全部捨ててフリーダーム!!
「へぇ~、仲が良さそうね…ジークフリードさん?
約束をお忘れですか?」
「うおっ!びっくりした。そのつもりだったけど」
「それに貴方…人間だったとはね…あやしいとは思ってたけどまさかね…なに?私達姉妹の暗殺が目的?人間らしい姑息な作戦ですわね」
いや…バレたか。どないしよ…
「まさか人間だからって殺さないですよね?」
それだけは勘弁な、国外追放なら喜んでするけど
処刑とかマジしゃれになんねー!!
「殺すなんて生ぬるい…人間界の情報を全て吐くまで拷問して殺すに決まっている」
「お姉様!お止めください!この人は魔物と人間の戦争を止める鍵なんです!」
「妹を狙うこの男を見てわかった…平和なんて無駄!人間は皆殺しだ!」
「お姉様!」
何が人間を恨んでないだ!急に襲いかかって来るじゃないか!ネフトの為にここは気絶で勘弁しといてやるよ。
「魔法ですか?無駄です」
「これは!」
光の矢が三つ体を貫く…痛みがない、なんだこれは
体の力が抜けるような気がする…
「失われた魔法…ロストマジックの一つだ。貴様の魔力の通り道を三ヵ所魔法の栓で止めた。これで魔法は一生使えない。後は精霊術に気お付けるだけ。
精霊に対する魔法も修得済みだ!これで赤子の手をひねるより容易い♪」
「ぐっ、くそ~」
魔法封じか…かなり高等魔法みたいだな…冥府の魔魂との通り道から魔力が流れない…これで一生魔力が回復しなくなる。
「なんで酷いことを…」
「これもお前を守るためだ…国のため、民のためなのだ」
「勝手に俺のこと悪役にしやがって…」
「その腕の紋章…!貴様に妹は勿体ないわ!さっさと死んであの世で亡者と結ばれな!」
腕の紋章が砕け散る。ネフトの腕の紋章も同じく砕け散る。俺とネフトの誓いが…大切な約束が…
「死ねー!!ジークフリード!!お前に妹はやらん!!さっさとくたばるんだな!!」
あの攻撃は防げない、魔法で防御は出来ない。精霊で防げる攻撃じゃない。ベルセルク化も冥府の魔魂が無くなった今の俺には使えない。魔力が遮断された影響で体の動きが鈍い…避けれそうにない…
ドラゴンになった女王の爪が迫る。魔法で強化しているのか蒼白く光っている。ここで死ぬのか?
「お止めくださいお姉様!気をお鎮めください!」
ネフトが俺と女王の直線上に躍り出る!
「な!?早く退くんだ!!」
勢いをつけて止めれないのかそのまま降り下ろされる。ネフトが死ぬ?今のネフトは人間の姿だ。あんな巨大な爪で切り裂かれたら間違いなく死ぬだろ。
そんなことはさせない…せめてネフトだけは…
「危ないだろ…退いてな!」
「きゃっ!」
最後の力でネフトを攻撃の届かない横に吹っ飛ばす
と魔法を発動させようとする。体の中の残りカスでもいい…俺の最後の魔法だ。体から魔力を集めて左腕に集中させる。怪我しても知らないからな…
「犠牲魔法、一葬双傷ヴォルダギオン」
何かを得るには何かを失う。命が助かるのなら…
迫り来る爪が胸に突き刺さる。貫通する瞬間魔法が発動する。左腕が爆散する。辺りに肉片が飛び散り
血が床をおおっていく。そして発動した瞬間女王が吹き飛んでいく…
「きゃーー!」
叫ぶ位なら大した怪我はしてないな…
「なんて事をしたんです!」
ネフトが走ってくる…俺はそのまま倒れこむ。
「聞こえますか!?死なないで!!お願いします!!」
「怪我は?無事か?女王もネフトも怪我はしてないな?」
「ええ…ええ!大丈夫です!貴方様に守って頂いたおかげです!お姉様もお怪我はありません!」
「そうか…なら、よ…かった…」
無くなった左腕のあった部分から血が止めどなく流れる。貫かれて肺が潰れたのか息が出来ない…皮の鎧なんか綺麗に切り裂かれ、えぐれた胸から流れる血で辺りに血の匂いが広がる。痛みなんか感じない
ただ体から感覚がゆっくりと無くなっていく。体が重い…俺を呼ぶ声も遠くなっていく。目の前で泣いているネフトの顔もだんだん白くボヤけて見えなくなってしまった。
(ああ、結局何も解決出来なかったな…)
そして意識を手離した。
「気がつきましたかユウ殿?」
おいおいお前も死んだのか?冷静になって周りを見るとネフトも女王もいる。
「一週間も眠ったままだったんですよ?」
「セントーレ…ごめん」
「なんですか?急に謝ったりして?」
「俺の優勝記念パーティーが…」
「それは傷が治ったら一緒にしましょう♪」
傷…傷か…。左腕を見ると、いや、正確には左腕があったか…やっぱり無かった。そして上体を起こして皆を見る。
「すいませんでした…私の勘違いでその…なんでも償いはさせてもらう。許してなんて甘い事は言わない…私は貴方の人生を奪った…私の両親を殺した勇者達と変わらない。私は最低のドラゴンだ」
「そんなことは…ゴボッ!」
咳き込むと血を吐き出す。息をするだけで痛いとはな?怪我はどうなってんだ。
「ゆっくり休んで下さいユウ殿!」
「この国には聖職者がいないのです。ヒーリングポーションのような薬もありません。ただ傷が腐ったり感染症を引き起こさないように保存の魔法をかけることしかできません。妾が必ず助けますのでそれまで辛抱してもらえないでしょうか?」
「気にすんなネフト、俺は大丈夫だから…」
「私のせいでこんなことに…」
「俺が悪いんだ…人間のくせに調子にのって女王の妹にちょっかい出したから…」
「それは妾が一方的に…妾のせい?」
「落ち着けよ、誰のせいでもない…」
「私達に出来ることならな何でもさせてもらう…何か望みはないか?出来ることならな何でもさせてもらう」
何でも?出来ることならか…特に願いも無いな。
「何でもってのは言い過ぎだろ」
「私に出来ることならな何でも」
「死ねって言ったら死ぬのかよ」
懐から短剣をとりたす!!やめんかい!
「冗談だから!!やめてー!」
「お姉様!お止めください!」
「この命をもって償います!」
「セントーレ!手伝って!」
俺の冗談のせいで大パニック!ごめんなさい…反省してます。そして女王から短剣を奪う。
「没収だこんなもん!」
短剣を眺める。そしておもむろに左腕の傷口に突き刺す。痛い、痛い。何回も突き刺す…
「ユウ殿!お止めください!」
「貴方様!何をなさってるのですか!」
「痛い…」
「当たり前です!いったい何を…」
今度は左腕があった場所を突き刺す。感覚がない。
何度も何度も何度も何度も突き刺すが何も感じない
。ただ空を切ってベッドに突き刺さるだけ。
「はは、ほんとに無くなっちまったんだな…」
「ユウ殿…」
「惜しんでもしょうがない、俺が自分で決めてやった事だ」
「女王様?お願いがあります」
「貴方の願いなら喜んで」
「ネフトとの婚約の話は放棄、でもその代わり幹部会議にネフトと一緒に同行する。もちろん幹部を殺してやる~とかそんなんじゃないぞ?色々と聞きたい事があるんだ」
「わかりました」
「お姉様!?」
「彼の意思です」
「これが会えるのが最期みたいな顔すんなよネフト。俺はまた人間界に帰ってもまた来るって!」
「そうじゃないんです」
なんだ?
「貴方様との繋がりが消えてしまうような気がして…だから」
「俺とお前は元夫婦(?)だ。それでいいじゃねえか」
「え?夫婦?」
「後で話す、ちょっと待っててセントーレ」
「夫婦らしいこと何一つしてないのに…」
「だな、でもお前の騎士らしく助けたじゃないか」
「でもそのせいで…」
「もう掘り返すな!!」
「私のせいで…ぶつぶつぶつぶつ…」
「ほらー!!」
上手いこといってたのに~
「今後この話は無しな」
まったくもー!!
「もう一つ謝らないといけないことが…」
「この埋め込まれてる栓だろ?」
「はい…」
俺もこの栓を外してベルセルク化して回復しようと思ったが特殊な魔法らしく無理だった。
「なんとかならないのか?」
「師匠ならなんとか…」
「なら行こうや」
「その体じゃ無理ですよ!」
そうだった…動けないんだった。ってことはつまり
俺は…
「動けるようになったとき会議終わってるよね?」
そうだよな!終わってるよね?
「はい…」
「お姉様!?」
「叶えられる願いは何でも叶えさせてもらうと言ったのに…情けないですぅ…女王失格ですね…」
女王の体の周りが光出す。なんだ?
「これからは貴女が女王ですネフト」
「急すぎですよお姉様!」
「私はもう何もする気にならないのです。最初から幹部になった貴女が女王もするべきだった。遅かれ早かれと言うやつです」
「お姉様…」
「それならお祝いだな皆はパーティーにいっておいで!俺は病室にいるからさ」
「では妾も…」
「主役のいないパーティーなんてダメだよ行ってこい!!」
そして女王とネフトが去っていく。国民全員でパレードみたいな事をするようなので数日は平和だ。
女王は去り際に何か不吉な事を言い残して言った。
「可能性ですが一時的に魔力を補充出来るかもしれません。詳しい話は後程…」
絶対なんかあるわ~そして残ったセントーレが喋り出す。
「ユウ殿…」
ん?なんだろう?
「さっきの話です…ネフト様と夫婦とはどういった理由でですか?」
「元気になってからでいいか?今苦しい~」
「はっきり言ってください!」
なに怒ってるんだよ…
「大会の優勝した賞品の一つだろ」
適当にいって話を濁す。
「嫌々なんですか?」
「流れで無理矢理だ」
「なら許します」
なんだか知らないが許してくれた…バンザーイ
「セントーレはパーティー行かないの?」
「誰かがユウ殿についててあげないと♪」
そして照れた顔で間近に迫る。その時だ…
ガチャッ!
ドアを開けて大量のメイドの姿の美女が入って来たのだ!体中あっちこっちに鱗が生えてる。小さいが羽もある。そして鱗が生えた尻尾も見える…これはいったい?
「女王陛下より周りのお世話を担当させていただく
専属メイドでございます。何なりとお申し付けください」
ほぇー、中には俺が化けてたような鱗だけの美女もいる~やった!!こんなに沢山のメイドに囲まれて幸せじゃ~!
「ユウ殿の周りのお世話は私一人で充分だ!帰っていいぞ!」
「そうはまいりません、女王陛下の命令ですので」
「どんな願いでも聞いてくれるの!?」
「はい♪もちろんです」
「ウオオオオオオオオ!!」
「ユウ殿!そんなに興奮すると傷が…」
「ブハッ!」
そしてメイドさん達が血を拭いてくれて着替えまで手伝ってくれるとは…幸せじゃ~!
「ユウ殿!なに鼻の下伸ばしておられるのですかーー!」
ここ数日ネフトと元女王が帰るまでメイドとセントーレの仁義なき戦いが始まったのだった。残酷にも俺を巻き込んで…(原因は俺だがな)




