暗躍する陰
飛び続ける事、数時間…もうお昼ご飯の時間かな?
皆が高度を下げていく。俺はまだ生きていますか?
皆が動きやすいよう人型の姿になる。俺はいまだおっちゃんの背中に掴まってカタカタ震えている。
地面に降りれない…体に力が入らない。
「坊主いつまで乗ってんだ?休憩だぞ?」
「無理無理、一歩も動けない」
「まぁ、貴方様ったら可愛いですわね♪」
つつくなネフト(怒)
「ヤメレ~」
「あら♪すいません貴方様が愛らしくて愛らしくてつい我慢出来ませんでしたの♪」
「ううう…」
掴む力はついた気がする。俺も必至だったから…優雅な空の散歩みたいな可愛らしいものじゃない。生きるか死ぬかのサバイバルだ。俺にとってあのさっきまでいた空は地獄だった。
「なんだお前♪死にそうになりやがって♪」
「うるさい…どっか行け…お前の顔見ただけでこっちは吐きそうになってくる…」
「僕にそんな口聞いていいのかな?」
ちょっ!足持つな!!落ちたらどうすんだ!起き上がれなくなるだろうが!
「あれ~(泣)」
ついに力負けし、顔から地面にビターンとぶつかった。受け身もとれない。顔が痛い~
「お?泣いてるのか?おもしれ~♪」
顔もあげられず涙の水溜まりが大きく広がるだけだった。情けないとは思わない。
「ドラコ?周りの安全確認はどうしたのですか?」
「すいませーん!?今生きまーす!!」
そして根性悪は去っていった…
「坊主大丈夫か?水でも飲むか?」
「要らない…(泣)」
「本当に大丈夫ですか?酔ってしまったのですか?
酔い止めの魔法をおかけしましょうか?もう遅いですけど出発前にかけましょうか?」
気遣いは嬉しいけど…
「空飛んだの久しぶりだったの…それに前飛んだ時は安定してたしあんなにも長い距離じゃなかった。
前は行けたんだ(泣)」
顔を見られないように伏せて言うが俺の顔は今大洪水が起こっています(泣)
「いや!人間なのに空を飛んだだけでもすげーよ!
な、元気だせって!」
「ちょっとの間だけ一人にして(泣)」
「坊主?」
「言う通りにしてあげましょう」
「そうだな、坊主!飯の時間になったら呼びにくっからよ!」
俺は横に三角座りになって体の感覚が戻るのを待つことにした。密かに復讐の炎を燃やしながら…
「あれ?ユウ様はどこにいらっしゃるのですか?」
「まだ泣いてるんじゃないでしょうか、いやーさっきは見物でしたね♪」
「飯の時間になったから呼びに行ったんだけどよ、まだ要らないって言って横になってるよ」
「心配ですね…アスナ?呼びに言って来てください
最初の着地エリアにいます」
「はい!」
「えっと…この辺りのはず…あ!いた!」
「ユウ様どうなされました?具合が悪いのですか」
「………」
「ユウ様?」
「チャージ…」
義手の水晶が青く光ったように見えた。
「チャージ…」
また義手の水晶が青く光った。
「ユウ様?何をなさってるのですか?」
横になって見えなかった顔を見て背筋に悪寒が走った!
「キャーー!」
「なんだ!?」
「呼びに言ったアスナの声だ!!」
「小僧とアスナに何かあったのか!!」
そして全員最初の着地エリアに向かう。
「た、助けてー!」
必死の形相で走ってくるアスナ。
「何があった!?ユウ様は?」
「わかりません!何が起こってるのか…」
そしてその後ろからユウが迫る。何故か剣を抜いて地面をカラカラと引きずりながらゆっくりと歩いてくる。うわ言をブツブツ言いながら…
「貴方様、どうなされました?」
うつ向いていて顔は見えない…でも左腕の義手が異常だ。肥大化して色も赤黒く変色し、義手から謎の触手が伸びて心臓部分に何本も刺さっている。あからさまに普通じゃない周りから黒いオーラが出ている。間違いない、殺気だ。
「ユウ様がずっとチャージ、チャージと呟かれてゆっくり振り返って…」
「それで!」
「わかりません!急な事でしたので目の前で何が起こったのか!?」
錯乱していて何言ってるかわからないでも今のユウが危険なのはわかる。
「全員後ろに下がれ…」
「でもグロリア様!危険です!一人なんて!」
「周りから出ているのは殺気だ。殺気を使えぬ者が下手に近づいたらショック死であの世行きだぞ…」
指輪から刀を出す。久しぶりに使うな…殺さずに止める事が出来るか…向こうは手練れ…危険だと体で感じる。今皆を守れるのは自分しかいない。そう思った。
「ユウ様、剣を納めください。でなければ女王の身の為ユウ様を切らねばなりません」
警告も聞かずただ剣を引きずりながらゆっくりと歩いてくる。下を向いて顔は見えない。
「これが最後の警告です!止まりなさい!」
「貴方様!?どうなされたのですか!!」
「女王様!お下がりください!」
「殺気を使えるのは貴女と妾だけ。それにユウ様の力は他の人間とは違い異常です。貴女一人では必ず死にます」
それは自分も薄々気づいていた。力の差が違う、自分とは各が違うと人間に思いさらされた。
そしてユウがゆっくりと顔を上げる。
「ひっ!」
アスナが悲鳴を上げる。瞳が無い。本来あるべき所に赤茶けた色の水が溜まっている。そして水が頬を伝って流れ落ちる。
シューシュー!
なっ!地面が溶けている!何だあの液体は!よく見ると動いている。生き物か?他の生き物に寄生し、しかも他の物を溶かす生き物がいるのか!寄生されているユウは溶けている様子はない。全くもって理解出来ない!何だあの生き物は!
「貴方様?どうしたのですか?返事をしてください…お願いします…」
「嘘だろ…何があったんだ?」
「坊主?坊主なのか?」
「グロリア様!」
「来るな!」
こうなったら捨て身しか無い…
「全員女王陛下を魔王城まで送り届けろ!途中降りずそのまま全速力で魔王城まで行け!」
「グロリア様何を!!」
「ロスト…あとの事は頼んだぞ…」
「そんな…」
「聞いたでしょ!早く行くわよ!」
「グロリア様を置いていけって言うのかよ!」
「甘ったれんな!それくらい覚悟の上で全員任務についているんだ!誰かが女王を無事送り届けないと
グロリアの意志も無駄になるだろうが!」
「妾は…」
「妾はそんなこと認めない!」
「女王様!?」
まずい!このままでは!
「貴方様!正気に戻ってください!」
それまで沈黙していたユウが動き出す。
「ヴガアアアアアアア!!」
溶解液を圧力をかけて指の隙間から勢いよく飛ばしてきた!それは鋭い水圧のカッターとなって女王に襲いかかる!
「ユ、ウ、さ、ま?…」
「女王に手出しはさせん!」
自分の指輪から出した刀で水圧のカッターを防ぐ!
「すいません女王様!無礼は承知です!」
女王の服を掴んでロスト達がいる方向に投げる。
それをドラコが受けとる。
「先に行ってるぞグロリア!」
「必ず戻ってくださいよグロリア様!」
そうして全員ドラゴン化して飛び去る。
それよりまずはこっちだ。どうしてこんなことになっているのか考えるよりはどうやってユウを助けるかが問題だな。
「ヴヴヴヴッ…」
「どうしたのだユウ様、随分とお姿もお変わりになって。何があったんだのです?」
「ヴヴヴヴ…」
「答えるはずがないか…」
意識はあるのか?そのような様子はない。謎の寄生体に操られているだけなのか?そもそもあの生き物、確かに魔界や人間界には人や魔物に寄生するスライムの類いの生物は存在する。でも周りの物を溶かす生物は聞いたことがない。普通のスライムなら獲物を取り込んで体から消化液を出して捕食するが
寄生体スライムにそんな能力は無い。突然変異したスライムなのか?それなのにユウに害が無いのはおかしい…害が無い=ユウの体はもう人間じゃ無いのか!?
「ヴガアアアアアアア!!」
「考える暇もないか!!」
右手の剣を刀で受け止めるがさっきの水圧カッターのせいで刀がポッキリと折れてしまう。
「これは!」
「ウガッ!!」
左腕の義手が腹を思いっきり殴り飛ばす。そして、殴られた所から蒸気を出して鎧が溶け始める。
急いで脱いだがこれで身を守る物がなくなった。
そして指輪から最後の奥の手を出す。
「月光刀・月影」
愛用の刀で魔界にも数本しか無い業物の刀だ。代々受け継がれてきた。家宝でもある。
「さぁ、最後の戦いと行こうか…」
「ヴルガアアアア!!」
全身から謎の触手が伸びて襲いかかってくる!
「全部この剣技の前では無意味だ!」
この技で司令官という職につけたと言っても過言ではない。すべてを消し去るほど早い手数の剣技。
「頑砕奮迅!!」
目の前、刀の届く範囲内全ての触手が粉になる。それは早すぎて刀には謎の液体もつかない程に…
「ヴガアアアアアアア!?」
「ダメージがあるな…本体は液体と言うよりこの触手なのか?」
触手が刺さっている胸の部分、瞳の奥の赤茶けた色の液体。多分これは野生の魔物ではない。触手型の魔物とスライム型の魔物を掛け合わせたキメラのような生き物だ。
「誰が放ったんだ…狙いは女王…何故だ」
恨みをかうようなお方ではない。人間達のスパイが物を使って…裏切り者と思ったユウに寄生させたのか?それは無いな。そもそも魔物を嫌うような奴が魔物を使うか?ならば敵は身内か?
「ヴオオオオオオオ!!」
「そうだったな戦いの途中だったな」
まずは厄介なスライム型の魔物から。
「ライトニング・ボルト!!」
ユウにはすまないが救うためだ、許してくれ。
「ウギッ!」
瞳から赤茶けた色の液体が流れ出てくる。そして口からも…
「オエーー(涙)気持ち悪!なんだこれ(涙)」
「ユウ様!正気に戻りましたか!」
よかった…やっとほっとできる…
「スライム型の魔物に中枢神経をジャックされてコントロールされてたのですね」
「それでさ…この胸から出てるミミズみたいなのは何?抜いていいの?」
「触手型の魔物ですね。これはどうすればいいのか考え中です」
「ちょっと手を出して」
「え?こうですか?」
「そうそう、魔力ちょっと貰うよ~」
魔力が吸いとられている!?
「ユウ様何を!?」
「いやね、何で魔物に聖職者がいないのか考えていてね。神の権能を使えるのは人間しかいない。それは魔物の体内には魔力があって使えないから。なら魔物に回復させる力を流したらどうなるのか?」
びっくりした。そんなこと考えた事ななかったからだ。魔物を回復させようなんて考える人間もいないし、神の権能を使おうなんてアホな事を考えている魔物も見たことがない。
「いくぞ…キュア!」
触手がウネウネと動き出す。気持ち悪い。そして胸から出てきて地面にのたうち回る。苦しそうだ。
「トドメにキュア!」
そして触手はみるみる内に霧状になって消えた。
「さて女王に追いかけますか?」
「待て…」
急に鋭い顔つきになる。
「どうしたのですか?」
「俺にさっきのやつを植え付けた奴がまだ近くにいる。見えないけどきっといる…」
「多分竜の国を出た時からつけられてたんだ…」
「そうなんですか!?」
迂闊だった。つけられてたとは…
「敵の狙いはわからない…でも女王を追わず俺達を見ている…このまま魔王城に行くのはまずい」
「でもとりあえず俺を始末するのが目的で追わなかったのかな?」
「それは何故です?」
「顔を見たから」
「本当ですか!!敵の特徴は!」
「それはここを離れてからにしよう…」
「何故です?」
「次に二人とも寄生されたら終わりだからな」
またしても迂闊だった。うぅ、司令官として恥ずかしい…
「乗せてくれるかな、何処か近くの街によって宿を探そう。このまま敵を引き連れて魔王城に行くのはまずい。そこで決着をつけよう!敵は顔がバレて広がるのが嫌いなようだし?」
「敵がつけてきたと言いましたね?それは敵も空を飛んで来たのですか?我々のユウ様以外の誰にも気づかれず?」
「それはあとで話す。ドラゴンになってくれ…」
そしてユウを乗せて一番近くの街に向けて飛び去るのだった。
話の進め方が最初はユウ、次にアスナ、それから最後まではグロリアで進んでいます。




