逃げるは純潔のため
タッタッタッ…
「揺らすな~酔ってきた~」
ぐるんぐるんぐるんぐるん!!
「回すなー!!おえっ!」
「グルルルルルルル…」
「離せー!おい、ユウ!」
くそ!何だよこの追いかけっこは!アイサの部下の二人組はさっき止めに入ったのだが平然と投げ飛ばされ、道端で延びていた…。残るのは
ぺローだけとなった。それにしてもアイサは今すんげーことになってんだ。
「完全に面影はなくなってないけど」
野性的になってらっしゃる…前は耳と尻尾だけだったがよほど興奮してるのか野生化してるのよ。虎のような大きな動物の手が、柔らかそうな肉きゅうが付いてる。目もさ…獣の目なんだよ!これは獲物を狙う目なんだよ!
そしてついに!アイサが壁を登りだす!その獣化したアイサのパワーは凄まじかった。けどスピードはぺローのほうが遥かに上なのになかなか追い付けずにいた。
「おいコラ!ぺローテメェー手を抜くな!!わざとゆっくり走ってんな!!」
バレバレなんのだよ。
「だってー(涙)さっきの見ただろ?死んじまうよ~(涙)虎パンチで一撃だよ~(涙)」
ぺローはさっきのアイサの怪力に怖がってしまっていた。ただな、俺のほうが百倍怖いぞ?
代わるか?
手も足も地面につかない怖さがお前に理解できるか?しかも段々高くなるんだぜ?
そしてやたら背の高い建物の最上階、窓をぶち破って侵入する。
ぽいっ
「うおっ!」
なにもできず近くにあったベッドに投げられたのだ。そして素早く逃げようとしたものの上からのしかかられ、また身動き一つできなくなってしまった。
「ここは?なにする気だ!?」
「ここは私のギルド兼自宅なのだ~♪もうすぐで二人の愛の巣に~♪」
…………まだよくわからないんだが?
「あっ!女の匂いがするー!ユニファー…よく知ってる匂いだ…駄目だよ浮気は~♪ちゃんと匂いをとらないと~♪」
そこで体を俺に擦り付けてきた。全身くまなく自分の匂いをつけていた。
ベロッ♪
「なぜなめる!?」
「だって美味しいんだもーん♪くすくすくす♪
後で~私の~体も~なめなめしていいよ♪」
誰がするか!いくらアイサさんが美人でも俺はこれでも紳士です!そんなことはしません!
アイサの舌が首筋を伝って~あっ!駄目~
「ユウ、やり過ぎだと思うよ。そんなことして
俺が酒場にいれなくなったらどうするんだ」
「ぺ、ぺロー!」
むくっ…
「私の雄は渡さないにょ~♪」
アイサさんの剛腕が迫り来る!
「ぺロー!気にするな!逃げろ!!」
アイサさんの大きな手がぺローを覆うように潰した…
「何人たりとも私の雄は渡さないにょ~♪」
「ぺロー!」
「上、上、上見てみー」
頭上、流石ギルド長の部屋だ。大きなシャンデリアにぺローが掴まっている。
「死んだかと思ったか?俺を誰だと思ってるんだ?天下のぺロー様だぞ!」
「侮ってたにょ~♪でももう油断しないにょ~
?これでもギルド長だにょ~♪」
ずんずん歩いて来る。ぺローと二対一、これならいくら凄腕でも勝機はある!
ペシッ!!
ムギュウ…
「ぺロー!?て、うわー!」
「我慢出来ないにょ~♪この猫ちゃんに見られながらするにょ~♪」
ぺローを壁に押し付けて擦りながら迫ってくるんですけど!?
「か、顔が~」
「ちょっと待てよ、今助けるからな!下手に手を出したらお前の二の舞だ!」
でもどうする?方法は無いぞ?
「お~と~な~し~く~抱~か~れ~ろ~」
これはあれでいこう!
自分からアイサさんに向かってダッシュ!距離を詰める。
「やっとその気になったか~♪」
俺に抱きつこうとぺローを離し、両手を前に出した瞬間、発動する!
「喰らえ!必殺虎騙し!!」
アイサさんの目の前で手を叩く、だけじゃない
ぞ!手のひらから炎が広がり閃光を放つ。
「ギニャー!目が! 、見えない~!」
「今だ!逃げるぞ!」
ぺローを横に担いで大きな窓があったところから外に飛び出す。ここでなかなか高い建物だったことに気づき、そのまま落下、足捻挫(涙)
足を引きずり酒場の方角を目指す、大通りに出てとりあえず人混みに紛れるんだ!
「捕まえた♪」
後ろを振り向くとそこにはアイサさんが!!
「なかなか面白かったけどお仕舞いにょ~♪」
「そうね…その通り」
前を向けばユニさんが駆け付けてくれた!ユニさんの後ろにアイサさんの部下達がいる。ここまで案内してきてくれてたようだ。
「ユウはぁぁぁ、渡さないぃぃぃ!!」
アイサさんの剛腕が迫っていく!
「ユニさん逃げて!!」
「ふっ、これでも飲みなさい!」
薬酒をボトルごとアイサさんの口に突っ込む!
「ゴバゴバ!?」
「正気に戻った?」
「えーと?どういう状況かな?ユニファー?」
「はぁ…負けた衝撃で暴走してたのよ…」
この後アイサの謝罪でこの事件は幕を閉じた…
「絶対諦めないからなー!」
「マスター!?」
訳ではなかった…お連れがなんとか引っ張っていった。と言っても家すぐそこなんだけどね。
「息災ね、帰ろっか」
「何だろう…終わった気がしない…」
酒場に帰るのもユニさんに肩をかしてもらって何とか帰ってきた。
「痛てて…」
「大丈夫、折れてないわ。でもこれはひびはいってると思うから動かしちゃ駄目よ」
「災難だ~(涙)」
こうしてただただ巻き込まれたぺローと今夜は枕を濡らすことになりそうだ。今日の俺達は泣き寝入り。しかも俺は怪我してる(涙)




