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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
ジリジりまるカジリ!
124/135

ラブ&デストロイ

どうも寝た場所が悪かったのかすこぶる調子が悪い、なんか鬼気迫るものを感じるんだが。豪華な蜜蝋燭の照明は所々あるのにどこかいつもより暗く感じる。ベルトに着けたグラムを必要以上に調節する。どうも落ち着かない、この静けさが嵐の前の静けさというやつなのか。


「寝不足か、久しぶりに夜更かししたからな」


独り言のようにぶつぶつ、いや実際問題誰もここにはいないから独り言なのに。特に目的もなく外に出ようと長い廊下を一人歩く、まだ薄暗い廊下を一人で、時折メイドにすれ違うも軽く会釈してまた外に出る廊下を歩き始める。


「いや、やっぱ変だ。ネフトの魔法か?」


人の気配はない、後をつけられてるような雰囲気ではないのはわかる。でも胸騒ぎだけはする、危険だと頭の中で警鐘が鳴る。ネフトがまたすり寄ってきてるんじゃなく殺気を孕んだような…生唾を飲み込んだ。狙われている?

一歩足を踏み出した矢先、何もない空間、床だ、ただの床から剣が突き出た。冷たく鋭い鋼の剣が自分の喉元に狙いをすまし飛んでくる。全身から冷や汗が飛び出る、なんだってんだ?身を捩って何とか避けきる。壁に頭を打つも目を離したのは一瞬、その一瞬でまた剣は消えた。剣が床から出てきたがこの廊下の下に人が入れる空間でもあるのか?いや、床にある絨毯には傷がない。


「てっ敵だ!間違いなく…俺を狙ってた。ネフトがまた馬鹿やってんじゃない!殺気だ、明らか殺しに来てる!だっ誰だってんだよ!」


瞬間移動だろうと時空間移動だろうと魔力を帯びた後ってもんが残る。俺も移動系の魔法は極めた男だからもし敵が一瞬で移動、攻撃してまた移動したのなら痕跡が残るが…それが、ない。反響定位でも間違いなく誰もいない。インビジブルで透明になってるわけでもない。敵がどうやって攻撃しているのか検討つかない、どうする?


「殺戮の凶刃…ベルセルク!」


辺り一面に殺気を全開にして放つ。皮膚がピリピリと痺れ空気が凍るように冷たくなる。キリングオーラは殺気に敏感なドラゴンならこの異変を察知して誰かは来るだろう。ドラゴンフィア(これもドラゴンが放つ殺気)が同時に4つ返ってくる俺と同じかそれ以上の実力者。ネフト、フィーリア、コクテンさん、グロリアで間違いないだろう。即座に反応したのは流石だが争ってるのが俺とは向こうもわかってないだろう。


「どうした?時間はないぞ、逃げるなら逃げろさもないとドラゴン4匹相手することになるぞそれに勇者だ、勝ち目はないぞ」


奇襲する敵にベルセルク化で攻撃を受けてカウンターを狙うしかない。敵もだいぶと焦ってるかなこれで…そのまま退け!


「行った…か?」


グラムを身体の中心で構え敵を探す。いきなりどこからでも現れるやつだ。ベルセルク化で死にはしないにしろもし時空間魔法が使えて罠のある空間にほりこまれたら。魔力が尽きたとき、俺は死ぬからな。とりあえずここは移動するか?このままここで固まっても意味はない、外に出る…か?


背後から衝撃、冷たい感触が体内にある。そして胸から剣先が胸を貫いて飛び出す。すぐに筋肉が緊張して固くなる。引き抜こうと力を込めてもベルセルク化して膨張した筋肉はそれを離さない。


「RPG無識剣乱反転!」


おもいっきり上体を捩ってグラムで乱舞、敵を確認する前にだいたいいるであろう場所に剣を叩き込む!


「これはガキの遊びか?ただ剣を振り回すならしてもしなくても同じだ。当たるわけがない、本当にこんな素人に魔王は殺されたのか?」


文字通り何もない空間を切っていたのか。しかしはっきりと声が聞こえる。敵がいる、ことは間違いなくこうして反応がある。現に刺さったままになっている剣が何よりの証拠だ。大きさからしてバスターソードか、剣に実態があるからゴーストって説はないな。何にせよ謎の移動手段でこちらを襲ってくるのは警戒しても後手に回るだけだ。


仮説1 反響定位は弱い魔力の波長をぶつけてその跳ね返ってきた情報を読み解く、例えば岩と同化、敵も身体を何らかの影響で岩にできるとして反響定位が岩として情報を送る。から実際は石造りのこの城と同じ身体が岩になって岩の中、もしくは表面を擬態しながら動いてきている。


仮説2 ゴースト系の上位個体で普段は幽体で攻撃の瞬間に実体化している。幽体時は透明で目に見えないとか。魔力すら物体や魔力を透過するならあの攻撃法もわかる。


仮説3 これは


「俺の知らない時空間魔法、瞬間移動魔法。腕もピカイチで痕跡すら完全に消し去る…リッチでも無理なことをこんなやつができるとは」


地響きが近づいてくる、もうじきに誰か来てくれるはずだ。助かったのか?緊張の糸が途切れた瞬間


「敵前だぞ?正気か?こんなやつなら100回は殺せる」


「だから死なねぇって!むぐ!?」


いつの間にか引き抜かれた剣で同じ箇所に攻撃を叩き込まれる。その攻撃が終わった時、信じられない事が起こった。もう目の前の敵は攻撃していないのに回復が!?間に合わない!どんどんきっ切られてる!けど敵は指一本動かしてない!


「この技は特殊でな、お前の身体の中で斬撃が反響しあって増幅しやがてその身朽ちるまで永遠にその攻撃は止むことはない。急所に当たれば一撃で済んだもの…自分の反射神経を恨め。苦しむことになるのだから」


破壊と再生が俺の身体で起こっている。若干破壊が押してきているが…


「俺に勝ったと?それでノコノコ姿を現した訳か!」


「残心、死ぬまで気を抜くことはない。お前と違ってな。戦闘中に敵から意識をそらしたりはしない」


目の前の敵は女、重厚なアーマーで全身を覆ってる。なるほど、早く動けないから奇襲か。この実力からしてきっと…


「あの魔王も若造だ、タフさと脳筋が取り柄。長期戦ならまだしも」


「いないやつの話をすんなよ、俺が殺した!」


「うるさいな…次でトドメだ」


おかっぱ頭が揺れた剣を正面から下に構える。つり目が段々細くなり足を踏み込んだと同時に消える。今度はどうしたもんかね…またあの技を頭部とかに食らえばそれでおしまいだからな…


まだつかめない敵の移動、どこからともなく湧いてくる。そうどこから…いや待てよ。俺はこいつを知っている。


「(次で終わりにしてやる…フェイントを入れてやつの反射神経を逆手にとる。わざと避けさせてそこを討つ。向こうは避けるだけでギリギリだ追撃をかわす余裕はない)」


またしても背後から遅いかかってくる。気づいているが反応できていない!身体を捩って捩って…

上半身を180°反転させる。


「まだ予測の範疇だ」


「構わず剣を降り下ろす、それを両手で挟む!」


「でっ!それでどうした!?そんなものが策か!甘い甘い甘い!」


目の前の女は足払いで軽く俺の足を掬い上げる。上半身を曲げているせいで力がうまいこと入っていなかった。軽い衝撃で崩れる体勢。


「方法や…過程など…どうでも良いのだ!」


俺は挟んだ手を離さなかったベルセルク化した俺を腕力で捩じ伏せる!けっ!力が入らないなら悪知恵でもなんでも使うっきゃねぇよな!剣を押し込んでくるがこちらも諦めるつもりなんて毛頭ないわ!ボケぇー!


「勝った!死ねぇ!」


「死ぬかよ!そうだろ!?≪デュラハン≫よ!」


挟んだ手から光が漏れ出す。それは閃光となって周りを埋め尽くした。デュラハンは顔を歪め、俺はニヤリと不適に笑った。必殺!


「虎だまし!」


デュラハンは影の中を移動できる。そこは魔力も干渉できない場所、影から影へ移動できるデュラハンだが眩しい閃光に目を焼かれ次への影へ移動できなくなったら無様にも陸に打ち上げられた魚のようにピチピチと床を転げることしかできないだから嘗めすぎなんだよお前!


「魔王のほうが100倍強かったぜ」


「このくそ!?」


「あらあら私をさし置いて楽しそうですわね、混ぜてくれますかぁ!デュラハン様(怒)!」


立ち直ったデュラハンだが突如現れたネフトに強烈なアッパーを受けて天井を突き抜けそのまま見えなくなる。顎砕かれたろありゃ…てか今の衝撃で城が崩れ始めたのかポロポロと瓦礫が落ちてくる!壁のひび割れも広がってきてるし!


「まさか幹部が乗り込んでくるなんて…」


「幹部か!?確かに実力者なのは認めるが…あれが…勝てるか?」


「二人でなんとかするしかありませんわ。グロリアにコクテン、お姉様は外の軍勢を押さえるだで手がいっぱい、今回は妾たちだけでデュラハンを相手にするしかありませんわ~」


やつの実力は本物だ。確かに魔王より技術は上だろう。剣の打ち合いならこっちが負ける、影の移動での奇襲もやっかいだし腕力も魔王ほどではないにしろベルセルク化でも抑えられるか五分五分ってところだもんな。


「強いよなやつ」


「はい♪とってもお強いですわ。私一人なら確実に殺されますわ」


「だよな、二人だとして…あいつに勝てるか?」


隣のネフトがドラゴン化を始める。寸でのとこでネフトの腹に飛び込む。廊下いっぱいに巨大化したドラゴンの身体で破壊してまあなんだ。壁やら屋根やらが消えてずいぶん吹きっさらしになったもんだな。


「愚問ですわ、愛の前の障害なんて、ないに等しく超えられぬものなんてない!」


翼を大きくはためかせ俺は腹から背中へまわる。なんてロッククライミングなんてやってんだよ俺はー!鱗の隙間に足をひっかけて…ひぃー!高いよー!怖いよー!


「行きますわよ!掴まっていてください!この先揺れます!」


「揺れるってお前!洞窟の中飛ぶきかい!止めてもういやー!ドラゴンの背中で空飛ぶのイヤー!もうこりごりなの(号泣)」


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