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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
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邪神の遺骸

睨み合う二人、わからないが中がよろしくないと見える。待ってろと言ったがついてきたのか…今としては助かってるが…


「ミカサ…選べ、愛しの男が死ぬか他の女のものとなるか。どちらにせよお前には死ぬほどの苦痛をあじあわせてやる」


目の前にミカサが二人…ゲロー!

危ない危ない…耐えるのだ。液状化を解いて又兵衛の治療を優先させるか。ミカサに任せとけば俺の身はとりあえず安全だ。又兵衛の怪我の状況を診断し命に直結する症状、怪我は診られないのでほっと一安心した…


「久しぶりですね、お元気でしたか?」


「またほざくか、聖都でのお前のその能天気ぶりにはイライラさせられる!お前に切られたこの顔の傷が疼くのだ!!」


ぎりぎりと歯ぎしりして唸る姉、ミカサはそれこそ知らん顔、しきりにこちらを見つめている…なんだよ!!こっちみんな!早く喧嘩でもなんでもしてろ!姉妹の問題に俺達を巻き込まないでくれ(涙)


「それで済ませたのです、命までとらなかったのは自分では花まるをつけるところですね」


その言葉についに姉がぶちギレた。当然だろう俺ならたぶんとうの昔にキレている。よく我慢したほうだと思う。姉とはアンチミカサで仲良くなれそう。


「もういい、喋るな。昔からそうだ、人の話など聞かない。これから先は力で語ろう。簡単に白黒つくぞ?おい、勇者」


「伊丹ユウ。伊丹ユウだ覚えてろ!俺だけでなく仲間にこんな目にあわせて許さないからな!!」


「いや、発情期にはいったようなのでな逃げるなよとだけ言いたかった。勝負が終われば気の済むまでお前と…」


「何をするおつもりで?」


ピシッ!!


ミカサの足下地面が割れる、霧の中ミカサの周りだけ不穏な空気に包まれる。ミカサらしくない獣のような鋭い殺気、並みの魔物なら居合わせただけで死んでるようなレベル。怒気、かなり怒ってらっしゃる。いけーミカサーぶっ飛ばせー(棒読み)


「ふっ…本気になったな…なに、ミカサ…お前を始末した後にあの男も始末しようと思っただけだ」


「へー…始末?」


おいおいこれは…自分の怪我もまだ治らないが又兵衛を肩に担いでリヴァが落ちていった崖を目指して走った。全速力、この場にいるのは危険だ!!すんでのところで飛び込む。


「できるとお思いですか?」


何かわからん、爆風が起き背中を押される形で落下

する。巻き上げられた小石が後頭部に直撃する。これはちょー痛い(涙目)そんなこと言ってる場合でもないか!空中で1回転、衝撃を又兵衛に与えないように気を使いそのまま遺跡に向かい走り出す。遺跡の入り口、手前にリヴァの姿が見えた。


「聞いてると知り合い?これからどうする…」


言い終わる前に走りながらリヴァを持ち上げ同じように反対側に担ぐと入り口に滑り込んだ。直後激しい揺れに襲われ岩石を削り出して作った石のブロックが崩壊し、入り口が完全に塞がれてしまった…

























真っ暗だ…なにも見えない。冷たい石の床の感触だけ感じられる。否、膝の上に何かいる…人のようだが子どものような…


チュッ♪


「んぐ!?」


「ユウ♪ん…ぷはっ!」


大胆にも暗闇でキスしてくる女…の子と言えば…こんな大胆なことするのは君はリヴァだねー!あーアホらし、それより又兵衛を探さないと…


「ライト!」


光球を出現させると頬を紅色に染めたリヴァが目の前にいて向かい合う姿勢になっていた。いいから下りなさい…


「怪我はなさそうだな?救助が遅れたな、すまないこっちはピンチだったもんで」


リヴァは首を振るとにこやかに返事をした。


「ユウは私が守る、あんな獣人一匹に負けない!」


「それは心強い、それよりいきなりチューはやめような?」


その話を持ち出すとリヴァの表情が曇る、どこか寂しげで悲しそうだった。


「ユウの昔の女?」


「ミカサか?彼女じゃないよ、むしろ嫌いだね。戦力的にはこの上なくお世話になったけど」


「生物じゃない」


「なんだって?」


「その子の言う通りです」


「ミカサか?」


後ろの瓦礫、どこから入ったのか隙間もないのにミカサがたたずんでいた。腕を組み、物思いに耽ってるように目を閉じている。生物じゃないってなんなのさ。


「はい、私は思念体と呼ばれるものです。俗に言うゴーストです。聖都の魔術師によって魂だけあなた方を追ってきました。お守りを所持するユウを追ってです」


ほう…本体は聖都か…今のうちに潰しにいくか…幽体離脱してやってくるとは…生き霊の類いになってまでついてくるその執念よ…


「でなんで又兵衛に触れたりできるんだ…さっきだって姉と戦ってたんだろ?」


原理がわからんよね、瓦礫をすり抜けられたのはわかったよ。ゴーストなら話はつく…でも2次元に近いゴーストが3次元に干渉してくるなんて…


「それはユウを愛する気持ちが全てを可能に…」


「いい、もういい…黙ってろ!!」


左腕のない俺は右手で顔を押さえる…泣きそうになってきた。疲れたよもう!!ぺロー達のほうに行きたいぞー!!


「それよりラーナ達が見えませんが?まさかシュラ姉様に…」


「シュラって言うのかふーん、大丈夫。全員別ルートに飛ばして無事だ。それより期待の戦力が使えないとなると…」


今の現状を確認する。怪我人の又兵衛が横たわる、意識はまだ回復しない。リヴァは実践経験に乏しいからあのミカサと同じ化け物相手は無理がある。海ならまだわからないが陸地だとリヴァは圧倒的不利になる。ミカサは力がだせない、見せかけだけだ…俺も左腕ないし、魔力吸収にはまだ時間がかかる、ベルセルク化のために魔力は充填しておきたい。


「戦うのは俺だけになるか、リヴァは又兵衛についててくれ。まっそれよりここから出ることを考えるか~」


その時だ、上のほうで謎の爆音、そして揺れが続く何かがぶつかった音だ。恐らくだとあれは…


「シュラ姉様だ」


「だろうな!!今の揺れで遺跡の構造が弱くなってる!

この瓦礫を退かそうと思ったがこれをぬいちまえば崩壊して生き埋めになりそうだな!!ミカサ以外…」


遠くで謎の爆音がなおも続く、早めに決着させなければそれで生き埋め、でなくとも出口が他にもあるかも…そう考えてソナーを狭い範囲だが一瞬使った…何個かあるね、ここから近いのは…


「ユウ!ダメです!シュラ姉様は魔力感知能力はずば抜けているのです!!このいりくんだ迷路のおかげで接近はすぐにはされないでしょうがだいたいの位置は知られてしまいましたよ今ので…すぐ移動しますよ、でないと…わかますよね?」


「だがどうする!又兵衛はまだ起きないんだ!」


「なんですか、そんなことですか。ならゴースト特有の憑依を使えばなんとか…」


「まっまて!」


止める暇もなくミカサは又兵衛に近づいた。リヴァも突然俺が怒鳴ったので固まってしまう。又兵衛の聖人の遺骸、左腕の能力は魔力吸収。又兵衛の左腕にミカサが吸い込まれた。ゴーストは魔力の集合体のようなもの。吸い込まれたら最後、出てこれない分解され又兵衛の魔力となる。


「ミ、ミカサ!?」


「はい?」


むくっ…


吸収されたはずのミカサが…又兵衛が起き上がったのだが中身は恐らくミカサ…吸収されずに逆に又兵衛の体を乗っ取るとは…果てしなくチートだな。霊体のくせに触ってくるもんな。


「急いだほうがよさそうだな。ミカサは又兵衛の体を動かしてくれリヴァは…」


「抱っこ」


歩け…とは言えなくなって。まだ陸上生活一週間経つか経たないかだもんな…よし、いいだろう。よっと…リヴァを軽々とお姫様抱っこ。これじゃないとだだをこねる、顔がよく見えるのが好きなんだと…

俺片手なんだけどしがみついとけよ…


「よし行くかミカサ!先頭は俺が行くって…おい、なにしてる?」


その場でしゃがみこみ見上げてそして…


「抱っこ」


「……立てるよな~ミカサ!!」


「馴れない他人の体…」


「うっせーチート猫のお前が立てないなんてことあるか!よし、いいだろう。あえてそんな態度とるんなら大胆エルフちゃんとあんなことやこんなことするぞ?町に行けば娼婦の館だって行きます…ちなみに俺はまだ童貞…いいの?」


脅しになってない脅し。びっくりするがミカサは従順な子猫ちゃんにはならなかったが。俺の後をついて出口へ向かう…その時一際大きな穴が迷路の壁から直線に延びていた。ヒョッコリ顔を出すと穴の先はさっきまで俺達がいた瓦礫で塞がれた出口に出ていた。一足遅ければ…考えたくないもんだ。


「俺達がいないとみてまた探しにいったか」


「急ぎましょう…!」


壁から突然腕が現れた。俺の首をガッシリと掴むと引き込まれる。壁に激突、しかし腕の力が強くリヴァもろとも隣の通路へ引きずり込まれた。


「なっなんだ!!」


いたのは間違いない、シュラだ。様子がさっきまでとは異なっている。目は血走り、桜色だった着物はなぜか真っ赤に、怪我をしてるわけでもない。返り血のようだ。ベッタリと張り付きそれが全身から殺気がほとばしる。刀は抜いていない…が注意すべきとこが多すぎる。


「い…伊丹…!伊丹ユウ!!」


掴みかかってくる。リヴァの応戦は間に合わない。瞬く間に俺からリヴァを剥がし、通路の角へ放り投げる。壁に激突したリヴァは天井の一部が潰れ崩壊してリヴァの上へ重石のように落下した。


「ぐぅ…」


「リヴァ!」


「よそ見をするな!」


鋭い爪が迫る!俺とシュラの距離が瞬きする間に目と鼻の先まで詰められる。辛うじてその隙間にミカサが俺のグラムをねじ込む。グラムと爪で火花が上がる。発生した風圧で体が飛ばされる。後ろの壁に当り崩れる。


「なっ!?魔物、オークの死体!?」


山積みになったオークの死体。ここはオークの巣だったようだ。頭を潰されたもの、綺麗に胴体から切断されたもの。数匹が壁に叩きつけられ団子のようになっていた。辺りは血の海、その中で壁に張り付けにされてる人達が…


「苗床…くそったれ!!」


裸にされた女性たち、オークは雌が存在せず他種族の女に産ませて繁殖する。獣人が雌しかいないのとは逆だ。旅人や商人を襲撃して盗賊紛いのことをする。女がいればさらって犯す。胸くそ悪いとか思う人もいるだろう、俺もだが人間もこれと似たようなこともしてるわけだしこれにかんしては自然界の掟として勇者としては許せないが一生物として仕方のないことだと思うだがこれは…


「うっうう…助けて」


「いやっ…殺して!」


「正気に戻ってるのか?」


オークの唾液、体液には媚薬効果がある。それで狂わす訳だが意識がはっきりしている。本来なら魔法か状態異常用の薬が必要となるのだが…これは…


(張り付けにされてる女性たち)…こんなことオークはしない。オークの粗悪な矢じりや鋭く尖った石器で壁に固定されてる。戻すには思い出させればいいんだ。快感に狂ってるなら。記憶というのはなかなかしつこいものもある。思い出せないだけでたいがいは失っていない。だがそれが全て引き出せる時がある。


人影を感じて振り返る。俺がぶち抜いた通路の穴からゆらゆらと揺れながらシュラが立っていた。


「ひっ…戻ってきた…!」


「死にたくない!!誰かー!!」


がらがら…


「ふしゅー………伊丹ユウ♪」


死の恐怖、走馬灯を見るときなどがそうだ。


「イヤァァァァァァァァ!!」


張り付けにされた女性が一斉に叫ぶ、すすり泣く声から悲鳴にかわる。ここで起きた惨劇、思い出したはずだ、全てを。産むだけの道具だった彼女達。助けに来たのではない。明らかだ、散らかして自分達を恨めしそうに吊し上げ杭を打つ。狂ってる獣人を前に戻ってきた。人格が、最悪な形で。


「ははっ!!俺がベルセルク化で汚染された時よりひでーんじゃねぇか!!人でなし!!」


口が裂けてるように見えた。笑みが不気味なのだ。

血を滴らせながら笑うシュラ。狂ってる、真っ赤だ全てが。


「勇者なら逆上して殺すくらいは言うと思ったが…

もう少し喜んでくれてもいいんじゃないのか~?君のためにプレゼントを用意したんだ。最高の殺し合いの場じゃないか!!さぁ!!殺し合おう!!」


けっ…とんだサイコ野郎だな。シュラさんよー!

人じゃねぇ!ぶっ殺す!!


「たいした殺意だなー!!でも足りない!!足りないぞー!!ミカサを恨む私の気持ちに比べればまだ足りない!!堕ちようじゃないか!!さぁ!!殺し合いだ!!」


「イヤァァァァァァァァ!!助けて!!助けてよぅ!!」


「ちっ…」


血の臭い、ははっ…大っ嫌いだ。誰かが死ぬのは。

特に自分の関わりのある人は、でも後ろの女性たちは関係なんかない。でも人として許せないもんがあるだろうが!!


「どこで道を踏み外したか知らないが…覚悟あっての事だろうな!?ミカサに似てたからよ、顔がな。殺さないように手加減してた。その甘さで仲間が血を流してんだ!!まったく下らねーよな!!」


「いいぞー!!久しぶりに踊れそうだ!!来い!伊丹ユウ!ミカサが愛した男よ!」


身構えるシュラ、この場に獣が二匹。どちらかが食いつき食らい尽くす…もう加減なんていらない!!


「最終忠告だ!行くぞコラッ!」


ぺしっ


又兵衛…の姿のミカサがいつの間にか隣へ。頭を叩かれた。ミカサにはないこの優しいぺしっな。

いつかもこれで戻って来れたよな。


「安い罠、挑発に乗るなんて…幼い子どもじゃないんですから。許せないことだってあります。私だって過去にもっと笑えないこと、人前では言えないようなこと散々してきました。でもね、貴方に負けて悟りました。間違っていたと、その貴方が過去の私のように間違った道を歩まないでください。貴方が私の正しい道なんです」


「………」


「邪魔するな」


「シュラ姉様がこうなったのも私の罪、額の傷は確かに私が付けたものそれだけじゃなく胸の傷も幼かった私を庇って…後ろめたい気持ちを隠すため冷たく当たるしか方法を知らなかったあわれな私に代わってどうか…」


「邪魔するなミカサ!!どれほど奪えば気がすむんだよお前はー!!」


「助けてやってください。どうかユウのような他人を救うため自分を犠牲にできるような心の持ち主の貴方にどうか…!」


「ミカサ…」


「ちっ…」


シュラが動いた。後ろに回られた。張り付けにされた女性たち、そのなかには 何人かオークの子どもを孕まされた女性が数人…その一人の前に立つと大きく張ったお腹を殴り付けた。


「ッ!てめえ!!」


「違う違う違う違う…ミカサはそんなこと言わないんだよー!!」


「うぐっ!」


「ひぃぃぃぃ…!」


流産した、オークだ。持ち上げた、すると体に吸い込まれた。俺にはわかる、聖人の遺骸…位置としては消化器官…胃だ。聖人の胃、体が水のようになり

オークが食われた。そのくせ口から噛み砕く音が聞こえた。ミカサの顔、姉が人でなくなったんだ。こうなるよな。俺も血の気が退いてきた。


「おいしくない、オイシクナイ」


おい、聖人の遺骸なんかじゃねーぞこれは…魔力が変質した。俺がベルセルク化して魔力が変わるように…


「あっこれならどうかな?殺る気、でない?」


また消えた。目の前から。振り向いたらそこにリヴァを抱えたシュラ。相変わらず顔は笑っている。


「はむっ…♪」


「あっ」


何かを崩された。音をたてて壊された。でも良いような気がした。


「食べていいよね~ミカサァァァァァ!?」


「やめて姉様!!」


ぷち…


「殺戮の狂人…」


「ユウ!!ダメ!!やめてー!!」


「ウオオオオオオオオ!!ベルセルク!!」


せめて一撃で…そう、何事もなかったように終わってくれ…

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