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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
死地帰えりの男
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やるべきことは

「おっはよー!ユウくんいる~?」


「残念ね、朝早くから起きて街に行ったわよ…

それで?いったいこんな時間から何のよう?」


窓の外には、朝の太陽が昇りつつある。窓と反対側の壁まで、明るい日射しが届いていた。

ユニファーは洗い物をしてる最中にいきなり声が聞こえてきたが誰が来たのかは顔を見なくてもすぐにわかった。


「ぶー!昨日のこと謝りに来たんじゃない、ギルド長なんだしちゃんと謝罪したかったのよ」



「なら伝えとく?」


「いいわよ…こればっかりは直接言わなくちゃいけないことでしょ?また夜になったら帰ってくるからその時に。だから帰ってきたら寝ないで待っててって…」


「わかったわ、伝えとく。あ、それより家大丈夫なの?大穴空いてたけど…昨日の事が違うギルドになんかバレたら…」


「ホントに心配性ね~、ご心配なく、酔って壁に穴開けたって言ったら皆コロッと信じてくれたわ」


「確かにね、想像つくわね貴女なら♪」


「いないならしょうがない!また夜に出直すから!そんなに急がないでもグッドモーニングキスくらいさせてくれてもいいのに♪」


「ア~イ~サ~?まだ酔ってるのかしら~?今度こんなことがあったら出入禁止だからね~?

覚えときなさい!!」


アイサは腹をかかえて笑いながら足取り軽やかに戦闘街に向かって振り返る。


「それではご機嫌よ~」


手に持った荷物を肩に担ぎ、元気よく走っていってしまった。


「あ~……今夜も騒がしくなりそ……疲れるわ

アイサとユウ…あの二人は…」


自分以外誰もいない酒場にユニファーの長ーい

ため息が広がった。

















「へくしょっ!」


「風邪か?」


「誰かが俺の噂してるな…」


マタタビキットの材料を集める途中、妙な悪寒が突き抜けた。


「くしゃみをすれば噂されてるのか?」


「言い伝えだ、根拠なんか無いよ」


買い物はもう粗方終わって帰路に着く途中だった。帰ってまた一仕事ある。


「あ~松葉杖で買い物なんか来るんじゃないな

疲れてきたぞ」


「そんならポーション買ってこようか?」


「ポーション?教会なんて近くにあったか?」


「商店にさっきランクは低いけどあったから、

痛み止くらいにはなるかもよ?」


買いに走ろうとしたぺローを止める。


「あそこの魔法アイテムの店があるだろ?あそこで魔力を秘めた鉱石とかあったら買ってきてくれないか?」


「うん、わかった」


ぺローにも状況が飲み込めたようで店の中に入っていく。その間暇だな…てか松葉杖の弱そうな冒険者がいるのに誰もからまないのは何故だろう?


「買ってきたよ~」


「お、早かったな」


早速遺骸で買ってきてくれたアイテムを吸収する。するとじんわりと痛みが抜けていき、動かせるようになった。


「やっぱり化け物だ」


「いちいち言わないで…割と傷つくから…心がな!」


足も完治してマタタビ栽培用の材料も買ったので家に酒場に帰ることにした。長く外に出るのも危険と判断したからな。だからからまれる危険性を減らすために朝早くから起きて街に来たのだ。


「帰りますか」


「そうしますか」


仲良く酒場に帰る。














「ただいま戻りました」


「あ~ユウくん、ユウくんが酒場を出た後にアイサが来てたわよ」


何?まだ俺に何かあるの(涙)


「たぶん彼女なりに色々と思うとこがあったんでしょ、彼女以外と心は乙女だから」


えー?嘘だー!心が獣の間違いでしょ!


「言ってよかったのかしら?彼女の夢はね別に最強を目指してるとかそんなじゃないの。実は素敵な旦那さんと結婚してのどかな田舎で大勢のこどもと幸せに暮らすことなの。ね?乙女でしょ?」


見た目からは全然想像出来ませんが?魔王とタイマンで勝負して勝つの間違いじゃないのか?


「へーそうなんだ(棒読み)でも俺には関係ないですからー」


「そうかしら?でもあなたアイサのお気に入りよ?いつ発情して襲われないようにね」


「冗談でしょ?」


「戦闘街でも貧民街でもユウに手をだす奴はぶっ殺すって情報が回ってたから♪彼女なりに考えてるのよ♪ユウくんは幸せ者ね~」


あっ…なるほど、からまれなかった理由がこれか…とんでもないバックがついたもんだな!


「それで?ぺローくんのマタタビの材料はそろったの?」


「はい、それは大丈夫です」


「それじゃあまた、これから作業に入るのでとうぶん部屋に引きこもります」


「はーい、がんばってね♪」


ユニさんに報告を済ませ、部屋にこもって鉢植えに土入れて苗入れて、成長促進剤なんかも投入して(これはポーチにあった)ものの数時間で収穫できるほどにまで成長した。


「マタタビ祭りじゃー!!」


「興奮すな!たくもーこれだけ栽培しれば足りるだろう。ちと育て過ぎたか…」


俺達の部屋がマタタビ畑となってしまった。確かに猫からしたら天国だろうな…


「土は常に湿らしとけ!聞いてる?」


「聞いてる聞いてる、このジョウロ?だっけ?いいな~これ」


俺が鍛冶屋で作ったブリキ性の象のじょうろなんだがぺローはこれが気に入ったらしい。


「これはなメタルゾウちゃん一号だ!自分でもなかなかの出来だと自負している!」


「うむ、素晴らしい。お主にはこのマタタビを二本やろう」


「二本かい!そもそも俺が育てた…」


「うーーーーーーー!」


「ごめんなさい…」


こうしてバカしながらマタタビ作りは日が沈むまでずっど続いた。


「今度は何作ってるの?」


「これはだな出来たマタタビちょっとボコッとしてるだろ?これをな虫こぶマタタビって言うんだ。虫による外部からの刺激によってこうなるんだこれでマタタビ酒を作ろうと思ってな」


「マタタビ酒だと!?」


果実を熱湯に入れて日干しする。後は氷砂糖とホワイトリネガー720ccとこぶ100グラムで半年浸けたら出来上がりだ。最初は一樽分だけ作るつもりがぺローが駄々こねて二樽分作ることとなった。日干しする面積も無いのに…足の踏み場もない。


「楽しみ楽しみ♪」


「ここはじっくりと待とうか」


こんなことしてたら一日がすぐ過ぎてしまう。

太陽ももう西の空に沈みそうで、眩しい西日が

部屋の中に容赦なく照らす。


「あ~明日から依頼か…怠いな…」


「猫見たいなこと言ってるな」


休みたい、だらけたい、人間だもの。

そして外が完全に暗くなり、家に明かりがともりだして、下から相変わらず賑やかな声が聞こえてきたとき俺達も下に下りた。


「マタタビの方は上手くいったの?」


「はい、なんとか大量になりました」


ここでユニさんの愛情がこもった料理を食べていると幸せな気分になる。ぺローも足をばたつかせ喜んで食べている。ああ、こんな幸せが永遠に続けばいいのにな~

特にぺロー以外喋る相手もいなかったけどそこにユニさんも入って、アイサさんが来るまで楽しく待つことになった。その楽しい雰囲気もアイサさんの登場で脆くも崩れさった。


「ユウくんいるかー!?」


「いますよ、待ってろって言ったのはそっちなんでしょ…」


「大変な事態になった!至急全ギルドに緊急依頼が届いた!」


そんなの普通じゃないんですか?いったい何事何だよ?


「ぺローはギルド長を呼びに行け!!今すぐだ!!」


これは到底昨日酔ってた人には見えない…


「わかった。ディロンを呼んでくる」


こうして風よりも早くぺローは駆けていった。


「それで?そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?何事なんです?」


そして真剣な顔付きで


「落ち着いて聞け詳しいことは私もまだわからないがさっき入った情報だ。魔王軍が聖都を強襲した。そして全ギルドに魔王軍撃退依頼が届いたってことさ!」


魔王軍だって?なんで前線をとばして聖都に!?


「ユウくんも荷物を早く用意してきてくれ…」


またまた俺の中で嫌な予感がした。

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