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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
いざ!勇者を訪ねて~
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ゾンビと友達と謎と

「なに、数にして数百体さ。誰か勝負を挑む奴はいないか?へっ、短い人生だったなーちくしょうめ」


ジャックがぼやく気持ちもわかる、おびただしい数のゾンビが丘の下から這い上がって来る姿にはこっちも生きた心地がしない。俺は指をパチンと弾くと後ろの神殿が一瞬で爆発するように炎が広がり中にいたゾンビを燃やしていく。


「っ!いきなりなにしやがる!!」


「後ろとられてんだ。燃やしてやっただけよ…どうせこの神殿で祈る人もいなくなった訳だしな」


ジャックが怒る理由はわかる。情はないのかって言いたいんだろ?全員見た顔だ、俺が助けたからな。情があるから俺は一思いに殺してやるんだ!!でもそう言えず沈黙を貫いた。


「ユウくん?辛いなら辛いって言って?」


そのユニファーさんに甘えるわけにはいかない。これから先今よりもっと理不尽なことがあるはずだ。この世界に安息がないように魔王との決着が済むまで俺は…


「辛い?悠長なこといってる場合じゃないんですよユニファーさん!いくら悲しくっても今は生きることを考えてください!!」


「でも辛そうな顔してる…」


「クッ…」


隠しても隠しきれないものってあるもんだ。でも本当に時間がないんだ。ゾンビどもは潰れた声で異様な鳴き声をあげながら丘の上へと進んでくる。ゾンビは知能がないから真っ直ぐ獲物に向かって進んでくる。障害があっても避けようとはせず乗り越えようとしてくる。例え柵が張り巡らされていても奴等は乗り込んでくる。俺は馬二頭とユニに大胆エルフちゃんとユニファーさん、そしてユウナを分担して乗るように言った。


「女だけでも逃げろってか…よしターナー。俺達で囮になるぞ。ユウとか言ったか? 誰かの後ろに乗って逃げるんだ…ここは俺らで食い止める」


「ユウナさん逃げてくださいね…」


ターナーとジャックが丘の下のゾンビに向き直る。

獲物に群がる蟻のようにもう何体いるのか数えられないほど蠢いている。


「感動的なところ悪いけどユウは逃げろって意味で乗せたんじゃないからね?」


「へ?」


気の抜けた返事に周りが大爆笑した。英雄的に今から仲間を逃がすため捨て身でゾンビに果敢に挑もうとしていた二人は一瞬で晒し者となってしまった。


「今から勇気あるレディー達が領地内からゾンビが逃げないように溢れてるゾンビを集める作戦をするところなのだよ。俺達は大声だしてゾンビを一塊に集めとくのが仕事、おわかり?」


ぺローは半分小馬鹿にした態度で話す。俺も逃げてもらいたいと思うけど絶対彼女ら戦うって言うもんな。だから俺が危険の少ない役目を預けたわけだ。


「俺達は集まってくるゾンビからひたすら逃げるだけ、後は集まったゾンビをユニファーさんと大胆エルフちゃんと俺で焼き尽くすから。英雄になれるところすまないが従ってもらうぜ?」


二人は赤面してもじもじしていたが耐えきれなくて「なら早くしよう!」と照れ隠しでさっさと準備に取りかかった。


「ゾンビは脚が鈍いから捕まらないけど逆にゾンビのスピードに合わせてあるていどの間隔をとりながら誘い込んでくれ」


「わかりました!」


大胆エルフちゃんはヴァンパイアとのことがあるからかやけに燃えている。ユニファーさんも無理をしないでと忠告し、ゾンビの大群へ下っていく。


「どこまで信用したらいい?」


「ん?」


ゾンビに囲まれている恐怖感からか不安そうにユウナが声をかけてきた。初めての実戦だからこうなるのも仕方ないかもしれない、それにゾンビとは言え元は人間だから迷うことがあるのかも知れないだって何の罪もない人間を燃やすことだからだ。ゾンビでもそれに加担したことに罪悪感があると言うことだ。俺はもうすでにナウシカアちゃんの村を救うのに虫けらのように盗賊を殺した殺人者だ。今更そうやって悩むこともない。嘘です、時々直接手を下すときは発狂して何とか乗り越えてます!


「大丈夫だって、やつらトロいから」


「そうじゃなくて男衆の問題」


「俺ら?」


少し驚いた。自分より人の心配をしていたとは、たいしたもんだ、これからゾンビの群れに入るのに…


「だって一番危険じゃない?だから」


「気にすんな、ぺローとジャックとターナーは腕は確かだから」


「あれ、ユウは?」


「俺は次元が違うから♪」


誇らしげに胸を張って誇張する。その俺の様子にユウナは思わず笑ってしまう。


「自画自賛?」


「いや、俺は冒険者としては最低ランクだからその皆と同じで名前出すのが恥ずかしいからーとか…」


「わかった、ぷふ…すーはーすーはー…大丈夫そうだからもう行くね!ユニファーさんとラーナさん待たしたらいけないし」


ヒラリと嫌がるユニに股がると最後に俺に向かって一言…


「行ってきます。兄さん♪」


「え?」


固まってしまう。今なんと!?からかっているつもりなのか本気なのかは知らないがそのままユウナは下りていった…ミカサに告白されるくらい衝撃的な威力を持っていた。ダメだ、俺ダメそう。無理、今回の作戦下りるぞ!


「自分達もそろそろ…」


端からターナーがやってきた。位置につく時間になったのを知らせに来てくれたのだろう。


「妹はやらんぞ!」


「え!ええ?」


困惑してなんと言えばわからないようで変な返事となってしまったようで力の抜ける返事だった。


「な、何の事です!?」


「交際は認めん!!血は繋がっていなくともユウナはわが妹…まだ嫁にはやらん!!」


「何の事ですか!?」


まぁ悪ふざけはこの辺にしてそろそろおっ始めようか?下って行った大胆エルフちゃん、ユニファーさんとユウナ。目の前に現れた格好の獲物の前に次々とゾンビ達が集まった。


「道を作ったらお互い出来るだけ離れて領地の周りを走ること!ゾンビを見つけたら中心部の集団に集めてね?無理は必ずしないこと!」


「いきましょう!」


「はい!」


三人は出来るだけ固まってゾンビをギリギリまで引き付ける。ジャックと俺は少し神殿から下ったところで様子を伺う。タイミングが重要だ、俺達で何とか合わせないと…三人がゾンビに向かって突進していった。今!


「ジャック!」


「おうよ!」


石弓から矢が放たれる。俺はそれにシルフの風を合わせ飛ばしていく。やがて矢と風が一つとなり三人を通り越してゾンビ達を吹き飛ばしていく。突破口の出来上がりだ。脆くなったゾンビの体は風を受け大概は一撃死していく。


「いっけー!」


何とか三人はゾンビの群れから脱出したようだ。ゾンビ達は三人の後をゆっくりと追っていく。ここからが俺達の仕事、ゾンビ達をここに釘付けにする。


「おーいゾンビ君達ー遊ぼうよー!」


「こっちに独身の良い男が三人いるぞー!…何だよターナー!!わかったよ、独身の男三人と独身のケットシーがいるぞー!」


ぺローがニヤリと笑いターナーはやれやれと首を横に振った。こっちで俺達が騒ぎまくるとゾンビがこっちを獲物として襲いかかってくる。三人ももう見えなくなっていたのでこれで心配ないだろう。ここから俺達はゾンビを集めとくためにふざけにふざけた。不謹慎と言うだろうか…ごめんなさい。


「ターナーとユウナのモノマネでもするか?」


「モノマネってなに?」


「ようするに真似するだけ、見とけよ」


ジャックとぺローは興味深そうに観察している。ターナーもニコニコとそんな俺達の様子をみていた。

さて、それならターナーのモノマネでもするか。


「えーと、あっユウナ、君は僕にとって女神だ!」


「ぶー!!」


「ぎひゃははははは!!」


声色を真似て何もない空間に向かってプロポーズするように言ってみた。ターナーは吹き出し、ジャックとぺローは爆笑しながら地面を転がる。身体中泥まみれになってもお構い無しに転がり回っている。


「なっなんですかそれは!」


「えーだからモノマネだよ~?」


「似てません!!」


「でもこんなこと言ってたじゃん」


「言ってないですよ!!そこの二人!笑うな!!」


照れながら叫び散らすターナー、そのお陰でゾンビ達は俺達の元へ集まってくる。この調子を繰り返しながら場所を移動してゾンビを集める。三人達もゾンビを連れてくるために時々見えるが俺達が転げ回ってるのを全員不思議そうに眺めていた。


「私よりあの女の方が大事なの!?」


「君が一番だよ~」


「あんたは捨てられたのよ!!わかった!?この雌犬!」


「もうやめてくれ~(涙)」


今度は昼ドラ風にストーリーを作りもしターナーが二股をしたらを題材にコントをして遊ぶ。ターナーがところどころ涙目になるのが面白い。俺がユウナだった時の話を交えながらターナーを遊んでみる。


「ゲラゲラゲラ!」


「えっ…なに?皆どうしたの?」


その時領地を回り終わった皆が帰ってきた。そこでぺローが俺達の劇を見てもらいたいらしくゾンビが集まる中、昼ドラ風ストーリーが始まった。


「誰ですかこの女の人は!?」ユウナ


「なんでノリノリなの!」ターナー


「あら~どうもターナーの「彼女」のラーナと申しますの~初めまして♪」ラーナ


「えっ!彼女!どういうこと!説明して!!」ユウナ


「だから!それどころじゃ…うわ!」ターナー


ゾンビが乱入、このままゾンビと戦闘が始まるも続く…


「彼女ってどういうこと!?私と結婚してくれるって言ったじゃない!?」ユニファーさん


「えっ…私が言うんですか?ふぅ…誰よオバサン、この人のなに?」ラーナ


「私が聞きたいわ!貴女誰!」ユウナ


「彼女よ…ずーとターナーとは結婚を前提で付き合ってますの!!」ユニファー


「ちょっと!どういうこと!」ユウナとラーナ


「だからさーうわっ!危ないから逃げないと!」


そこにジャックが登場


「なにやってるんだ!」ジャック


「あなた!」ラーナ


「ジャック!遊んでる場合じゃないんだぞ!?わかってるのか!」ターナー


「よくもうちの女房に手を出したな!!」ジャック


「違うの!!これは誤解で…」ラーナ


出番がない間俺とぺローは逃げる間ゾンビを倒していく。迫真の演技を邪魔しないようにゾンビを倒していく。


「問答無用!!ぎゃーぎゃー」皆


「俺の出番?」ぺロー


「そうっ!くそ!ゾンビが多い!!」俺


「ターナー!お前を逮捕する!」ぺロー


「話飛び過ぎ!」ユウナ


「早くゾンビを!!」ターナー


よし!お遊びもこれまで…精霊の力見せてやろう…俺が一躍有名になったこの技を…合技!


「ユニファーさん!」


「大丈夫!ユウくんに合わせるから!」


「わかりました!合技・ラブハリケーン!!」


サラマンダーにシルフの風を合わせ巨大な炎の竜巻が形成される。その竜巻に巻き上げられたゾンビ達はサラマンダーの火力に次々と灰となって消え失せた。これでこの領地の住民は跡形もなく消えたわけだ。精霊が消えた後でも灰が雲のように空を覆い、雨のように灰が振って頭や肩に積もった。


「ずいぶん賑やかな火葬だったな…」


「ゾンビとして生きて誰かを食らって生きるよりそうなる前にこうして死ねたんだ」


ぺローが帽子に積もった灰を手で払い落としながら呟いた。


「さて、これからどうする?諸君」


ジャックが気を取り直してと言ったようにそう切り出した。どうやら湿っぽい空気が苦手なやつのようだ。俺は急ぐようがあるとだけ答えた。


「そうか…あつかましいようだがユウの腕を見込んでお願いしようと思ってたことがあるんだ」


「なんだ、言ってみ♪言うだけ言ってみ♪」


俺が目を輝かせながら詰め寄った。説明したのはターナーの方だった。


「僕達の生まれ故郷に…ああ、ここさらそう遠くない海に近い村なんですがそこに大昔の魔王の幹部が眠っていると言う話です」


突拍子のない話に俺は冗談か?と聞くと誰もが信じようともしないが毎年生け贄を要求するようだ。


「どうやって?どんなやつなんだ?」


「それは誰にもわかりません、ただ打ち水と呼ばれる水が玄関にかけられてましてただの海水なんですがその幹部の仕業なんだと…」


要求してくるもどこに連れて行けばいいのかわからないので毎年ある種の災害に巻き込まれる。


「どういった…災害だ?」


「海が荒れその時海に落ちたものは体が消えると言う話で決まってそれは新月の日におこるんです」


「消える?沈んだとかじゃなくて?」


ターナーとジャックは目をつむり額に汗を浮かべながら重い口を開いた。


「間違いないです…この目で見ました…闇にのまれたようだった。人がです、闇にのまれて消える。打ち水はその数日前に起こる、だから僕達の村では連れ去られたとも言われているんです」


「んで俺にどうしろと?」


「原因の解明…打ち水が起こったとの依頼がでてましてその調査依頼です…自分達は幹部とかの伝承は信じてませんがこのまだとまた被害者がでるかもしれません…」


「なるほど、わかった」


「ユウ!?」


ぺローから抗議の声が…しょうがないじゃん、困ってる人がいるって言ってるんだ…行かないと…それに魔王幹部だと?そいつが人間界から魔界に逃げられでもしたら…止めないと!!


「ことは重大…皆は俺に位置がわかるこの魔方陣が書いた紙を持っててくれ、これを目印にテレポートで合流する…」


「俺は行かない」


「頼んでねーし」


ぺローが悩んでいるようにそう言った。別に自分一人で行くつもりだったし…


「泳げないからな」


「いや、だから聞いてねーし」


「でも一人で行くなんて…」


「同行します!」


ラーナが一歩前に出て誇らしげに主張し始めた。


「何があってもこのラーナがお守りしますのでユニファーさん!ぺロー!ご心配なく!」


そして自分の胸をどんと力強く叩いた。おお、揺れてる。


「お願いできますか!?」


「君たちもこれから報告とかで迷惑かけるからさ、その恩返しという意味でも」


「ありがとうございます!」


「それとユウナのことですが、お願いできますか?こっちは急ぐ任務があるし、何より危険だから。素人にはこの旅はキツいと思う。だから一緒に連れて行ってください。何かあれば聖都にミカサっつー偏屈野郎のクソ猫に俺の名前を出して預かってもらっても構いません」


「みミカサ様!?」


「うん、知り合いなの」


ミカサの知り合いだと言い出したらミカサに関するありとあらゆる質問が飛んできたがそれどころじゃないので静止させ、聞きたいなら本人から聞けと言ってやった。ミカサがからむ話は基本的NGなのでそこら辺よろしく。


「厄介払いできたね兄さん♪」


「やめて、寒気がする…」


ぞくぞくと背中が気持ち悪い…と言うかミカサの名前を出してしまったことについて後悔している。自分で自分にダメージをおってる。


「それも私のことを思ってのことでしょ?だからいい、許す。それより告白しないでいーのユニファーさんに」


「死亡フラグは立て続ける」


「そっ、ならもう行くね!元気でね兄さん♪」


元気よく別れを言うと俺の半身…愛しの冥府の魔魂はターナーとジャックに連れられ聖都を目指して旅立って行った。すると遠くからジャックの声が聞こえてきた。


「言い忘れてたことがあった!」


「なんだー?」


こっちも大きな声で返事をする。もうゴマ粒のように小さく見えるほど離れていたのでどんな表情なのかもわからなかった。


「これも伝承なんだがその幹部、リヴァイアサンって言うらしいぜ~まぁなんでも気を付けろよー」


「何だって!?」


俺の声ももう届かないほど遠くに行ってしまっていた。俺はわなわな震えながらその場に項垂れた…


「どうされました!?そのリヴァイアサンとかに覚えが?」


俺を支えてくれる大胆エルフちゃん、一度受けてしまったからどうしようもないんだが…


「また波乱な予感がする…」


アースガルズの伝記に記されてた魔物…まさかこの世界にいたとは…


「打ち水…打ち水か…そりゃな…リヴァイアサンの求婚だよ?」


「えー!?」


それが行われたと言うことは…それより毎年ってことは繁殖してるのか?でもその村に一ヶ所だけ打ち水が起こるんだろ?なら雌のリヴァイアサンが一匹ってことだな…


「最大の謎は新月の数日前に起こる、そして海に落ちた者は闇にのまれるか…」


リヴァイアサンの生態は少し勉強してあるから知ってるが…初めて聞いたな…


「一度も成功しない求婚…打ち水は新月の数日前に起こる…そして闇にのまれる…」


「ユウ…やめとけよ~なんか嫌な匂いしかしないぞリヴァイアサンってなんだよ…」


「確かに今回は色んなものがからんでそうどな」


そう、リヴァイアサンのプロポーズが邪魔されてるとか…それが新月の日におこる?タイミングをずらせない理由がリヴァイアサンにはあるのか…


「それもリヴァイアサンに会えばわかるか…」



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