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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
死地帰えりの男
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出会い頭猫パンチ!!

「ふぅ…いってくるぜ」


簡素だがジジイを埋葬した。これからはジジイの言葉通り人間界の最前線を目指すことにした。距離はそれほど離れていないようだけど安全性を考えて魔物が比較的少ないルートを選んで進む事にした。


「たいした荷物も無いのに大丈夫か俺~?」


心配はある。魔物が出現したらイメージしてるように戦えるかわからない。記憶がない今、全ての事が危険な事である。


「昔の俺もこんなに不安だったかな?いや、それはないか!アホそうだったし」


教会の周辺の森しか知らなかった俺だがついにその森からも出てしまう。何が起こるかわからない危険な世界に放り込まれた気分だ。


教えられた道を進むと途中何度も分かれ道があったが迷わずこれた。俺以外の人とも会わない、動物はせいぜい木にとまっている小鳥位なものか。


「魔物に会わずにこれたな…運が良かったな…」


そう言って胸を撫で下ろした時だった!前方、少し遠くから悲鳴が聞こえた!


「なっ!」


前に人がいる!悲鳴なんて…魔物が出たのか!

助けに行くため駆けていく。何もカーブも坂でもない道を進むと前方に小さな人だかりが出来ていた。


そして人だかりに到着…


「どうした!?」


「魔物が出た!!仲間が二人やられたんた!」


近くに荷馬車がある。この男は商人か雇われた人間だろう剣を両手に握りカタカタ震えている。


「ここで何してんだ!」


「ボスにここで荷物を守るよう言われたんだ…」


「敵は?巨人みたいなやつか?」


魔物と聞いて想像してみた。俺なら間違いなく逃げるな。荷物置いて…


「猫だ!猫が一匹!」


突然俺は白けた気分を味わった…猫…?猫が一匹?

それでこの騒ぎ?てか猫は魔物じゃねー!!


「猫…なら安全だろ?ちょっとひっかかれるだけじゃないか」


「ただの猫じゃない!ケットシーだ!」


ケットシー?知らないな…猫と言うならそれほど危険な魔物とは思わないがな?でも二人もやられてる

と言うなら…本当は危険な魔物なのかも知れない。

自分の目で見る方が早いか…


「助太刀してくる…お前はここにいろ…」


縦に荷馬車が並んでいる。道いっぱいの大きさなので横をすり抜けるには一苦労した。何人かは荷馬車に残って荷物を守っている。荷馬車の先頭で剣を持った男達が固まっている。あそこか…


「旅の者だがどうしたんだ?」


「危ないぞ!近付くな、ケットシーが出たんだ…普通の猫に紛れてスパイ活動した帰りかもしれん…」


ほぉ~それでか。そんなに大騒ぎしてたのは。でも怪我人も出てるようだしこれ以上被害が出ないように手を貸すか!

そして男達の先頭に俺が仁王立ちする!


「え?これが敵?」


「油断するな!一瞬で殺されるぞ!」


「誰もそんなことするなんて言ってないだろ…」


前方に猫が立ってる…二足歩行してる。その足には腰の高さまである黒いブーツを履いてお腹にベルトを、頭に白い羽がついた大きなハットを被り、手にはレイピアを握り呆れたような様子でやれやれとか言っている…なんで喋ってるの?


「お前がスパイで凶悪なケットシー?」


拍子抜けだな…でもケットシーの足下には二人の男が気絶してるのか倒れている。


「スパイで凶悪?俺はスパイじゃないぞ!スパイ稼業からは足を洗った…今はただの旅人さ…あと凶悪だと?いきなり襲ってきたのはそっちだろ!凶悪なのはお前達の方だ!」


そら道端に二足歩行してる猫がおったら誰でも驚くぞ…しかも喋ってるし…


「お前が悪くないのはわかったよ、ちょっ横に退いてくれればおとなしく通るからさ」


「バカめ、俺が横に避けるのは道に犬のフンが落ちてるときだけさ!退くのはそっちだ!」


そう言うとレイピアを構える。


「俺達も退くように勧告はしたんだ…でもこの有り様でよ、力ずくで退かそうとした奴は見ての通りやられちまった」


「お前達が引き返すまで続けるぞ!次は先頭のお前か!相手になるぞ!」


ちょっくらイジめてやるか。


「行くぞ!」


迫るレイピアを剣を抜いて全部受ける。確かに素早いが見切れない速さじゃない。


「やるな!お前!さっきの奴とは段違いだ!」


ますます調子にのるケットシー、マジどつくぞ…


「次はこっちからだ!」


俺の剣はなかなか当たらなかった…的が小さいせいもあるがトリッキーな動きで死角に回り込みレイピアで的確に急所を突いてくる。凄腕のようだ。


「人間にしては素早い身のこなし、達人級だな?」


満足そうにケットシーがほくそ笑む。イラッ…


「ん~おもしろかったよ人間のえ~となんだっけ?名前は?」


「まだ言ってなかったな、伊丹ユウ」


「ほう、変わった名前だな伊丹ユウよ…次の剣で終わりにしようか」


自信満々に不適な笑みを浮かべる…


「奇遇だな、ちょうど俺も思ってたところさ」


俺には取って置きの秘策が…ある!


「おもしろい…行くぞ伊丹ユウ!そしてさよならだ!」


凄まじい剣幕が迫る、でもここは冷静にポーチからあるものを取り出す。


「お前は自分の本能に勝てるか?」


ポーチから木の小枝を取り出す。そしてその枝はケットシーの凄まじい突きで粉々になる。


「ちょうど粉末になったな…」


「ふにゃっ!これは!」


酔っぱらったように地面に横たわるケットシー…そう投げたのはマタタビ…その粉末を全身に浴びたのだ。


「イヒヒヒヒヒヒヒヒ♪」


「退いてくれたら後二本やろう」


「三本!」


「三本」


するとケットシーがにやけながらこちらに向かってトコトコ歩いてくる。トコトコトコトコ…


そして俺の手からマタタビの枝を一本抜き取り満足そうに横をすり抜けていくと荷馬車の一台に飛び乗って枝を嗅いだりかじったりしている。


その間に怪我人を荷馬車に積んで出発した。

ケットシーはまた無理に降ろして怪我人がまた出ると危険なので放置、今はおとなしくマタタビと戯れてるから心配ないだろう。


「着きました…あそこが前線です」


「いやー乗せてってくれてありがとね!助かった」


「また襲われるかもしれませんでしたから…こちらこそありがとうございます」


「イヒヒヒヒヒヒヒヒ♪」


俺の横にはこの商隊のボス、真後ろにはケットシーがねっころがって空に両手に持ったマタタビを掲げている。


「う~んこれは良いものだ…イヒヒヒヒヒヒヒ♪」


そして不気味な笑い声と共に立派な前線の門をくぐったのだった。

新たな相棒としてケットシーを入れるつもりです。

虎猫の雄です。まさに長靴を履いた猫をモデルにしています…イヒヒヒヒヒヒヒヒ♪

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