尽力を尽くします…
えー今からなんと俺の記憶が戻る旅に出ることになるとはね!ドラゴンなんて嫌い?そんなの今は昔の話なのだよ。せいぜい利用させてもらうよ。そして隙をついて逃げるよ。
「今回は七竜神がいないことがそもそも嬉しい♪なんて素敵な1日なんでしょう?」
「おい坊主?本当に記憶がないみたいだな?」
うんうん、おっさんドラゴンの背中に乗って半分氷かけになりながらなんとか笑顔を崩さずに掴まる。崩したくても凍りついてるからずっとこの表情…お願い…もう少し高度下げて…息もできない…
「呑気なことを言ってないで速くこの山脈を抜けますよ!!人間の体ではこの気温に耐えれません!!」
あ~このまま眠ってしまいたい…そしてのどかな公園に飾って。
「おい坊主!いつまで背中にくっついてんだ!」
「凍ってるんですよ!バカシリウス!!」
もうついたのかい?俺ね…もう疲れたよ…天使がね…もうそこまでお迎えに来てたよ。幽体離脱してたよ…気持ちよかった~
「解凍」
「おいコラ!未来に永久保存かコラ!防寒具足りてないだろ!?本当に助ける気ある!?その神経に驚くわ!!」
実際心配停止してたんじゃないかと思う。聞いたら今が中間地点…中間地点?
「まだ俺を凍らせんのか!!流石に無理よ!!低くゆっくり飛べ!!」
シリウスとフィーリア…この二人には人間の体の脆さについて熱く語った。時には自分の体を使い、必死に訴えた。そしたら奴等…笑いながら見てたんだぜ?俺の魂の訴えを!やって惨めになるならやらなければよかった。ああ、ぺローよお元気ですか?こちらは今地獄に来ています(涙)そう言えばお前はこちらの出身だったね。帰りたくないのもうなずける。こっちは人間の来るとこじゃないよ。
「大丈夫だって!骨は拾ってやる」
………もう誰も信じない。
二人して喜んでいる…グロリアとネフトも行きたいとかほざいてたが、俺ほど行きたくないと思っている人間が他にいようか。そう、出発の時点で嫌になってたよ。自宅と職場を行き来するだけの俺は道の途中の道具屋すら外国なのだ。店のおばちゃんとは話が通じず置いてある商品の大半は何かわからず。魔界等と言う未知の世界に来ただけでも俺にとっては初めてのおつかいくらいの大冒険である。
ここで逃げ出しても誰も俺を責めないでしょ?考えてくれ。ドラゴンが親切にしてる時点で絶対にあり得ないので、具体的には何も考えられないか。
俺だって考えられないんだよ!あり得ない!俺のほうがもっとあり得ないんだよっ!なんでダークエルフは俺を拐った!!ミカサでいいじゃないか!ああ~嫌だ!!
「少し休憩したらいっきに目的地まで突っ切ります」
「了解」
「……え?休みなし?」
この漂う死相…そして休みなしの絶望感。俺はもはやドラゴンの背中に乗ると言う「ちょっと英雄みたいでかっこいいんじゃね?」と思うことすら忘れていた。
…情けない。いったい何のためにこんな目に遭ってるんだ?記憶が戻る機会を無くすなら冒険者なんて職業やめちまえ!!!
出発の朝は実にあっさりと終わった。メイドさん含めグロリア、ネフト、七竜神に見送られただけだ。
…なんて冷たいトカゲ達なんだ。あんたら、本当にドラゴンと一緒に人間を旅させる気か?
「バカ野郎!なんでそんな無茶しようと思ったんだ!
今すぐやめろ!」と止めるのが大人としての役割じゃないのかよ!しかもフィーリアは王族だろ!こんなことさんせるんじゃないよ!
昔の俺を取り戻すために必死でみんな大事なことを忘れてしまったんだ。
ヒュゴオオオオオオオオオオオオオオオオ………!!
もう風の音じゃない…一種の凶器だ。ドラゴンの強靭な体ならまだしも掴まるのに必死な俺はどうなる?
ほぼ12時間を空の上で過ごすんだぜ?12時間とはいったいどこまで飛んでいくのか?目的地は少なくとも月より遠いんじゃーないの?
「もうすぐで目的地周辺につきますよ。ユウ様!もうひとふんばりです!」
「…」
このままではあと数分で着いてしまう…あの滝がそうなのか?あそこにお祖父様がいらっしゃるの?合ってるだろ?知ってるでしょ~俺?知ってるけど少なくとも行きたいとは思わないけど(号泣)
あの大きな滝…ドラゴンが侵入者避けにするならちょうどいいだろう…でもな。人間の俺があのアニメでよく見る巨大な滝に突っ込んだらどうなる?死ぬよな、
間違いなく死ぬよな!
このまま上空で木っ端微塵にならないかぎり、ついちまうよ!滝に打たれて死ぬのと木っ端微塵になるのとどっちがいいだろう。悩むなーどっちも楽に死ねそうだけど。まぁ下のジャングルに投げ出されても大蛇が出てきてそのまま丸飲みされるか謎の変な部族に出くわして狩られそうなので木っ端微塵は勘弁して(涙)
「一先ず滝の横…岩との間に隙間が見えますね?あそこの手前に着地してください」
「ドラゴン二頭が着地出来るほど広くないですよ?」
「無理矢理詰めなさい」
「わかりました!」
「オイオイオイオイ!?俺がいるのを忘れないで…ってイヤーーーーーーーー(涙)」
いっきに急降下…無茶くちゃだ!もう存在無視だ!
あっ…段々地面が地かずいてくるよ?……………。
よせ~っ(涙)!!着くな!戻ってくれ!!引き返してくれっ!竜の国まで引き返してくれくれ~(号泣)
ぐおおおおおー!!行きたくない~。記憶は今のままで間に合ってますから人間界に戻してください~!
そんな魂の訴えもとうとう極悪機長の心には届かず、俺は滝の隙間、ネフトとフィーリアのお祖父様の
お家に到着してしまったのである。ああ~、帰りたい
「おかしい…瞬間移動の術式が消えてる…」
「術式が消える要因は?」
「術式は生体リンク魔法…つまり術者が死なない限り消えることはない…」
「あの方が亡くなるとでも?」
ヘイヘイ!人間の姿で会議してる後ろで死にかけてる誰かさんをお忘れじゃないかね?ねーねー、皆さー俺のことさーいなくてもいいの?
「この岩を破壊しては?ドラゴンの腕力にかかれば出来ないこともない」
「あのね、そんなことしたらこの中に空間があるなら中が崩壊するぞ?」
滝の隙間を通って行き止まり、ここからは魔法でビューンと瞬間移動出来るのだがその術式がないと?
「なるほどな、坊主の言う通りだ。ここからフィーリア様の魔法なんとかなりませんかね?」
「それは無理でしょう、外からでは位置を特定されないよう妨害する魔力が発せられてる。お祖父様は死んではおりません。でも会えない状況ではあるようですね生体リンク魔法の繋がりが消える場所にうるようですから」
ゆっくり顔を上げ推測してみる。入る方法をだこの滝はたしか…あの不自然さ…試す価値はある。
「弱りましたね…これでは中に入れません…」
「どうすっかねー八方塞がりだ」
見てみるか、俺は一旦外に出た。確認、そして推測。
俺は一つの仮説をたて実験することきした。
「シリウスさん、ちょっと滝の中に入ってもらえませんか?」
「どういうこった?」
「あの滝、外から見たら上に川はない。つまり地中から流れ出たもの。きっと地下のどこかに繋がってるかもしれない。あれだけ荒々しい滝なら中にえぐられて出来た巨大な空間があるはず、この中で暮らしているなら生活用水にこの川の水を使っているかもしれないとおもうんです。もしかしたら手を加えたとこがあってそこから入れるんじゃないかなーと」
ドラゴンが二頭入れるスペースはこの川幅からして充分にあるしここから入れる。えぐられて出来た空間を利用してそこで暮らしてる可能性も否定できない。何かしらこの川の水を生活に使っているはずさ。
「どれくらい潜れます?」
「4分が限度かな?」
「少し偵察お願いします。何かなければすぐに戻ってください」
「フィーリア様と坊主はここで待っててください」
ドラゴンになったシリウスが鯉のように滝を上って穴の中に消えた。するとすぐさま戻ってくる。
「ビンゴだ。この滝の水が流れる水路の両側に道があった。遠くまで続いてるとこは確認できた」
そしてドラゴンが二頭、滝を上って中の水路に入る。
「ふう、ここからはまっすぐ歩きましょうか」
「おー…唾液がぁ~」
シリウスの口の中にいた俺はもちろん唾液まみれ。ぎたない~やだ~!
天井は天然石をそのまま使っている。俺達が歩く道と両脇の壁はどうやら人の手が加えられている。へこんだ部分はそのまま、突き出た部分は削られ、整えられている。洞窟はずっとまっすぐで真っ暗だ。川に落ちないように注意しないと。水の流れは進むにつれて緩やかになり、小川の流れ程度になった。覗けばドラゴン二頭が入れるスペースだ。随分深いのだろう、そこが見えず真っ黒だ。墨が流れているように。
「ん?なんだありゃ?」
シリウスが止まる。前方に突然石が小山のように積み上がっている。
「なんだろう?これ」
どうやらもとからあった石の建造物が崩れたものだった。床と壁から石柱が伸びていたような後が残っている。そして床には石の欠片が転がっている。それが元は何だったか、俺達が歩いてる道の反対側。ここに何があったのかを想像できた。その原形が残っていたからだ。
「石の格子ですね。もともとは両側の道をふさいであったようですね。いくら頑丈に作られた格子でも数百年たった形跡があります。数百年の激流には耐えられなかったようですね。先に中央部が崩れ、その衝撃が伝わり端も同じように崩れたと見ていいでしょう」
「侵入者避けか?この先が居住区である可能性が出てきたってわけだな?」
「反対側に何があるのか…見えねぇな」
「人間は多少は夜目が見えるがあそこまでは見えんということか?」
「そゆこと~」
「それよりだ、この先水音がする。また滝でもあるのかもな」
「とりあえず進むでしょ?」
ずんずん進むと広い空間に出た。地下の巨大な空間は
大半が闇で見えなかった。なので規模はいまいち掴めていない。中央、目の前は地底湖が広がり、湖を挟んでちょうど向かい側には滝があり、その水が湖に落ちそこからさっきの水路を通じて外へと流れていくようだ。水音はあの滝の音のようだ。
「上見てみろ…鍾乳石だ…あれほどになるまでいったい何千年かかんだ?下手すらゃ億年か…」
確かに巨大だ。降ってきたら刺さるどころかまず潰れるだろうな。
「道があります」
フィーリアが指差した方向に均一な石が敷かれた道が出来ておりさらに先が石段となっていて上は闇で包まれていた。
「行ってみよう。もしかしたらここから先が居住区になってるのかもしれないよ」
石段をひとつひとつ登り最後に巨大な扉が見えたので立ち止まる。扉は…石なのか金属なのか見分けがつかない材料でできていた。始めてみる材質…金属のようにすべすべで冷たい。扉と言うよりこれは壁だな。開くのかよこれ。
「取っ手がないぞ?」
「壊れてるのか?どっかに隠し取っ手みたいなのがあるとか…」
壁に取っ手がない、すべすべで大きな長方形であって
本当に扉か疑う。壁に穴を掘って道をつけてその穴にぴったりな石をはめ込んだように見える。
「魔力を感じる…ただの扉ではないようですね?」
フィーリアが両手をついて何かを確かめるようにそう言った。そこでシリウスが前に出る。
「引けないなら押せばいいんです」
力一杯扉を押しているが扉はびくともしない。そこで三人で押すもやはりびくともしない。俺は人間の中では化け物クラスの怪力だ、シリウスとフィーリアさんもドラゴンだ。その三人の力でも押せないとなるとやはり行き止まりでこれは壁なのか?
「考えられるのは魔法がかかってる。約束語が必要なのかも」
「魔法で閉じられた扉だと?」
「言葉の鍵で開けるタイプですね。でも思い付く言葉なんて…どこかヒントがあるはず」
ん?もしかしてこれは…
「何も書いてませんが…」
「打つ手なし…他の入り口を探すしか…」
大きな丸が二つ…その中に模様がシリウスもフィーリアも長身だだから見えなかったのだろう。俺が屈んだとき見ると現れたのだ絵が彫られている。斜めに傷がはいっており、下から見上げるようにしないと見えない模様か…でもこれはどういう意味だろうか…
とりあえず見たまんまを実演してもらおうかね…
「フィーリアさん、四つん這いで扉を両手を見てくれません?」
不思議な顔をしながら言われた通りするそこで模様が見えたようだ。
「え?これはなに?」
さて書いてある通りなら…
「模様が彫られてる…ドラゴンの上にドラゴンが乗っている…どういう意味なのか?そこまではわからないですが」
するとシリウスもかがみこみ模様を見る。
「これがヒントってことか」
「どういう意味でしょうか?」
「ドラゴンがドラゴンの上に乗っている…そんな必要あるか?俺みたいに飛べないわけじゃあるまいし…」
「そうだな!まるで恋人どうしだな!」
「何がです?」
「だって雄のドラゴンが雌ドラゴンに股がってるなら
話がわかるだろ?」
「?」
「坊主にはまだ早かったかな?「エッチ」な事だからな!!子供にはまだ早い!」
その時ゆっくり扉が消失した。煙のように…
「………え?」
これには言った本人もびっくり。なにが原因で開いたのか…俺もシリウスもぼーぜんと立ち尽くす…ただ一人フィーリアだけはズカズカと入り込む…
「あんのクソジジイが!!ユウ様の前で恥かかせやがって!!八つ裂きにしてやる!!」
ああ(涙)もう帰りたい(涙)




