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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
ジリジりまるカジリ!
122/135

あっちとこっちで騒動勃発

「クピー…クピー…zz」


コクテンさんには調べものには向かないことが今日よくわかった。開始五分で眠る才能よな、備え付けのソファーでグースカ寝ておる。ありがたいことに一番戦力外と思われたタマが活躍してくれている。


「タマよ、そこの棚の右から…16番目の青い背表紙の本取ってくれ」


「にゃあ?」


「うむ、それそれ。ありがとう」


タマが本を持って狭い書庫でパタパタ走る。机の袋から米粒みたいに小さな木の実を取り出して口を開けて待機しているタマの口に投げる。 美味しいのかな?細長い尻尾をふりふりしてご機嫌なようではあるが。


まるい爪を引っかけページをめくる。どれもフィーリアが書いたものらしい。絵まで綺麗にかかれており写真と判別つかないほどそれはうまく描けている。


「ふむ、ここに積んであるのはもとあった場所に直してきてくれ。場所は」


「にゃあ」


「わかってるな?」


いっきに…持っていくつもりか?前が見えないほど持っていってるが…まぁ本人のやりたいようにやらせるか。こっちも机の上に座り材料について調べていくがやはり物の大半は淫魔の国にあることは間違いないようだ。しかし現在リッチとは絶縁中なのでリリスに会う手段がない。さて困ったもんだ。シュラたんとミーメイもそろそろ到着し…


「フギャー!」


「どうしたタマ?そんなに怯えて?尻尾の上に本でも落としたか?おろ?」


書庫が煙で覆われる!かっ火事だと!?焦って机から転げ落ちるもそれが煙ではなく霧であることに気がついた。タマはこの不気味な空間が居心地悪いのか俺の猫ボディーを掴んで離さない。てか俺も霧で毛が引っ付いて嫌な思いをしている。シュラたんごめんね霧吹きして。


「ウウウウウウウウッ!」


「タマ?怒んないでよ。キグミントが傷つくから、案外繊細なのよ彼」


ガシャンガシャッ…ガシャン。


霧の中から甲冑が擦れて金属音を響かせる。キグミントとみて間違いないだろう。本当に実体がないゆえに警備すり抜けるなんて朝飯前だろうな、偵察も難なくこなせる。黒い影が近づくのにタマは卒倒してしまった。大丈夫だキグミント、いつものことだろ。到着したキグミントから結果報告を聞こうか…?


「あれか?要約するとミカサの野郎がぁ!?いらんちゃちゃいれて魔王配下のゴブリンとかが淫魔の国の周りを固めてると?ふおっほっほっw」


コクコク…(頷き)


「それであれか、魔石が埋まってるであろう場所が近くにあるおかげで化け物がうようよと途中の経路で出てくると?うわー行きたくねー」


すると書庫の出入口でなにやら人の気配が…万が一キグミントを見られたとしてもただの鎧ですから。めちゃくちゃ怪しいけど。コンコンとノックの音がしたのでとりあえず返事はしておくか。


「はいれ」何様だ(ビシッ!)ノリツッコミ


「失礼します。紅茶をお持ちしました」


ふむ、使いの者か?柱時計を確認するとそろそろ22時になるところだった。これ飲んだら寝るか、タマにいたってはコクテンさんの隣で同じように寝とる。間違えた、気絶しとる。


「あっあのこちらにあるのは…」


「うむ、俺の鎧だ」


「そうでしたか…それでは失礼いたします。くれぐれも夜更かしなさらないようにとフィーリア様から仰せつかっておりますので…ほどほどにと…部屋の案内はベルで呼んでいただければすぐに迎えに上がります」


「苦労かけるな」


メイドが去ったらまた静けさが戻る。キグミントが移動し、絶賛爆睡中のコクテンさんとタマの横に立つ。特に何もすることもなくただじっと立っている。うーん静かだ、眠いぞ。


「手が使えんからな…皿をこう…のぞいて舐めとるとはなんとも意地汚いな、しょうがないんだけどさ」


すると扉をバンッ!と開けて何かがくるくる回りながら入ってくる。なんだ?ドッキリか?バレーの練習か?夜分遅くにご苦労なこった。そんな心配はよそに自分勝手な元嫁がやって来た。心臓のバクバクがやまない。猫のように跳び跳ねてしまったじゃないか!机から落ちたらどうする!


シュタッ


机から下りてネフトの足下まで慎重に歩く。ネフトは何やらニヤニヤしとるが…気にしたら負けか…いったいなんのようだ。どうせまたよからぬことを企んでるようだが?猫の表情なんて読めないドラゴンは嬉々としてこちらの心配を他所に機嫌いいな。


「ついに見つけました!素敵なあなたに戻ってくださいね~ん!」


手を振りかざすとキラキラと麟粉のような粉が降ってくる。悪い、くしゃみする。なんだいこのキンピカの怪しい粉は!やめろ!毛繕いなんてさせるなよ!狼狽える猫と粉を振りかけるドラゴン…なんだ?これから調理でもされんのか!?


「ハクション!」


「ふふっ…どうです?元に戻りました。どなたか存じ上げませんが中々の魔導師ですわね?私でも解除に苦労しましたわ」


久しいな我が身体よ!確かに戻ったよ、けどなんかなまだな気がする。ほら…違和感がする。お鼻ムズムズする!ふぁー


「ハクション!ほら戻ったじゃないか」


「あら!?完璧なはず!?どうしてまた毛玉になってしまうの?」


「毛玉って…癖になったか、変身魔法は禁術類しか習ってないからな…まあまたくしゃみすれば」


ハクション!ほら、元通り。子どもだったり猫だったり、とりあえずこの姿で数日間過ごして猫になる癖を解消しないといけない。この姿は姿でなかなか楽しいものではあったがいい加減元の姿の感覚を戻さないと戦闘必至なんだからこの先。


「お礼しないとな、助かったネフト」


「はふ~ん!(へっへっ♪)いいのです、このくらいボソッ…妻として当然!そう、当然のことをしたまでです!でも誉めてもらえればえへ…えへ」


のぼせ上がりまた調子に乗ったかそれとも日頃の寂しさこれまでいいように操られてた恐怖を忘れるためなのか女王だったドラゴンはプライドを投げ捨て犬のように足下で媚びるような目でこちらを見上げる。甘えてきているのか?


…今年で140歳くらいにはなるんだっけたしか?人間で言うと何歳だ?いい歳だろ!全く…


「当分は猫でいるかな」


チリリン…ベルを鳴らすとすぐさまメイドが現れ3人ほどやってきてようやくネフトは引き剥がされ連行される。ふんっ!良心がちっとも痛まんわ猫の身まで堕ちてみればこの気持ちも理解できるだろうさ!


「アナタァァァァァァ…(号泣)」


「さっさと寝れ、発情トカゲ。まだタマとコクテンさんは借りてるからな」


「はい、それは構いません。………アナタァァァァァァ(号泣)」


一瞬戻ったな、ええい、気にしてたまるか!また本に向かい合い必死に魔物をすり抜け淫魔の国までのルート、依頼達成のための素材の採取法から保存、必要な装備の考察。その粗方の目処を立てて今日は就寝…コクテンさんとタマもいることだし今日はこの部屋で…キグミントの中で寝るとするか。くしゃみ一つで猫に姿に化けロボコップみたいなヘルムを上げて中に入り込む…ふえー極楽じゃー

















「迎えの方は早朝到着なんですよね?」


大きな焚き火を囲んで歓迎の宴が開かれていた。シュラはご馳走を食い散らかしたまに鬼人族の女戦士と力比べから飲み比べとさまざまな歓迎込みの力試しを見事なまでに圧勝していく。ミーメイはユウの妹、ユウナとこの村の村長の3人で明日のことで打ち合わせのため宴の狂騒からすこし離れたところにいた。


「そっ!ケンタウルスの一族から兄の友人のセントーレって人が案内で来てくれるの。何回か会ったけど立派な騎士もとい頑固な堅物ってイメージかなぁ?」


思い返すようにユウナはセントーレの人格を一言堅物で表して見せた。ミーメイの頭の中で下半身が馬の人、といつのはなかなか想像できないので会えることが少し楽しみになっていた。そして補足として村長が説明を付け足す。


「この村から竜の国まで数日はかかる。聞けばあんたも実力者とユウナが聞いたメッセージからの内容は教えてもらっている。ユウが言ってるから冗談とは思ってないがそれでも用心してほしい。何があるかわからないから今の時期は雑魚でも群れてたりするから」


魔物とはいえ親切な人はいるんだなと思いしるミーメイ。自分は本当に狭い世界で生きてきたんだな…


「ご親切にしていただきありがとうございます…私、てっきり魔物は悪いやつばかりかと思ってたので…すいません!」


「まぁそんな偏見をもってる人も多いだろう、いやユウのような人間は珍しいがな。あんたがそう思うのも無理もないことだ」


「…いや、悪いやつかもよ。案外」


ユウナが睨み付けると村長はわざと目線をそらし口笛吹いて誤魔化している。確かに怪しいけど…


すると一人の小鬼が3人の輪の中に入ってくる。幼い小鬼のようだ、母親の村長の元に駆け寄る。そんな微笑ましい光景にミーメイはほっこりしているがユウナはジト目でそんな親子を見ている。


「どうしたのん?お家にいてっていったでしょう?悪い魔物が来たらどうするの?」


すると幼い小鬼は母親の胸元に潜り込む、まだ甘えたい盛りなのかと思うと意外なことをいった。


「悪い魔物来た!馬の人来たの偉い角の大きい人呼んでって言われた」


子どものそんな言葉、普通なら軽く受け流すが馬の人にここにいる3人とも覚えがあり、小鬼の言うとおり村の出入口に行くと門番に止められているケンタウルスの女性がいた。ミーメイを除く2人はそれが緊急なのだとすぐに察しがついた。


「緊急なんだ!村長に面会願いたい!」


「どうしたんだ!?セントーレ?」


遠くから声をかけるとケンタウルスの女性も気がついたのか門番を払いのけこっちにやってくる。立派な馬の身体に人の上半身が乗っている。なんとも不思議な体つきだとミーメイは深く感心したがどうやら事態はミーメイが呑気に感心してるより危機的なようだ。


「ユウ殿がいる竜の国が攻められた!」


「えっ!?だっ誰に!?」


「魔王軍幹部デュラハン、サキエラと同じくハルピュイアーのカルメン。見た者の話ではヒュドラを連れていたとも…ともあれオーク、ゴブリンにトロールやオーガといった魔物を多数連れて竜の国の洞窟の出入口は完全に封鎖されている…長期戦になればいくらドラゴンと言えど」


「そもそもそんな大軍が進軍してきてるのに気づかない!?」


セントーレが竜の国の現状、前女王が操られていたことや、最近また姉であるフィーリアに王権が戻ったことなど国内が混乱、キリングオーラで守られているはずが突破されても気づけなかった。それより魔王が一人倒されてからの敵の行動が全員が思ってたより早すぎた。


「まだ攻撃は始まってはないんだな?」


後ろからひょっこりシュラが顔を出す。ほろ酔いだが頭は冴えてるようだ。


「そうだがいつ攻撃が始まるかわからない、力のあるドラゴンは竜の国の外、自分の巣にいる。もしかしたらこの現状を伝わってないかもしれない。外にいるドラゴンへの情報封鎖を含めてこんなに早く攻めて来たのかもしれない」


シュラは前にユウが気になってたことが少し見えた気がした。


「なるほど、魔王は捨て駒だったか。そこまでしてまで自軍の異物を排除したかったか」


魔王を生け贄にし、自軍の勢力で変な動きをしているやつを知りたかったのか。元々裏切る可能性が一番高い竜の国へは魔王が挙兵し、勇者と遭遇するときにはもう出発していたと。そしてユウが竜の国に入ったことをどこからか察知しまとめて始末する気なのか。


「ユウ一人でどうにかなる規模じゃない。ドラゴンも女王への不信感から足並みが揃わない。なるほど詰んでるな」


「ちょっ?シュラさん?」


考えごとに耽っていたシュラが突如セントーレのお尻をひっぱたく。驚くセントーレだがすぐにシュラの怒号が飛ぶ。


「案内しろ馬!生きたまま食われたくはないだろう!?人間界に戻って軍を連れてくるのでは遅すぎる!」


「では竜の国まで案内…「違う!淫魔の国までだ!」」


全員の頭に?マークが浮かんだ。しかしシュラにはだいたいの打開策を講じていた。


「それと穏健派?の国に使いを飛ばせ!竜の国が落とされればそこを皮切りに穏健派の虐殺が始まるとな!援軍を頼め!それまでは淫魔の国にいるミカサを連れ戻して竜の国で守りにつく」


もし竜の国で穏健派で知られる女王と勇者であるユウがまとめて殺されるとする。すると魔王軍が圧倒的有利になる。裏切り者をじわりじわりと始末し規模で勝る魔王軍は人間界を滅ぼせる。もう一人の勇者は勇者と言えどこの規模が一挙に攻めれば人間界を守りきれることはない。


「今の相手にしてる魔王は前の魔王のように操るなんて回りくどいことはしない。裏切る気なら同じ魔物でもちゅうちょなく殺すやつだ」


なんとかミカサで魔物軍を突破して竜の国に入れるか?援軍が来ることを知ればそれまでは全力で戦うはずだ、士気が上がればまだ援軍が到着するまでは戦うはず…ユウもいるがドラゴンが人間を歓迎しているはずがない。逆に悪化する、人間にドラゴンが頼るなんてな。


「穏健派を全員人間界側に引き込めなければ負けるんだぞ!わかったらミカサの元へ案内しろ!癪だが一番槍として使ってやる」

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