苦労話は尽きないわけで
ミカサほどの超が付くほどの有名人ともなれば野次馬があっという間に集まり俺達の後ろが人の海になっている。ミカサを一目見ようと押し合い…それに巻き込まれた悲惨な俺達…どこまで行っても俺達は
被害者だよね。おい、お前にいってんだよ。
(じー…)
しかもずっと見てるんですけどー!こっち見てないでお前のために集まった皆さんに一言なんか言ってみたらどうなんだ?せっかくお前みたいな奴のために集まってるんだ。
(じー…)
「なんだよ…さっきからこっちばっかり見て…俺達の肉見て食べたいな~とか?他人が食べてるのを見ると美味しそうに見えるけどさ…実際、美味しいわけだし。欲しいなら欲しいって素直に言えよ。ほらやるよ」
そう言って半分しか食べてない分厚いステーキ肉を
きょとんとしているミカサの目の前に置くと先にステーキを平らげ、ふんぞり返っているぺローを回収して代金おいて席を立った。
「ありがとうよ、旨かった」
「またいつでもいらしてくださいねー!!」
元気いいなー。ミカサがきてからますますテンション上がってる感じだったな。そりゃもーミカサが無口だから俺が皆さま方から質問攻めにあった。ぺローは食事に集中してるから俺一人で大勢の人のミカサの質問に答えるわけで俺が食べるのが遅かった理由だ。店主のおっさん、俺がミカサの友人には見えないとか言ってた。それはそれで嬉しい♪
「退いてくれ~道開けて~ありがとう」
日本人の特技、混雑を切り抜けるのはなんてことない。ディナメスの修行で極限まで高められた反射神経による緊急回避がこの人混みで遺憾なく発揮され
見事に数分で修羅場となってしまったこの店からの脱出を成功させたのだ。
「おー猫みたい」
「ぺローが言うんなら自信が持てるな」
石畳の通りをさっきの宿まで歩いて帰る。そうしたらまたいつものつけられてるような気配を感じる。
いい加減慣れてきたこのパターン。そのまま宿まで着いてくる気だろ!!俺もぺローもため息をつきながら
振り替えることなく宿まで帰ってきた。
「(楽しかった~?)」
「普通ってところかな」
「(疲れてるの?調子狂うな)」
「今の内に休んどけ、早ければ明日から野宿生活になるかもな」
ユニと二言三言喋ると宿に入った。本当に疲れた…
風呂は…今日はいいかな…寝よう。最近移動ばっかでゆっくり休めてないし、明日からあてのない勇者探しの旅ですか…
ガチャガチャ…
「ふぅーあれ?」
「なんだぺロー前に泊まってた客の忘れ物でもあったか?」
この宿、なんと鍵がついてるのでちゃんと閉まったか確認してぺローの方へ向かった。
「ベッドが二人用のデカイやつだ。ほら」
ふむ、確かに…もしかして俺達が二人いるのに一人部屋にしたから宿の主人が気を効かしてくれたのかな?
「別にいいだろなんでも、さっさと寝て明日は買い物だ。長い旅になるかもしれないからな色々買い込んどこう」
「そゆことならお先に~…」
真っ先にベッドに倒れあっという間に眠ってしまった。ぺローも疲れていたのだろう。
カチャン
「え?」
ドアの鍵が開けられた?壊されたじゃなくて?合鍵を持ってるなら宿の従業員か何かか?用心に越したことはないか、一応魔法で攻撃できる態勢はしておくか。
部屋の明かりは全て消したあとだったから暗くて良く見えないが長身痩せ型…この魔力、もしかして…
「おいミカサ?ミカサなのか?」
暗闇の中にサーチライトのように目が光る。
「はい」
ここは慌てず冷静に…けっして暴れるなよ。隣でぺローが寝てるんだ。騒いだらヤバい。
「お前もこの宿に泊まってたなんてな~部屋間違えてるんじゃないのか?」
我ながらなんて冷静…俺も成長してるってことなのかな?昔だったら扉一枚挟んでディナメスと戦ったのが懐かしい…あの頃の俺は純粋だったな…
しみじみ感傷に浸ってる場合じゃないよなこれは。
完璧な犯罪だよミカサ。
「あってます」
「なら俺が間違えたか…確かに鍵で開いたからこの部屋だと思ったんだけどな…すまない、今ぺロー起こすから。よかった知らない人が来なくて」
「ここは私達の部屋です。あなた方が予約した後私が変更しました」
そんなことだろうと思った!!けど怒らない怒らない他の宿泊客に迷惑だからな…憎き猫耳め…しぶとい…
「……どうしてだ?そんな必要あったのか?」
「寒い夜は皆で寝るのが一番だと…(ゴニョゴニョ)」
ぺローと俺はユニで温もりながら焦らずゆっくり聖都に来たわけでその間ミカサは一人夜を過ごしてたんだ。良いとこ育ちのミカサには野宿はキツかったらしい。だからこんな大胆な方法を使ったのか。
「はぁ…別に今日だけだし…我慢するか。ぺローが寝てるからもう片方はミカサが使いなよ」
頭を掻きながら部屋の端にもたれ、俺はそのまま寝ることにした。あ~首がかくんかくんする~
するとミカサ、部屋から脱け出した。どこ行くんだいったい?こんな時間に…お祭りももう終わり…駄目だ~眠い…
このまま眠りについて数分、直ぐ様起きる事となる廊下から異様な音が聞こえてくるのだ。硬いものが何度も床の木の板にぶつかる音のように思える。
頭に浮かんだのはミカサが余計な事を企み、よからぬ物を運んでくること。
(夜中に運搬サービスでも始めたのか)
ギーガッタン…ギーガッタン…この部屋の近くまで音は迫ってきていた。ソナーで確認する…間違いないミカサだ。音は部屋の前で止まる。直に扉は開かれカーテンを閉めきり、暗闇だった部屋に廊下から
月明かりか、白い光が俺の足下まで延びてくる。そこに人影が重なる。
(帰ってきた、夜行性め。こっちは眠たいんだ)
人影の頭には三角が2つ付いている。それが誰も起きてないか確認するようにあっちへこっちへパタパタと忙しなく動いていた。そして深い眠りに落ちているとわかってミカサは廊下に消え、何かを引きずりながら戻ってきた。
(あれは…木箱か?)
どこから持ってきたのか?裏通りかごみ溜めから持ってきたような小汚ない薄汚れた箱をずるずると引きずり、ぺローがぐーすか寝ているベッドの横に並べて置いた。薄目を開けながらミカサは何をする気なのか?観察することにした。
まずベッドに上に立って今もアホ面で寝ているぺローを事もあろうか蹴り飛ばす。その衝撃で起きるんじゃないかと思われたが、ゴロゴロ転がってベッドの横の汚い木箱に落下した。それでも起きないぺローにミカサは持ち運ぶのが面倒になったのだろう蹴り、箱は床の上を滑り俺がもたれている壁に激突して停止した。横目で確認するとぺローは小刻みに震えながら小さくなっていた。てか箱に汚い文字でぺローて書いてあるのはどういう意味か。
(どうやらお次は俺の番か)
夢うつつの中でも思想を巡らせていた。何をされてしまうんだろう。もし何かあっても魔法使える精神状態じゃない。まずミカサは俺の装備を剥がしにかかった。ベルトのグラムの止め金具を外しミカサは自分の刀をグラムと一緒にベッドの枕の下に押し込んだ。武器はいつでも肌身離さず持っておかないと寝てる間が一番危険だからだ。ポーチを剥がしベルトを剥ぎ取り胸の結び目を器用にほどき、鎧を脱がした。脱がした後もちゃんと畳む、これがミカサクオリティー。
現在の俺、パンツ、シャツ以上。この上なく薄着。
そのまま引きずりベッドに寝かしつける。ふう、もう寝ても大丈夫かな?なにもしない?
ミカサは…着物脱ぎ始める。俺が起きてないと思ってるんだろ。見てないと思ってるだろ。そう、なにも見てない。このことは地獄まで持っていくから。
寝具に着替えたミカサはいそいそとベッドに入り俺に体を寄せた。
(おいミカサ!なんか当たってる!)
もうよい、起きて注意してやる気力もないのだ。今日一日だけは我慢してしんぜよう。明日ぺローがかんかんになって怒るぞ~
「くしゅん」
おや?くしゃみ?俺じゃないよな?ぺローほど距離も空いてなかったのなら…
ミカサが俺の腕を枕に抱きついて眠っている。小癪な…なんとか引き剥がそうとはするものの…
(痛てー痛てて!爪立てんな!!)
爪が食い込み諦めた。もういい、本人が幸せそうな顔してるし?今回だけだ。今回だけだから(涙)
頑張れ俺!!
「グルグルグルグル♪」
のど…鳴らしてます…ミカサが…寝れるわけない!!
俺が眠れたのはもっと先。
ドンドン!!ドンドン!!
…………
ドンドン!!ドンドン!!
勘弁してくれよ。昨日はな拷問にあってたんだよ。
「…ん?」
先に起きたのはぺローだった。寝ぼけた顔で自分の今いる場所を確認する。箱の中、なぜだ。なぜ自分は箱の中にいる。ベッドを見ると何かが動いているドアを開けるよりそっちを見ることにした。
ぺら
めくってみると胸がはだけたミカサとその胸におおい被さるように顔を埋めている変質者。
「あっ…ん♪ユウ…」
「ぐえー、ディナメスがなぜここに…」
そっ…
なにも見なかったようにもとに戻す。壁をよじ登り天井に張り付き、そして…
「KAT・THE・STRIKE…お目覚めの時間だぜ」
ひゅー…ドッカン
「あ~♪」
「ドゲシャー!!」
装備着用…
「何事ですか…」
「騎士団方があなた方を出せと押しかけて!!」
騎士団?騎士団が俺に何のようだ?犯罪なんてした覚えなんてないんだけど…
「どこで嗅ぎ付けて来たんだよ」
「表にユニコーンがいたら盲目意外ならわかる」
おう、さすがぺロー!!どこにいっても目立っちゃうわけだなユニは。とりあえず会ってやるか…
フロアで見るからに騎士な方々が大集合していて俺ちょっとびっくり。俺なんかしたっけ?俺じゃなくてミカサ連れてけよ。
「伊丹ユウさんですね?お迷惑おかけしますがご同行お願いします」
「誰の指示だ?俺なんかしたか?」
「匿名で…としか今は」
「匿名ね…」
ここで名前を証せないような奴のところへ俺は今から連れて行かれるわけか…やだね。
「断る」
「手足を折ってでも連れてこいと言われているんです申し訳ないが動けなくなってもらいます」
その言葉にミカサとぺローが身構えた。ミカサが動いたことで騎士達に動揺が走る。その時外からいつか懐かしい声が聞こえた。
「やめときにゃ~その人に逆らったら塵も残らないにゃーよ」
「親玉登場ってか」
ガシャン、ガシャン
重装な鎧を身に纏い、凛々しく決め顔して騎士達の前にドンと仁王立ち。おいおい冗談だろ。
「旦那さん、へーい!!ニーナだにゃー」




