびく。涙を拭くこともせず泣いた。エルフの体はなくなり鎧だけが無造作に音をたてて足元を転がった。泣くのは覚悟が足りなかったからか、確かに俺は根性がない。悲しかったエルフとして生きてた頃は罪なんて犯したことがないはずだ。そんなエルフを俺がどうして殺すことができるんだ?ヴァンパイアだからか?俺を殺そうとしたからか?悪くないんだなにも悪くないのにどうして俺は!!オーガやオークは優しくなくてエルフは優しいのは先入観でもなんでもない。エルフは人間を進んで殺そうとしないけど魔物は違う、獣ようなやつは人間を餌さとしかみてないし知能があってもやはり殺すことしか考えてない。


「ヴァンパイアだから殺してエルフだったから悩んでるんだな。俺はこの人の殺気しかしらない。なのになんで悩むのはおかしいはずだ…」


ポンと肩に感触を感じた。振り返るとぺローがいたそこにいた。背伸びしてやっと届いたぺローの肉球は優しく感じた。ぺローの顔はやけに悲しげだ閉じ込めたのは俺だ。理不尽な理由で一方的に閉じ込めたのに、優しくするな。だから矛盾して俺は余計苦しむんだ。


「しゃんとしろ、俺たち魔物と人間は戦争してるんだろうが、もう腹の探り合いだが始まってんだよ。何人も犠牲者がでてるんだぞ?たった一人良い奴が死んだだけじゃない、何人も良い奴が死んでんだよこれ以上増えないがためにお前が活躍しないでどうするんだ?今そこにいないどっかの勇者が来るまでそうしているつもりか?」


「俺は悪いやつを殺したのか?それとも良いやつを殺したのか?どっちにしても罪深いことはしてるんだがどうなんだ?勇者って殺し屋じゃないんだろ?

ならなんで殺ししかしてないんだ?」


「聞くことしかしないんだな、自分で決めろよ。下手に間違えて俺が責められるのはごめんだぜ。自分と仲間を守ったんだ。堂々と誇ればそれを」


守ったらから勲章ものなのか、言い換えれば人一倍殺しまくって勲章ってことなんだ。それを誇れと言われても吹っ切れないもんなんだ。だから辛い、胸が苦しめられる。


「誰か死ぬたびに苦しむとか馬鹿か、それは敵だろう?お前の視点から見れば敵だろう?だから殺したそれだけだ。お前と仲間は助かり万事OKだろ。」


「元を辿れば悪くない…操られてるから…」


「そこがおかしいんだよ。今は敵だろ!お前は過去に生きてるのか!?過去は人を殺さない、今目の前に立ちはだかるやつが殺してくるんだ。そんなの頭の足らない愚者でもわかるぞ」


「俺は良いことをしたとはどうしても思いたくもない。ネリアの父親を殺して平然と行動してるのもよくよく考えれば狂ってることだ。又兵衛とは殺し合った仲だ。なのに今は一緒に助け合ってる。狂ってるよな。狂ってる。」


「そうだ、狂ってる。国のために働いてる魔物だっていたはずだ。聖都から逃げてきた奴等がそうだ。戦闘意欲のない敵を丸焼きにしたのはお前だろ?お前の言うこれが罪ってやつだろ。もう遅いんだよそれでも罪を重ねて生きていかなくちゃいけないんだ理由なんてしるか、なんで悪いかもわからず人でないものを殺していくことになるんだ」


殺しに理由を求めるのがそもそも間違いなのか、生きるため以外にそんなものないか。まず罪ってくくりを作ってしまうこと事態が俺の傲り傲慢なのか…

罪ってものを作らないと、感情がそうさせるんだ。

誰でも彼でも殺すことになってしまうから。


「けど俺はお前と出会った。ぺローは人間じゃない味方ですらなかった」


「そうだな、オークだろうがなんだろうがそうやって敵に感情移入しないほうがいい、辛いだけだ。これからは豚肉だって食えなくなるぞ。心に嘘をつきながら生きていくんだな」


ぺローは適当に鎧をかき集め土を掘り起こしそこへ鎧を埋めた。簡素だが墓を作ってくれたようだ。


「お前がそうやって線引きするなら今まで殺してきたやつを忘れるな、んで謝り続けろ。生きるためだったんだって言い訳しながら泣いてすがれ、苦しむことが供養だ。俺もお前も悪くないって言ってやれじゃないと辛いだけだ」


ぺローは言った、祈る神はいないが懺悔したい相手は空に山ほどいると。だから死ねない、こんなやつなら戦って殺されても悔いはない、そう思われる敵になりたい。だから強くいたいし死にたくない。生きるために殺す。どんな理想を掲げても剣が額をカスったらかわるもんだ。殺す理由はそんなもんでいいとぺローは言った。生きるための理由を一つ持っとけと、それだけでいいそれを守るために戦えと。


「生き死にを考えるのは難しいことだ。だから自分の命を物差しにして戦うんだな」


「俺は間違っていると思いたい」


ぺローはふっと笑った。すると視線を墓の方向に向けた。


「ならいいんじゃないか、良い奴殺したって苦しんで。一生ペコペコ頭下げながら暮らすんだ。あー本当に幸せなエルフだな。殺そうとした敵にここまで

悩んでもらえて、苦しんでもらえて。まったくここまで悩む馬鹿もいたもんだな」


ぺローは帽子をとって黙祷する。俺は必死になって手を合わせた。殺したくなかっだろ、操られて悔しかっただろう。こんな目に合わせたやつは俺が成敗した。あのダークエルフは俺が苦しめたからな…だからもう眠っていいからな…


「さて!!ピンポイント・ショット!!」


ぺローは帽子をかぶり直すと俺を殴った。皮の鎧で貫通はしなかったがそれでもすさまじい威力だ。隙が大きなところを強く殴られたんだ。体は吹っ飛ばされて俺はごろごろ転がって殺気だった女性陣の足元へその身をさらすはめになる。


「うぐ…」


「さて、どうしてやりますか?まだ(仲間)について教えてやりますか」


「ユウ君の悪いところが出ていた一面って感じだったかな?私、ちょっぴり怒ってるよ」


俺は恐ろしくて顔を上げれない。地面から目が離せない。上を見ることができないんだ…俺は皆を裏切ったんだ。半殺しにされても文句の一つだって言えない。


「信じて貰うのは容易いことではありません。それこそ命懸け、戻れるものなら何度あの夜に戻りたいか…後悔しない日はありません。認めて貰えれば貰うほどこの辛さは増してゆきます」


「又兵衛」


やっと顔を上げることができた。真っ正面からみれはしないがこうやって顔を合わせることができる。


「(馬鹿は悩まないと思ってた、だったら少しは私の気持ちも考えたらどう?)」


「ユニ」


「ユウは悪くない、でもユウがそう思うなら私は一緒になって頭を下げる。だって彼女だから」


「リヴァ」


「なんのために一緒にいたのかわからなくなりますから一人で抱え込まないでください」


「大胆エルフちゃん」


「そう言うわけだから♪」


目の前に不適な笑みのミルティーが…これはどー考えても嫌な予感しかしない…ぺローは察した様子でニヤニヤしてるし…


「あ~ら私の靴底になんかついてる~?」


「ぐきゃー!!」


普段は大人しい人たちもまた凶暴化する…こうなれば抑えることなんて不可能…俺はガタが来ている体にさらに追い討ちをかける形でボコボコにされる。


「ユウは信用することを知らないのかな~?敵に一回捕まったくらいで解消されるとは私はユウを何回捨てればいいのかしら~?」


「ひー!!」


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!」


ネリアのただの憂さ晴らし攻撃…てか大胆エルフちゃんもユニファーさんも又兵衛もなんで俺をこうやって虐めるのさ!!俺は弱った心に暴力という攻撃でトドメをさされぐったりと項垂れる。


「ユウが言った罪も一緒に背負うのも仲間の私たちの役目でしょ?お荷物の一つじゃないんだから少しくらい期待してもいいんじゃない?」


ぺローがちょこちょこと近づいてくる。ニヤニヤしながら肩をバシバシ叩く感触だけが伝わる。


「いいの~女の子にあそこまで言わせてさ~無責任なお方だね~君も」


冗談ぽく言っていたぺローもやがて地面に突っ伏してる俺が心配になってくる。他のメンバーもやり過ぎたかと思い始めた頃ぺローがひっくり返して大騒ぎになる。


「(脈が弱い!呼吸も浅い…かなり弱っている)」


ぺローが真剣な眼差しでユウを診察しているので皆に動揺が走る。流石に背中に冷たいものが流れる感覚に生唾を飲み込む。


「やべーな…呼吸がしにくくなってるのか、胸を踏まれて不整脈になってる…強心剤持ってこい!このままじゃ呼吸困難でポックリ逝っちまうぞ!」


首が切られても生きてたユウだからここまで袋叩きにしても大丈夫だと思ってたのは皆共通して油断していたことで氷水を頭からいきなりかけられたような出来事に右往左往して誰もまともに機能できなかった。ぺローは魔力を帯びた鉱石を携帯している。左腕に吸収させれば回復するのを知っていたからだだがユニがそれより早くユウを治療したことによりこの騒ぎは鎮静化した。

















見たことのない景色…岩…洞窟か?


「起き上がるなよ、まだ寝てていいんだ。急がなくてもゆっくり体を休めろ」


「ぺローか?」


側ではぺローが介抱してくれていたようで見えるところにユニが待機していた。洞窟だが薄暗いほどで

真っ暗ではない。そこまで大きな洞窟ではないようで見渡せるほどしかなく入り口から太陽の光が差し込んできていた。


「俺の監督責任だ。殺すところだった…申し訳ないと言っても許してくれない…か?」


「いや、俺が招いたことだ。回り回って俺に返ってきただけだ。どうして逆恨みすることができる?」


いつもなら怒るところだが身も心も文字通り弱りきっておりそんな気分にはならない。これで少し俺が許してくれるなら…そう思えば気が楽になった。


「他の皆は?ユニだけか?」


「見張りに出てる、それと食料調達。罪滅ぼしに頑張ってくれてるよ」


「お前らはお留守番か」


「んー出番を盗られたというかお呼びじゃないと言いますか…」


俺は再び横になった。魔力消費に寿命削ったから…

0になったら死んでるのにな。結果を先送りにしてなにも解決してないのにな…


「それより体は大丈夫か?ユニのお陰で何ともないと思うが…」


「それはな…」


「他になにかあるのか?」


ぺローが懐からマタタビを取り出してくわえる。さして興味がなさそうだ。


「たいしたことじゃない。前からストレス溜まったら幼児退行してただろ」


「あー巨乳に甘えるあれか、ミカサが懐かしくなったか?ぷぷ」


「さーな、俺が記憶を遡って誰を探してるかはどうでもいい、それより幼児退行ってのはちょっとした訳があってだな。どうやらストレス性の記憶喪失になりやすくなってるみたいなんだ」


「え?」


ぺローがくわえたマタタビを下に落とす。


「一時のもんなんだけどな」


「また俺たちのことを忘れるのか!?」


「そうなってる。だんだん失ってる間も長い気がするし…いつかはまた全部失うんじゃないかと思う」


その時入り口が騒がしくなったと思ったら。皆が帰ってきたようだ…明らかおかしなお土産つき…


「私のほうが大きいぞ!!」


「いーえ、大きいだけでそれは美味しくないです」


「量だけでなく質も大事」


「なら調理で勝負!!」


ぎゃーぎゃー争いながら又兵衛とネリアを除く皆が帰ってきた。あーまた寝ようか?皆は俺の顔を見るなり申し訳なさそうにそそくさと横に隠れる。ぺローは慌てた様子でなにやら話をしている。ユニよ偵察に行って参れ…ふむふむ…え?記憶喪失の話をぶっちゃけた?


それから皆との間にさらに距離があいた。しょうがない…覚悟していたことだ…しょうがない(涙)


「で、いつまでここでいる気だ…」


「大人しくしておけいいな?」


「へい…」


あーつまらん、こう言うとき体が動くなら素振りでもして有意義に過ごせるのにな…よし料理に悪戦苦闘してる皆の料理は食べないために寝ようか。ユニファーさんのが完成したら呼んでくれ。それでは寝るか。おやすみ…





















「おう、ここは!」


なかなか再現度の高い夢だな。俺の世界の家なのか見覚えある家具に囲まれて幸せです。これで血生臭い世界ともとうぶんお別れだな。よし、この世界でも眠らせてもらうからな!!


むにゅん♪


「およ?」


俺の横にぷにゅぷにゅしたのがあるぞ?抱き枕?なるほど、夢の中だとこんな感触なのか。


「う、うーん…」


「な!なにー!!」


なんかいる!ものすごくなんかいる!なんだー!出てこい!!布団をめくると中には…おい、さすが夢だなよくわかってらっしゃる。


「あのーユリネルさん?どうして我が布団の中にいるのでしょうか?しかもよくみりゃダブルだしこのベッド…」


目覚めが悪いのかユリネルって、頬をぷにぷりにして遊ぶ。このユリネル羽はないがユリネルだ。ユリネルなんだ。ユリネルで頭があーユリネルで頭ユリネル(意味わからん)心を癒すための防衛装置が働いたのかな。ここは思う存分味わうべきでは?


「あっユウさんおはようございます」


目覚めて覚醒すると俺の横で正座になるもんだから俺も自然と正座になる。そんなことより下着よ、白…じゃないなんで下着姿で出てくるのさ。


「ユウさん…じゃなかったですね…すいません何時もの癖でして…」


「いや、気にせんでいい。俺もさっぱり意味がわからんからな」


「寝惚けてるんですね?私もです。それでは朝食の支度をしてきますねダーリン♪」


「はぁ?」


「はぁって…ユウさんから言い出したんですよー夫婦なんだからこう呼び合おうって言い出したのは!!恥ずかしいんですからねー!」


ぷんぷん怒るところも、また可愛らしい。まぁ何しても可愛いんだけどね。


「ふーん、行ってらっしゃっーい」


見送りながら二度寝に入る。あーもう少し休ませて貰おうか…そこから深い眠りへ~どこからか悲鳴とぺローの叫び声が聞こえる気が…しないこともないが無視させてもらう…第二部だ~


「はっ!」


ソファーでくつろぐ俺、膝の上には小さな女の子が乗っかっている。黒髪でシャンプーの良いかおりがする。顔は…ユウナに似ている。ここで一つ疑問がしょうじる…新婚設定じゃなかったか?


「あなた、今日は私と遊んでくれるのでは?」


「えーパパとは私が遊ぶ~」


「ははは可愛いな~おい、ユリネルもそんなに甘えたちゃんだった…か?」


固まる…だって声の主がユリネルじゃなかったからだ…誰だ!!ユリネルをどこへやったー!ミカサー!


「ピギャァァァァァ!?」


飛び起きた。近年稀に見る悪夢だった…起きたらとんでもない戦闘じょうたいだった。こんなとこで寝てたの俺?リヴァの水鉄砲が頭上をかすめ飛び、入り口で火花と魔法が飛び交っている…どうして?


「こんな状態でも眠れるとはな…」


「ミカサァァァァァァ!!」


飛び起きるなり側のグラムで切りにかかる。いたのはシュラだったのだが…なぜだかしらんが…かなり遠くに飛ばしたし位置も知らないはず…いるはずのないシュラに気が動転して暴れまわる。


「誰がミカサだ!!」


「イヤァァァァァ(涙)もう嫌なんだよ!!ユリネルを出せよ!!お呼びじゃないんだよクソがぁぁぁぁ!?」


「さて、続きを始めるか?」


「なら傷は確り真似しとけよ~それじゃあシュラじゃなくてミカサじゃんかよぉぉぉぉぉ!?お前ダークエルフ女の追撃だろぉぉぉぉぉ!?シュラに真似んなよ!!やだぁぁぁぁぁ(号泣)」


涙ながらにグラムを振るう。シュラは…偽者らしく呆気なく切られるとブレながらいろんな姿に変わる…これは…ドッペルゲンガーの巣か!?俺の悲鳴に感化されてか回りではユニファーさんが3人いたりぺローがあちらこちらで群れてたりリヴァ5人がこっちに向かってきたりする…もう何がなんだがわからんがドッペルゲンガーが一斉にミカサの姿となったのだ。俺はとうとう発狂した。


「イヤァァァァァ!?無理無理無理!!やだぁぁぁぁぁ!?来ないでー!ユリネルは!?ユリネルはどこー!?」


ミカサが大群を成して向かってくる様など生きた心地なんてするものか弱った心にミカサの大群はトドメとなった。涙を流す鬼神となってミカサを駆逐するために機動する。


「ユウ、子どもは何人欲しいですか?」


口揃えて一斉に言ってやがんの。足並み揃えて一斉に向かってくんの。体がガタガタ震え、恐怖におののき最早なにも考えることが出来なくなる。


「イヤァァァァァ!?来ないでェェェェ(号泣)あっちに行けよぉぉぉぉ!!なんで全員こっち来るんだよォォォォ!!やだぁぁぁぁぁ(号泣)」


魔王よりなによりこれが最終決戦だろ?

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