デュラハン
先端の角にしがみつくだけで…くっ!方向転換も過激で振り落とされる!乗せる気なんてないんでしょ?ならここで降ろしなさいよ…降ろしなさいっていってんでしょーが!
「ネフト降ろせ!降りて戦うから!これじゃあ飛んでるばっかりで意味ないって…」
言葉に詰まる。出入口でなんかいっぱいおるのだが!ちょっと…なにあの軍勢!まっ魔王軍か!?黒い蠢く集団、あれって全部敵なの?
はっ!終わったろ、戦力差100倍なんてもんじゃないでしょう!俺が絶望しきっているところネフトはその場でホバリングして上体を起こす。
「グロリア!お姉様!後はお願いします!」
空からネフトが叫ぶ、洞窟内を反響してエグいほどうるさい。一瞬で気が遠退いたほどだ。すると下の城の瓦礫からコクテンさん、グロリア、それにタマとフィーリアが出てくる。メイドや使用人に衛兵などの姿もちらほら見える。さらにネフトは叫んだ。
「死にたくなければ自由に戦え!己が生き延びる為にだ弱く群れることしかできない者たちよ!ゴブリンより誇り高いと言うならば1人で100の敵を討ち滅ぼすまで死ぬことは許さん。犬死にすれば地獄にお前らの居場所はないぞ!」
国民を群れる雑魚と言ってのけ兵士だけでなく女子供まで戦えとな、しかも作戦もなく正面から潰し合えと?俺は混乱してしまった。そんな様子を見てか口元を歪めた。わっ笑ってるのよね?
「魔物は個が強い、しかし一人でできることはたかがしれています。人間は団結することを知っているから我々はいつでも後手なのです。これは学んでないのではありません。そういう戦術なんて事ができないのです。生き方ができないのですだから人間のユウ様が見れば奇異に写るかもしれませんがこれが一番力を発揮できるのです」
「けっけどよ…」
「大丈夫です、皆生まれながらにして最強の竜の血をひくものたちなのですから」
するといつもの優しい笑みのメイドさんが豹変しもはや獣、そう化け物に姿を変える。街の方でもよちよち歩きの赤ん坊ですら巨大なトカゲのようになって皆見る影もない。そして血に飢えた化け物たちは獲物に向かってひた走る。殺意だけが一斉に蠢く集団に向けられた。地を這い空を多い数では劣るこちらは大きさ獰猛さどれをとっても魔王軍のそれを上回っていた。
城門を乗り越えようとしたゴブリンがいた。ただ目の前の門を仲間と一緒に破城槌で壊そうとしていたのだがふいに身体が浮いたことに気がついたそしてふと顔を見上げれば
ガリュッパキッ
口を広げたワイバーンだった。頭蓋骨を噛み砕かれ噛み千切って飲み込む、咀嚼して食われる。ゴブリンにとっては恐怖を助長させるのに十分だった。ただそれはあっけなく命は狩られ、丸のみ食い放題だ、前衛はさっそく崩れ始めた。牙あるもの爪あるもの翼あるものなければ剣でも槍でも持って虐殺に加わる。人型であれ翼竜であれ地竜であれ共通して目の前の敵を万物を餌さと捉え襲いかかる。
「杞憂か、ひっひでぇー!」
「さてさて、楽な相手出はないですよどうも」
ネフトは人間の俺より目がいい、戦況がどうなのかいち早く見抜いていたようだ。なんか噴水?のように人が吹き上がって…現場では阿鼻叫喚の地獄と化していた。
「ガギャーギーギー!」
「行きなさいヒドラ!今日この日まで大事にとっておいた秘密兵器よお~!たっぷりと味わいなさい!」
7つの首を持つ毒蜥蜴、もちろんドラゴンなら耐性もあるだろうがリザードマンやワイバーンなど種的に劣る分毒にも弱いしなにより本家のドラゴンと同じでヒドラは大きく、逆に今度はこちらが食われる事態となった。捕食される側になると慌て逃走するものも現れた。
「おほほ、しょせんは烏合の集!相手になりませんわ~ほれほれ尻尾巻いてお逃げなさい!力のある本当にヤバい連中は群れるのを嫌って外に自分の巣を作って暮らしてることくらい調べはついてるわい!そいつらが危機を察知して集まる前にここを落とせば勝ちなのよ!オホホホホのホ!」
ヒドラの真ん中の頭に留まった鳥女がキーキーと甲高い声でマシンガントークを始める。幹部の一人でハルピュイアーのカルメンは勝ち戦にしか興味のない弱いもの虐めが大好きのドメスティック性悪女としてしられる幹部の一人だ。ドラゴンに戦争を吹っ掛けるのを反対したくせに一緒に強者のデュラハンのサキエラが就くと知ると即座に靡く性悪である。
毒の塊を吐き散らすヒドラを止めるものは誰もなく好き放題暴れまわった。そしてとうとう門を突破し市街地に侵入、そのまま城の城門まで攻め行った。周りの敵を千切っては食べ7つの首が毒を吐き噛みつきそしてまた獲物を探し食らう。
「ほんとドラゴンがいなければお話にならないわ!ヒドラっ!あの半壊したお城を綺麗に更地にしてあげなさい!」
ヒドラが城壁を破壊して入ろうとしたその時だった。ヒドラは宙を舞った、嘘みたいな巨体がくるくると回転して街の上、ゴブリンの陣営に落下した。街は破壊されゴブリンやリザードマンたちはそれの下敷きとなる。
「空挺部隊は即座に裏をとれ…第1から第6までは兵を降下させたら陣形が整うまでそのまま空中支援…第7から第11までは各地の鈍感を起こして回れ…ネフト様もこの辺は適当されて悪戯に兵を消耗させますから…」
「仕方ありません、あの子は昔から格下として蔑んできたのですから。確かにこの国の生い立ちは力ある我らの庇護下にただ集まっただけのおよそ国とは呼べないもの。秩序なんてグロリアがくるまでなかったのですから。文字通り無法」
呆れた顔のフィーリアとグロリアが現れた。二人してヒドラを前にして一向に怯む気配がない。大物クラスの出現にカルメンはさっそく逃げる算段を考え右往左往し始めた。あきらか取り乱している。
「ええーい!時間稼ぎにはなれよ…お前たち!今すぐやつらを血祭りにあげろ!ヒドラー!しくじるなよ!皆殺しにしろ!」
フィーリアとグロリアの間から真っ黒の巨体が現れる。口から黒い煙を吐きながら土色の体表はじょじょに黒く変わる。そのドラゴンはヒドラと同等の体格で毒だろうともろともしない最強と名高いドラゴン。
「名前くらいなら無知のお前でもわかるでしょ?カルメン」
カルメンの背後をとるようにフィーリアとタマが現れた。フィーリア的には歯牙にもかけないカルメンだが一応幹部だし、罪悪感はあるが叩き潰すことにした。なんか哀れで申し訳ないほど…敵が同情するほどカルメンは狼狽えていた。フィーリアもそこまで鬼ではないからどうやってこいつを片付けるか始末に困った。
「ひっ!いつのまに!七竜神がいるなんて聞いてない!」
「たまたま最近帰ってきたからね」
「よりにもよって最強のコクテン・ディアブロなんて連れてきて!卑怯よ卑怯!人でなし!悪魔悪女!」
肩で息をしながら全てを出しきったカルメンだがそれを黙って聞いて「うんうん、そうだね」なんてフィーリアが言うわけなく、次にフィーリアが顔を上げた時には
「遺言はおしまい?」
カルメンは号泣した。
「ところでユウ様?」おずおず…
急に場違いにしおらしくなり両手を組んだりなんかして内股で尻尾をくねらせながらもじもじしている。なんだよ…おトイレか?しょうがないやつめ、それまで耐えきるからあの瓦礫の山からトイレ発掘してこい。
「うむ、我慢できないなら言って(行って)よし生理現象だからな(求愛行動として認識)いいよ」
「いっいいのですか…?」
「戦闘中に非常識だがしょうがあるまい」
「でっでは、改めてその…結婚を前向きに考えてくださると言うことですね?」
・・・・はい?
「夫婦となればどんな困難にだって立ち向かえる強さを我々はて…「ちょっと待てよ」」
ネフトの頭の角に額をつけて考える。頭の痛くなる問題だ。まだ諦めていなかったか…はっきりと言ってやるべきか?タイプじゃないよって!いやここは傷つけないように言わないといけない。
「俺はネフトみたいな美乳より巨乳がタイプだ」
「ふえ?」
・・・性癖語ってもうたー!
突然のセクハラ発言キター!しかし野生に生きる女、ネフトは自分は胸がまだ未発達故にまだ俺に性的対象に見られてないと悟った。
「子育てに適した身体にまだ仕上がってない。まだネフトは俺とっては未成年だ」
焦るネフト、後数十年はこのまま成長しないだろう。つまり!あの馬とか(セントーレ)なりを潜める我が姉とか(フィーリア)とかおこぼれに群がるグロリアとかが台頭してくると!?
「うおーい立ったまま気絶すんなよ」
ネフトが白目向いてる。墜落しないからいいけど不安だ。あのまま行方不明になったデュラハンは今も元気にやっているだろうか。それでは聞いてください。15のあなたへ~
「拝啓~この手紙ぃ~!読んでる~あなたはぁ~どこでぇ~何をしてぇ~いるのでしょ?」
「ふんっ勇者相手にどこまでやれるかと期待したが思った通りだったな」
宙を浮いて~フライ!魔法か!突如底知れぬ不安にかられる。目の前にフードをかぶた不審者が…声は女性だが…美人の予感!だがそれは期待を裏切るものだった。
天井の洞窟にめり込んでいたデュラハンを魔法で引っ張ってくる。顎をカチ割られてはいるが死んではなさそうだ。それを羽織っているフードつきマントでくるむと綺麗に消えた。魔法で転送したかいやしかし!
「RPG無双剣!時津風!」
魔法併用の攻撃、飛ぶ斬撃を敵に集中して当てる。全部命中させたつもりが…手応えなし。マントは裂かれて正体を現した。
「てめえが…」
「フィーリア様!ご無理はなさらず!」
そう自分で言った手前グロリアは動けなくなった、突然背筋が凍りついた。背後を何者かにとられている。油断はしてない、絶対に!
「指揮官は君か?退路を防いだつもりではないだろう?精々時間稼ぎか、別動隊を外に放ったのだろう?まいったね、こちらの敗けだよ。そもそも感の鋭い親交派や穏健派がこちらの動きを察知して挙兵までしてきた時点で早急に落とす必要があったが」
「この兵力では無理だったね。知ってたけど」
グロリアは苦虫を噛み潰したように苦悶の表情を浮かべる。一か八かしかけるか!?
「うん、それは愚策だね」
「頑砕奮迅!」
指輪から月光刀月影を抜いたと同時に必殺技を繰り出すもそこには誰もいなかった。そんなはずはないのに!
「影はずっと君の足下にある」
増殖する斬撃、一度くらえば最後やがては塵も残さず消される。
フィーリアはやっとこの時気づいた。新手の存在に、もうグロリアはフードの人物の下で倒れている死んでいるのかどうかさえわからない。だがピクリとも動かない。
「お前がグロリアを!」
「カルメン、帰ろうか。我々の敗けだ。敵を留めておくことが出来なかった。援軍を呼ばれている直にここにやってくるだろう」
「まだ負けてない!ヒドラだっているし優勢なのはこっちだろ!だってあんたがいる!」
カルメンは突如現れたこの人物に期待を寄せていた。フィーリアはこの状況を危機的なものだと捉えた。不意討ちだろうとグロリアを失ったのはおおきな損失だ。戦闘続行は恐らく不可、敵が引くのは願ってもないことだ。激昂したフィーリアもなんとか自分を落ち着かせ冷静になる。
「あれがあるから君は駄々をこねて私を困らせるのか?」
フードが手を振りかざす、手には殺傷能力が無いに等しいナイフ、あんなものでグロリアがやられたというのか!?フィーリアはますますわけがわからなくなった。そんな考えを打ち砕くように背後のヒドラが肉塊となりコクテンは血を吹きその場に倒れた。
「なっ!?(一瞬で!?)」
「ちょちょちょっとー!何をしてぇ!」
「君が動こうとしないからだろう…手遅れになる前に撤退だまだ私たちなら逃げられる」
「逃げられると思ってるのか!?引き裂いて…」
強い殺気、自分より強い殺気。キリングオーラにフィーリアは立ち往生、次元が違う。
「あーあ、壊れちゃったよ。殺気で押し返されたのがそこまでショックだったのかな」
カルメンをマントで包み込むと手品のようの消失する。今度は自分も同じように姿を消す。
「ああ、血の気の多い弟子を回収せねば」
先走っていったそいつは洞窟の天井に突き刺さっていた。
「痛い目をみれば少しは成長して慎重に動くことも覚えるだろう」
魂の抜けたフィーリアが倒れ、辺りにはもう誰も立っていなかった。
「てめえが…デュラハンか!」
フードがズタズタに千切れそこにはなにもない。
頭がなく首から緑色の炎のようなものがゆらゆらと風でも吹いてるかのように揺れていた。
「今期の勇者は曲者とは聞いてたけど君のことではないようだね」
「はあ!?」
「失敬、あくまでも第一印象さ。知ってるよ君がメイビスがただ唯一恐れてる人だから」
「会えてよかったよ、また近い将来会うことになるだろうね。それじゃあごきげんよう」
「待てよ」
「まだ何かあるのかい?」
表情が読めない分不気味さに拍車がかかってるなだが俺はこいつを知っている。こいつらはきっと元はよく知る
「お前らってダークヴァ…」
デュラハンが手を振りかざす、攻撃か何かと身構えてみるが何をされたのか?何かが身体に当たった感覚がある。理解したそれが増殖する斬撃が消えていた。もうずいぶん増殖していたはずなのに同じ数の斬撃を俺に当てたのか?手で触って確かめる直にベルセルク化の超速再生で傷口が塞がる。デュラハンは人差し指を立てて口があるであろう場所にあてがう。
「これは秘密なんだ♪」
デュラハンはそれこそ今までいたことがうそのようにこの場から姿を消した。
「なんだったんだいったい」
緊張の糸が切れたときネフトが落下する。デュラハンが浮かしていた?そんな気さえする。ひとつわかることそれは俺とあいつの間にある実力差だということ。それとやつらは
堕落した神の従者だということ
「まだ戦闘は続いてる…くっ!?ダメージがでかすぎる!」
魔力をもってかれすぎて力が出せない。白目のネフトの瞼を引っ張って離しても起きる気配がない。ひっ一人でいくか…
グラムを杖にして前の行き場のなくし暴走した戦いを止めるためにまた歩きだした。




