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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
思いやり物語
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送る言葉

ネフトは激怒した。

俺は狙われ追いかけられる。ドラゴン化したネフトの前では木なんてなんの障害にもならなかった。

なぎ倒し、ただ目標に向かって突進していった。


「いい加減にしないと怒るぞ!」


「いい加減にするのはあなたです!妾を置いてまた

何も言わずに遠くに行ってしまうおつもりなのでしょう!?」


当たってる。当たってるけどこれはやりすぎだ!ここは少し灸をすえてやらんとな、また俺のあやふやな態度でネフトがつけあがり、ワガママを言うのは

火を見るより明らか。どれ、少し脅かしてやるか。


「殺戮の凶刃」


「ベルセルク!」


冥府の魔魂から魔力が溢れ、俺の体をオーラのように魔力が包み込む。俺は鋭い目線でネフトの恐ろしいドラゴンの瞳を射抜くように睨みつけた。何時もと違う俺の不気味さにネフトはオロオロとうろたえ始めたのだ。


「あ、あの…」


「なんでお前がここにいる?」


逆ギレした俺はうろたえたネフトを見逃さず一気に責め立てる。あくまで冷静そうに見せてさらにネフトを混乱させる。


「一国の女王が城を抜け出し、ここにいるのかと言ったんだ答えろ。その邪魔にデカい口は俺の体を引き裂くためにしかついていないのか?答えろ竜の国の王よ、返答せよ沈黙は無いのだ」


急に俺が豹変したことでネフトの頭は今大混乱に陥ったのである。なぜ、怒っているのか?聞き返すことも出来ないほどネフトは追い詰められていた。


「自分の私欲のためであろう?それほど難しい言い回しか?それとも言えぬ理由がそこにあるのか?

こんな女王ではさぞこの国の民は苦労が絶えぬことだろうな、心中お察ししよう」


俺はうやうやしく固まってるベスティに頭を下げたそこには俺の同情がこれでもか!と言うぐらい込められている。


「あのーユウ様?」


「ようやく喋ったかドラゴン、頭の回転が鈍いのか王よ、疑問文を疑問文で返せと教わったのか?それでは話し合いにならんではないか?お前との会話は疲れるな、たいしたものだ、会話だけで相手を疲れさせるとは。尊敬を超えて呆れるぞ」


段々と弱っていくネフト、最初の威勢は最早消え失せただ俺の愚痴に耳を傾けるしかなかった。ベルセルク化における心の汚染はまだ少し大丈夫なようだ。こんなことが言える内はな。


グロリアが到着した頃には人間の姿でえんえん泣いていた。ベスティとセントーレに慰められていたがそれでもダメージは深く、誰の言葉も耳に入らないと言わんばかりに大泣きしていた。とうの俺はユニに頭をかじられ見事成敗されたとさ。















え?俺が悪いの?
















竜の国の外では暗黙の了解として数日間だけ特定の身分の者は出国を禁じられ箱詰め常態となった。

門番もいかに女王や王族貴族、戦士に七竜神だろうが通す訳にもいかなくなった。


「心なんて視点を変えれば何時でも変わる」


「ですか」


「だから闇に堕とされ体を盗られんだろーな」


俺は森の開けたところにある苔の生えた大きな巨石の上で座禅を組んでひたすら心を静かにする。平常心を鍛え、激情に流されず耐える修行。セントーレいわく地味だそうだ。


「日光眩しっ!」


「平常心のへの字もないですな」


俺はほんの小さな羽虫が飛んだだけで喋り出し、足が痺れたと叫ぶ男である。情緒不安定過ぎるんだ。


セントーレには鎧ではなく、薄い服を着てもらっている。セントーレの爆乳で平常心を失うのは自明の理、透ける乳首ですら克服した俺だが変化する環境にいちいち反応してしまう。


「おのれー!セントーレの魔乳ですらなんとか克服したのに煩悩め!いちいち反応しおって!」


「ほう、ですからさっきからこちらを見向きもしないのですね?それは克服ではなく対処ですね」


石の上でも乗った瞬間飽きた俺、セントーレの胸こそ救いだったが悪化しかしてなかったので真面目にすればこの結果。まじ笑える~♪


「待てよ…昔の俺は上手くいってたはず。いつからだ!女が好きになったのは!この世界が美人が多くてエロいのが問題なんだ!」


俺が学校生活してたころなんてなー!リア充死ねとか思ってたのになんだこれは!俺が毒されてしまったではないか!ウブさも消えて変態危ない子になってしまったではないか!なんだこの世界!なんて世界だ!


「ではこんな楽な格好ではなく鎧を着てもよろしいですかユウ殿?」


「うん…もういいよ…くすん(涙)」


そして哀れな顔をして去っていったセントーレを見て俺はカチンときた。なんだそのゴミムシを見るような目は!(そう思い込むことで女嫌いになる作戦だ!)許さん、許さんぞー!その無駄にデカい乳切り取るぞゴラァァァァァァァァァ!!俺は乱心した。

無に帰れ邪心んんんん!そしてお帰り昔の純情な俺ぇぇぇぇ!おのれ!昔のディナメスの嫌いな俺よ!

帰ってこい!学生だった俺が目を覚ます。














  

 

「ユウ殿お待たせしま…し…た?」


さっきとはうって変わり目をつぶり平常な俺。遠くで誰かが何かいってんなーくらいにしか感じない。

謎の壁を作ることに成功。


「これが座禅の成果ですか?さっきより静かになったしか違いが…」


意識をそらすのらりくらりと避けるかのごとく気にしないことにした。赤の他人が何か言ってらー位の勢い。そう、どーでもいい。


「殺戮の凶刃」


「ユウ殿!?それは危険な…」


「ベルセルク!」


技を発動しても魔力が暴れない。魂がざわざわしないのだ。冷静になれる、殺気が出てこない。


「やりましたね!」


ふぅー大きく息を吐き成功を実感する。なぜ今まで出来なかったのか疑問な位容易く出来た。


「当たり前こそ重要か、意識してたけど出来てはいなかったか」


「ユウ殿?聞こえてますか?」


「セントーレ、戦士ならここで宣誓してくれ。魔界を守り、俺の帰りを待つと」


「なにをそんなこと」


「セントーレ、俺は怖い。昔の俺を取り戻したがそれは同時に恐怖心や隠したい過ちも思い出した。殺すことを笑って出来る異常性、魔法やモンスターの非科学的が当たり前にあることをなんとも思わなくなった。頭がおかしくなってんだな」


「なんでそんな事が忘れられたんだろうな…今なんで戦っているかも忘れてたんだ」


不思議と涙が溢れた、セントーレにはあえて背中を向けて話す。俺が今どんな顔して話してるか見られたくなかった。


「帰りたい一心で鍛えた、魔法だって覚えた、精霊だって仲間にした!それは帰るためであってだな…

自分に酔ってたよ、それがいつからか忘れてしまったけど。いつから俺らしさが消えたのか」


帰るために、元の世界に帰るために戦ってたはずだ

何時から見えなくなってたんだ?殺したくない平和が一番と抜かした俺はどこに消えた?


「少しずつこの世界に潰されたんだな…心配してるであろう家族すら忘れてた」


「ユウ殿…」


狂ってるんだ俺は、社会不適合者なんだ異常者なんだ!だけど!


「夢見た世界と違ってた、でもよ。どんなに我が身を犠牲にしても何度気絶してもくたばっても俺は真っ直ぐでいたいよ…へたれでいい、俺は勇気なんてないよ…お茶を濁してへらへら笑ってでもいいから

だから」


「『優者』でいたいよ…ただ優しくいたい本当はなにもできない男なんだ、世界だって変えられない張りぼてのような吹けば飛ぶ軽い男なんだ!でもさ、

まだ…」


「生きててもいいよな?」


「これから頑張るからさ…俺、守れるようになるからさ、生き残っててもいいよな?」


胸の内の弱く脆い部分、嘘でとりつくつろった部分。それをそっと抱き寄せる仲間が俺にはそばに


「らしさなんてなく、全てはユウ殿、出会いはそれぞれ奇妙でした。何色にも染まり何色にも溶ける。

それがユウ殿の魅力で、沢山の女性が引き寄せられるんでしょうね。優しさ強さ面白く弱く可愛くて不気味でバカで気持ち悪くて意味が分からないユウ殿ですが…」


ちょっと悪い意味で心に残る…


「それでもユウ殿の周りにはユウ殿を否定する方は一人もいませんよ。女に弱いのもまたユウ殿の魅力ですかね。こんなにも盗られたくない傍にずっといて欲しいと思う人がいましょうか?」 


「自分が嫌いでも私を含め皆あなたが大好きです。

この世界から消えたら悲しみます、ずっといてほしい。ユウ殿は充分優しいですよ、生きててくださいずっといてくださいユウ殿」


「じゃぁさ、じなないように祈っててくれる?(涙)」


「はい、祈る神はいませんがそれでもユウ殿のご無事を毎日お祈りします。戦士セントーレはユウ殿に

誓います!」


そしてトコトコとやっと終わったかと言うような顔をしてユニがやってきた。


「(行くならさっさと行く!ウジウジすんな!)」


「いざ勇者探しへ!」


ユニ乗ってグラムを引っこ抜く。


「俺も必ず戻る!死なないぞ!」


「死んでもらっては困ります。折角修行したんですから、ドシッとしてください!優者でしょ!」


「そうです!時には優しくない優者です!飛ばせよーユニ!ここから人間界は遠いぞ!」


「ヒヒーン!!」


見送るセントーレ、俺の影は西の空に太陽が沈みやがて見えなくなった。




























ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!


「おのれネフトめ!こんなところにブザーの魔法陣かけてやがったな!追ってがくるー!」


森から外れたときいきなりサイレンが鳴り出したのだ。まさか仕掛けてあったとは…


「逃げろ逃げろ逃げろー!」


ネ、ネフトが来る!!













「やはりユウ様は何も言わず行きましたか」


書斎で珍しく外交の勉強をするネフトの前にユウが

竜の国から出たの連絡が来たのだ。グロリアとフィーリアは恐る恐るネフトの顔色を伺うが、まるで耳に入らないといった風に勉強に励む。


「ふぅ、難しい。少し休憩…旅立つユウ様を引き止めるのは無理でしょう?もう諦めてます。それに…」


「黙って夫の帰りを待つのも妻のつとめ、帰ってきたらきっとお腹を空かしてるでしょうからお料理の勉強もしないと」


「大人になったわね急に」


「お姉様、私も成長するんです」


「ユウ様に叱られたのが効いたのかしら?」


「お姉様!!」


「ふふふ♪ごめんなさい♪」


その時書斎の扉をたたく音がしたのである。


「なんですか?」


「先ほど七竜神の数名がユウ様の後を追って城を出ました!」


「はぁーまたやってくれるわねグロリア?」


「はっ!」


「お願い、夫の邪魔をしないよう言ってあげて。あなたが直接行って、部下を使ってもおそらく止まらないでしょうし、残った七竜神とで連れ戻して」


「承知しました」


この時、思わず三人とも大きなため息が出てしまった。こんなことではユウ様どころではない、とネフトはまた勉強に勤しむ。

次から新章にはいります!

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