一度死ぬ
体が熱い…燃えそうな位だ。
身体の中の冥府の魔魂…取り込んだ悪霊が騒いでるのがわかる。魔力がどんどん上がっていく。自分の力が怖いくらいだ。筋肉が盛り上がり、髪の毛が伸びていく。身長も伸びてるようだ。
「上手く避けろよ…これを使ってお前らを殺さない自信なんて無いからな…」
理性がぶっ飛びそう。何もかも切り刻みたい。グラムを握る手も硬くなる。技の発動中は筋肉の強化、
どんな怪我でも治る強大な再生力、身体能力アップなど色んな面で役に立つ能力だが、デメリットもある。精神汚染による心の崩壊、または他の霊体に乗っ取られる確率が上がる。魔力の暴走など危険が伴う技である。故に禁忌の一つに指定されている。
「どうしたの?急にマッチョになって、さっきの方が可愛らしかったのに…」
「こんなおもしろい研究対象がいたなんて…サキュバスにくれてやるのは勿体ない」
全部ぐちゃぐちゃに壊シテヤル…
「マズハドイツカラダ?ドッカラデモイイゾ♪ヒヒッ♪」
ダメだ~体が持ってかれそう…殺さない自信ないよ
「キャッハー♪美味しそうな体してるじゃない♪」
サキュバスが一人突っ込んでくる。一人だけかよ、
まとめて来いよな。
ピンッ!
デコピン一発!それで壁まで吹っ飛んでめり込む。
危ない危ない、押さえたけど潰しちまうとこだった
気をつけないと…
「コンナモンカ?ピクピク震エヤガッテ、ツマンネ~マトメテ来イヨ!!」
「怯むな!全員で行くぞ!!」
ヒュッ!
「え?」
一人のサキュバスを除いて全員締め上げる。
あとはこいつだけ。他のやつは一瞬でかたずけた。
「油断し過ぎ~♪」
後ろからさっきサキュバスになった女が羽交い締めにする。ふ~、無駄なのに。
ガブッ!
首を90度曲げてサキュバスの首に噛みつく。首を曲げてもベルセルク発動中だから問題ない。じきに回復するだろう。
そのまま持ち上げて前のサキュバスにぶつける。
「キャー!」
体勢を崩したサキュバスを盾にする。
「アキラメロ 、デナイトコノ女ヲ殺ス」
「あんたバカじゃないの?そんなゴミは所詮替えのきく消耗品なのよ!」
リリスとリッチの二人がマジック・ミサイルを大量に撃ってくる!このままだと俺は耐えれるがこのサキュバスは死んじまう!仕方ねぇ、やるのは気持ち悪いがしょうがないよね。助けるためだ!
「ちょ!?ちょっと!!」
体を砕いて細くする。ベルセルク発動中ならじきに回復する。ちょっと邪魔するぜ、お前を助けるためだ!我慢しろ。
「イヤー!入ってこないで!!誰か助けてー!」
ボンテージ服はへそが出てるからな。ここから進入しようか。
俺はサキュバスのへそから胎内に進入する。
「イヤ!イヤ!出てって!リリス様!助けてください!」
子宮に到達、今から体を液状化します。余分な分はこの女と肉体融合して後の体は赤ん坊まで小さくしとくか。俺が使った趣味の悪い魔法、ライフ・ジェネシス。使いたくなかったがこのままだと悪霊に体を乗っ取られそうだったからな。乗っ取られるくらいなら体を消してやる!
「人間じゃないわよね?なに?あの生き物…」
「おもしろい研究対象ね♪」
「リリス様…助けてください…」
よし、出ていくか。
「ハロー!」
「キャー!」
リリスとサキュバスから悲鳴が上がる。当然か。
「なんなの貴方」
「なんだよ?気になんのリッチさん?」
普通ならな…今の俺の姿は…
「実はベルセルク化して俺の体が冥府の魔魂で吸収した悪霊に乗っ取られたんだよね…で、虐殺祭りになる前に俺の体を胎児までさかのぼって使えないようにした。その体はそこのサキュバスの子宮の中に置いてきた。残りの余分な肉体は彼女の体と融合してる」
「それで、俺の体の支配権が悪霊に代わって余った俺の魂と記憶が体から抜け出たの」
そう、今の俺は…
「魂だけの存在、つまりゴーストだ!」
肉体を失って魂だけになっちゃった♪いやー、なっちゃった♪って言ってるがこれからどうしよう?
「それなら母体のサキュバスを殺したらあんたも死ぬのね!!」
リリスがマジック・ミサイルを素早く撃ってくる!
あのサキュバスなら避けれないが俺なら可能。
「あれ!?避けれた!」
妊婦サキュバスはマジック・ミサイルを軽々と避ける。俺の反射神経をなめるな!
「そのサキュバスには俺の体が入ってるんだぜ?その一部は融合して中枢神経に入ってる。操って避けれないわけはない!」
はっはっはっ、俺はゴーストで不死身、消えることはない。サキュバスは大量の魔力をもった俺の体が入ってる。俺は殺せないよ~
「それではサラバ!!俺の体よ!ついてこい!」
「えっ!ちょっと!」
サキュバスが後ろからついてくる。その後ろからリリスとリッチが追いかけてくる。
「くたばれ人間!!」
「待ちなさい、サンプル」
そして魔方陣のある部屋まで逃げ帰る!!ここで!!
「おい!サキュバス!早く俺の体を産め!じゃないと逃げれない!!」
「はぁ!バカじゃないの!?そんなこと出来るわけないじゃない!」
折角ここまで来たのに~
「諦めろ!!今すぐ消してやるからな!!」
怖いよリリス…やめて!
その時サキュバスの体から俺の腕が生えてくる。
おお、これはキモい!!
サキュバスと肉体融合していた俺の体が出てくる。
ナイスタイミングで出てきたな!
「オ前ヲ殺シテコノ体ヲテニイレル!!死ネーイ!!」
自分に殺されかけることはまず無いだろ。
「ほらよっと!」
すり抜けて魔方陣の近くまで転がる。そこからヒラヒラ紙切れが落ちて紙切れが転送される。
「こっちだよ~脳みそバカ!!俺の体を使うのは100万年早いんだよバーカ!!」
「クソーーー!」
突っ込んでくる俺、ほんとに脳が足らんな。
「シフト・チェンジ!!」
俺の魂と悪霊が入れ替わる。
「オラ!取り込んでやる!」
影が伸びて黒い宙に浮いてる塊を引きずり込む。
「これで助かった~」
「追い詰めたぞ」
リッチ、サキュバス、リリスに囲まれた俺、絶体絶命。だが乗り切る秘策?がある!
「とりあえず、俺の勝ちだ!」
そう言うとゲートの魔方陣が崩れる。
「何したの!?」
「ちょいといじくらしてもらった!これで商人達の犠牲者は出なくなったな♪」
「折角の計画が~」
「へへっ、テメーらの作戦と兵士の数はわかった。アバヨ~」
「待て!このクソガキ~!覚えとけよ!」
俺はテレポートの魔法を発動させる。
「逃げられたか…けど何故わざと逃がす?」
「え?わざとなんですか?」
「黙ってろ。お前は他の仲間を医務室にいれていってこい。念のため体も調べてもらってこい」
「はっはい!」
こうしてサキュバスが出ていく。
「あの男が凶暴化したときわざとゴーレム達を退いただろ?何故だ?気になるからか?」
リッチが口をめんどくさそうに開く。
「そう、あの男が使った技がまったく理解できない。鬼人族の鬼神化に似ているがあの男は人間、まさか人間があんな能力を使えるなんて!!」
「どうしたの?そんなにも興味深い?」
「それだけじゃない。冥府の魔魂と呼ばれるもの、肉体融合、そしてライフジェネシスと呼ばれる未知の魔法、その出所も気になる。だからわざと泳がしておく」
「そんなこと言ったって行方がわからないでしょ?どうやって探すのよ?」
すると懐から水晶の球を取り出す。
「あの男から偵察用のゴーレムの反応が後ろのポーチから出ていた。おそらく偵察用ゴーレムを倒して動力源を回収したんだと思う。それをたどる」
「な・る・ほ・ど・ねそれをたどれば会えるのね?良かった♪あの子童貞くさくて狙ってたの♪あの子に私の体の良さをた~ぷりと味あわせてあげるわ♪」
「拒否する、彼のデータはすべてとる。彼の欲情処理はゴーレムか実験モンスターで試すから」
「ええー」
「ここで別行動ねさようなら」
「待ってよー!それじゃあ彼とまた会えないじゃない!ちょっと聞いてる?」
「また会えるのが楽しみねベルセルク…」
私の胸が熱い?原因不明、引き続き調査を実行する。
「ちくしょー…痛てーな、ベルセルク状態じゃないから体が傷だらけだ…」
詳しく座標指定をせずテレポートすると俺みたいに体がズタズタになる。腕も失わずにこれたのは奇跡だぜ!でもまあ死にかけだけど。
「眠たくなってきたな…少しだけ休むか…」
夢うつつになってくる。暗くなる視線の先に白いワンピースを着た女の子が見える…幻覚か、疲れてるな。俺は少し寝る、お休み~
「今はグッスリ眠って…」
その子は膝枕をして俺が意識を失うまで優しく俺の頭を撫でてるのであった。
「ユウさーん!何処ですか!?」
ユウさんの捜索隊に参加して必死で捜すが見つからない。魔方陣もユウさんも。
「何処ですか!?ユウさーん!返事してくださーい!ユウさーん!」
勿論返事はこない。あのユウさんに限って危ない目に遭ってるとか?そんなわけない!ユウさんは無事なはず!今にひょっこり現れるはず!!
その時、遠くで紫色の光りが見える。
「オーイ!誰か来てくれ!なんか転送されてくるぞ!」
魔方陣の回りに武器を構えた騎士団が集まる。
「さあこい!」
だが、出てきたのはユウさんでも魔物でもなく。
「何かのメモみたいだぞ?」
騎士の一人が喋る。そして手に取ると…
「これは!魔王軍の野望?魔物の量産だって!今すぐ女王陛下に報告だ!」
メモには血がついてるまさか…
「魔方陣が崩れる。誰かがゲートを破壊したな?」
そして魔方陣は静かに消失した。
「ユウさんは?まだユウさんが戻ってません!ユウさーん!何処ですか!?もう帰ってるんでしょう?出てきてくださーい!!」
そこへ騎士団長が近付く。
「残念だが君の相棒はおそらく魔物に…」
「嘘です!そんな…ユウさんが魔物にやられるはずが…だって…」
ゴーレムだって一撃で倒したんですよ?なのに…
「君の相棒はこのメモを送って自ら魔方陣を破壊したんだろう。立派な奴だ」
そんな…ユウさん…私はこれからどうすれば?
「ユウさーん!」
この涙も決して届かない。最後の涙が頬をつたう。
次から話が変わります!




