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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
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地獄の幕開け、萌えよ猫耳!!

ふぉぉぉぉぉ!!鼻が!!目が~!!

顔面押さえて地面を転がり回る俺、真上から聞こえるミルティーの高笑いが頭にこだまし響き合う。


「ホッホッホッ♪いいわ~もう救いのナウシカアは側にいないからやりたい放題よね~」


そう、この女はこんな女だった。大胆エルフちゃんよ、心配するならビンタなんてすべきじゃないんだと思うんだ。又兵衛だって事故だとわかって訴えない方針なんですよ。これは過剰防衛なのではないでしょうか?以上です裁判長。


「ざまぁみろ!!少しは腕に自信があるからって…」


ギロリ…


「ひぃっ!!」


リヴァの一睨みで蛇に睨まれた蛙のごとくぷるぷると震え始めた。これは俺でも泣くぞ。


「くっ…嘗めるなよ!!伊達に冒険者してなかったわ

ボケが!!人を散々バカにしくさりおって!!」


涙目で立ち上がる!男の中の男だろ、涙ぐましい努力を感じられるな。決して反撃はせず…セクハラは封印したからな、リヴァよ頼むからおとなしくしておくれ(涙)


「こんのクソババアー!」


バキッ!メシャ!メリメリメリ…


まず顔面に食い込むパンチ、膝の皿を蹴飛ばされるー、馬に俺を潰させプチっといかなかったものの地面に吸い込まれた。見えないがリヴァと大胆エルフちゃんおよび脅されたネリアと又兵衛が掘ってくれているようです。この間もミルティーの高笑いが聞こえてくるのです。呪いか?


俺の言葉なんぞしょせん誰も信じはしない。ここですばらしい「他人を信じて傷つく方をとる」なんてこと言ってると120%傷つくのだから。しかも普通のノーマルタイプの人間なら馬に踏まれるなんて致命傷だぞ。こうなれば人を信じるのは控えたほうがよろしいのでは。


そう、歩くこと数日…まだ国境は抜けない…そろそろ俺の血管プッチンプリンしますよ、大胆エルフちゃんもこれには頭を悩ませていた。あの領地で起こった入れば二度と出れない状態におちいったと見られる…おい!大胆エルフちゃん、ナビゲートしてよ迷子だろ?魔法でぐるぐる回ってるなんて嘘だ!


「……この渓谷が地図でのここなので、あれ?でも大きさが違うような」


「ちょっと!確りしてよ!地図見てこっちで間違いないんでしょ!!」


「他国の地図は読めん」


ごっちゃごちゃに話が混ざり合う。俺は又兵衛の後ろで先に向かったぺローとユニファーさんの無事に向かったかが気がかりでならない。


道はますます人も通らぬ獣道へと成り果てた。険しい山道を登る、森をずんずん進むと切り裂かれたようにできた地面の裂け目から迷宮が現れた。霧でおおわれて全貌はわからない。


「……ここが違う国か?」


なんか一歩でも入るとトラブルに巻き込まれる気がするんですけどー!いやいや、恐れることなんてない!こんなにも頼もしい女性陣がいるので問題ないし。案ずるより、産むが易し。飛んで火に入る夏の虫なのです。


「大地の裂け目…伝説の霧に包まれた迷宮…」


「へー…無視しよ」


「冒険者として行くてしょ!?だってグランドクレパス…大地の裂け目と言えば財宝の眠る迷宮があるよのよ!?」


金に目が眩むミルティーと涎を拭くネリア…着いてこんでもいいのに…てか来るな。


「何にせよ急ぐようもないし…素通りしましょ」


「ですな」


「帰りにでも寄ればいいじゃないですか」


説得も時間の問題、またガールズトークが始まったので無関係のリヴァを連れ霧の森を散策してみる。

野性動物がちらほら見える、魔物の反応はソナーで探知しているので心配には及ばない。


「…火でも起こすか。リヴァ、そこの枯れ木でいい小さく分けてくれ。太陽が遮られるとどうも肌寒いから」


「ちょうどいい、まだ暑いくらい」


「そっか、海育ちだから寒さに強いのか、はて困ったな。マントだけだと寒いな…」


う~我慢だー!!あー早く会議終わらねーかな…こんなことしてる時間こそ無駄なのだよ…


ピクン…


「一瞬なにか跳ねかえっ…た…」


「え?」


リヴァの耳には風の音しか聞こえなかったのだろう俺もソナーの跳ね返りは魔力を微量に含んだ風かと思った。この迷宮付近では魔力が強いのでそれこそバグでも起きたのかと思う。でもその考えは一瞬で否定される。吹き飛ぶ体、立ち上がるも声が出ないぞ?喉を切られた。


「がっ…ぐぞ!!」


「ユウ!!」


「来るな!!」


目の前で吹き飛ぶリヴァ、俺とは比べ物にはならないほど飛んでいく。リヴァが大地の裂け目へと落ちていく。あの高さだ、人間化しているリヴァの命なんてあるはずがない。喉を切られた俺には仲間にその危機を知らせることなんてできない。走って伝えるしかなかった。そう判断して再び立ち上がるのにそう時間はとらなかった。はずだった。


「うっ嘘だろ」


走る目線の先、自分の片足が転がっていた、痛みが後になってやってきた。早い、なんてものじゃない時間を止められてる気分だ。理解がワンテンポ遅れてしまう。気づいたときには勝負が終わっていた。

アッサリと体から力が抜け崩れ落ちる。血を流しすぎたことで出血多量、力が入らない。指を動かすことは辛うじてできた。リヴァは掴めなかったがミルティー含むネリア、大胆エルフちゃんを捕捉。座標を持ってるぺローとユニファーさんのもとへ瞬間移動させる。


「ごほっ!!」


超過分の魔力は命を削る、虫の息へと変わる。でも報せなけば間違いなくこの敵の素早さだ。気づいたときにはもう遅い…皆は殺されていたベルセルク化するほどの魔力はもうない。怪我を治す術はない。


「ひゅー…ひゅー…瞬間移動させるには距離が離れてたからさ…ユニファーさん達とは…ゆっくり追い付くつもりが…がはっ…魔力は足りなかったからさでもこれで…お前と二人きりだな…ミカサ…!!」


ソナーより速く動ける奴なんてミカサしか知らないからな…チラッと猫耳が見えた気がした。


「そうか、お前が…な。なーに、嫌がらせのつもりだったがなるほど、一筋縄ではいかんか。惚れた相手か、ミカサが選びそうな男だ」


黒髪ロング、猫耳まで黒くミカサと違いとしてより布地の少ない桜色の着物、大きく魅せた胸元、貫かれたような大きな傷痕が生々しくある。額から頬にかけて縦に傷があるのもまた違う、ミカサにそっくりだが別人のようだ。


「何者だ…なんで、襲う?はぁはぁ…」


息も絶え絶えでまともに会話すらままならない中必死に殺気で威嚇する。グラムを抜けないし、寝返りだけはどうにかできた。動けるが止めを刺されるのは時間の問題だった。


「昔からミカサは大っ~嫌いなのだ。名前なんて聞きたくもない。アオイ家の…勇者の血か…あいつのせいで私は!!」


ザクッ!!


「うぐっ…」


「全て揃って色濃くミカサだけに現れた!!この力も遺骸で得たものに過ぎん!!なにもせず勇者と同じような力をアイツは!!アイツは!!」


殺さない程度って感じか、俺が即死しなかったのでイラつきをぶつける人形と化した。何度も刃を突き立てそのたび脳に激痛が伝えられ赤い水溜まりが広がる。霧の森に血生臭い匂いを撒き散らした。


「こんなものか、天下のミカサを破った冒険者が!!こんな実力か!?こんなものでミカサに勝ったのか!?致命傷でも魔法で反撃もせず仲間を逃がすその甘さ!!ミカサも気持ち悪いことをほざいたのもお前に感化されてか!!」


「……」


「もういい…その首、ミカサの前にぶら下げればどんな表情をするのだろうな!!」


もう駄目だと思ったその瞬間、野生の感と言うやつかあの瞬間移動する前にその場にいなかったやつがいた。降り下ろされた刀を頼りない忍者刀で受け流す。髪は黒髪、右手に忍者刀左手に削り出した木刀を握りしめ斬撃を流す。決して又兵衛が弱い訳じゃない。でも勝負は見えてる。相手が段違いの強さだ勝てるはずがない。受け流せたのも偶然だろう。


「外野か…一匹野放しにしてたか」


「聖ニコラウスの両目…攻撃は見えている…」


聖ニコラウスの両目!?俺の左腕のか!?又兵衛も遺骸を埋め込んでいるのか!?


「なるほど、剣も筋も悪くないでもこちらが圧倒しているとわかってないのか?剣技、獣人の体、それに加え遺骸。勝てる道理は一つもないが?それにその両目…」


敵が刀を軽く振る、それを弾くがやっとで攻撃できずにいた。又兵衛の顔に苦悶が浮かぶ。


「見えても体がついていってはおらん…だからほらそこ」


又兵衛の腿がパックリと割けた、鮮血が噴き出すも顔色一つ変えず真っ直ぐ間据える。俺はまだ体が動けないでいた。敵はまだお遊びだが本気を出されれば…


「見えても体が反応できん。しょせん鍛えても人間の体、獣人に勝てるはずなし」


押されてる…だが決して諦めない、俺なら逃げ回りながら戦うが又兵衛は違った。敵に背中は見せず視線も外さない。勇気があるなら、俺が!腕を!!


又兵衛が攻撃に転じる、敵の素早さに対応して臨機応変に対処反撃を繰り返す。明らか変わった、劇的に動きが。左腕で確実に急所を攻め、敵もいよいよ又兵衛の攻撃が当たり始めた。俺が投げた遺骸は確かに又兵衛と融合した。


「ここまで動きが変わるか、こちらも全体集めたいところだな。だが飽きたぞ」


ピンッ!


「ウオオオオオオオオオ!?」


デコピン、ただの。それは空気を弾き、木刀も忍者刀も砕け散り又兵衛が浮いた。俺と変わらぬ身長、170近くあったが飛んだ。吹き飛ばされた衝撃で後頭部を打ち付けたのかだらんと力なく倒れた。


「又兵衛~!?」


敵だったこともあった、けど確信した。根は悪人なんかではない、俺達を騙してるなんてありえない。

俺を殺すならこれはチャンスだったはずだ。競合すればいい、敵と利害が一致してるのだから、だが又兵衛は俺を守った、だから戦う!!


「殺すつもりだったが…まだねずみがいたか…」


刀を地面に突き刺す、両肩に赤い染みが。撃ち抜かれている。それをまじまじと観察している。水…長高圧の水の弾丸、リヴァだ!!


「なかなかの腕だ。ここにきて楽しくなってきた。少しばかり遊んでやろう」


なぜか喜んでいる、傷口を見て次にこちらを見据える…どこか奥底がみえない底無しの強さ、ミカサがこいつ以上の強さだってんだから嘘だろと思う。ミカサもそうとうな化け物だったが…これなら七竜神相手に戦うほうが勝機があるぞ!!


「それにしてもだいぶ痛め付けたはずが…致命傷の傷も完治している…なるほど、聖人の遺骸抜きでその回復力、お前勇者だな」


「……殺戮の凶刃」


「ベルセルク化か、悪いが勇者の能力もある程度調べは付いてる。我が姉妹、勇者の血統だからな文献も残されていた」


「ベルセルク!!」


この土地…魔力は帯びている、それを左腕で吸収して魔力を得ていたが…自分よりまず相手、全快じゃないが又兵衛に死なれては困るからな。


「うおっ寒気が…」


「行くぞコラッ!」


両腕が使えないはず、対人戦闘術でも負ける気はしなかった。それを力で抑え込まれた!!ベルセルク化している俺をだ!!腕力はアイサさん以上だ!蛇が巻き付くように身動きがとれなくなる。


「さて、勇者殿。アオイ家の鉄則は強さだ。どんな手を尽くしてもミカサには勝てん、それならミカサより優れているとどうやって示すか」


「墓場で答えを出しな!!」


「期待の答えではないな、お前が私と交わることだよ、ミカサを破った冒険者として名が知れているお前とミカサには及ばないが私もそれなりに強いと自負している。その二人の力を受け継ぐ子だ。ミカサより強いに決まっている。これではれてアオイ家に一目おかれる存在となる…」


ぐっ…脱け出そうとすれば余計に空いた隙間を埋めるように締め付けてくる…いっ意識が!!朦朧としてきたぞ…


「おまけに勇者ときたのではミカサにはますますやれないな。事は急いだほうがいい。どうやっても天下のミカサと勇者の血だ。家としてはそちらを組み合わせるはずだ。最強の兵器を作るためにな…」


「もしそうなれば家督を継ぐのはミカサ、全てを手にするのはミカサだ!!それだけは許さん!!」


へへっ…幻覚が見えてきやがる…どこで失敗しちまったかな…ガールズトークに混ざっとくべきだったか?へへ…


「私から全てを奪っておいて…手にするのはミカサではない!!勇者も手に入れた…くく…ミカサすら敵わなかった冒険者伊丹ユウだ!それだけでも私はミカサより強い!!」


ミカサの姉か…殺さずに脱け出すには…傷つけずに脱け出すには…脱け出すには…どうすればいいんだろう…?


「さぁ私の中に来い…存分に抱け!!くっくっ…うまい具合に興奮してきたぞ勇者を手に入れて体が発情したか!?まだまだ予定は先だったがちょうどいい天も勇者との子を身籠れと言ってるのだなはっはっ!!惚れた男を盗られる気分はどうなんだろうなミカサ!!教えてやる、お前は今から全てを失うのだ!!」


けっ…ほざきやがって…天は俺も見捨ててなかったようだぞ…

半裸になり乱れるミカサ、にしか見えない。その体俺の目には毒だな。体を液体化させていく、ここは又兵衛を連れて逃げるべきだ…リヴァは生きてるとはいえ一人にしておけない…


「……ほう、まだ逃げる力が残ってたか…ん?」


ガッシリとミカサの姉の手を握る又兵衛、血だらけで吹けば倒れそうな体で立っている。後ろには点々と歩いた後に血が残されていた。


「もういい立つな…早く逃げてろよ!!」


ぐっ…


「かっはっ…!」


「ぐぎぎぎぎ…」


右手で俺を左手で又兵衛を締め上げる。肩を撃ち抜かれてまだこれほどまで力が出るのか!?と言うかこの手…魔力を吸収して…


「赤子とは…愛し合う二人の愛の結晶だ!」


「はぁ?」


「愛なきまぐわいに意味などあるか!!」


瀕死で俺のために向かってきた。又兵衛、俺も魔力を吸収され液体化が進まない。このままじゃあ本当に…


「力だ…力を得る!!そのための女の体だ!それを今使う!!今使わずしていつミカサに勝つんだ!!」


メキメキ


「うぐっ…」


「懐妊祝いだ!伊丹ユウ、目の前で無惨に首が千切れる仲間の死を拝ませてやる!!私を怒らせるとどうなるか女!身をもって知れ!」


「やめろっていってんだろが!!」


「あっが…あっあ…」


又兵衛から血の気が退いていく、口から泡を噴いてもう危険な状態であることは明らかだ。


「なにしてんだ!さっさと来いよバカ猫ー!」


一陣の風が吹いた、悪夢のような霧を晴らすため希望の風が静かに撫でるように吹いた。


「…っせーよバカ猫…」


俺も自然と泣いていたのかもしれない。又兵衛はそっと抱き寄せられていた。今は気絶したのか眠っている。今はありがとうしか言葉が見つからない。


「風が懐かしい声を運んできたもので…噂で色々耳にはしていましたが…なにをそこまでネジ曲がったのか…若き侍様、とお呼びすればよいのか…」


「そいつは又兵衛、妹思いの勇敢で優しい姉で名前は後藤又兵衛、そのおかげで殺され…おっと黙っとくか」


ヘラヘラ笑う余裕が出てきた。又兵衛の体を静かに地面に寝かせゆっくりと顔を上げる。藍色の着物に身を包み腰には立派な名刀をぶら下げ容姿端麗な姿にチャームポイント(本人説)の包帯が巻かれた耳を左右に振り細めた視線は敵を捉える。長い絹のような黒髪が遅れてやってきた風に煽られ揺れる。


「後藤又兵衛様、あなたがうんだ数秒間は確かに意味がありました。こうして駆ける時間ができたわけですから…」


「その声…姿…」


俺が瞬間移動をさせる前に跳ね返ってきた情報の中によく知る人物の魔力が含まれていた。俺はシルフに言葉を乗せて放った。


「にしても早かったな、正確な位置なんて報せてなかったし」


「これぞ愛の力…というやつでしょうか?」


小首を傾げる…いや可愛くねーし、お前がやるとキモさ100倍なんですけど。やめてくれ。


「ミーカーサー!!」


「はい、ミカサですけどなにか?」


俺はこいつが…大っ嫌いよ!!

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