精神にキタねこれは
「ぺロー!部屋へ戻るぞ!」
「置いてくな~!?」
ドタドタと階段を上がり、部屋に入ってやり過ごす…隣の部屋は今騒々しく人が行き来している。とても迷惑だ。あの女め…何処まで俺を追い詰めるつもりなんだ…これはアイサさん以上にめんどくさい。
「隙を見てディロンの家でお泊まり会したほうが良さげだな…」
「仕事するためにもディロンの家までミカサに見つからず出られるかな?」
「わからん…でも覚悟を決めろ!!」
作戦決行は昼過ぎとなった。隣から物音がしなくなったからである。奴も仕事に出かけたのかな?ゆっくりと扉を開けると…
ギイイイィ…バタン!
何故か隣の扉も同じタイミングで開いたのだ…
偶然とは思えない…そう、奴に監視されているのだ。また理由はわからないがストーキングするつもりなんだ!
「ぺロー?ちょっと行ってこい!」
「ちょ!?待てよ!?うぎゃー!」
嫌がるぺローの首根っこを掴んで部屋の外に出す…餌に食いついたらそれは…
「開けてー!開けてー!」
ぺローの悲痛の叫びが扉越しに聞こえてくる…
すまない、安全確認のためだ…
「うぎゃー!?助けて!開けてー!開けてー!殺される!!いにゃーー!(涙)」
………………止まった……………叫び声が止んだのだ、さっきの騒音が嘘みたいに静寂に包まれる。ぺ、ぺローは?気になってゆっくり扉を開けるとそこには…
「困りますね、ちゃんと面倒を見てもらわないと。扉の前で泣いてましたよ?」
「出たーーーーーーーーーーー(涙)」
そのままずかずかと俺の部屋に入り込み、おもむろに俺のレザー装備を持ち上げそのまま股の部分を顔に押しあて嗅ぎはじめた!
「クンクンクンクン!!」
「イヤーーー!!変態!!なにしてンだテメーはぁ!
臭いフェチだが何だか知らねぇがヤメロやこらーーー!」
もうお婿に行けません(涙)大嫌いな変態女に部屋に入られ大事な仕事着を汚されましたの!
和服着物のような清楚な出で立ちでなんてことを!大和撫子恐るべし!!
「いや、この男の汗の臭いが我慢できませんでした。これはいいものです」
「って何胸にしまいこんでんだ!」
まさかそのままお持ち帰りするつもりだったのか!?お前にやるくらいなら燃やすわボケ!
「鎧ならもっと高性能で高級な物を買ってあげますから古いこれは私が貰います」
「やだよ!お気に入りなんだ!さっさと返せ!
お前には勿体ない宝なんだよ!」
そう言って無理矢理奪い返す…危ない危ない…
なんだよその目は?名残惜しそうにこちらを見つめてくる…少し開いた口は何かを言いたげにモゴモゴしていた。
「行ってきまーす…」
力なく挨拶をし、ディロンの家に向かうことにした。その後で総統轄所に行って依頼を決めてそしてまたディロンの家で作戦会議で解散と言うのがいつもの流れなんだが…
ぺローを叩き起こし、ミカサは俺の部屋から追い出すことには成功したのだがなんだろう…また後ろから気配がするんだ僕ら♪被害妄想が激しいのかな?最近ストレスが溜まることばっかだったからな~♪きっとそうだ♪疲れてるんだきっと♪気にせず気にせずルンルン♪
「……なあ?」
「う…うん、いるよね多分…後ろに」
禍々しい気配が後ろから漂っている…
息を吸って~吐いて~、フォースの暗黒面を感じるわぁ~…
そのままミカサは何をすることもなく俺達は無事にディロンの家には到着した。いや~あれだね、ランキング1位とってから堂々と出来るようになったね!威張れるね!絡まれてたのが嘘みたいだね!
ドアを開けてっと…
「おう!来たか!重大ニュースだ!喜べ!と言ったら良いのか微妙だがな!」
「…」
「どうした二人とも?ボケッとドアの前で固まって…なんで睨むんだよ!俺の顔になんかついてるか?」
ディロンの後ろにあるあれ…あれは人影に見えるのだが…うん、見覚えあるね。ミカサ・アオイによく似てるんだが…背後霊のように立っている。ディロンは気づいてない。
「ディロン?」
たまりかねてぺローが重い口を開く…
「後ろの人さ…」
振り返るディロン…その後俺達3人は大暴れし結果部屋が凄く散らかった。
「なんのようだ!ギルド破りか!」
ディロンのベッドを倒してそこから俺達3人は質問を浴びせる。
「そんなことするほど私は暇ではありません。
こんな風が吹けば崩れ去るギルド、潰す必要性なんてありません」
「ならなんのようだ!」
ディロンの少しほっとした顔よ…うん、俺もほっとした。でも何ゆえギルドに乗り込んできたんだ?
「私をこのギルドに入れてください」
「はあ?」
俺達は固まった。理由が飲み込めないでいた。
こいつ今なんて言った?
「聞こえませんでした?これくらいの声が聞き取れないのですか?ギルド以前に健康面で心配する必要がありそうですね」
「吹けば崩れ去るギルドとかぬかして何言ってやがる!人のギルドばかにして!」
「ばかにはしてませんよ。ただありのままをお伝えしたまでです。言った通りこのギルドが心配なので仕方なくです。仕方なく入ると決めただけでそれ以上の深い意味はありません」
ベッドの影に隠れてギルド会議…
「何企んでんだ?」
「ギルドの汚点をさらして内側から破壊するとか?」
「それはないだろ、復讐のためとはいえ自分の誇りが大事な人だ。そんなことしないだろ」
「どの有名ギルドの誘いも蹴ったミカサ・アオイがなんでほぼ無名のこのギルドに入りたいんだ?おかしいだろ?ユウには負けたとはいえ、
本来なら顔すら見たくないはずだろ?あの気の強いミカサのことなら」
「ディロン…やっぱりやだよ、アイツと同じギルドだなんて…アイツは同族の仇なんだよ…お願いだから追い返してくれ…隣に住んでるだけで嫌なのに耐えられないよ…」
「ぺローの言う通りだ。俺が負かして俺にどれほど嫌がらせしてきたアイツが?きっとこれも俺とぺローを精神的に追い詰めるつもりなんだよ。ここで奴を野放しにしとくのも危ないが一緒にさせておくのはもっと危険だ、何を仕出かすかわからないぞ」
これは当然の結論だな。俺はミカサが嫌い、一緒に仕事なんて耐えられません…と。
「あの~ミカサさん?」
「はいマスター?」
「マ、マスター!?」
「おいディロン!」
見下されてた奴から急に尊敬されるといい気分になるもんである。軽い男だなオイ!
「そうだよ…」
「?」「?」
「僕が…マスターだよ」
「!」「!」
「オイーー!!オイオイ待てー!何でそうなる?
おかしいだろ普通!流されんな!」
「ふつつかものですがよろしくお願いしますマスター♪」
「きゅん♪」
「ときめくなー!アホディロンが!!」
「あのな」
「ミカサが俺のギルドに入れば間違いなくこの街一番のギルドになるぜ(キラン★)」
「(キラン★)じゃないよね?それじゃあ問題が解決してないよね?バカなの?ねぇバカなの?死にたいの?」
「マスターの命令は絶対です!それではミカサの加入と依頼の受注に行きますか♪」
「うおおおおお!神よ~(涙)」
「ぺロー、そんなに悲観すんな…ポジティブに考えようぜ」
「よろしくお願いしますユウ」
さしのべられた手は握らない。
「悪いが俺達はお前を認めない。ぺローの同族を殺し、戦闘中の妨害行為(逆効果)俺にも刀抜いたお前を俺は仲間とは認めない」
「これまでのことは水に流して仲良くしてほしいのですが…これからことを考えれば」
「悪いね、俺はそんなに簡単に割りきれないんだ。それはぺローも同じさ」
「態度でしめせと?それとも結果を残せと?後者なら叶えてみせますが?」
「違う、それがわからないなら一生あんたと俺の道は(接点)は交わらない」
あーイラつく、ディロンを殴ってやりたいが今ミカサに付け入る隙を見せたくない…
ぺローはぐーたれてディロンの背中を乗っている。ディロンはと言うと相変わらず足取り軽やかに元気に歩いてる。その後ろで俺の横を何も言わずただ隣で歩調を合わせてミカサが歩いている。
「なぁ、本当はなんでこのギルドに入りたいんだ?俺にだけ理由を教えてくれよ」
「聞きたいのですか?」
「今後の友好関係を築くためにも俺はあんたの身の内を知っときたい」
「全ては貴方がふさわしいか判断に迷っていることです」
ふさわしい?迷っている?らしくない言葉が飛び出すな~、悪寒が…
「なんのだ?」
「私を束縛出来るのは世界でただ一人夫となる男だけ。私が自由を捧げる男は私の自由を奪える者、すなわち強い男。それを探し、求めた」
お~ぞわぞわする。風邪かな?
「それで?答えが見えない」
「私との勝負を二度も征した男は貴方だけ、偶然ではないのは理解してます。ですが問題が」
「貴方を思えば思うほど胸が苦しくなり、熱くなるのです。体がですね気丈に振る舞おうと清楚に規律に正しく振る舞おうとしても騙せなくなってきたのですこれでは殿方を振り向かせるなどできるはずもなく」
「少しでも知りたくて知ってもらいたくてでもうまく伝えられなくて苦しくて…」
「ハクション!!ズズ…あーごめん聞いてなかった…」
「…」
「つまりです、私を負かした男の身辺調査なのですこれは!はいおしまい!!」
「なーにおこってんだよ…」
あー今日は早く寝たい…
「無事登録も済んだし、これから明日の決起祝いもかねて飲みますか♪」
「俺パス…風邪みたいだから…昨日のこともあるし明日に備えて早く寝るよ」
「ではユウを除いてパーっと…」
「ユウ一人での夜道は危険です私が酒場まで連れていきます」
「主役がいなくてどうすんの~」
「マスター、私の歓迎はまた日を改めてと言うことでいかがでしょうか?」
「う…でもいいけど…」
「それではお先に失礼します。ユウ、しっかりしてください酒場まで歩きますよ」
「うあー…」
そのまま抵抗する気もなくここは大人しくしておくことにした。めんどくさそうだし…
「で、あいつらもう行ったけどお前はいかなくて良いのか?」
「今日はお前の家で泊まる」
「どうした?ミカサが嫌か?」
「いや、男と女…二人きりにさせて一つ屋根の下ですることは一つだろ?」
「ぺロー、気をきかしたわけだ。いいやつだなお前…よし、今夜は俺と飲み明かそうぜ…」
二人仲良さげに一軒の酒場に入った。
「う…」
「ベッドまで運んでくれたのは感謝するが服を抜がせようとするのは止めてくれるか?」
「何を言っている?このまま寝るきか?」
テメーが出ていけば着替えると言っとるんだ。
「もうだめ…すまない、寝る」
「はい、お休みユウ。力にはなれはしないですが隣で励ますことは出来るます。早く万全な貴方を見せてください…」
「ぐおーぐおー」
「…」
半分夢におちかけてるとき。唇に少し感触があった。柔らかく優しい感触が…深く考えると嫌な気分にしかならないので強制的に寝るぞと固く自分に言い聞かせた。




