戻れるなら戻りたい
「俺は…記憶が無いんだ」
そして俺は事情を説明していく。大怪我をして亡者の森で倒れていた事、そして教会に運びこまれてそこで剣の修行で炎や風、水、土を自由に発生、操る事が出来ること。そして…教会が謎の魔物に襲われ
瀕死の聖職者から聖人の遺骸を託された事を全て説明して今俺は記憶を取り戻すために亡者の森を目指すためこの街に来たことを。
「記憶喪失でそのサラマンダーだっけ?サラマンダーをなんで操れるかわからない」
「ごめんなさい…その、辛いことまで思い出させちゃって…」
「気にしてない、全部自分で腹に納めちまってるからな」
あの鳥野郎は俺が殺すと決めてそれまでギルドで依頼をこなして亡者の森に行けるようになるのが今の俺の目標。
「暗い話になっちゃったわね…よし!今から元気出るようにとびっきり美味しい料理作るから!」
そして食材を調理していく。
「あんまり切り詰めるなよ」
隣で足と手を組んで最後のマタタビを大事そうに取り出して口にくわえる。
「ん?なんだって?」
「いや…なに、記憶を失って大変だなと思うけどそんなに気にするなって言いたかったんだ」
目線は調理している手つきをずっと眺めている。こいつもこいつなりに心配してくれてるんだな…しみじみと感動…
「お前…俺の事をそんなに…」
って本当にずっと手つき見てやがんな!今良いこと言おうとしてんだからその時くらいこっち見ろや!
「あの~聞いてる?」
「かっこいいな…」
ん?何がだよ?そこで俺はようやく気づいた。
ぺローがステーキを焼く手つきに夢中になっている
理由が。
「よっと♪」
フライパンとフライ返しを見事にあやっている。とても楽しそうにやっている。時々ヒヤッとさせられる場面もあったがそれはステーキが落っこちて油がはねることはないし、こげつかせるなんて考えられないほど、なめらかで大胆な動きだ。
「なるほど…これは圧巻だ…」
でも悲しいかな、真剣にフライパンさばきを見ても俺の視線は二つの大きな果実に目がいく…右に左に
右に左に…誘惑には勝てそうもない…
すばらしい腕前と胸に圧倒されているうちに、綺麗に盛りつけられたステーキが俺達の前に一皿ずつ並べられた。ふぅむ…見事なステーキだ。食べてしまうのがもったいないくらいだな。
「はい召し上がれ♪」
そこに中級パンと野菜スープがつく。この中級パン
(町のパン、町人のパン)は厚い皮とやや褐色がかかった中身が特徴。一番上質なのは白パン、価格は白パンと変わらないが、二倍ぐらい重い。酒場で料理や酒と一緒に出されるのも中級パンだ。教会でジジイと一緒に食べてたのを思い出した。
「いただきまーす」
一口目パクリ………………超ーうめぇーーーーー!
バクつきやがってこのアホ猫!もっと味わって食えよ!もったいねーだろ!
「宮廷で料理長になれる腕だよ!もー例えようがないほど旨いよ!やったー!毎日こんな旨い飯が食えるのか!国脱け出して正解だった!」
宮廷料理なんて食ったことないが確かに凄い腕前なのは見ててもわかったが食ってみてさらに実感出来た。
「ステーキって食ったことなかったけど旨いっす」
「そう?お口にあってよかったわ♪」
スープもこれまた実に旨かった。新鮮な野菜なんてここに来て食えないと思ってたしな。なんか前線とか肉類しか飯がないと思ってた。そんなイメージがあった
けどよかった!この宿見つけて!
そして少し早いが二階に上がって部屋で休む事にした。一階では仕事終わりのギルドの人間か、はたまた常連客かぞくぞくと来たようで騒がしかった。
「明日は予定かなんかあるのか?」
窓際から外の景色を見ながら話しかけられた。あいかわらず人の顔見て話しないな~!ジジイとか無理矢理視線合わせてきたぞ!
「明日こそ戦闘街に出ていこうと思う。いつまでもここでじっとしてるわけにはいかないしな。とりあえずここの三日ぶんの宿代は払ってるけどいつまでも財布がもつわけないから俺がいたギルドを探す。
でなけりゃ新しく冒険者ギルドを探すかしないと仕事がないからな」
「では俺は部屋の警備でもしとくから」
「お前も来いや!なんで俺だけ死ぬ思いすることになってんだよ!お前も道連れだ!この宿から出て貧民街にいるだけで怖いのによ~!」
一緒に地獄に落ちようぜ♪
「魔物がうろつくだけで殺されるって言わなかったか!お前はまだ生き残る望みはあるが俺は無い!」
「俺の使役してる精霊ってことにしてさ、サラマンダーみたいに!あ!戦闘用奴隷とかいたじゃん!魔物使いといいったら入れるって!何かあったら一緒に逃げよう!な!?な!?」
俺も必死です。命かかってますから。
その後、ぺローと俺の口論は深夜にまでおよび俺が必死に説得した結果、マタタビ十一本で折れてくれた。マタタビのストックもそんなにないのに…
そして徹夜で感じの悪い奴にからまれない練習をずっと繰り返していた。ぺローは以外と厳しく、
顔に引っ掻き傷が沢山出来た。けど準備万端明日に備えは完了した!
そしてお世辞抜きで旨い朝食をこれが最後に食べる朝食かと思いながら噛みしめて食べた。部屋に戻り荷物をまとめ、ぺローの首根っこを掴み、女主人のお姉さまの声援を受け、嫌々外に出るのであった。
「生きて帰れたらお姉さまのお名前教えてもらう」
デートは無理でもせめて二人で良い雰囲気でお喋りとかしたいんだ!そう意気込んで戦闘街の方向に足を運ぶのだった…
「あ~行きたくね~よ…」
「お前の事知ってる人もいるかもしれないのにしゃんとしろ!じゃないと目をつけられるぞ!そうじゃなくても俺が一緒にいて目立つのに…」
こうして男二人、ブツブツ言いながら歩いて行くのだった。




