思わず泣けてくる
「ユウが?」
「ユウが?」
「活躍?」
「活躍?」
「「それ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!ワッショイ!」」
ふぉっふぉっふぉっ!魔王を倒した功績は大きく崩れて崩壊した聖都では残った人間でパレード状態。早く復興を急いだほうがいいだろうけど今はこの勝利に酔うのもいいだろう。俺は祝われるのは嫌いだからな(決して子どもになったからじゃない!)英雄の役はローランに全部丸投げして俺はシュラたんの背中に収まる。
「ほら、ユウこれも美味しいぞ。食べてみろ」
あっちこっちで炊き出ししている。その中に紛れる俺たち。もぐもぐこれはたしかにうまいな!シュラたんの背負った籠の中から手をのばして骨付き肉を受けとる。俺はまだリッチから受けた魔法で子どもの姿だ。その姿で民衆の前に出れない。パニックになるからな魔力が切れるのを待つだけだ。
魔王という指揮官を失い連合軍を襲おうとした奴等は皆殺し、後ろからローラン率いる勇者パーティーと戦闘街のもと獣人や操られた人の軍団によって壊滅した。とりあえず人間側大勝利だ、これでメイビスも派手には動けまい…
「もぐもぐ…シュラは怪我は平気か?まあこれだけ食欲があれば問題ないだろうけど。ハルナさんもたいしたことないって言ってたけど」
「まったく平気だ。それよりこれからどうする?人間界の補強が先だろうけど」
「うん、だから元冒険者らしく依頼を設置した。魔物からの防衛は勇者パーティーで請け負い他の人はそのバックアップだ。だから俺はそのバックアップする人達の支援に回る。依頼はだいぶ貯まってるらしいけど」
「見に行くか?」
人混みと瓦礫を避けながら目的へ進んでいく。噴水などがあった大通りに掲示板を設置してある。そこはやはり人だかりができている。なんせ伝説の勇者が依頼を受けてくれるのだからこうなるのも当然か…大抵は人探し、家族を探してくれって…俺に頼むな遺体はおそらく見つからないほうが大きい。前線基地で確認してその結果に納得できない人達が書いたのか…他には建物修繕は…大工に頼んでくれないか?残りの魔王、魔物を血祭りか…それはローランがするでしょう?
「俺じゃなくてもよくない?って仕事が多いな」
「そうでもないぞ?みてみろ」
シュラたんが1つの依頼書を掲示板から引きちぎる。なになに?発情した獣人を数人相手にできるような精力剤だと!?なに笑ってるシュラたん!
後の一枚は惚れ薬の制作だって!?しかもこの依頼主は勇者パーティーの魔導師…いったい俺にこんな依頼なんてなに考えてる!
「これは直接会って確かめないとな!」
「女の子は色々と訳ありなんだよ」
シュラたんが終始にやにやしてるのが気になるのですが…まあよい、こんな破廉恥な依頼。送りつけやがった理由を問いたださねば。籠の中で赤面する可愛い私、子どもになんて依頼出すのかしらもう…
王様不在、てか見せしめにぶち殺されて王妃と王女しか残ってない国、腕が優れたがゆえに操られた騎士たちが生き残ってたおかげでその人たちが守っているとはいえまだ不安定。勇者が魔物を追い返してせっかく打倒魔王に団結した国々は颯爽と自国に帰り魔物対策とは名ばかりの聖都を滅ぼし勇者を自国に引き入れようとする軍勢が現れだした。若い兵士は皆死んだ、次に戦力になるのは獣人などの亜人だ。とくに人間の男に目がない獣人は兵士、労働力としてはこの上ない。操られて死なずに大量に路頭に迷う獣人、それをかき集め軍隊を作る。そこまではよかった。
問題の依頼を出した魔導師のいる城を訪れる。案内の従者もつかずシュラたんが背負う籠の中から外を眺める。外もずいぶん暗雲が晴れて太陽が顔を見せるようになったもんだ。むむ…なんだこの暗い重苦しい空気は…異臭、知ってるぞ。リッチの研究室と同じじゃないか。シュラたんがノックもせずドアを蹴破るのを黙って見過ごすのはいけないことでしょうか?
「どっどなたですか!実験中に無理やり入ってくるなんて!」
眼鏡だと?茶色いローブに身を包み少女とも少年ともとれる人があわてふためきながらこっちにくる。なんだよ、シュラたんに何言っても無駄だぞ聞くわけないぞ、それより
「このたわけた依頼書をみたら気が立つのも当然だと思うが」
「見ていただけましたか!まだ私たちは自由に動けないものですから私から素材の依頼をお願いしたいのですよ!ユウ様は幸いにも魔界の方にお知り合いの方がいらっしゃるのですよね?」
なんでしってんだよ!おい!誰だ喋ったやつは!
魔物と繋がってるのがしれたら俺が殺される!
「なんのことですかー?わかりませーん?」
「もともと冒険者に任せていたことですが危険度が桁違いでもう勇者様にお任せしないといけない事態なんです。その手に持っている媚薬や精力剤の素材以外に魔界の素材が必要な分野は沢山あるんです。だからその先駆けとして私の依頼を手伝って欲しいんです」
俺はやりきじゃないけど…シュラたんが行きたいなーって猫耳でバシバシ叩いてくるんで話だけ聞いてやる。誰だ、その顧客はおそらく獣人とかその彼氏とかだろうけど。
「中にはあのミカサさんもいますよ。使う相手はあなたで間違いないでしょうけど。素材はミカサさん自身で取りに行くってもう出ましたけど」
何も言わずに勝手に飛び出しおって、色ボケめ俺は飲まんからな!シュラたんはミカサの名前で一気に機嫌を悪くする。
「あれか?種の保存に躍起になった獣人がこんなふざけた注文出してるんだな」
「そうですよ、気がついたら自分のパートナーが絶滅寸前なんですから。でも人間の女性も大変なんですよ?顔もいい、性的なことは大歓迎な獣人に大事な男性を奪われてるんですから、恋愛を大事にしている人間の女性からしたらとんでもない相手ですよ?努力して化粧する人間よりエロい体で勝負の獣人とじゃ媚薬の類いに頼るのもしょうがないことじゃないですかね」
今悩まされてるのはそう人口や物資が目に見えて不足していることだ。特に兵役についていた働き盛りの男性がいない。なんにしても労働力がないから変わりに獣人がそれを担うにも夫となる男性がいないと発情した獣人が暴れる始末。なにも始まらない。実際議会などでは魔界に侵攻して奴隷として魔物を連れてくる議案が熱を帯びている。
「うーん…魔界に入って必要なものを採取するのには問題ないんだけどなんかやだな」
「困ってる人のためにどうかお願いしますよ。じゃないとこっちも仕事できないんですから」
いや、魔界からもだけど他の国からの侵略からセレーネ王国守る使命があるでしょう?今子どもになってて変わりに君らにそんな仕事押し付けてるのは申し訳ないのだが…なんだよ!
「お金は今の現状だとあまり意味がないですから報酬は媚薬、精力剤をできたら分けますから」
「俺には必要ない!」
「あなたにはそうでしょうけど他の国では労働力に次ぐ価値のあるものですよ、転売したらなにかもっといいものが得れるかもしれませんよ」
うぐぐ…なにもせずただ飯食らいの生活してた自分のとってなにもしないのは辛い生活だった。わかったよ!わかったさ、やればいいんだろ!
「材料は全部1つのメモに書いてくれ!」
「受けてくれるんですね!」
「困ってる人がいるなら…人肌脱ぎますがな!」
両手握ってぶんぶん振り回される。わかったからそれやめてくれ…すると壊れたドアに人影が…フードを下ろすとそこにいたのは
(げげっ!ミーメイ!?)
思わず籠の中に引っ込んだ。なんでミーメイがここにくるんだ?恥ずかしげにおどおどしながら魔導師に向かって1枚の紙を差し出した。
「シュラさんも例の件ですか…?相手はやっぱりあの人ですよね?」
恥ずかしげにそうシュラに向き直ってそう告げたミーメイだがシュラはそうではないと手を横に振る。
「こそこそと誰かと思えば、違うな私は餌を探して迷ったに過ぎない」
「そうなんですか?てっきりあの…あれ…の依頼かと思いまして…」
口ごもりながらテレテレとしてなにいってんのかわからねー!照れんなや、俺まで顔が熱くなるやろ!それで?ミーメイもその、あれなのか?
「媚薬か?そんなものに頼らなければならんほど魅力がないようにみえるのか?やつはそんなことで女を見ていない。精力剤も…そんなものやつに飲ませた日には一週間不眠不休で腰を振り続けたって交尾をやめない優秀な男だぞ。不必要だ、こちらの体が立てなくなるぞ。性欲だけなら獣人を遥かに上回るんだからな」
照れて赤くなってたミーメイの顔がだんだん青ざめてくる。そうだぞ、俺の凶器がより鋭さを増して襲いかかるぞ。泣いて許しをこいても遅いぞなのでそんなことやめてくださいね(涙)まじで、しゃれじゃないから。
「と言うことはもうすでに経験済みなんですかユウとは…」
これは外に出て誤解を解かねばならんのか?そんな必要ないですよね?シュラたんを信用してもいいのですか?あ、自分で言う?よろしくね。
「すまん、してはない。でもあながち間違いではないと思うぞ?又兵衛というサムライ女の聖人の遺骸とユウの聖人の遺骸を借りてくればいい」
なんで?どうして?違う世界の存在を引き出す能力だぞ?なにが関係あるのか?
「そうすれば皆仲良くユウの分身とピーピーピピーピーで、ピピピーピピーでピーピーピヒーピーピピピーピピーできるからな!」
おい、伏せ字連発してるぞ。てか俺を使ってなにエロいことしようと企んでるんだ。ほら、ミーメイが許容限界越えてのぼせとるぞ!しょうがない俺が目を覚まさせてやる。
「ミーメイ、企んでるところ悪いが筒抜けだ」
俺の声が聞こえて心臓発作起こしそうになってるそうだった、もともと体が悪かったなこの子…子ども姿の俺を見て息を整えるミーメイ、なんだよ子どもだからって嘗めんなよ。およっ?
「ユウがいるかと…思い…ましたよ。それにしてもユウにそっくりな子ですね」
落ち着いたのもつかの間、ミーメイの目の前で元の姿に戻る俺、目が点になるミーメイそしてやれやれ甘いなとかほざくシュラたん。子ども用の服だったからもう、隠すものは何もない。ミーメイの視線が下から上へ上から下へを繰り返す。なんの言い訳も思い付かず立ち尽くす俺、興味深そうに観察するシュラたん。
「こんなの…反則…です」
「ミーメイ、媚薬は…ダメだよってちょっとー聞いてる?おーいミーメイ?おーい」
そのままひゅーとその場に崩れるミーメイ、急いで頭を打たないようにぎりぎり抱き寄せる。ダメだ鼻血でてる。のぼせちゃったかな。
「はい!これがメモだよってあれ?お客さん大丈夫?血出てるけど?てかなんで裸?」
「気にするな、ミーメイは責任もって俺が連れて帰るから」
「そうですか、はいこれがメモです。期限は特にありませんができるだけ早くお願いします。全部まとめて持ってきてもらってもいいですし1つずつでも構いません」
「おいーすじゃこれでおさらばします」
ミーメイをお姫様抱っこしてシュラたんとともに外に出る。さてどうすっかな瞬間移動使えるし一旦家に帰るか、その前にナウシカアちゃんに一言伝えとくか。今も化け物に変えられた人のカウンセリングして忙しいと思うけど…まぁ明日また瞬間移動で帰ってくるからいっか。なんか色んな人忘れてる気がするけどもう知らん。
「それであの二人は魔界に帰ったと、ローランとかなら迷いなく切りにいきそうだからいい判断だけど俺を魔界までエスコートして欲しかったな」
家に帰ってソファーに座ってネリアと軽く言葉をかわす、シュラたんは床に俺の洗濯物ぶちまけて俺のパンツ噛んでのばして遊んでる。取り上げないとな、返せこら!
「又兵衛は操られた人たちの面倒、リヴァとかうるさそうだけど面倒みてもらって」
「絶対ついてくると思うんですけどー」
「なら検査終わってから合流ってことで先に魔界に入ったミカサ見つけて安全地帯つくってそこでしばらく待ってるよ」
悩みの種だな、俺がこうやって勝手な行動するのが悪いんだけど。ながーいため息の後にネリアが誰を連れていくかと聞いてきた。少し間をおいてとりあえず危険なシュラたんは連れていくことにする。連れてかないとうるさいし何より俺がみてないと何するかわからん。
「あとはキグミントとお前はいかんだろうから後は誰かいたかな?」
「私行きたいです!」
いつの間にか起きてきたミーメイが階段下の作業部屋から出てきていた。なんか嬉々としてて怖いんだけどどうしたの?
「はいはいはい!私行きたいです!連れていってください!お願いします!魔界に連れていってください!」
ふむ、師匠から魔界のことは聞いてて行きたいとは聞いてたが…ミーメイの実力なら申し分ないカイドロの変わりにミーメイが一緒に来てくれるなら頼もしいからな。
「お願いできるかな?とっても危険だぞ?」
両手を力強く握り直して強く頷く。そんなこと覚悟の上だと言わんばかりだ。頼もしい、昔から頼もしかったけどこんなにガッツのある人とは思いませんでしたわ。
「ユウの行くとこどこまでもだよ!」
自然と涙が出ちゃうんだもん、男の子だから。
「もう事切れたか、つまらん。妾の受けた仕打ちに比べて…こんなもの!」
元夫?と思われる亡骸をドラゴン化した体で潰しまくるネフト、その様子に胸を痛めるグロリア。
本来なら自分が止めればよかったものを、間違った道に進んでしまったのは私のせいだ。
「女王様、落ち着いてください。ユウ様は気にしてる様子ではありませんでした。こんな私のことも許すとおっしゃったんですから」
グロリアがみてられないと顔を背けながら答えたその元夫はこちらが哀れに思うくらい十分な仕打ちはうけたとグロリアは思ったしかし怒れるネフトはまだ怒りがおさまらない様子だ。人型に戻り乱暴に玉座に腰を下ろした。
前まであの男が座ってたのか…これも破棄するか今思い出しただけで腸が煮えくり返りそうなのにまだ怒りがおさまらない、殺しても殺したりない気分がまったく晴れないんだ!頬杖ついてぶつぶつ恨み言を言うもまったく気分が直らない。なぜかはわかってる。
グロリアを見るもビクッと肩を震わせるだけだ。
コクテンもグロリアも愛する人を傷つけたのだ。とんだ責任転嫁だがこうでもしないと狂ってしまう気がする。家族愛が強いドラゴンならなおさらだ。
「グロリア下がれ、当分一人にしてほしい」
「しかしながら」
「グロリア?一つくらいわがまま聞いてくれたってバチは当たらないわ」
グロリアはもう自分の手ではどうすることもできないのかと悔しそうに握った拳を地面にぶつけた。そんな悩む部下を鼻で笑う。なにをそんなに悔しがる?愛する夫を亡き者にしようとしたお前が何様のつもりなのだ!と内心もう激昂しそうになったがこの空間に怯える気配を感じる。殺気を出した訳じゃない。目で探すも誰もいない、グロリアも様子が変わったネフトに心配を隠せない。
一通り見渡したネフトだが一点、入り口のドアから誰かのぞいているのがわかった。誰だ!と叫びそうなのをぐっとこらえ目を細めて正体を確かめる。え?なぜここに
カタカタと震えて怯えてるのは伊丹ユウ、こっそり侵入してさっきの拷問も八つ当たりも全部みていたようだ。ネフトからさーっと血の気が失せるのが俺でもよくわかった。
「こっこれでバツ2だね、きっきにすることないさ、まだ俺より寿命長いし大丈夫だ!なんか機嫌悪いようだし協力は鬼人族かセントーレを訪ねるから…ばっばいばい」
できるだけ笑顔でゆっくりドアを閉めた。ネフトとグロリアの再起動にはそれほど時間はかかってないはずだが…ひー!廊下を全力疾走して城から逃げるべく逃走中、くそ!シュラたんがいれば背中に乗ってもう城から脱出できるのに!
「きゃっ!ユウ様!?どちらへ!?」
「ユウ様、いつお越しくださってたのですか!」
あわてふためくメイド、それが俺の後ろを見て悲鳴に変わる。えっ?なにがって?このドドドドドといってる地響きでわかるだろ!
「グロリア!ユウを逃がさないで!もし逃がしたら今度は八つ裂きにしてやるからな!」
「一命に代えても!」
二匹のドラゴンが巨大な廊下一杯に並んで前のめりに倒れそうになりながら突進してくるんだから怖いってもんじゃない。生きた心地しない、てかチビってるかもしれない。泣き声あげながらダッシュで逃げ回る。なんでこんな目に!協力とかこんなの絶対無理でしょ!
「いーやー(涙)」
あのときの俺はこんなことになるなんて思ってもみなかったよ(遠い目)




