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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
死地帰えりの男
51/135

久しぶりに暴れます!!

「まだ起きないんだな~?」


ぷにぷに


「ぺロー!!そっとしてやれ…」


「う~ん…暇なんだよな、俺この町に来てからずっとこうして遊んでたからケットシーらしからぬケットシーなんだよ」


「意味がわからん」


「猫は自由きままだろ?ケットシーの中でも俺は活発な部類に入るな。昔はもっとクールでナイスガイなケットシーだったんだぜ」


「その頃のぺロー少し見たいな」


コンコン


「どうぞ~」


「ユウくん目が覚めた?」


「いや、死んだみたいに寝てら…怪我してないのにさっさと起きれよな」


「仕方ないでしょ?心の傷は治りにくいもの…

これはエルフでも人間でも同じでしょ?」


「私は…彼に深い業を背負わせてしまった、精霊術なんて教えなければこうはならなかったかもしれない」


「いや!それは関係ないでしょ!?そもそもこいつは元から精霊術の素質があったみたいな話をしてたからさ!気にすることないって」


「強すぎる力は結果として身を滅ぼす。彼が教え子のようでついつい才能を伸ばそうとしてしまってそれが彼には重荷になってしまった」


「どういうことでしょう?」


「ユウくんに教えを乞われて、最初は記憶を失ったユウくんの哀れさから少しでも生きる希望をもってもらおうと様々な応用術を教えました。人間には出来ないことまでこなしてしまう、天性の才能の持ち主でした」


「ならいいことなんじゃないですか?」


「はい、ユウくんは力に溺れず正しくそれを使おうとしました。けれどユウくんの心は深刻で

脆いものでした。耐えられなかったんです」


「記憶を失っても前を見続けて決して下を向かなかった。お世話になった大切な人を守れなかった時も自責の念にも呑まれなかった。怪我しても死の恐怖にも立ち向かう気高い精神があったと私も思ってました…」


「彼に過去(記憶)は無い、でも未来に彼は生きてきた。そこで無くしたはずの過去に出会ってしまった。気が狂うのも当たり前です。あの時逃げたのも自分を守るためだったんでしょう。彼は葛藤したはずです、それは自分を知っている人が現れて混乱しただけでなく、記憶が

戻ってきて今の人格が消えようとしてる…」


「人が変わっちまうのか?俺達は忘れられる」


「ユウくんは、どういう答えを出すのか…」


「何も変わらねぇよ…」


「ユウ!?」


ごちゃごちゃとくさい台詞を長々と気絶したふりしながら聞くのは恥ずかしいのよ!!ユニさん!

俺はそんなに哀れか!?俺の少年のような無邪気な心を返せ!!


「気分はどうですか?」


「変な気分だ…霧がかかってたのが少し晴れたような~、記憶がなくなって白くなってた部分が少しずつだが思い出せそう…」


あれよ、あれ。ド忘れしちゃったような言いたいけど出てこないあの気持ち。実に歯がゆいのよ、誰か、言ってくれ。


「俺達のこと忘れちゃうんだな!?」


「いや?でもないぞ。俺はそんなね、色々考える人じゃないの。いつも未来なんて考えない行き当たりばったりが俺の人生よ!未来じゃなくて、過去でもないぞ。今に生きてるの」


そんな気難しい話してたけど俺はもっと精神構造単純なのよ。例えばね、目の前に美女がいるとする(巨乳)君ならどうする?俺ならね、

間違いなく揉むよ。でもね、根性ないからしないけど。ほら、とても紳士でしょ?


「あの時逃げたのは?」


「いい質問だぺロー君、彼女を見て俺は記憶が呼び起こされるのを感じた。しかも泣きながら走ってきたときたもんだ!!普通なら逃げるね、全力で。身に覚えの無い女が走ってくるんだもん。俺怖い!トラブル嫌い」


可愛い子ちゃんでもナンパはしない。大概ね向こうから走ってくる時点で怪しいんだよ。俺みたいな冴えないぶ男に泣き顔使う意味がわからんのよね?もしかして新手の売春かい?泣き顔で男を落として高ーいお金とるんだ!てか戦場だよね?しかも殺されそうになった直後にそれだもんね、人も信用出来なくなるよねー!!


「昔の友達じゃないのか?向こう知ってそうだったし…」


「友達だったとしてもあんなに濃いメンバーだとね、逃げ出したくもなるのよ!こっちは記憶戻りそうで葛藤してるのに邪魔すんな!と思うんだ。そのせいであの時頭くそいたかった♪」


「お、おいぺロー…」


「う…うん、ユウの人が変わった…妙にテンション高い…記憶が戻って来てるんだ…」


悪口か…よく聞こえてるぞ…うんうん、テンション高いだって?シバくぞ♪


「ま… ユウくんが起きたしご飯にする?」


「そ、そうするか!な?ぺロー!」


「うんうん、ユウも起きたしな…」


こいつらの予想外の無慈悲な虫を見る目で見られて俺はずっと暗ーいどんよりした空気でご飯を食べた…あれ?どうしてかな…塩が効きすぎてるよ…今日のご飯はしょっぱいな~(涙)


「じゃ、じゃーな!今日の夜緊急依頼の達成祝いがあるから仕事はOFFだ!」


苦笑いしながらディロンが去っていく…今は朝の8時頃…寝るか…色々あって疲れたの、なんで思い出すのにこんなに疲れるの?意味不明~


「お休みぺロー!もう寝るぜ!止めても無駄だぞ!」


「バカめ!!俺も寝るんだい!」


こうして二人仲良く寝てやった。



















コンコンッ!


「………」


コンコンッ!


「………」


コンコンッ!


「……ぺロー…出ろ…」


「知るか…絶対お前の用事だ…」


コンコンッ!


「新聞ならいりませ~ん…」


「新聞ってなんだ……?」


「うるさい……」


コンコンッ!


「うっせぇんだよゴラァ!!徹夜だったんだよ!!知らんのか!?それともあれか?若いんだから日のあるうちに汗かいて仕事せぇってか!近所のババァかテメェは!寝らせろ!!」


「どっちもうるさ~い…」


きっとまた来る…絶対そうだ…


コンコンッ!


ほら来やがった!!


「ドゲシャー!!安眠妨害で訴えてやる!!警察呼ぶぞゴラァーーーー!!ワシャー年寄りでも容赦せんぞ!!」


「どっちもうるさ~い…」


やっと静かになった…俺は勝ったんだ…強大な敵に!!見事勝利した。安眠を勝ち取ったのだ。これで安心寝れる…寝ーよっと♪


窓に長ーい布を張り付けカーテンの代わりにして、部屋を暗闇にして眠った。ぺローは俺の作業してるなか平然と眠りこけやがった。蹴飛ばそうと思ったがもう体力が無い。部屋のろうそくを消し、ベッドに座り込んだ瞬間、俺は何かの気配を強く感じた。


ぷ~ん♪


……いる。


いる、いる!いるいるいる!!

奴だ!!こんな人を不快にさせる羽音は奴しかいない!!奴がこの部屋にいる!こうなれば自分の手で殺すまで寝れない!これは運命に逆らえない悲しい人の体質だと言っても過言ではない。

またろうそくに火をつける。


「オウマイゴット…」


冷製に見てみると、視野の中、必ず何匹か飛んでやがる…


「この蚊め~!虫けらごときが人の安眠を妨害するなど半世紀早いわ!!」


見渡せば蚊、部屋の中には少なくとも三十匹はいるんじゃないか?俺は暴走した。俺はさっきまで記憶が呼び起こされるのを必死で思い出そうとしていたのに、頭割れるかと思ったほどだ

ぞ…そのあと冷ややかな目で見られて、次はトントン攻撃ときたもんだ!!これはまさに名実と言える暴走状態なのだ。


「一匹残らず駆逐してやる!!」


暴れながら俺はそばに脱いであった超古代兵器であるレザーブーツを取りだし、すぐさま戦闘状態に突入した。もはや一人狙いと言う相手を思いやった攻撃ではない。無差別に振り回し、

叩きつけてぶっ潰してきた。……………。


「終わった。あらたな罪のない命を奪ってしまった。いや?安眠妨害だ」


仕方ない、殺らねば睡眠不足でこちらが殺られていたのだ。奴に躊躇してもは命がいくつあっても足りないのだ!!これでやっと安心して眠れる。暴れたせいで埃が舞って咳き込みながらも俺はやっと安眠を手に入れた。…………。


ぷ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん♪


い、いる!まだいる!いるいるいるいる!

なんでだ!これは蚊ではなく新手のモンスターなのか!?よくみりゃ壁に小さな穴が空いてる。

そしてぺローが水を入れてほったらかしにしたぞうちゃんからも…最大の敵は魔物じゃない。

蚊である。


「ぺローめ!!こんちくしょう!何で俺だけが的にまでなってる!?」


いくら超古代兵器をもってしても、敵の物量作戦の前にはいずれ敗れる。くそ…ユニさん、俺に力を貸してください…。


「これで終わったと思うなよ~!!」


ぺローの援護も期待出来ないこの状況。こうなれば窓に貼っていた布の余りにくるまりじっと耐えるしかない。何ヵ所か穴は空いてるものの縛ってなんとかすることができた。こうしてみのむしの様になり、眠りにつこうと頑張ってみる。俺の頭はブレイク寸前、次はうつ病になっちゃうな。


ぷ~~~~~ん♪


音が、蚊の羽音が四方八方から迫り、そしてそれが一瞬たりとも途切れない。みのむし結界の中に入っている俺に奴等は手を出せないということはわかっていても、ぷ~~~~~ん♪と言う音を聞かされ続けるのは拷問だ。


「ん?」


「か……痒い!刺された!?やられたあっ!」


し、痺れる~?蚊に刺されて痺れるだと!?コイツら麻痺毒を持ってやがるのか!!布と体が接触してる部分、その僅かな部位を狙って布越しに毒針を突き刺してきている!


「次々とすいとりやがって~!!ミイラになっちまう!!」


原種の蚊じゃない。どんどん血が抜かれる!!体は痺れて動けない!ぺローは無視!!こうなればあれしか…


「喰らえ!発火!!」


窓の布をサラマンダーの力で発火させる。蚊には温度の高い方に寄っていく習性がある。飛んで火に入る夏の虫ってな、蚊は次々と吸い込まれるように自ら火に飛び込んでいく。


「ふぅ、このみのむし結界以外と暑いな…それにしてもただの蚊じゃなかった…なんだったんだ?蚊に似た魔物でもいるのかな?」


……そして残ったのは、静けさと息苦しさだけであった。


「俺は勝ったのですね(涙)」


俺はついに安眠を勝ち取ったのである。いや、

煙で苦しくて眠れないが、それでもこれは人間の勝利だ。俺は疲れた。


コンコンッ!


「……」


コンコンッ!


「………。」


コンコンッ!


「マアアアアアアアアアアアア!!」


ついに俺は壊れた。


レザーブーツを履いて、てくてくてくてく…


「コンコンコンコンうるさいんだよ!!そこまでして俺をイジメて楽しいか!?楽しんでんだろゴラァ!!眠れる獅子を怒らせたこと、後悔させてやる!!」


扉を開けるとそこには…


「お命を助けて頂きありがとうございました」


照れた顔のまだ幼い顔のサキュバスが…

蚊のことが多い気がする…

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