俺の頭が初めて飛んだ日
「ニャー!ニャー!ニャー!」
ニーナが言葉になってない奇声で俺の周りをクルクルと弧をえがく半ばパニックになっているのだろうか。ぺローとミカサに限っては俺が死ぬなんてことはよくあることで(どうしてそうなった?)瞬間驚きはしたもののすぐに感動の再会風な王道シーンな
涙のハグでぺローがへばりつきミカサはホッとため息を1つしいつものミカサに戻った。
「まだお迎えは来なかったかユウ!」
「魔法で仮死状態になって呪いをやり過ごして時間差で魂が体に戻るように仕掛けといたんだ」
それにしても貧血でくらくらする…神殺しの骨矢とはまた厄介なもんだな。次からは避けることに専念するか…それじゃあ弾く手筈とかも考えたり…
「ニャー!」
ニーナが逃げ去る…通路をドタドタと足音たてて逃げていった…まったく化け物扱いか!!
「王女様の容態はどうだ?無事なはずだが…」
「それについては問題ない、まだ面会は出来てないんだけど話ではもう心配ないって」
「ならいい、あーあ出発が遅れちゃったな…急がないと敵さんも待ってくれないようだし?」
暗殺者を送り込むなんて本格的に攻めてきやがったな…これも幹部連中の独断か?魔王がスパイを送り込むまでは想像できる。でも殺しにかかってくるとはな…もう待てないのか?血気盛んな奴等を止められないほど切迫してるのか…
「そのことなんだが心配いらなそうだぞ?」
「はぁ?」
「お前の…元仲間か。そいつらが使者として勇者の元に向かってる。俺達の出番もなさそうだぜ?」
ナウシカアちゃんか?えっと確かダンとデルドレ、
後知らない女でパーティー組んでたな…でもなんでそのメンツ?
「普通に冒険者の仕事かそれ?」
「王様からの依頼、ランクAAAなら問題ないよ。任せておける」
ホホッ!ランクAAAとな…フザケンナ!!
「……そこまで力入れるか普通」
「道中ややこしいことになってるって。それに勇者がいるのが」
「当てようか?場所が問題じゃなくて何かしら条件を出してきたんだろ。そんでその説得をしてこいって話だろ?」
「ん?知ってたのか?まぁそんなとこなんだけど詳しくは聖騎士長に聞いて。それよりお前に言っとこうと思ってたことが…」
「えっ…なになに?ふむふむ…よくわかっていらっしゃる。その通りだ、でいつ頃になる?ならちょうどだな…」
「なんの話ですか?」
傍観していたミカサが割ってはいる…ふっ…君には全然関係のないことだよ…
「そんな馬の骨どもには任せてられないから勇者の元へは俺らぺローともう一人助っ人と行くことにしたって話。その人が到着するのを待つかって今決めてたんですけどなにか?」
喧嘩腰で睨みつけながら語る…ミカサの冷酷な目と互角に睨み合う…
「ゾンビがいるのはここかニーナ!!」
「ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!ニャー!」
暗殺者が三日前侵入してきたばかり、どう伝わってか俺がゾンビ扱いされとる。血相変えた騎士団が総勢数百人態勢でこの狭い通路を埋めつくし庭園に侵攻してくる。この場の三人は目が点になる…はぁ?
いったい何事と。
俺のことを知らない騎士も割りといたようで剣を持って襲いかかってくる。俺のことを知ってる人は直ぐ様誤解とわかって止めにはいるも興奮状態の騎士の数が多く意味がない。
「城に入ったこと死をもって償え!」
「必ず討ち取れ!生きて聖都から出すな!」
「ちょちょちょ、落ち着いて…」
「死んでも王の元へ行かせるな!!」
人の波が押し寄せるぺローは一目散に木上に陣取り目を光らせる。ミカサもこの空気にあてられてか押し寄せる騎士団を次々と凪ぎ払う。それでも騎士はミカサを避け、俺に到達する。俺、丸腰。勝ち目、ない。オワタ…
「殺戮の凶刃…」
「ベルセルク!!」
俺も迎撃態勢になるもこれが更なる悲劇を招いた。
普通切られて傷が回復する人間なんてない。それがベルセルク化のせいで俺が魔物であることを決定付けられたようだ。誰の言葉も耳に入ってこない。止めに入るものを押し退け次々と剣が槍が突き刺さるも倒れず。俺は殺さないように細心の注意をはらいつつ確実に絞め落とす。その最中も容赦なく突き刺してくる。痛みは感じてるでも死ぬことはない。
「この化け物がー!!」
切りつけるも治る。俺は敵の魔法?騎士が使う不思議な力の前に精霊で応戦するも向こうは殺す気できてるのでどうしても遅れがある。
「不死身かこいつは!?」
「左腕を見ろ!元からないが確かに再生してない!
何か方法があるかもしれん!!」
「それにダメージもあるようだ!」
ベルセルク化で精神手放せば痛みも感じないだろうでもそうすれば確実、全員血祭りになる。痛みがストッパーとなり悪霊を押さえつける。でも体に痛みがあることは隙を多くつくってる。それでだ、対応できなかった。
「ユウ!後ろだ!」
木上から激を飛ばすぺロー、後ろを振り向くとミカサが来てくれてたようで切りかかってきたやつはミカサが吹き飛ばす。ここでまた油断、確認するため俺の後ろを見てたら正面から…
「死ねー!」
ハルバードが飛んで来てたようで首をスッパリ切られ俺の頭が飛んだ…ええええええ!!ちょ!空しか見えんし動けない!?ベルセルク化してなかったら死んでるぞ!?
体の方はその場で液体化する。いったん首も液体化しないと…切られても切られた部位を液体化させるともとに戻る。もし腕が切られても切られた腕は動かない。脳で全てを操ってるからだ。これで細切れにされても再生出来るのだが…
「討ち取っぞー!!」
騎士歓喜、俺の頭を持ち上げ高らかに上げて宣言する。おい、その場に置け。戻れんだろうが!!事情をしる騎士はその場に次々と崩れる。ニーナも口から泡を出して気絶する…ぺローはちょうど見えない。
ミカサ、振り向きゃ俺の首が飛んでたわけでフリーズしている。
「とりゃー!」
ぺローが俺を助けてくれた!叩いてお陰で俺の首はまた宙を舞い庭園のどこかに落下した。
「クソッ!探せー!どこかに首があるはずだ!」
なんとか説得する者、手柄を捜す者。ニーナとミカサだけが取り残され通路から未だに騎士が溢れる。
俺はと言うと液体化してるから心配ないんだけど…とりあえずこんなところで元に戻りたくない。戻ったら裸だからね、と言うわけで城壁をつたうように登っていく…
「何だこれは?」
やべ!バレた?重力に逆らって動く水…怪しいよなみるからに…
「いますぐそこから離れろ!!」
「え?」
遅いわー!!目に覆い被さりベルセルク化の能力、肉体融合で乗っ取る!ギャッハッハッ!これで逃げてやるわーってこれじゃあ化け物とか魔物扱いされても文句言えないよな。正直自分でもひくぞ。どこの悪者だ俺。
「たっ助けてくれ!!」
「ふっふっふっ…動くなよ~仲間がどうなってもって…危ね!」
躊躇なく攻撃してくるんだコイツら!!仕方なく出てくる…出てくるとそう…裸…イヤーん見ないで!!あっちにいって~♪
筋肉があれば上が裸でも多少恥ずかしくないよ、でもね?下は履かないとダメよ!!何か切るものを…ベルセルク化したまま裸の筋肉マンが逃げ回る。それを騎士が必死になって取り囲む…シルフで空を飛ぶかそうすれば逃げれる。そうすれば町中に俺の恥態を去らすはめに!!変質者が空を飛ぶ!!シルフ?おっ隠せるじゃないか!!
「ふっふっふっ…サラマンダー男バージョンだぜ」
精霊初登場を思いだし炎で隠してみる。水は…変態ウィンディーネでレッドゾーンを隠したくないからな。
「ここで暴れたら迷惑だろ!さぁこい!」
そのまま空を飛ぶ、体が発火してる男が空を飛ぶ~
後ろから竜騎士飛んでくるー♪下も馬に乗った騎士がついてくる。そこで聖都から出て周辺の森に降り立つとそこが激戦地に早変わり、また手に負えないと踏んでか各ギルドに通達で俺の討伐隊が編成、派遣されてくる…まさに戦争。まさか聖騎士も正体不明の幹部クラスの敵が単身攻めてきたと部下から報告されたようで本気で潰しに来た…
「おさまったかやっと!」
森林破壊し、戦闘が続いたが聖職者ギルドのプリーストがなんか青い光を振り撒いたらそれを浴びた人は次々と落ち着いている。
「無事に見えますが…」
「首切られたぞ聖騎士長!!」
頭を下げる聖騎士長、あちらこちらから「止めてください!!」「全ての責任は我等に!!」と口々…俺が悪いのか?あのまま大人しく切られてりゃ良かったのか!!
「報告は以上か聖騎士長…」
「全責任は私にあります…」
「よい、儂から言う。騎士の責任は儂の責任、頭を下げるのは儂の役目だ」
「ですが!!」
「それより伊丹殿は?姿が見えんな?」
「植樹をしております…」
「植樹?」
「緑化運動ですか」
「お前も半分以上かかわってるだろうが!!」
「だから手伝ってあげてるんです」
「偉そーに!!首とれたとき何してた?」
「…」
残った森の植生を調べる…ポーチを探りながら種や苗を採取していく。在来種を増やすのもいいけど天界産の便利植物も植えようかな。生態系潰さないものを選んで。
「聞いてます?森の再生活動は聖職者ギルドに任せるべきでしょう?なぜ手を貸すのです?」
「このままじゃ化け物のままだ、人間らしいとこ見せて街の人達を安心させたい」
「大事ですかそこまで他人が」
「自分のことしか考えてない冒険者にはわかんないよ~」
おっ!?ガウジカがいる!木の皮が食われちゃうじゃねぇか…どうすっかな~
「どういう意味です?」
「探求心こそ冒険者に必要、それを他人に活かせるか否かです。自分しか考えてない貴女は絶対わかりはしないだろう」
よし、培養するか。植樹植樹♪種まき種まき♪俺が
こんな趣味があったとは知らなかったろう!
「この調子だと応援も必要ありませんね」
「手伝って無いだろお前!!」
「聖職者ギルドのことです!私にはこういう仕事は好きではありません」
「この森潰した責任がお前にもあるだろ?」
「私達に罪はありません。勝手に騒いだ騎士団に全てやらせればいいのです」
この森を潰した原因の多くは俺とミカサです。飛んでくる矢を弾き前から現れる槍をかわし、降り注ぐ魔法を精霊で受け止め剣を持ち突撃してくる騎士を殴り飛ばす。この狂気にあてられてか、それとも俺の首が飛んだのが余程ショッキングだったのか気が狂って襲いかかるミカサを片手で弾く火炎男…木々が次々なぎ倒され火がつき焦げ臭い匂いを撒き散らすなんて事になり森の生物は我先に逃げて辺りは閑散としているが俺がこうやって植物を植え、逃げた生物を追いたてて元通りにしていく。
「まだやってんの?それより必要な物は買い揃えてある。もう着いたから予定通り待機してるぞ」
ぺローが木陰から急に現れた。気配を感じなかったがミカサはさほど驚きもしない…知ってたな?
「待機?どこへ…」
ミカサを城に飛ばした。瞬間移動の魔方陣を設置していた。液状化しているとき魔方陣を逃げ回りながら仕掛けていた。ほんとは戦闘の最中に発動してミカサと騎士団を城に送り返して助っ人と合流して聖都をずらかるつもりだったが助っ人の到着が遅れたからそれまで魔方陣を仕掛けたこの近辺をうろつく事にした。緑化活動も言い訳だ。
「発動…さて行こうか装備も戻ってきた。旅の準備も出来て助っ人も到着と…今度こそ行くぞ。ナウシカアちゃん達にはちょっとばかり任せてられないからな~♪」
「行こうぜ!早くしないと感づいたミカサが飛んでくんぞー?」
「ならさっさと移動するか」
ぺローにひきつられて新しくできた森の中を進み開けて明るみになっている場所に出た。太陽ももう沈む頃三頭の馬、その一頭は額から角が生えている。ユニコーンだ。ユニが無事連れてきてくれたようだ感謝しないとな。残りの二頭の馬、茶色い馬と黒い馬、その両方に誰か乗っている。二人とも体をスッポリ覆うマントに身を包んでいる。尖った耳が実に特徴的だ。それと綺麗だと言うこと、それが最大の特徴だ。整った顔立ち、誰もが振り返るだろう。これからの旅にここまで心強い味方は今のところ動けるなかではこの人達だ!!
「森がよく似合うこと」
「木々が感謝してる♪貴方に伝えてって。久しぶりユウくん」
「感謝されるなんて…批難の間違いじゃないかな」
近づくと懐かしい顔ぶれだ。もう会うことになるなんて思っても見なかったよ…
「命は貴方に預けてる身、いつでも力になります。
例えどこにいようとも」
「俺達はギルドに属してないからこうして好き勝手に動けるんだけどね。これからの旅、頼りにしてるぜ!」
俺とぺローは評議員から濡れ衣を着せられた時にギルドから除外されたが王様がまた手続きしてくれる手はずだったが事態は一刻を争う。抜け出す、ギルドにまた入るのはその時でいい。ないほうがこれから動きやすいしな。
「もう出発?」
手分けして荷物を三頭に分配して積む。積み終わると日も落ち暗くなっていた。
「ここで夜営してたらミカサが来そうだ…少し走れば村があるはずだから今晩はそこに止まろう」
ぺローを含め三人が頷く。
「改めてよろしく皆、ぺロー」
「ん?何だよ」
「それにお店休んで来てくれたユニさん!!感謝です!!本当に来てくれてた感無量です!!」
馬にすでに乗っていたユニさんはにっこりと優しくほほえみむと
「他ならぬユウくんの頼みだから♪常連さんには悪いけどしばらく休業する!人間界の危機だもの、皆わかってくれるわ!」
「そして最後に大胆エルフちゃん!」
「はぁ…いつになったら本名で読んでくれるの?それに私はダークエルフ!!間違う普通!?」
「ついてきてくれるの~?」
「勿論!お供させてもらいますよ!地獄の底までも決して離れません!!」
「よし!なら行くか!勇者説得の旅へ!」
「「「おー!!」」」
(こそこそ…)
この時俺以外は気づいていたと語る。俺の後しろゆっくりと忍び寄る猫に…早く言って欲しかった…
頭が飛ぶなんてショッキング過ぎる…自分でもこんな勇者みたことない




