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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
来ました!異世界!!
19/135

ランクアップ試験と不穏な影

気まずい、どこから話そうか。


「ナウシカアちゃん!言いたいことがあると思うが取り合えず宿まで!」


皆を宿までテレポートさせる。ここからは覚悟を決めろ俺!全部俺が招いたことだろ!


そこから俺の部屋に戻り盛大な話し合いが行われることになった。俺の部屋がある二階へ行く階段が絞首台の階段みたいだ。気が重い…


ナウシカアちゃんを部屋のベットに座らせて俺は正座で下を向いてカタカタ震えている。後ろではニーナ達が俺の真似て正座しているがずっと喋ってる。

上手いこと弁護してくれよ!


「何がどうなってるんですか?奴隷は買ってはいいと言いましたがいきなりこんなに買って羽目をはずしすぎじゃないですか?」


全くその通りです。弁解の必要もないです。


「すいません、貰ったんです…」


「それでもです。こんなに奴隷が多いと生活費もバカになりませんよ?」


「責任もって養う余裕はあるんですか?」


猫を大量に拾ってきた子供のような気持ちを今味わっている。今更返しに行けない、育てることも出来ない。どうしろっていうんだ!


「明日の仕事をちゃんと頑張るからさ…いいだろ?ダメ?」


「ダメです」


こうなったら…最後の手段しかない…


「ニーナ」


「何ニャ?」


これしかない…


「奴隷の契約を白紙にする」


可哀想だが…


「わかりましたニャ、私達はご主人様の命令には従いますニャ」


「俺が仕事から帰って来たら…」


俺が出来る最後の償いは。


「全員一人で暮らしていけるように剣の扱い方を教えてやる!俺はバカだから剣術と魔法と精霊術しか使えないけどお前らが騎士団やギルドに入れる位強くしてやる!もうお前らを奴隷みたいな生活はさせない!」


「旦那様…」


「皆!覚悟しろよ!俺は教えかたが下手くそだから厳しくするぞ!いいな!」


それだけ言うとナウシカアちゃんを連れて部屋を出る。二人っきりで話をしたかったからな。


「ユウさんが行くとこは彼女が出来るんですね。私もその一人ですが」


「すまない、今度は全部俺のせいなんだ」


「わかってます。デルドレさんやミルティーさんがユウさんを好きになる気持ちが」


「ユウさんは優し過ぎます。危険を承知でミルティーさんやデルドレさん、私の村も救ってくれました。彼女達を路頭に迷わないように剣術まで教えると言い出すんですから」


そうかな?普通目の前で困ってる人がいたら助けるでしょ?


「人助けも仕事の内なんだ」


俺は勇者、勇敢な者と言う意味だが俺は勇者なんかになれない。俺に勇気なんてない。俺は根性無しの凡人だ。けど人に優しくなりたい、たとえ勇気が無くても人に優しくなれる。そんな「優者」に俺はなりたい。勇者なんてもんはもう一人の奴がやればいい。世界を救えなんて言われたが、俺は魔王を殺したくない。わかり会えるなら血を流さないやり方を探しだすだけさ!そのための力であり俺の存在意義なんだ!


「俺って変わり者かな?」


「そうです、この世界では珍しいお人好しです」


「俺はこの世界を変えたい。そのためには君の助けがいる。だから…」


「そこまで!言いたいことはわかりました♪私はいつまでもユウさんの仲間です!いちいちそんなこと言わないでください。ユウさんが何をしようと私は一歩後ろに引いてユウさんを守ります」


「ナウシカアちゃん…」


「明日はランクアップ試験です!二人で上を目指しましょう!」


そうだよな…そうだよ!


「待ってろよ魔王!お前も俺の仲間にしてやる!平和な未来に俺がする!!」














次の日


「なんでお前らがいる?」


「奴隷は基本的道具に入ります。ですので連れて行っても問題ないでしょう」


「それでもよー」


「ウチらも行くニャー!」


「私達も戦います!」


流石に武器も防具もない状態では無理でしょ。


「君達は宿でお留守番!わかった?」


「え~?」


こうしてナウシカアちゃんと依頼を受けることになった。大丈夫!どんな壁も二人で乗り越える!!


「貴方達ね?ちゃんと聖都まで護衛ヨロシク」


思ったより大人、ミルティーの話より。俺達の他に後一人男がいる。


「よろしく!僕はダンと言います。一緒に頑張りましょう!」


「こっちこそ」


同じランクアップ試験に挑戦すんのかな?仲良くしようぜ!


「もたもたしないで早く乗ってよ、時間が勿体ないでしょ」


「すいませーん、今乗りまーす…」


聖都とは王様がいる首都のことで、ここから割と近い位置にあるのだがモンスターや盗賊のでるかなりデンジャラスな道らしい。選んだルートは最も短いが最も危険な道。出現するモンスターも道から外れない限りそんなに強いモンスターも出ない。聖都の近くということで頻繁に魔物狩りが行われているからである。だが安心は出来ない。最近、聖都の近くの道は謎の人間の失踪事件が発生している。モンスターの仕業なのか盗賊に襲われたのか、その真相は未だに謎のままである。


「なんの気配も無いな」


「え?気配?」


「何でもない」


今ソナーを出して辺りを探っているがモンスターどころか動物一匹もいないという状況だ。


「おかしいな、ウサギどころか鳥もいやしない…」


「無事着けるならその方がいいでしょ?」


「ならいいんだが」


「意味ありげね、話して」


この周辺では動植物の生息数は多い、そのぶんモンスターの生息数は少ない。謎の失踪事件がおこる前に道を通った商隊は口々に様子がいつもと違うと話すがそれを説明出来る者はいなかった。そして商隊が消えた後に調査した騎士団やギルドの人間も全員何かがおかしいと答える。戦闘の後が無いからモンスターや盗賊に襲われたとは考えられない。だが商隊の人間が忽然と姿を消す。商隊の人間が危険をおかして道から外れるとは思えないし原因がわからなかった。しかし、この事件を調べていた一人のギルドの人間が調査した結果色々な不可思議な現象が起こっているのがわかった。


「興味深いわね、その続きは?」


「今から話すよ」


偶然その人間が商隊が消える前の現場を調べた。いつもと様子がおかしいと思ったらしい。いつもは聞こえる鳥の声が聞こえない、毎日調べていた途中でエサをあげてなついたウサギが出てこない。森が何故か不気味なほどに静かなのだ。気持ちが悪いと思ったがこれが失踪と関係があると考えたその人が森の中に入ることにした。少し歩いたとこだった。

地面が紫色に光ったのだ。急いで離れて見てみるとそれは巨大な魔方陣だったらしい。そこから急に魔物が出現したのだ!彼は恐ろしくなりその場から急いで離れた。彼は運が良かった。毎日調べていたのでここら辺の道に詳しかったし、出てきた魔物に気付かれる前に逃げられたから命が助かったと話したそうだ。ずっと見ていようとは考えなかった、だから助かったんだと。


「つまりそれと同じ現象が起こる可能性があるってことね?」


「そう言うことだな。起こるか、起こる前なのか。それはまだわからんがな」


「それで?調査はどこまで進んでるの?」


「全然、そしてこの話には続きがある」


この現象に出くわした彼だが誰も信じようとはしなかった。騎士団を出動させて辺りを探したが彼の言う魔物のような黒い影はどこにも見あたらなかったからだ。ギルドは失踪とは関係無いと思ったが調べてみると彼が通った後に商隊が通ったがその商隊が失踪したということだった。そこで本格的に調べることになったのだが第一発見者の彼は調査の途中謎の失踪をする。だから森が静かな時はすぐさま引き返すように騎士団から注意情報が流れてるはずだが…


「引き返しましょうよ」


静かに聞いていたダンが口を開く。


「そうです!帰りましょう!」


ナウシカアちゃんも言い張るが。


「何のために貴方達を雇ったと思ってるんですか」


と言われてしまう。


「ユウさんも帰るのに賛成ですよね!?」


「いや、このまま行こう」


「何でですか!!」


「誰かがこれを止めないと、それに森が静かなのは前からだ、引き返すのももう遅いかもしれん」


「何諦めてるんですか!遅くないです!!帰りましょう!!」


ちとヤバイことになったな。今はまだ様子見だけしようかな。


「この先魔力の反応が二つある、一つは動いてないがもう一つはこっちに向かって来るな…あからさま生き物だろうな」


「運がなかったですね」


「終わりだ~」


「どうするんですか!?」


口々に喋んな!今集中してんだ!


「ダン、剣を抜いとけ。お出でなすったな」


前方にでかい塊が立っている。オイオイありゃ…


「ゴーレムだな…ただのゴーレムとは違うな」


ゴーレムとは岩やレンガで出来た疑似生命体のことで人工的に作られたものと土地の魔力が流れ込んだものなど様々な種類、材質のゴーレムがいる。前のゴーレムは誰かに作られたものだ。それも相当の腕前だな。クリュネルが言ってたのを聞いたことがあるので知ってた。俺みたいな魔法使いってレベルじゃあねぇ!


「明らかにこの森には場違いな奴だなアイツがこの事件の原因だ、アイツが人間を拐ってた犯人だ」


大体話が見えてきたがまだ腑に落ちないとこがある。そもそも何でゴーレムが人間を拐う?アイツを作ったヤツは何を企んでる…


「考えてる暇はない、ダン!行くぞ!」


「無理だ…もう死ぬんだ…勝てるはずがない…」


「ユウさん…短かったですがとても楽しい時間でした…」


「私の商売人人生はここで終わるんだ…」


なんじゃ?どうしたんだ?いくらゴーレムが強いっていってもそんなに強くないよ?俺からしてみればの話だけど。


「ナウシカアちゃん!ダンに守ってもらえ!俺は奴をぶっ飛ばす!!」


「待って!死んじゃいますって!ゴーレムですよ!止まって!!」


死ぬか!こんなんちょちょいの…


「ちょいだぜ!」


そこでゴーレムもこちらに気が付いたみたいだ!


「ターゲット、確認中…確認出来ました。男2女2体捕獲します」


人型の岩の塊がこっちに向かって来る。デカイな~何メートルあんのかな?それを…


「一刀両断兜割!!」


真っ二つ、ああ、気持ちいい~


「オイ!そこでガタガタ震えてる場合じゃないぞ!しっかりしろ!」


ぼーと見てる三人組。たくっ!世話が焼ける


「ナウシカアさん、ゴーレムって確か上級モンスターですよね?」


「真っ二つになりました?あれ」


「そうみたいだな…いったい何者だ?」


すかさず動力源を回収する。これで再生もしないだろう。


そして気になるもう一つの魔力の塊。おそらく魔方陣だろう。

森の中を歩いていくとすぐに見えた。紫色の光りを放つこれは…


「ゲート?」


物質転送用の固定型魔方陣。つまり遠いところを点と点で結んでいて、一瞬で移動出来る。


「拐った人間はこの先にいる。そしてゴーレムを作った人間も」


行くしかないだろう。


「これが魔方陣」


後ろからナウシカアちゃん達が到着。


「ああ、この魔方陣からゴーレムが来たんだろう」


こうなりゃ調査だ!ゴーレムを使って人間を拐った奴を取っ捕まえてやる!!


「ナウシカアちゃん達はこの事を聖都の騎士団に連絡してくれ!騎士団の応援、後ここら一帯を封鎖してくれるよう頼んでくれ」


「私も生きます!」


「駄目だ!危険過ぎる!ナウシカアちゃんは聖都で待っててくれ。なに!すぐ戻ってくるさ!」


「絶対ですよ!絶対に…」


こうして魔方陣に飛び込む。人間拐った奴の面を拝んでやるか。

次から話が色々と見えてくる…かな?

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