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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
思いやり物語
62/135

おちゃらけ男のお帰り

「そんなに先に進まないでくれよ~」


「止めても無駄ですよ?あの糞ジジイの命も今日までと言うことです!!」


男二人はあきれ顔で後を歩く。それにしても広いなこの廊下は…あ、なんかもっと広い空間に出た。


広間をかこむ柱には一つ一つに、彫刻がほどこされている。天井は高く、なんらかの絵が描かれている。


「なんの気配もないけど誰が掃除してるんだろうな、

埃ひとつない」


「ここの空気は常に清浄でカビもはえてないですよ。

積もる埃の元が無いのです」


しかし、いくら歩き回っても目的のお祖父様が現れないのでフィーリアは俺達にここで待ってるように言ってそのままいそうな場所を探しに向かった。


「あー暇だ」


「黙って待ってられないのか?」


「しょうがない、人間だもの」


くだらん雑談を繰り広げているとしょんぼりした顔のフィーリアが戻ってきた。


「どうだった?」


「いませんでした…留守のようです…でも書斎にはなんの手がかりもありませんてした」


そりゃー向こうにも都合ってもんがあるわな、待たせてもらうか?何時もどるか知らないけど。


「弱りました…どうしましょう?」


「そうですね…いつお戻りになるのか」


………まだよく探してない場所があった。なんの意味もないと踏んでいたが…


「戻るぞ!」


「え?どこえ?」


ずんずん歩き進めて着いたのはエッチな門の前、あの湖、気づかなかったがなんか怪しい…ウィンディーネの魔力が感じない水なんぞおかしい…


「あの湖になにか隠れている…」


「ただの湖ではなくて?」


「おう、ただの湖じゃないよ」


俺は鼻を詰まんで湖にダイブした。二人は俺を不思議そうに見つめている。ちょこっと探索するか、真っ暗で底がどれ程あるかわからないけど。


「ん?真下に何かあるな…暗くてよく見えないな…」


ドドドドドドドド!


「およ?」


「きゃあ!シリウスこれは!?」


「じ、地震です!!」


二人は恐怖からかしゃがんでる…そうしておけ。


「おいおい!これはやりすぎだろ!」


「湖が!」


湖から水がふきあがる。そして中心部が、ゆっくりとうねりはじめた。すぐに湖が巨大な渦巻きになってしまった。イヤーン、洗濯される~!!


「シリウス!ユウ様を助けなさい!」


「し、振動で動けない!」


天井の鍾乳石は光始める。深い岩の隙間から、青緑色や赤色、青色などの光が発せられる。まぶしー!目がチカチカするぞ!鍾乳石は巨大な金属片をたくさんぶらさげたようにキラキラした光を放つ。オーロラのようである。そして風鈴のような音が辺りにこだます。


カラーンカランカラーン


洞窟全体が奇妙な光に包まれた。シリウスやフィーリアの顔が色とりどりに映る。色とりどりの光が群れをなし、俺に降り注ぐ。


カラーンカランカラーン


音は風にのってやってくる。俺は渦の中心部に近づいていた。俺はそこで見た。


年老いた立派なドラゴンを。


「ユウ様ー!」


ちゃぽん…


水面に波紋が走り、さっきまでの光の乱舞が嘘のように辺りは暗さと静けさを取り戻す。湖にユウの姿はなく、墨のように黒い水だけが残った。







































暗い…渦に呑まれた男の末路は死だけだろう。でも深海のような静けさの中に音がある。運ばれてくるこの音は心臓の音に似た熱い命の音がした。


「おーい、人間。起きろや」


「けひひ…ドラゴンが見えら…」


「呆けとる場合か、ほれほれ寝るなよ」


倒れてる俺をのぞきこむように見るドラゴンはいささか俺を和ませた。湖の渦に呑まれたことから戻れたことに安心感を覚えた。


「お前が伊丹ユウだろ?まったく、お前の腕を作ろうとして無駄になった時間をどうすべきか…」


「俺に比べて時間は無限に近くあるだろ?俺は動ける限られた時間を全力で生きてるんだ」


ニヤリと笑うドラゴン


「確かにな、みな人間は死に急ぐ。外部からの刺激を求める人間らしい」


「ところでその腕、聖人の遺骸だな?そのようなお宝を目にするとは…これで何度目だ?使っとる奴ははじめてみたがな」


よくご存じで、見ただけでわかるのか。


「さて、本題は頭のブツか?それとも胸のブツか?どちらも難儀なものを抱えとるな」


ドラゴンは全てを見据えたかのように言い当てる。


「胸の方は覚えはないが頭の方でここに来た」


「記憶を押さえとる魔力…解けかかっとるな。お主は相互の記憶に鎖をつけたがどちらも解けかかっとる。

全ては無駄となったな。ほれ!これでどうじゃ?」


………これはヤバイ!止めてくれ!いきなりなんだこの情報量は!い!くそ!痛いぞ!


「どうだ?思い出せたろ?」


「はぁはぁ…とんでもないことしやがったなジジイドラゴン!折角の封印が解けたぞ!」


「それはお前が頼んだこと、ほれサービスじゃ胸の杭も抜いてやるか。これはそもそも身内のバカがしでかしたことだしの…ほい!」


「おお!」


胸のつっかえがとれる。魔力の川が身体中に流れ出るこの感触は…快・感♪


「時に人間よ、その失われた魔法はどこで習った?なかなか危険なことを教える師もいたのだな」


「独学だな師と言えば天使に」


嘘は言ってない、ドラゴンとしばしの対峙が続く。


「天使か…久しく聞かぬ名だ。昔、初代勇者から聞いた名前だなお前、勇者だな?」


バレたか…って今さら隠すほどでもないことだけど。


「試してやるどれどれ程の経験を積んだか見てやる殺気を出してみよ」


いや、いきなり言われても殺す気になんかならないんだけどな…でも格下を追い払うと思って!!


ぞく…!!


「うっ!」


急いでその場からブリンクで離れグラムを抜き構えたなんだこの殺気は!


「なってない」


「え?」


「まだまだ初心者」


なんだと!それはまだオークとかしか倒してないへっぽこだけど初心者とはなにか!


「今自分より大きな殺気を感じただろ?」


「そうだ」


「実際あのとき我は殺気なぞ出しておらん」


そんなはずはない!あんな巨大な殺気!俺の殺気を下記消すレベルだぞ!?


「お前がそこにいもしない敵を作ったのだ。今見た殺気は自分の殺気。我を怖れるがゆえに見えたお前の心だ不細工な部分だな」


俺が敵を作る?


「最初に我と会ったとき恐怖を感じたか?」


「いんや?」


「それが足りてない部分だ。お前はただ殺すだけ、それではいかんぞ」


悟られる。そうだその通りだ。


「包み込むあの感じ、自然のようだった。空と大地…それが目の前にあるようだった」


「そこまで見えとるならもう少しだ」


殺気の正しい使い方?


「お前の中の闇を今解き放った…結果それが不幸を招く。身に付けよ、さもなくば人に戻れなくなるぞ」


闇?冥府の魔魂のことか?


「どうすればいい?」


「己の罪を知れ、罪から目を背けるとそこを闇につけこまれるぞ、闇がとって変わるぞ」


ベルセルク化のことか、それを制御しろということなのだろう。


「お前ならやれる、使命感と自分をよく見とる。でもその自己犠牲の精神も良し、悪しだな。周りまで壊しとるぞ」


「はっ!」


「それから…」


その後ドラゴンと俺のお悩み相談会が続いた。


「最近、自分でもわかるくらい変態になってきてるんです…昔はそう言うのさえ嫌いだったのに…どうしたんでしょうか!これは病気!?」


「心配ない。生物としてそれは当然のこと。お前は死にかけることが多そうだな。そしてモテそう」


「ええ、はい。女性に言い寄られることも多いです…

死にかけたことも…てか二回死にましたし…」


「それでだ!お前が死にかけるから体は子孫を残そうと余計反応するのだ。女を抱け、子供をつくれば治まるぞ。フィーリアをやる。あいつは暴力的で感情的だから我は迷惑しとった。ネフトはやらんぞ?ネフトは我の可愛い可愛い孫だからな」


この後もお悩み相談会は続きお別れの時…


「ありがとうございました!本当になんとお礼を言えばいいか…」


「お前は恩人だ、また何時でも来なさい」


「はい!さようなら!」


そして浮かぶこと数秒間…


「ぶっはー!」


「このハイテンションは…」


「戻ったぞー!!」


「ユウ様ー!」


「小僧ー!」


そのあと三人で輪になって泣いて喜んだ。あー魔王…忘れてたぞごめんね♪これから真面目に架け橋になろうと思います!それよりか…


「フィーリアさん?」


「ぐすん…はい?」


「ちょいと竜の国近郊で下ろしてくれ…やるべきことがあるんだ」


「やるべきこと?」


教えてもらったベルセルク化しても呑まれない心の持ち方を…罪を認める…そこからだ。

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