高潔の意志
「おい!聞いてんのか!!」
「すまない勇者よ、今の私は誰にもとめられんのだ!次の巻」
「うるせぇぇぇ!まずは俺の話を聞け!」
コイツめ!魔王だからってビビって損した!
「ネフトに会わせろ!今すぐだ!」
「ネフトには幹部会議から外してもらった。敵が他の幹部の可能性も考えられるからな。過激派の連中かもしれんし、正体がわかるまで城でかくまうことにしたのだ。彼女もそれを了承している。元々人見知りなドラゴンだからな、その方が都合がいいんだろう」
「だからなんだ~俺が会ってはいけない理由にはなってないぞ~」
「お前はネフトを襲ったそうじゃないか?また彼女に会わせるわけにはいかない。来客の部屋を用意するのは危険だ。幹部が集合した魔王城で勇者がいるのがバレたら命が無いと思え。なのでこの部屋にいろ、一歩も外には出さんぞ」
なにおー!ふざけたことを!
「監禁じゃねぇか!」
「信じてる」
ビクッ
何だよ急に…
「何百年も続いた憎しみに終止符を打ちたい。私の興味は人間界にも向けられている。互いに手を取り合い助け合う世の中にするためには勇者、お前の腹の底を見せてみろ。私を殺さない。傷つけないと約束しろ。私はネフトを狙ったのは人間かもしれないと思っている。魔界は一枚岩では無いのは知ってる
から魔物の犯罪の可能性もある。だが、私はまだ人間を信じてないのだ。勇者よ。人間の代表として私の心を変えてくれ」
なんのこっちゃわからんな。
「示してくれ…自分は本当に人間と魔物を繋ぐ橋になると。お前はネフトを私を利用していないと」
「勿論だ、俺は本気の本気で互いが血を見ない道を歩いていきたい…ただそれだけだ。考える頭があるなら考えろ、目の前にいるのは友か殺し屋か…お前の観察眼で見てみろよ。お前の眼には俺はどう写る?」
「ブレ無いな…勇者は…」
試してんのか?
「私は違う…仲よくなりたいとは願っても心の底では何処か疑心暗鬼な部分がある。勇者がどんなに優しくしても心で繋がる気がしない。何だろうな、距離感があっていつまでも繋がる気がしない…」
「私の心を揺り動かしてくれ」
「そうか、なら自分の意見を持って確りとぶつかってこい。でないといつまでもたっても遠いままだ。
俺が手をさしのべたなら確りと掴め。俺が引っ張ってやるよ。それでも俺が頼りなかったらその手を離せ。自分で決めろ。離れていくもの俺は追わず。その時はお前が俺を殺せ、俺は平和のためにこの地に来たんじゃない。でも、俺はわかってくれるなら仲よくしたいと思ってる。俺は命令を無視しても魔王を助けたいと思ってる。出来なかった時は殺せってことさ、命令を果たせなかったら俺の存在意義は消える。その為だけに俺は来た」
「勇者は、私より大きな使命の下、自分の命を燃やして我々を救いたいと願っておるのだな?」
そうよーん。俺はこの命を賭ける!
「勇者よ、命は軽々しく賭けるものではない。最期までとっておけ」
「それだけ本気なんだよ」
マジよマジ!
「魔物達の未来のために人間とは手を組む必要がある。引っ張ってもらわなくて結構だ。その代わり共に歩もう。お前とは手を繋いで同じ歩幅で歩いて行きたい」
魔王…
「私はお前に賭けるぞ、お前なら殺されてもなんだか許せそうだ」
「やらねーよ」
「魔物の未来のために共に歩もう勇者」
「光栄だな魔王」
こうして俺と魔王は地味に固ーい絆で結ばれたのだった。貴方と私は固ーい固い、固結び~♪
「てかさ魔王?」
「ん?なんだ勇者」
「さっきいい台詞言った後に言うのもなんだけどもさ…」
言っちゃおう。
「会議の内容とか教えてくれないの?」
「知らんぞ出てないから」
え?
「あんなの幹部の連中が結集して総攻撃をするとかそんなのばっかなのだ。総攻撃をするには魔王の許可が必要になる。総攻撃なんてするきもないのでずっとサボってる。どうせ幹部がそろって作戦会議でもしてるのがオチだろうな」
へー
「それよりも勇者よ」
「なんだ?」
「アスナの捜索、人間界に帰ったらどうかよろしく頼む。こちらでも捜索は進めておく」
「はいよ、了解」
「後、この塔に来るようにネフトに言っておいたのでもうじき来るだろう」
「いいのか?」
「私もついてるがな」
何でもいいよ、ネフトの無事が確認できるなら。
「それにしても勇者は本当にお人好しだな魔物のいざこざに首を突っ込むとは」
「俺も被害に遭ってるからな。仕返しだ♪」
それ目当てね。
「やはり勇者は勇者なのか…」
「ユーウーさーまー(涙)よくご無事で(涙)」
「うぎゃーー!」
窓の外にドラゴン化したネフトがへばりついている。普通なら襲われてるようにしか見えない状況。
「んー♪ユウ様~♪(ぬくぬく)」
「離れろ暑い」
「嫌です♪やっと正気に戻ったんですもの(クンクン)あ~ユウ様の匂い♪」
「女王様…はしたないです」
「下がりなさいグロリア、貴女がユウ様を誘惑して部屋に連れ込んだのは知ってるんですから(クンクン)」
「なぜわかる!?」
「グロリアの体臭がしっかーりついてますからね匂いますよ(怒)他にも女の匂いが(怒)」
何!これはまずい!!
「ゴロニャーン♪」
タマ登場!
「アスナではない!誰ですかコイツは!ユウ様から離れなさいしっしっ!」
「フーー!!」
「タマ、行きますよ。失礼しました魔王様」
「うん、下がっていいよー」
タマが背中に張り付いて離れない。爪たてんな爪たてんな。ネフト、胸当たってる!離れろ!
「ネフト離れなさい。貴女には話がある」
「はい…魔王様」
「ゴロゴロゴロゴロゴロ♪」
俺の背中を勝ち取ったタマがのどならしてる。おんぶしてるけど重い…
「彼には大事な使命があり、人間界に帰らなければなりません。人間界への境界線までの警護は貴女たちにお任せします。他の者ではダメでしょうね、アスナの件は私が特殊部隊を編成して犯人の特定、救助に向かわせます。いいですね?」
「………わかりました」
こうしてネフトはタマを連れて部屋を出ていった。
「これでいいの?」
「ごめんな」
「謝るような事などないじゃないか」
なんか残酷な事言わせちゃったみたいだし。
「出発は明後日くらいか?」
「そうなるかな」
「ふん、お前とはもう少し話していたかったが」
「この協定が現実になったら嫌でも会いに行くさ」
「きっとだぞ」
このあと波瀾万丈な運命が始まる。
もうそろそろ魔界ともオサラバの予定




