噛む噛むニャンニャン
ん?ここは?
「起きたか?」
「この声はディロンか!?」
「俺もいるぞ…」
「!?」
声だけ聞こえる…
「喰らえKAT・THE・STRIKE」
「ぐはぁ!!」
天井に張り付いていたぺローが落下してきた。
見事に真下にいた俺の腹の上にな…
「怪我人になんてことすんだ…」
「怪我人?ふん!怪我人だと?どこがだ?」
「えーと…怪我は?」
完治していた。傷痕一つない、完璧な体になっている。あれ?死にかけてたのは俺の幻覚?被害妄想?やだ!恥ずかし~!
「くねくねすんな気持ち悪い!でも本当に気持ち悪いのはその左腕だな…そいつのお陰で命拾いしたんだからな」
そうなの?
「どゆこと?てかなんで宿に帰ってきてるの?
記憶無いよ?また記憶喪失なの?」
洒落になんねー酔っ払いみたいに帰ってくるまでの記憶が無いー!
「俺達が運んだんだ!依頼の達成は報告しといたから、明日はゆっくり休め。あんまり若いうちから無茶するとろくなことないぞ?」
「へいへい、そうさしてもらいますよ。怖いのはもう嫌だ!頼まれたって行くもんか!土下座しろ土下座!」
「なんで土下座すんだよ!だから来んなって言ってんだよ!」
思いっきりドアを閉めてドンドンとやかましく階段を下りていく音が聞こえた。
そのあと、トトトトトトトト階段を勢いよく上ってくる音だ。
「目が覚めた!?」
おー、ユニ様ではないですかどうなされたっ!?
いきなりの熱烈な抱擁…胸が顔にムギュッとしているのです!
「よかったーもー!心配させないで!これじゃあ心臓がいくつあっても足りないわ!あー寿命が百年は縮んだわ…」
そこまで心配してくれたのですか?この伊丹ユウ!これ程幸せなことはありません(涙)
この後病人食を持ってきてくれた。消化に良いものなのはわかるが不味い…それをこいつ!!
ぺローは俺のお腹の上に乗り、サーモンのソテーを食ってやがる…俺にもよこせ!
「はい、あーん」
フォークで俺の顔まで持ってくるがそこからいきなり自分の口へ!こいつ!なんだそのどや顔は!髭抜くぞ!!
「よこせ~肥えた化け猫よ…」
「いいいいいいいにゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
三十連続猫パンチのその威力よ…俺の鼻は大丈夫か?へこんでないか?全快したら覚えとけ…
俺はお前に復讐する!
「明日どうする?一日位仕事しなくても大丈夫だとは思うけどさ~、用事ある?」
真剣な顔で…
「外は危険がいっぱい…自宅警備」
将来が心配な猫ちゃんです(涙)
「いや、明日こそはこの街を散策するのだ!有無は言わさん!黙ってついてこい!!」
こうして散策するという決断にいたったのだ。
死する覚悟で…
「俺にはメリットが無い!」
「いや、それがあるのだ!」
「無い」
実は…もう無いんだ…
「無いんだ…」
「何が?」
「マタタビ」
「!」
こいつ…もうこいつのせいでもうマタタビが無いの(涙)そこで急遽挿し木が必要、もしくは種から育てないと…
「なんで早く言わねぇんだよ!明日からの俺のマタタビはどうなる!!」
「テメェーがかじったんだろが!」
「ちくしょー!!」
悔しがる猫、シュール…
「それに必要な道具を買い揃えたいのだ。けど
しょうがないから俺も行くんだよ。一人にしたら絶対狩られるからな」
「そう言うことなら協力しよう」
「偉そうだな」
うーんどこいけば買えるかな?明日ユニさんに明日聞こうかな…で今午後四時、時間的に微妙な時間で何をする気にもならない。
「ちょっと寝るから、何かあったら起こしてくれ」
「おい、まだ寝るのか」
ひさびさの平和を楽しませてくれ。寝たいんだよ俺は。多分ディロンは今頃は売春宿でヨロシクしているのだろう。今の時間帯なら客も少なそうだ。
あー駄目だ意識が~
「おい、起きて俺と遊べって寝てるし」
二度寝していたのだった。
数時間後、
「結構寝たな」
「だな」
下の方から賑やかな声が聞こえてくる。仕事が上手くいった人達か、楽しげな声が聞こえてくる。来てるのは常連さんらしいし、一度は顔を
見せとこうかな。
階段を下りるとそこには楽しげに騒いでる人達が見えた。
「あっもう起きて大丈夫なの?」
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です、すいません」
「あはっ!謝らなくていいのよ!あなたが元気ならそれに越したことはないわ」
お優しい…女神のようなお方~
「兄ちゃん達が天空の網に喧嘩ふった冒険者?
ユニファーに聞いたよ♪」
カウンターに座ろうとしたら不意に後ろから声をかけられた。振り向くとテーブル席に女性が三人組座っている。ただの女じゃない、視線は頭の方に集中してしまう。
「獣耳…?」
そう、人間には無い猫耳。ぺローの耳のような三角の形をした耳が頭の上に乗っかっている。
そこからゆっくりと集中を下ろす。体つきは女性とは思えない筋肉質だが男のようにボコボコした筋肉ではなくシュッとした、細い筋肉の集合体よようだった。それにあの尻尾の模様は…
「彼女はね、虎の獣人。ギルド、獣娘の魂のギルド長アイサよ。実力はこの戦闘街でも指折りよ。怒らせないでね♪」
「ご紹介どーもユニ」
他の飲んでる二人も獣人のようで同じように獣耳がある。
「いやーここに泊まってるのは知ってたんだけど毎回寝たって言われたからな、会えて嬉しいよ♪今夜は付き合ってくれるかい?」
「やめてあげて、彼病み上がりなの」
「じゃあ無理に付き合わすのは悪いな…また今度ゆっくり飲もうや、積もる話もあるしよ」
そう言って引き下がるが…
「俺のこと知ってるんですか?」
ここは俺が食いつく。
「知ってるも何も有名人だよあんた、とんでもないルーキーが現れたってね。この酒場に住んでるって聞いたのはユニファーからだけどね」
ほー…ディロンの言った通り噂ってこんなに早くに知れ渡るのね。
「怪我したって依頼でか?」
「そうです、ドガウジカの討伐でドジしたゃって…」
「ただのドガウジカじゃないぞ!中から魔石が出てきた強大な奴さ!」
ぺローが自慢たっぷりに話す。そうなんだけど
さーそこは伏せといてほしいかな?左腕のこともあるし。
「(ピクッ)その少年がか?」
そしてゆっくりと席を立つ…何か悪いことしたかな俺?でもあれ?笑ってる。
「いいじゃんいいじゃん…何だ、どんな骨がある奴かと思えばその身なりからちょっとガッカリしたけどお前…何か隠してるな?」
ギクッ
「どれどれ…ん?お姉さんに見せてみなさーい
悪いことはしないから♪」
痛いことしそうなんだよ!近寄るなー!!
「アイサ?冗談が過ぎるわよ…」
「いいじゃん?ユニファーも気になってたんだろ?いい機会じゃないか」
そしてずんずん近づいてくる。横見ればぺローはすっかり固まっていた。
「アイサ、彼は怪我して治ったばかりなの。また怪我させる気?」
そうです、人前で怪我して自然治癒したらどんな目で見られるか…考えただけで恐ろしい。
「よし!勝負だ!内容は腕相撲でどうだ!」
そう言って酒場のはしにある空の大きな樽を指差す。ユニさんの方を見ればお手上げの顔をしている。ここはやるしかないか…負けて怪我したら左腕の正体を怪しまれる。酒場中から戦闘街中に広がる~!
「勝てばいいんだろ!勝てば!」
「ほーやる気あるね~、でも無理」
そう言って笑いながら樽の方に歩く。ここは全力でいかしてもらう。手加減無しだ!
そして俺も進み、互いに向かい合う。
「ここでただ勝負するのは面白くない…何か賭けよう」
え?賭け?
「私が勝ったらあんた私の奴隷になれ、奴隷は欲しかったけどなかなか良いのがいなくてさ~
戦闘用奴隷になれ、それが条件だ!どうだ?」
目を輝かせながら何言ってんだ?
「な!うちのお客様なのよ!」
「これからはうちの客だ」
すると一緒に座ってた二人組が近づく。
「す、すいません!マスターが酔ってるようなのでそろそろ帰ります!」
「帰らない~欲しいものは必ず手に入れるのだ~!」
こ、こいつは!
「あんたの望みは?叶えられる望みなら何でも言いな」
えっ!急に言われても…えーとえーと…
「えー…何か無いかな…望み、望み…」
「アハハハハ!いいよもう!どうせ勝てないんだから!!」
何をーー!目にもの見せてやる!!
「ダメ!戦っちゃ!!」
二人組が止めに入るも平然と腕を出す。怪力虎女め!
「行くぞ!おりゃーって…あれ?」
ビクともしない?何で?
「無駄無駄無駄無駄!!所詮人間は獣人には勝てないんだよ!種族の壁は越えられない!!」
ぐっ!負けそう…
「駄目だよ旦那~」
「!」
頭の中に声が聞こえる…前にもあったような…
「旦那!力任せってのはよくない、何でも力で
解決できるもんでもないぜ?自分より強い奴が出てくるかも知れない…そんな時、自分の力が最大限に引き出せる状況にしないと」
遠い昔の記憶…懐かしいような…そうだな!
自分に引き寄せるように…力を入れる。
「そら!勝ちだー!」
「ふん…」
アイサの腕が止まる。
「ぐっ!くそ!何でだよ!」
「知ってるか?勝利を確信した時は油断するなだ。昔誰かに教わったよ。お前の敗因はたった一つ…その驕りだ」
自分に引き寄せるようにように一気に倒す!その勢いで本来、俺より体重も体格も上のアイサがつんのめるようにカウンターの方に転がる。
途中にあるテーブルにぶつかり止まった。
周りが静かになる。いい見世物だと酒の肴に見ていた人達も俺を心配してるぺローとユニさんもアイサの部下の二人組も黙りこみ、酒場にさっきまであった熱気は消えていた。誰も一言も発しなかった。全員驚いちゃったか?
でもこの状況で一番驚いてるのはアイサだろうな…負けるとは思ってなかったみたいだし。
「そ、そんな…そんなバカな事が…」
「そういやまだ望み決めて無かったよな…」
別にこれといってないけど。
「調子にのるな、だぜ」
するとアイサがヨロヨロと立ち上がる。流石獣人だなすげータフだわ。
そして弱々しく近づいてくる。
ぐいっ
ん?持ち上げられたよ?
そんでそのまま大事そうに抱き寄せる…え?
「はっ!コラ!アイサ!離しなさい!」
「ヴヴヴヴヴッ!!」
「な、何怒ってるのよ…」
威嚇してらっしゃる…睨み付けて唸る。でも顔をよーく見ると涙出てんだけど?顔も紅いし?
カプッ
襟元を噛む、それで獣のように四足歩行でそのまま外に飛び出す。
「あ~れ~!」
静まり返る酒場…
「追いかけなきゃ!」
ぺローが平常に戻り酒場を飛び出す。
「わ、私達も!!」
ぺローの後に続き、アイサの部下の二人組も外に飛び出した。




