表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
81/135

戦闘血潮流に流されて

状況そのままにしてこの異常さな、自分もやりたくないと思いつつもこの作戦に全てを注ぎ込むしかない…覚悟を決めろ自分。上できっと待ってくれているはずさ。大胆エルフちゃんがこんなどろどろスライムの大群を見つければ舟に上がるはず、何の心配もいらない。


「そう思わなければやってられないわな」


頭上にはあのどろどろスライムが一面に埋め尽くしている。どんなやつでも災厄な状況を考えてしまうだろう。頭を振ってそんな考えも払拭させる。人のことよりまず自分の心配、リヴァイアサン(母親)が言ったことだ。俺も今はそれこそ心配するところだ。危険なのはむしろ自分とも言えるから。


「後のことは頼めるか」


「了承の上、ここにいる。無茶はしないでその上こいつらをブッ飛ばして」


「もちろん、そのつもりだ。作戦通りやってみせるさ…ここ一番、本番には強いから」


「そんなものあてにするな、冷静沈着、彼氏くんが今ここにいるのはその賜物だろう?」


へっ、違います。俺は幾度となく死んでいる人間。

いや?およそ人間ともかけ離れている、だからこんな命を賭ける無茶も考え付くのだろう。


「どっちにしろ立ち止まるわけにはいかないんだ。死すら軽いと思わせるほど背負ってるものは軽くない。俺が死んだら誰が背負うんだ!その意気込みですからご心配なく」


俺はリヴァイアサン(娘)に股がっていたが立ち上がると海にできた足場、リヴァイアサンの甲殻を蹴って跳躍すると眼前に迫るどろどろスライムにはやはり生きた心地なんてなにもしない。


リヴァイアサン(母親)は不機嫌そうに俺を見送る言葉としてこう言った。


「お前のその覚悟には自棄を含んでる。いいか?忘れるな。一番悲しいのは人生が終わる彼氏くんじゃない。残された者、これからまた生きていく家の娘だということを肝に命じておけ」


やんわりと釘を刺してきた。それは俺の中でも痛いところに深く突き刺さった。はぁ…安寧すら今の俺にはすぎた宝なのだろう。だから試練がこの身に降りかかる。それは払い除けてもきりがない。


「覚悟決めはしましたが揺らがないとも限らない…だから…」


「そうよママ、間違えても死ぬなんてこと言わないで。きっとやってくれる。信じてる」


リヴァイアサン(母親)は娘の反撃がむしろ嬉しかったのだろう。ドラゴンがドラゴンの頭を撫でる不思議な絵面を突撃前に拝めた。そんな微笑ましい絵面には俺は入り込めない。家族愛、そこも俺には深く理解できない一つだから。


「孤独じゃない、闇の中でも見失わないよう後ろから押してやる」


母親の激励、だったのだろう。蹴った勢いは止めないよう振り返ることもしない。今の二人の顔を創造してみる。ここから出られる解放されることを思い抱き合って喜んでいるだろうか?それとも自分達より頼りない小さな人間に命運を預け不安に実はかられているのではないだろうか、いや、今は俺の作戦と力を信じてくれてるに相違ない。その二人の思いを伝えるように背後から空気の泡が海面へ向かって昇っていく。道しるべだ、闇の中でも見失わないように…背中を押されてる。物理的ではないけらど背中に感触があるんだ。


「行ってきます、今度会うときは太陽の下だ。この暗い海から時間を取り戻す…!!」


指先からゆっくりとどろどろスライムの大群に入っていく。ひんやりとした瞬間に発動させる。俺の体もどろどろスライムのように黒く塗り潰される。ベルセルク化の同化ではない。自分を食べられないものに変換していく。マスクが食べられなかったことから物質は食さず生物のみを食らう。ならばお前らは影を食えるか?食えるものなら食ってみやがれ!!

希望の泡に続き俺の体もスライムの大群の中に静かに飲み込まれた。


ブクブクブクブク…この泡、これで酸素補給も兼ねるんだぜ~














「まだ来ない…」


暗闇の中、なにも見えず気が狂うとか思うだろ。時間がいつもより長く感じるのは今もだがこの目の前にある泡こそが蜘蛛の糸となって平静を保っていられる。リヴァイアサンは頼りになりますな~おっ?

前方…微かに明るく見える…出口かもしれない。水面から顔を出した。


ちゃぷん…


「ふぅ~空気~突破完了」


おっと、東の方角に灯りが…舟には目印も兼ねて俺がランプを積み込んだが…それかな?静かに先行していく。


「あっ…服を着てる…クソッ!クソッ!もう俺は頂きを知る術は残っていないのか!!」


ゆっくり近づく…三角座りして海面を眺める大胆エルフちゃんの姿がそこにはあった。絶えずあーして音を聞き漏らさないようにしてるのだろう。風の音を聞いて耳をピクピクと小刻みに音の方向へ合わせている。潜って大胆エルフちゃんが見つめる先から顔を出す。サプライズのつもりです。心配させてしまったから…とりあえず無事舟の上に逃げていてくれたことからほっと胸を撫で下ろす。


ちゃぽん…


「……」


しばし無言な時間が流れ俺も大胆エルフちゃんからなんらかの言葉を聞きたかったのにお互い黙りこんで気まずくなる。あの…俺が何かしましたっけ?朝におっぱいもみもみしたのももう時効では…


「ごめんなさい…ブクブクブクブク…」


一応謝りながら沈み大胆エルフちゃんの機嫌伺いに目だけは大胆エルフちゃんに合わせる。なんで俺がこんな気分になるんだよ~反省したよもう…


「お疲れさまです」


そう言って手を差し出す…笑顔です。これはもう怒ってないのでしょうか…


「ごめんなさい…」


確認のためもう一度、俺のごめんなさいが無視されて逆に不安になってしまいました。舟から少し遠退きます。


「何を後ろめたいことがあるのか存じませんが怒ってまさんよ?」


再び差し出された手に近づいて掴んだ。よし、引き上げてくれ…ここで信用したのがまずかった。背丈が同じ、でも大胆エルフちゃんがいるのは揺れる舟の上だったことが災いした。引き上げようとする大胆エルフちゃんの力と俺の大胆エルフちゃんを引く力では俺の方に軍配が上がる。大胆エルフちゃんは笑顔崩さずいや…変わらずあの笑顔で俺は舟に上がる、大胆エルフちゃんは海に突っ込むという事態に陥った…上がってこない…なにさこの間は…


「あのー大胆エルフちゃん?」


水面を覗き込む…おっ恐ろしい…何が待ってるのか暗い海がより暗く感じられる。大胆エルフちゃん?いるのー返事してー俺怖くなってきた。どろどろスライムのこともあるしさーねーねーおーい…


ザバァァァッ!


「うおっ!!」


いきなり水面から腕が現れがっちりと俺の胸ぐらを掴む。大胆エルフちゃんで間違いないがなんで?そのまま海に落とされる(涙)どうしてよ(涙)

大胆エルフちゃんは舟の上に無事帰還…そして服を濡らされたことについてお説教…あんまりだー!!


「あの聞いてます?うわっ!?」


これは酷い!!あんまりではないか、助けるために…心配して恐怖と孤独と戦いながら帰ってきたのに…こんな事故で舟の上にも上げてくれずお説教をくらわされた。わざとじゃないのに…その、朝のことだって反省してるし…


「ウィンディーネ!」


大胆エルフちゃんは慌てて舟から飛び出した。ウィンディーネの力で水面に立つと急いで引き上げるも遅かった…俺の体格を持ち上げりるなんて無理だ。

しかし俺の体はみるみるうちに子どもになっていく俺はどうしようと慌てて抱き上げたままどうすればいいかわからなく辺りを仕切りに確認する大胆エルフちゃんの顔を見ていた。いつもより大きく感じられた。


「そっそんな止まらない止まらない!!」


大胆エルフちゃんはパニックに陥った。変化に気づいたのはほんの食べられる数秒前、大胆エルフちゃんはずっと俺を見てたからわかった。目もいいからちょっとした変化にも気づくでも数が多すぎた。いっきに歳を持っていかれた。持ち上げてからも食われた時間に作用されてどんどん若返る。


「そ、そんな止まって止まって!!」


幼稚園児くらいだから何歳だ?どんどん背が縮む。

止まる気配はまだない。本人は食われてる感覚がない。だから見ているか気づいてもらうしかない。不覚、完全に不覚だった。舟や俺の体が影となり奴等は上がってきたのだった…群がって歳をどんどん食っていた。俺の視線が大胆エルフちゃんにいってたからおれ自身は気づいてなかった。だから大胆エルフちゃんに持ち上げられている今の状況は幼い頭の俺の中では何が起こってるのかわからなくなってしまっていた。


「そ、そんな嘘、止まらない!!止まって!!止まってくださいお願いします!!あっあああ…」


「あぶーだだだ?」


ぺちんと手で大胆エルフちゃんに手を伸ばしてみたが何とも小さいて、まるで赤子ではないか。大胆エルフちゃんの顔も視野からはみ出るくらい大きく写っている。絶望した顔するなよと言いたいがまだ未発達なのだ何もかも言葉も言ってるつもりが言葉にならない。


「あぶーあぶー」


ぺちぺちと何度も頬を叩くが撫でられてる程度だろう。放心してます?ゆっくり俺を抱きなから舟にもどった。表情は固まったまま俺を見つめている。


「どうすれば…ああなんてことを」


「だーよぶーぶー」


気にすんなよ俺が気づかなかった俺の落ち度だ。大胆エルフちゃんは悪くないと言いました。あーあ最後の最後で爪が甘かったな~でも心配すんな魔力の量は変わってない。いける!


「ごめんなさいは私の台詞でした…ごめんなさい…またしても…私どうすれば?」


いや赤ん坊の俺に聞くか普通…しゃべらないのに。でも行動はおこせる。俺は寝返り連打で舟から身をのりだし作戦に移るが…いや邪魔すんな!!


「危ない!!」


すぐさま大胆エルフちゃんが飛び出して俺を抱き寄せる…おい、いつもならこんなサービスしないくせに罪滅ぼしのつもりか!?あん!?


「落ちるんですよ!!危ないんです!!」


赤ん坊に叱っても無意味だ。しゃべれないもん。俺は邪魔すんな!!と言いたかったんだと思う。どうしてか急に泣き出した。そんな、気分になった。


「ユウさん?あーよしよし、泣きたいんですか?泣かないで…こっちも泣きそうになりますから…」


いや知るかよこっちは泣きたくて泣いてねーし、大胆エルフちゃんが本当は泣きたいんですとか言われても知らねーし。早くしないと…この時奇跡が、いや必然か。深海にいるリヴァイアサン、海面上の俺の泣き声で察知してくれたらしい。耳いいからな~

本当なら俺は光系統の魔球を発射してそれを合図に発動させる手はずだったが…俺が赤ん坊になるのが

そもそも想定外だったからな。


「なっなにが!?」


揺れる舟、穏やかだった水面は波が荒々しくなり舟も転覆しそうになる。大胆エルフちゃんは俺を離すまいと力強く抱きしめ俺は酸欠となった。泣きそうだ(涙)


「あっれは!?」


水の檻、水球。リヴァイアサンの技だ。これで太陽の光を浴びせるわけだ。空中に浮かぶ水の檻、中にはドス黒いどろどろスライムが蠢いていた。












「長くは持たない。魔力はもうないから朝日まではとても持たない」


それがリヴァイアサンの意見だった。でもそれくらいならなんとかなる。


「後のことは考えずとりあえず集めてくれ、俺も太陽の光を当てられる。逃げられないように集めてくれればなんとかなる」


太陽の光を当てられるが潜られれば意味がない。真夜中に奴等は浮かんでくる。水面近くまでだ。でも朝日が昇ると逃げる。逃げ場を失えば後は俺が決めるぜー!!この繋いでくれた一撃…無駄にはしない!!


「だうだーあ!!(今しかない!!)」


魔力が持つか不安だったがなんせ初めて使うもんだからさーベルセルク化×霊力を上乗せ、俺の体はもとに戻っていく。


「ユウさん!!よかった…戻ってくれてもうこのままなんじゃないかと…」


涙ながらに語り最後まで言えずその場に崩れる。と言ってもその場しのぎに過ぎないんだがな…


「俺は日本人だ」


「え?」


「俺は日本人だ!だから守護してくれている」


「なんのことです?」


これが最初で最後の頼みかは知らないけど…助けてもらいたい。混乱する大胆エルフちゃんを無視しポーチから光輝く液体を取り出す。いやー持っててよかった♪


ごくごくごく…


神格化、ベルセルク化中に霊力を流し込むと完成する勇者に授けられた必殺技というものか、隠してた訳じゃないぞ?でもそんなに乱発していいもんじゃない…これは神の怒りをかう技だ、信仰心がないとさせてももらえない。


魔力が闇ならその逆、神力は神が信仰心の代償として与えられる。それに霊力と呼ばれる力を取り込むことで魔力で発動させるベルセルク化とは逆に神力で発動させる神格化、通称神降ろし。神をこの身に宿す最終奥義…


「礼拝天照大御神降体」


髪も延びトランク一丁だった体が光の衣を纏った女性の姿に変わる。見た目はね、男の娘と解釈してほしい。女性的になるのには理由があり天照大御神は慈愛の象徴である女性だからである。まさか男の俺に降りてきてくれるとは思ってもみなかったが…祈りは確かに届いたようだ。応えてくれた。


「日本人を守護する神、たった一人の俺のために…一回きりだが悔いなんてない思わない」


手をかざすと水球が小さくなり中のどろどろスライムも小さくなってしまった。


ぱしっ


手でおおうと中には半透明のスライムが現れた。


「お帰り、もう迷い込んではだめですよ」


海に帰すと波に乗って流れていった。長い髪を切ると縮み赤子の姿に戻る。どろどろスライムには高密度の魔力で突然変異したものであると推測される。だから清めて帰した。神様は優しいね、天照大御神は太陽の女神だから日の光浴びせて殺すつもりがやはり人間の俺ではかないません。


天照大御神が帰った後に朝日が顔を出した。太陽の女神だなぁ…できれば直してもらいたかったのだが…おおお!?


「戻った!て、なに気絶してるんだよおーい大胆エルフちゃん?起きて起きて」


俺の後ろで大胆エルフちゃんが気を失ってていたので揺する。起きないなー海水を手ですくってかけてみる。おい!


「ぶっ!!ユウさん!?」


「おっす、朝だぞー起きなさい」


「えっえっ…スライムの水球は…」


「あっ…」


気が利いてるというかスライムが生き残ってると知ればなぜ殺さなかったと聞かれるが気絶させて逃がすとは…考えていらっしゃる。


「もういない倒したよ」


「その体の方は…」


上から下まで眺める、元通りの姿だ。誰も不幸せにせず場をおさめる。神様しかできない神の御技。


「おっと忘れてた。取っとかないと」


小瓶、さっき霊力が入ってたが今は空になっているそこへ涙を一滴流した。


「今のは何を?」


「また使えるようにって、この小瓶に涙を一滴入れておくと自然に溜まっていくの中で増えてまた満杯になると使うことを許される。それまで今のは使えない。いつ溜まるともわからないな」


感傷にひたっている場合ではなかった…水面に泡がぼこぼこと沸き立つ。あっ…大胆エルフちゃんまた気絶しないかな…


ザバァァァという音と共に二匹の怪物が姿を現す。

母親の方にいたっては大きすぎてよくわからない。

大丈夫か大胆エルフちゃん…そーと振り返ると瞬き一つせず固まる。まぁそうなるわな。


「グルルル…」


「えっなに!お止めになって!いや~(涙)」


髭が延びてきて巻き付き持ち上げられる。大胆エルフちゃんはそれではっとしてレイピアを抜き放ち救出しようと奮戦する。全くすごいよな立ち向かおうとか思わないよ、逃げ出すよ?


「あ~れ~」


囚われた俺はリヴァイアサン(娘)の額に押し付けられる。痛い!いてててててててて!!くっくいこむ!

鱗が~てか潰れる~


「離してあげなさい、人間の体はそこまで頑丈じゃないのよ?」


「グルルル…」


「おっ…おおゆっくり下ろして」


ゆっくりと下りていき舟の上に下ろしてくれた。


「ありがとう」


「いやいや、今日までこの村の人達を守ってくれてたんだ。こっちがお礼言いたいくらいだ」


「なら言って」


「何を…?」


恐る恐るたずねた…ほとんど答えは知ってるんだけど…たずねられずにはいられない。死刑宣告を待つ俺…


「プロポーズ♪」


恥じらうドラゴンなんて始めてみたけど見たくもないよな。呆気に取られて固まる二人、俺なんて頭が真っ白になった。断ればいいんだけどね、嫌ならばさ…でもここで「すばっとお断りだ」なんて言ってみろよ…八つ裂きにされる様子しかでてこない。


ブー!!


リヴァイアサン(娘)がブレスを発射…あっ打ち水だ♪避けるために海に飛び込むも間に合わなかった…水切りみたいに水面を跳んで墜落した…


「ユウさ~ん!!こっちでーす!!」


リヴァイアサン二頭と大胆エルフちゃん到着…水死体と間違えるほどボロボロで浮いている俺…おい、リヴァイアサン(母親)よ。彼氏とかプロポーズとか教える前に加減を教えとけよ(怒)死ぬぞ!!


「ゴホゴホ…体はまだあるか…」


「なんとか…あります」


なんとか体を回復させると…ふぅ…考える人、さてこの苦境をどう乗りきるか…妥協策はあるはずだ!


人間化したリヴァイアサン(娘)はいきなり熱烈キスを大胆エルフちゃんの前でしてきた…ひぃっ!

そのまま海水を流し込み…口の中海水で満タン。


「はひふんは(なにすんだ)」


リヴァイアサン(娘)を見ると何かを待ってる…検討つくが…大胆エルフちゃんも察している…だが妨害はできない!!母親が威圧するように…若干殺気を出して逃げれない雰囲気を作り出したのだ…


男一匹伊丹ユウ…互いに血をみない解決法を実行する。てかこのことネフトにバレたらどうなるか…考えるだけでも恐ろしい…そこにミカサが重なるとなお恐ろしい…


ぴゅー…


軽く飛んだ俺の打ち水…それはリヴァイアサン(娘)にかかる…そうすると嬉々として俺に抱きつこうと迫ってくる…そうはさせるか!!すかさず大胆エルフちゃんに向き直り残りの海水を吐き出す…ごめんなさいねもう色々と(涙)


「なっなんで!」


「察しなさい…(ゴゴコゴゴ…)先客がいたということですよ…こういうときはどうするか…」


「殺して奪え…!!強さを見せつけろ…です!!」


「「え?」」


殺気がさらに膨れ上がる…二匹の怪物が舌舐めずりしながら覗き込む様は…捕食シーンですか?


「ぎゃーっ!!オールで漕げ!食われるぞ!!」


この時の反応は早かった。息もぴったり合ってた。

巻き込んでどうもスミマセンね大胆エルフちゃん…面目ない…


「余計なことまたしてー!!」


「諦めるかなって…うぎゃー!!ハーレムでもいいじゃない!そのあと離婚すればいいじゃない!」


「結婚を軽く考えるからこうなるんですよ~(涙)相手は本気できますよ~(涙)」


何とか岸についたときにはもうすでに追いつかれる寸前で敵は母親しかまともに歩けず陸ではこちらに分があったので二手に別れて隠れる。


「ここまで来れば…」


「ここまで来ればなんです?」


「でたー!!リヴァイアサン(母親)!!」


「リヴァで決行、この名も娘に譲るつもりですけどね」


岩影に隠れていると覗き込むように岩の上に先回りして潜んでいた。


「少しお話があるだけです、あなたの人間性に見込んで」


「殺さない?ならよし」


正座してその場に直る。てっきりこれから大胆エルフちゃんの公開処刑の餌に使われるとか思っちゃった。


「娘の父親についてです」


「父親?リヴァイアサンの雄ですか?」


首を横に振る。まさか…


「人間です…なれ初めについてお話します…あの子がどうやって生まれたのか…」


それは何百年も前…

初代魔王に使え、勇者に挑まれたときのこと…

















「伝説の怪物か…悪いが通らせてもらう」


二つの船団に分かれ魔界の海を先行中に出くわしたラスボスがリヴァイアサンだった…一つには勇者他もう一つには勇者パーティーの戦士が…


「ほう、貴様が相手か。てっきり勇者と戦えると思ってたが…期待はずれだ」


「もうじきそんな軽口も言えなくなるよ」


確かに強者だった。勝負は拮抗しかし戦士は徐々に押されていった。


バキッ…


「ぐうっ…」


くぐもった声、リヴァイアサンが放った一撃が戦士を直撃、爪に付着した血を舐めとる。


ペロリ…


「クックック…お前の冒険もこれまで…」


「くそっ!!俺は負けん!!」


しかし援護に引き返してきた勇者に打ち負かされ敗走、何とか人間界に逃げ込んだ。


「はっ?父親は?」


「だから戦士」


……頭が痛い…ってこはあれか?初代勇者のパーティーの戦士のやつとの子どもが…おかしいだろ。殺されかけてただけじゃねーかよ!!だから戦士とか言われてもわかるか!


「クックック!!の前だろ?…あれか」


ペロリ…


「そう、戦士の血を舐めたときにどうやら妊娠したようなのだ」


神秘的通り越してキテレツと呼んだらいいのか?気色悪い生態してやがんな、知らず知らず血を舐めて敵の子ども身ごもるとは…


「そのあとは孕んだことに気づかず遊泳しているとなこの地が新緑魔界であることに気づいてだな。傷を癒すため休憩しているとだな」


「新緑魔界っなに?」


「人間界にある魔力が高い土地だ。掘ったら魔石がでてくる土地だ」


あれか、生物を凶暴化させたり大きくなったりする魔力を帯びた石か。


「そこで初めて孕んだことに気づいた。陣痛とともに海底で動けなくなってな…」


その時どろどろスライムが集まって蓋をした。逃げたくても陣痛が始まり動けなくなっていた。どろどろスライムが突然変異起こしたのも魔石が原因だった。でもそのおかげで飲まず食わずでも死なずに生きてこれたらしい。


「あの子を生んだときにはもう抜け出せなくなっていたってわけ」


「おーなるほどな」


「父親が人間だからか、愛着が湧いてな。どうしてもあの闇に人間たちの犠牲を減らすためにこうして深海で生きてきたがそれもこれまでだ」


これからは娘も一人立ちさせ自分はこの海を旅に出ることにしたそうだ。


「世間知らずの娘だがどうか初めてみた人間だ。どうか世話を頼んでも構わないか?」


「えー歩くこともできないよ?それなのに旅に連れていくことは…」


「覚えはいいこだ…よろしく頼む」


手を握られた…そこまで言われたら断れないじゃないか。よし


「わかった。引き受ける、けどなにぶん危険な旅になる…もしものことはがあるかもしれない」


「それくらい覚悟して彼氏くんについていくと言ったんだ。好きにしてくれ」


それだけ言い残して去っていった。そのとき草かげからリヴァイアサン(娘)が号泣しながら這いずり出てくる。聞いていたようだ。


「お前の母親、わかってて話してたな」


「えっぐ…独りぼっち…連れていって?」


捨て猫のようにすがりつく…頼まれて引き受けたからには冒険者として約束は守りますよ。はい。


「そのかわり俺の仲間と仲良くしろよ?大胆エルフちゃんだけじゃなくて他にもいっぱいいるんだ」


「いいよ…えっぐ、我慢する」


何を我慢するのかな?ワガママとか?


「二人っきりにはなれないんでしょ?なら夜の営みができないけど我慢する!!」


「しなくていい、すんな」


母親がとんでもなければ娘もとんでもないな。幼女のくせに刺激が強いな~そのときリヴァが首をひねって一点を見つめる。


「どうした?」


「名前?大胆エルフちゃん?の悲鳴。助けて、呼んでるこの方角…」


「何だと?」


急いで向かおうとするも…


「抱っこ」


まだ満足に動けないリヴァ、抱き上げて何とか走り出す。海にいるときは逆だったのに…


草をかき分け進んでいく。どこまで逃げてたんだよ大胆エルフちゃん!!


「この先、戦闘?硬いのぶつかる音。敵はいっぱいいる。男が数人…後ろに馬と…これは馬車、商人だと思う。大胆エルフちゃん山賊?盗賊?だと思われてる」


なんてこった、戦闘とはね…魔物だから大胆エルフちゃんは襲われてるんだよ!!クソッ!


「この先、林の向こう」


「この先だなっ!!」


飛び出した先で見たのは…運命の巡り合わせとはよく言ったもので…これまたややこしい方にお会いしましたよ。この異世界で初めて知り合った女性!


「お久しぶりだなミルティー!!引いてもらおうか?暴れたりないならお相手しますよ?」


「えっ…?嘘」


あれから一段と強くなったのが見てわかる。大胆エルフちゃんも俺の知り合いだとわかると素直に引いた。


「えっ…ユウで合ってる?」


「その子は?まさかそのダークエルフと!?」


「ダークエルフの子どもに見えるか?こいつは…」


「ユウの彼女だ」


「余計なこと言うな!?」


「彼女!?」


場が余計混乱した。あー疲れる!!






魔力→ベルセルク化(神力に変換可)

神力→?

霊力+神力→天照大御神


神格化 通称神降ろし

信仰の代償として勇者に与えられる力。涙を媒体としてそれを取り込むと祈る神が宿る。神に体を委ねるので術者の勇者はただ操られるだけ。身体にも少なくとも影響がある。勇者の最終必殺技でこれがあるから魔王に全勝していると言われるほど。再度使用するには涙を一滴流し、それが器を満たすまで使用できなくなる。溜まるスピードは信仰心と神様がどこまで術者を気に入るかによる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ