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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
79/135

果ての海から

遥か深い海の底、「それ」は潜んでいるという。

泳いだだけで海を割る不死身の大海魔、海に棲む巨大なるドラゴンの眷属。その名の由来、「渦巻くもの」というヘブライ語からきており旧約聖書に初めてその名が記される。


性格、極めて獰猛かつ冷酷。常に海を徘徊し獲物を狩る。海で起こる天変地異の元凶であり神すらその存在を危惧し、雄を殺して繁殖を防ごうとしたほどである。雌はその時不死性を得たとされる。リヴァイアサンは殺せない、ただその災厄から逃れる術しかないのだ。海に生け贄を投じよ、我ら見えぬ深海から奴は常に此方を睨んでいる。それ、渦が出たぞ贄投げよ。「破滅もたらす獣」オーディン作/11年/

第2巻・882貢より




















一度でいい、

姿を見せておくれ


会いたいのだ


ともにこの美しい海を

泳ぎたいのだ。















遠い記憶を刻み続ける海、その法則を失った海域。





朝の漁が終わり一つまた一つと白い帆をなびかせ小舟が港に戻ってきた。家族を待つ女達が集まってきた。そこに旅の者と思われる男女、聞きたいことがあると声をかけてきた。男は人間、女はダークエルフの変わった夫婦だと皆思った。





「……何者だって?」


「さあ」


「よくわからないんだけどね…」


「“打ち水”のこと聞いてきたよ」


「本当に?」


「いったいどこで…あの二人か…」


雑談をしながら遠退く二人の背中を見送った。








海を一望できる場所を見つけ潮風にあたりながは周辺を眺めていた。リヴァイアサンがいるとは思えない穏やかな海だ。


「収穫なしか、島の人間ってのは手強いな~」


「もう少し聞き込みしてもよかったのでは?」


俺の後ろから大胆エルフちゃんが聞いてくるも俺は首を左右に振った。


「よそ者には厳しいもんさ、でも今度からジャックとターナーの名前も出してみるかな?」


へらへら笑いながらさっきの事を思い返してみた。ずっとあの場にいなくってよかったなと。


「まぁご婦人方は困るよねこういうの」


振り替えって頭の上からブーツの爪先まで大胆エルフちゃんを見て感想づけた。


「どういった意味ですか!?」


「そのままの意味」


大胆エルフちゃんの言ったことを無視し海岸線をまた歩き出した。あのままあそこにいればいい歳したおっさんでも青年であってもボンテージ鎧のナイスバディーなダークエルフがいれば開いた口が塞がらずにヨダレ垂らしてにやけてしまうもんだ。年頃の娘だっていた、彼氏のそんな顔をみたくはないだろう。旦那が浮わついた顔をすれば気分がいい妻はいない。それに自分より歳上でまだ若々しいのはやはり嫉妬の対象で情報が得られなかったことの一因だろう。


「気になるんですが!!そんなに私を見てから笑われたら!!」


「女の嫉妬は怖いね~」


ますます意味がわからなくなったようでもっとしつこく質問がずっと続いてくる。


「そんなのわかるんですか~?」


「つい最近女の子だったもので」


「うっ…」


口ごもらせることに成功した。黙らせるために言ったわけではないが多少なりとも責任を感じてるようだ。ここは気にしてないよと気を効かしていってやるべきなのか?


「お?あれは!!」


「ちょっ!!待ってくださーい!!」


干潟が見えたので近づいてみる。端には岩場があってところどころ潮溜まりが出来ていた。夕方まで時間はあるし夕飯用に食料を調達しようかな。


「大胆エルフちゃん、情報収集頼んでも…なんで嫌そうな顔するんだよ…」


全力で拒否する気だな、その意志が表情にでている…ここから先は分担してさー役割分担大切だよ?


「一人にしたらどこに行くかわかりませんけらね…ずっと見ておかなと…」


ガキ扱いしやがって!!一人にしたら何をしでかすかわからないってことか、そこまでお守りがいる歳に見えますか?リヴァイアサンはこんなとこにはでてこないっての!!海にもまだ潜りませんよ?


「いらん世話だわ!!ほっといてよ!!」


「ダメなものはダメです」


「子ども扱いして!!」


「前例がありますから」


「ムキー!!」


大胆エルフちゃんは手で掘り貝類および蟹を捕獲していく、こっちは岩場で食料探し、最初カメノテがあってこの世界にもあるんだなと感動しながら持っていくと全力で頭叩かれた、いや食えるよ?蟹とか海老とかと同じ仲間で食えたはず、なんで怒られるのさ?


「真面目に探してくださいね」


「いや、食べれるもん…」


「メッ!」


何がメッだよどこまでもガキ扱いしやがって!!しかもね、腰にロープをくくりつけられしかも見える範囲でいることを条件に束縛されながらも岩場のくぼみに片手を突っ込んで目当てのブツを引っ張り出す…

目にもの見せてくれるわ!!


「何か見つけま…し…た?」


言葉が詰まる、そうだろう。満面の笑みで両手にタコを握りとどめに頭にもう一匹タコをのせ向かってくるのだから。外国でタコを食べる国はほとんどない。この国でもないようだ。タコはモンスターと同類にみられるようで大胆エルフちゃんは顔を歪めて逃げる体勢だったがその前に大胆エルフちゃんの顔面目掛けぶん投げた。


「ひいっ!」


忘れたのか?ロープで繋がっているのを…大胆エルフちゃんは後悔しているだろう。落ちてくるタコを

待つ時間が永遠に続くと思ったことだろう。触手を広げて襲いかかるタコ、サイズは俺が知るタコよりだいぶデカイ。ビターンとタコが大胆エルフちゃんの顔に張り付いた。


「むあー!!ほっはー!!(イヤー!!とって!!)」


前は見えていないが声は聞こえているので的確にこっちに向かってやって来る。タコを引き剥がすのも忘れて両手をわなわな振り回し走ってくる。吸盤でガッシリと掴んで張り付くタコ。まじザマア!!


そのから第一次タコ大戦がおこった。仁義なきタコ投げ、一匹なんて生ぬるいものではない。誰もタコなんて食べないからくぼみにうじゃうじゃいたわけで弾はまだまだある。何とかしてタコを剥がした大胆エルフちゃんだが空を覆うほどの数で落ちてくるタコに逃げることもしなかった。


「秘技タコ返し」


海風を運ぶシルフの進路を操りタコを帯びた風は俺に吹き下ろす。触手を広げてやってくる邪神…俺は静かに目をつぶった。


ボトボトボトボト…


嗚呼、ヌルヌルするしなんか痛い(涙)

しばしリヴァイアサンの事なんか忘れて遊んでしまった。タコはこのあと大胆エルフちゃんがドン引く中ヌメリとってぶつ切りにして焼いて食った。うまかった。


夕方になり満ち潮となったので山の方に退避して野宿することになった。今夜は海の幸がわんさかあるが二人とも料理ができないことに気づく…(俺は少しできるが素材が素材だからな…)しかも料理と言っても焼くか煮るかで味付けも塩かソースをぶっかけるだけだったので料理という料理もできず…


「どうします…この貝と蟹」


「残りのタコまだあるよ?」


「タコはもういいです!」


最後までタコを食べるのに抵抗があるようで一口も食べはしない…好き嫌いはダメだぞ?


「うまいよ?」


「ぐっ…」


ぱく…


それこそ未知との遭遇…たかがタコ、されどタコだどうだ?うまかろう…


「できればもう食べたくない…」


「タコさんに謝れ!!」


こんなバカなことはそのへんにして今日わかったことだけでも整理してみた。


「わかったことってありました?そのリヴァイアサンとかいうドラゴンでしたっけ?いるようには思えないのですが…だってドラゴンがいる海に漁なんて行きませんもん普通…」


「伝承の通りならこんな狭いとこいるはずもないんだけどこの海、見た限りだいぶと深いぞ。浅瀬なんてさっきいた干潟くらいで後はソナーでちょこっと調べてみたけど跳ね返るのに時間がかかった」


「調べてたんですか?」


「こそっとね」


海岸線歩きながら魔力を節約しながらできるだけ狭い範囲、あやしい部分を探ったがどれもリヴァイアサンのような巨大生物は確認できなかった。それよりも…


「なんでタコがこんな時期に岩場のくぼみにいたと思う?それもうじゃうじゃ」


大胆エルフちゃんはそれこそタコの生態なんて知らないというツッコミを我慢しできるだけ頭をひねってみた。


「産卵とかじゃないですかね?」


「おう、産卵の時期にタコは浅瀬に集まる。でもね時期じゃないんだなこれが」


「早まったり遅くなったりズレは生じるものでしょう?それにリヴァイアサンはこの海域にはいないんでしょう?もっと別の要因があるのでは?」


「リヴァイアサンは発見できずだがもっと不思議なもん見つけたぞ」


もったいぶる言い方に大胆エルフちゃんはまた意味がわからなくて頭が痛くなる。タコの話はなんだったんだって?


「少なくとも人が消える原因が俺が見つけたそれかもな」


「えっ…タコ?」


急に焼いているタコから離れて警戒する目付きになる。いや、大丈夫だから。タコは関係ないから。


「ここらの海な、深いだろ?その闇に食われるって表現だがそいつが上がってきてるようだな」


「そいつとは?」


腰のポーチをあさり、目当ての物を見つけると大胆エルフちゃんに投げて渡した。この世界では貴重なガラスの小瓶…今はビンはどうでもいいか、中には海水が入っているだけだった。


「……私には海水のようにしか見えませんが」


「見えないわな」


「これが今回の人が消える犯人ですか?」


小瓶を振りながら困惑した表情に変わる。確かに海水がついただけで人が消えるのはおかしな話だ。それも闇とは表現しないだろう。


「それ採取したときはな、真っ黒でドロドロした液体だった」


「採取したとき?」


海岸に落ちていた巨大二枚貝を鍋がわりに小麦粉をといてとれたアサリや蟹をシチュー仕立てにてか味が塩味しかしないがユニファーさんがいてくれたらなー…文句も言えないが…一応今俺は料理してます偉いでしょ?


「ウィンディーネに頼んで深海の水を運んでもらったけど太陽に当たるとみるみる内に透明になった。太陽の光には弱いんだな、すぐ死滅した。普段は光の当たらない深海にいて月のない晩、こいつらが浮いてくるんだろうな」


「な、何のために?」


「繁殖だろう、深海のほうが海流の流れがほとんどなくて殖えてもいかない、新月の日に浮いてきて波に乗ってそうやって生息地を広げているんだろう」


「特性としてこいつに触れたらどんどん若返る、他の生物の歳を食って生きてるようだぜ?消えるってのは受精卵近くまで戻っちまったんだろう。そんな歳を食う魔物なんて初めてだ、種類としてはプランクトン並みに小さく大群でドロドロしていてスライムみたい」


「なぜ歳を食うと?」


「触ったらちょっぴり子どもになった…」


「ええっ!?」


もしダークエルフの大胆エルフちゃんが触ってもそんなに変わらないだろうな…俺より長生きだし…若い時の姿が長いもんな。


「嘘だぼけー!!小瓶にタコ突っ込んだら小さくなったんだよ!太陽浴びて死にかけてたからそんなに小さくならなかったけど」


「なんでタコ…」


「え?触りたくないじゃんこんな得体の知れないドロドロスライム…」


平気でタコを触るくせにかと言いたかったがぐっと我慢する大胆エルフちゃん…


「でもどうやって倒します?とりあえず光を当てれば死滅するようですから」


「だよねーそれが課題だよ~」


俺の顔を見てなんでこんな緊急時なのに笑ってるのか白けた目で見られる…やめて!心が痛い!!


「実は既に解決策があるんですよね?」


「いや、ここで出てくるのがリヴァイアサン」


「なんで!?」


「ほら、打ち水だよ。恐らくだけどねリヴァイアサンには深海魚みたいに発光するんだよ」


あくまで仮説…想像の話なんだけどね。この海にリヴァイアサンはいる。


「どどういう意味ですか?まったく話が読めないのですが…」


タコをかじりながら説明していく。


「話を繋げていくとリヴァイアサンは人間に求婚してたんじゃなくて危険を伝えてたっぽいね。打ち水で」


本来、リヴァイアサンの打ち水と呼ばれる行為はマーキングの一種で雄のリヴァイアサンが雌のリヴァイアサンに海水を吐き「この雌は俺の雌だ」と自己主張するものでありこれに雌が雄に海水を吐き返すとカップル成立となる。ここにいるリヴァイアサンは危機を伝えるためにこれをしたと考えられる。


「人間に新月の夜には海に出るなって言いたいのかな?だから嵐を引き起こして完全に海に入れないようにする。タコが時期でもないのにくぼみにいるのは逃げてきてるんだろう」


「それでそのリヴァイアサンはどこに?」


「深海」


「深海にはそのドロドロスライムがいるのでは?」


「そうだなそのドロドロスライムがリヴァイアサンに蓋する形で出られないんじゃないかな?ソナーで調べたら海の底の地形が平らだった。ありえないだろ?たぶんこのドロドロスライムが光に届かないギリギリのところで広がってるからだと思う」


ドロドロスライムは新月に近づくと夜に海面に近づく、ドロドロスライムが散った隙を見てリヴァイアサンは打ち水を放ってるようだ。


「リヴァイアサンは歳をとらないと?」


「深海魚のように発光してんじゃないのだから?襲われないけど体はデカイしそのドロドロスライムが邪魔で脱け出せないんだな」


一人で作った塩味シチューを平らげる。不味い、もう少し調味料があればな…


「あー!!全部食べたんですか!!」


「うん。まずかった」


「少しくらい残してくれても…」


「ほらタコ」


「いりませんよ!」


リヴァイアサンが玄関に打ち水するのは恐らく耳がいいから陸上の人間の位置はわかるんだろう。歩く人間には放った水が当たるまでタイムラグが発生するからと玄関から確実に人が往き来してるのを向こうはわかってるからそこを狙って放ってるんだ。


「とりまリヴァイアサンの救出だな。人間に危険知らせるくらいだから味方とみていいだろう」


「おー強大な戦力ですね」


海中ではな…


「明日から本格的に潜っていくか…」


「ドロドロスライムはどうするんですか?」


「秘策がある!!」


「秘策?」


まぁそれは明日のお楽しみ。















深海、ドロドロスライムの中から~


「ようやくか!!ようやく気づいたか人間!!よしよし偉いぞ!!早くここから出してくれ~」


巨体を揺るがし地上にいる人間とダークエルフの会話にずっと耳を傾ける。どうやらようやく気づいた人間が現れたようだ。


「それ祝いのブレスだ!」


大きく海水を吸い込んで地上目掛けて吐き出した。

口から放たれ勢いがついた水流は目標目掛けて一直線に飛んでいった。















「またそうやってもったいぶる!!またろくでもないことになる前に教えてください!!」


「人をトラブルメーカーみたいに言いやがって!!乳揉むぞコラー!!」


その時だった。ありえない勢いで飛んできた水流が俺に直撃する。痛い、なんですかこれは(涙)


「う、打ち水…」


ぷるぷる…え?なんだって?

俺は瀕死状態となった。














再び海の中から~


「ふっふっふっ…!褒美に人間よ、お前を我が夫して迎えてやろう…」


後から知ったが余計なお世話だ(怒)

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