湧き出る力
「ぷっ…だっさ!!俺でもDなのに!!天空の網倒す実力あるならCはあると思ってた…ぷぷ♪」
「はいはい、わかったよ。後で存分に笑ってくれ、だから手伝え(イラッ)」
「はい三匹め~達成まで後何匹?」
「ぺロー、もうちょいゆっくりしてかないと体力もたないぞ」
「いいんだよ!後何匹だ!」
「七匹だ、また追い込んでくれ」
「先は長いか…」
ガサガサ
「ほら、ぺローも探しに行ったぞ!さっきから見てしかいないだろ!お前も探しに行け!」
「司令塔とはこうやってどしっと構えとくのが仕事なのだよ…」
ギルドマスターいらねー帰れよ!!
「ここに追い詰めるのはいいが実際倒してるのは俺だろ?お前の仕事は?」
「監視」
「な・ん・の・だ?」
「周り」
「危険は無いわ!さっさと行け!」
ただ今依頼でダンジョンではないのですが農村の近く、前線からまた離れ仕事に来てる。今回の依頼はちゃんばらは出来ないものの剣振り回す仕事なのでちょっとストレス解消には持ってこいです♪
「ドガウジカとガウジカの討伐」
最近、この近辺を荒らし回るガウジカ。その討伐依頼する。群れのボス、ドガウジカをなんとしても討伐してくれ!
何やら農村ではなかなか被害が出ているそうで
今回そのガウジカ討伐に来ている。そんなに恐くはないモンスターのようなのだが近接武器しか持ってない俺達は苦労している。やたら警戒心が強く、ちょっと近付けば逃げてしまう。
顔つきは凶暴そうだが性格は臆病。体格は大きく素早い。しかし角が大きい群れのボス、ドガウジカだけは好戦的でこいつは出会うと逃げた方が安全と言われている。
「うわー!うわー!」
「どうしたぺロー!」
「おいでなすったか…」
茂みからぺローが飛び出してくる。尋常じゃない急ぎよう。
「で、出たー!ドガウジカだ!」
そしてぺローに続いてさっきから狩っているガウジカとは似ても似つかない大きさのガウジカが現れた。
「これが…ドガウジカ…」
「フーンッ!!」
こりゃシカと言うより牛だ、牛だ牛。
「へーい♪シカちゃーん♪こっちだよ!」
そこでディロンが囮になり、俺達は隙をついてトドメをさすことになった。
「例のポイントまで引き付けるぞ!」
「了解!」
それぞれ散り散りになり、追い付かれそうになったら敵の注意力をそらし連繋して森の中を縦横無尽に逃げ回る。捕まればその場で八つ裂きなのだ。
「うぉっ!」
木の根に足をとられ転ける!運悪く俺の後ろにはドガウジカが迫っていた!
「おいユウ!止まるな逃げろ!」
そういうわけにもいかんでしょう…ここまで来たら…剣を引き抜き正面に構える。すると向こうも立ち止まり撥ね飛ばそうと機会をうかがう
膠着状態が始まる。
「ブォーン!!」
角を構え、そのまま突進してくる!間合いを考えて~早すぎれば失敗、手前で止まるだろう…
遅すぎれば撥ね飛ばされる!!
今だ!!
剣を地面に突き刺し剣の柄を足場にして跳躍、
はるか上の木の枝に掴まる。
「ブイーン!!」
そして見事俺の後ろあったポイント…落とし穴に無事落ちてくれた。まさか俺も落とし穴の手前で転ぶとは思ってもなかった。
「おいおい、落とし穴の手前で転けた時、ヒヤッとしたぞ~!心臓に悪い!」
「今のはもうダメだろうな~って思った!」
「ブォーン!!」
「おっと…浅すぎたか…」
なんとドガウジカは自分より遥かに高い落とし穴、しかも身動きがとれないはずなのに飛び越えたのだ!
「ブフーン…」
「やっぱりこうなるのか…総員戦闘体勢!気を引きしめていけ!油断したら即、あの世行きだぞ!」
テメーに言われなくてもわかってるよそんなこと。でも一筋縄じゃーいかないな。いくら数がこっちが上でも魔物との戦闘では数は無意味。
己の力量が全てだ…でもよかったな、
「俺がいてなー!!」
「一人で突っ走んな!」
「一人じゃないよーだ!」
ぺローと二人で左右から攻めて行く。正面なら突進されたら御陀仏…後ろにまわってもあんな太い脚で後ろ蹴りされたら骨折たけじゃすまないだろう。ましてや回復アイテムも持ってない
素人パーティーなのに…どんな致命傷の攻撃でも、誰か一人でも殺られればそいつを助けるために二人いる。そこを狙われたらおしまいだ。
「ていっ!」
ドガウジカの目の前で炎の小さな爆発がおこる
。正直目眩まししか思ってない。あまり大きな爆発だとぺローが巻き込まれる可能性があったからな。
「とりゃりゃりゃりゃ!」
ぺローが重点的に脚を狙い、ドガウジカのその重い巨体は体勢を崩し、地面に倒れこむ!
「トドメは俺がー!!」
降り下ろした一閃がドガウジカの首を狙う…が
ドガウジカが刹那激しく抵抗し、斬道はそれ、
その大きな角の片方を弾き飛ばす…
「しまった!」
ドガウジカはその一瞬を見逃さなかった…こいつが群れのボスとしてやってきた理由が少し見えた気がしたがすぐそこに迫る巨体によって何もわからなくなっていた。
「ブオオーン!!」
ドガウジカは最期に俺を道連れにするつもりなんだとこの時悟った。起き上がり狂ったように
迫る凶弾!!
「ぐっ!…」
無意識に…体が本能で動いたように何も考えず体は勝手に動いていた。一番安全な角の無い方に体を傾けた。串刺しにならずにすんだのだが
そのドガウジカの巨体によって俺の体は宙を舞った…それは何も出来ず抵抗も出来ずただただ動けないでいた。
「おい!おい!ユウ!今行くぞ!」
狭くなる視野と思想の中で俺は必死に観察していた。化け物め…完全に油断していた。自分が負けるはずはないと…俺の実力は戦闘街でも通用したんだ。こんなデカイシカに負けるはずがないと…俺は傲っていた。俺の慢心が招いた阨災だと…
一番近くにいたディロンが救助に駆けつける。
畜生…こんな時だけかっこよく見えるぜ。遠くでは俺達の方に近づかないようにぺローが一人で引き付けてくれている。
「満足な救急道具や回復アイテムは持ち合わして無いんだ!逃げるぞ!」
逃げる?敵に背中を向けて逃げるのか?ジジイを助けられなかった時のように俺は見ている事しか出来ないのか?お願い神様助けて~見たいに俺がガタガタ震えておめおめと逃げないといけないのか!?
「冗談じゃねぇ…」
ぼろぼろの体を持ち上げる。全身の骨はガタガタだろう。もう動けない体のはずなのにな…
「何動いてんだよ!逃げるんだ!」
「逃げる?今の俺に逃げるは無い…なんだろうな?食べたい?あいつの体から何か感じんだよな…それでさ~ほら…体も不思議と動くんだよ俺の足もズタズタで立てるはずもないのにさ」
左腕が熱い…いたな、俺の中にも化け物が…
遺骸が狂おしいほどドガウジカを求めてるのが
今の俺には感じとれた。馴染んでないのか?そういうわけでもないんだ。なんだろう?俺が違う生き物になっちまうような意識が単純化するような感覚。生理的欲求、生まれた時から持っている生きるための本能…
(補食だ)
至極単純わかりやすい感情。全ての意識が獲物に集中する。生きるか死ぬかの瀬戸際。遺骸は
その本能を強く引き出している。恨みではなく
今の自分を包み込み支配するこの感情。いっそ
狂ってしまうほうが楽かと思えてくる。
ドガウジカの一点、そこに俺の意識はくぎ付けになっていた胸の中心部、光って見える。そこから強いエネルギー源のようなモノを感じるんだ。俺の遺骸はそれを欲しがっている。
「ウオーーーーー!!」
本来なら動けるはずがない。でも俺の体は確かにドガウジカに向かって走り出していた。ディロンの制止も全然わからない。さっきまでの絶望や悔やみは全くなく餌が食える悦びだけが今の俺を支配し、突き動かしていた。
ヒュンッ!
突如現れた俺の前の赤い鎧のような義手、前は出すなんて事は出来なかったが俺の左腕を覆うように発現する。それが今、ぺローに意識集中していたせいか、楽に懐に入り込み。俺が今ここに"いた"と気づかれる前に俺はその義手を深々とドガウジカの胸に突き入れた。そこにあった何かを確かに抜き取った。その直後ドガウジカは動かなくなり力なくその場に崩れ落ちた。糸の切れた操り人形のように…
「これは…?」
義手はいつの間にか引っ込み、ドガウジカの血に濡れた後の手には黒に近い濃い紫色ひ鈍い光を放つ石のようなものが握られていた。ずっと気になって、遺骸が欲しがっていたものだとすぐにわかった。
「人間の限界越えてたんじゃないのか?魔物みただったぜ?」
「これには魔物のケットシーもびっくり…」
疲れているのかたいして驚く気配も見せない二人が近づく。
「これはなんだ…この生命力を放つ石は?」
手のひらの石を見せる。
「こいつぁ…珍しい…なるほどあのドガウジカの落とし穴も抜け出る跳躍力、おかしいはずだぜ。これはな魔封石と言ってな、土地の魔力が強いと魔物、中でもさっきのドガウジカのような魔獣の体内で蓄積された魔力が結晶になり魔封石になると言う…魔界ある場所ではある程度地下を掘れば鉄より簡単に大量にこれと似た鉱石が出てくる。ここはそんなに土地に魔力は無い。おそらく違う土地から来た群れだったんだろう」
「これは魔物の魔力、生命力を増幅させる。
だが相性みたいなのがあってな自分の体内以外でできた魔封石は何の意味も無い石ころだから
そんなの捨てとけ」
でもな…左腕が疼く。
「あっ…」
「あっ!」
「あー!」
全員仰天、左腕に突如、魔封石が吸い込まれた
!底無し沼にはまったように一瞬だった。でも
この時遺骸が何をしたか俺にはわかった。こいつ…食べやがった…しかも中の魔力を吸収して
前より力が上がったのを感じた…
「吸い込まれた…はは…」
「おそらく今、見てはいけないものを見た」
これでますます遺骸の謎が増えていった。でもいずれ何かしら手掛かりが増えるだろう。それより…
「すまんが俺はここで横になってるぜ…後はガウジカ六匹か?頼んでいいか?」
少し間をおいて
「あっああ!休んでなちょちょっと俺が残りのガウジカを片付けるからよ!それまでここで我慢してくれ!」
「絶対動くなよ…動いたら猫パンチ100発な…忘れるなよ…」
そして二人は茂みの中に消えていった。
「ふぅっ…あいつらも気になってたと思うが気いつかって何も言ってこなかったな…」
でも疲れたな…
ここになって痛みがどっと体に押し寄せる。
さっきまでは恐怖やら空腹やらなんやらで麻痺していたようだ。もう起きとくのも無理かも…
そこで森の中で痛みで気絶した。
「おーい、大丈夫か~生きてるか~」
「むっ!」
目の前にユウが力なく倒れている。
「ディロン!」
「わかってる!」
素早く近づき無事かどうか確かめる。
「見たところは大丈夫そうだが魔封石で強固になったドガウジカの突進喰らったんだ…早く運ぼう…ぺロー、依頼達成の証明にドガウジカの角とガウジカの角を持ってきてくれ。死体は一ヶ所に固めといてくれ、後は虫や他の魔物や動物が食べるだろう」
「わかった」
ぺローが走り去る。
「ふん、やっぱり俺が見込んだ通りの奴だ。何かあると感じてたがこんな不思議ちゃんだったとはな…おもしろい奴が仲間になったもんだぜ
これで面白くなりそうだ…」
「持ってきたぞ~」
両手にいっぱい、抱えきれないような大きさで
頭も使って持っている。
「角は頼んだ、俺はこの死にたがりお馬鹿を持つわ」
そして肩に手をまわすと運ぶ。
「ユウって何かな~?」
「さあな…でもドガウジカと戦い、俺達を守ってくれた。だから仲間だ。今はそれでいい…」
「そうだな…ユウいいやつだ♪」
「早く運ばないとさっき気丈にしてたけどこいつ大ケガだぞ?悪化してないけど何があるかわからん…急ぐぞ」
こうして森を後にした…




