キス魔と意地のぶつかり
「まだ自分でもコントロールできないんだ、痛いか?まだ終わらせんなよ」
大きく息を吸い込み瓦礫の上に立つ。さっきの瀕死の重傷からなんとか立ち上がったが怪我すら無かったことにできるとは…でも不完全だ。ふさがった傷口も時間の経過で元に戻っている。たいした時間も残っちゃいないのか、速攻でケリをつけさせてもらう!
「ヴァルキリアめ流石あの爺さんが作った玩具だな、元は戦闘に特化したヴァルキリーだ。弄くられて再生機能も追加されたのか」
自己再生もする機械化天使に手を焼くことになりそうだ。俺はとりあえず勇者とその他ギャラリー(勇者パーティー)に向かってあらんかぎり声を張り上げた。
「ミカサとヴァルキリアは俺が潰す!それまでの間魔王を抑えといてくれ、それくらいできんだろ?」
向こうは聖職者がいるんだ、もう少し戦いが長期に及んでも心配ないだろう。
その時、吹っ飛んだミカサが目の前に現れたお返しとばかりに後ろへ後ろへ追い込まれていく。
「ユウさん!」
「おひさしぶりだなうおっ!?悪いけどうひゃ~ただいま俺っち取り込み中だからひっ!後にしてくんねーかな!今からこの悪質ストーカーぶっ飛ばしてそこの変態虫ぶっ潰してやるから!」
ミカサの斬撃をスキルで避けてグラムでミカサを突く、どちらの攻撃も当たらずミカサは全部の攻撃を避けずに叩き落とすように殺していく。当たってはいないが追い込まれてる!確実に殺られるスキルがきれたら、断続的に発動すればまだ持つのだろうが同時に右と左から切りつけてくる敵に一瞬でもスキルを解いたら俺はぶったぎられて殺される。
「一人は無茶です!今行きますからそれまで…」
「余計なことすんな!前の敵に集中してろ!」
駆け寄るナウシカアちゃんを制止させる。そうだミカサとヴァルキリア相手にしてナウシカアちゃんを守ってやる余裕なんて俺にない。無責任だろカッコ悪いけど俺はもう仲間が目の前で消える恐怖を味わいたくない。俺は逃げたんだ、お前らが助かれ、俺なんか気にすんな。
「一人でここまで生きてきた、魔王の首を獲るためだけに!辛かったよなお前らぁー!今日報われるんだ!そうだ、お前を倒して前に…戻るんだあの生活に!」
背後からヴァルキリア、右手のリストブレイドで袈裟斬りかな、右肩から左脇に抜けていくミカサは突きで脳天かな?わかってても体は反応しない意識だけが先走る。それほどの出血、額が真っ赤に、切っ先が眉間を削ったな、右肩の肉が裂けるが、スキルで小さく押し返す。もう二人の勢いが強くスキルでは止めきれない。ふん、スキルに頼らなくても剣くらい止めれるもん!
「皆が心配するから場所変えんぞ?こっち見ながらヒヤヒヤしてる外野が気の毒だ。魔王が相手してくれてることだし俺のせいで死なれても困る」
その場で跳躍、目の前のミカサに両足を突き出し
キックでまた移動。顔面を両足蹴り、じつにスッキリするな。と同時に背後にいたヴァルキリアの肩を掴んでその場から遠ざかる。
「あらよっと!鉄屑め」
飛んでる最中にヴァルキリアを城の外壁に叩きつける。ふぅ離れ際にミカサめ足を切りつけやがって…ぽとぽと血が垂れる。残念だがスキルはここまでのようだ。瓦礫からレーザーが飛び出す。
「照準機が故障したか、命中してねーぞどこ狙ってんだボケ」
ロボとはいえ元は天使、てか女の子だよ。気が引ける部分もあるがそんなの
「今さらじゃこのやろう!」
右手のアッパーからの一閃、ほとばしる汗と沸騰する血潮。硬い金属の装甲も嘘のように綺麗に両断、一撃でバラバラになるヴァルキリア。これで又兵衛の呪いも解けるだろう。
「まず1ダウン、次」
顔に足形ついたミカサが迫ってくる。目でも追える速さだなバテてんなあいつ。俺が迎え撃つためグラムを構えたとき背中に熱い感覚が
「熱い!?ヴァルキリア!まだ動きやがって!」
軽くコッキングするとヴァルキリアはリストブレイドの刀身を飛ばしてきた。白熱した刃先、鎧が溶けて貫通していく。そのまま明後日の方向へ飛んでいった。
「こんの野郎!いや野郎じゃねぇなじゃじゃ馬めおとなしく切られとけ…」
左手のコンピューターガントレットで何かを操作している。8のような形が4つ並んでいているそれがタイマーのように欠けていく、なんだ?魔法が発動するのか?時限式で?なぜ今すぐ発動させない?時限式、だって?頭に氷水をかけられたように冷静になった!こいつ!
「自爆する気かよ!冗談じゃねーよ!」
爆破範囲は?くそっ!そんなことしったこっちゃねーよ!左腕を高らかに持ち上げ叩きつけるヴァルキリアを叩いて暴発させないように地面へ!
砕けろ!
「グランドバスター!」
カッコいいだろ、地面割ってやったぞコラッ!奈落のそこへ落ちていくヴァルキリア、闇に消えたと思った時強い閃光と一緒に爆風が割れ目から噴き出した。あちらこちらから水柱が噴き出す。助かったのか?
「自爆しやがるとは…あれ?なんか忘れてるようなあら?」
水柱からぬっと現れるミカサ、ピギャー!心臓に悪いいきなりでてくんなやくそ猫が!頭を鷲掴みにして地面に叩きつけられる。やめろやめろグランドバスターで地盤がわるくなってんだ。ガッツンガッツン打ち付けられ脳震盪になりそう。小石がぱらぱら転がっていく鮮血が舞う。いい加減にしろや、なぁ。
「ノー(拒絶)生理的に無理です」
ここいちばんの拒否の姿勢ミカサが転がっていく。けっこう血を流しすぎた。ベルセルク化するか?
いや、少ない魔力を一気に持ってかれてその次どうする?寿命でもまた削るか?まだなにか方法があるはずだ。吹っ飛んだミカサもまたすぐにここにやってくるぞ。
「ん?まてよ、ミカサ一人ならなんとかできんじゃないか?」
ミカサが来る前に物陰に隠れる。もしかしたらこれでもとに元に戻ってくれるかも。
「…もう嫌デス、ダれか止メて」
陰から観察、俺を探して辺りを探ってる。独り言ぶつぶつ言いながら彷徨いてる。こわー!顔は泣きながら笑ってる。狂気だなバグれ猫め引導渡してくれるわ。
ガラッ…
崩れるレンガのかけら、それに反応して刀を振り抜くミカサ、レンガ切ってるだけでそこに俺はいない。ミカサがみせた最初で最後の大きな隙!
それを逃さず身を乗り出す!
「影の中だって移動できんだよ!ミカサ、これ以上お前の相手をすんのも疲れたんだ、正気に戻れよなー!」
ミカサの陰から出て左手を胸へ~え?ちょっ待って触る相手くらい選ばせて!なし!やっぱなし!
イヤー(涙)
もにゅん(鷲掴み)
「おっおおお(涙)柔らかい、じゃなくてマジック・アタック!」
やってしまった感が否めない。なんてセクハラをしてしまったんだ。世界で1番誰も救われないセクハラをしてしまった。神様哀れな子羊をお許しください。
「フギャアアアア!」
「ピギャー!」
「フギャアアア!?」
「ピギャァァァァァァ!」
魔王のお気に入りだけに寄生虫の結び付きが強いらしい。俺の魔力を変換してミカサの魔力にして打ち込んでやったよ。弾き出したつもりだがミカサの体内で暴れてるようだ。
猛スピードで逃走を図るミカサ、しかしこの付近はさっきの爆発であっちこっちから噴水しているので当然地面は水浸し、滑るわけだ。ミカサの優れてる点はスピードだけじゃない。方向転換と急停止を自由自在にコントロールできることだ。水の膜で摩擦が効かない状態。おかげで暴走するミカサ。滑ってくるのだが、止まれって!ちょ!嘘でしょ~!?
もつれあって押し倒す感じでミカサの顔が目の前に、吸い込まれるように…イヤー(涙)スキルよ発動してくれ!
俺のスキルが拒絶して寄生虫がミカサから引き剥がされる。しかし悲しいかな、こんなやつとしてしまうとは、俺たちの体は崖っぷちから二人そろって落ちていく。俺のスキルは虫は飛ばしてもミカサは飛ばしてくれなかった。
「ギャアァァァァァァ…」
「ユ…ウ?」
涙とともに落ちていく。隣には2、3回目のおかわりピーをしてくるミカサ。なんかテクニシャンなんですけど…らめぇ~
「いくら待ってもこないぞ!どうやら道ずれにしてヴァルキリア共々粉々だ!」
魔王は虫を使わなくても強い、ここに来て思い知らされる。魔王の強さに!
「勇者~やはりあの男より実力が数段劣るな、弱いやつほど群れる。そうやってお互い傷の舐め合いをしないとこんなにも弱いなんてな」
「まだ負けてない!これからだ魔王!」
「ふん、何を死に損ないがこのがぁっ!!?」
高速で飛んできた石が魔王の顎に命中、痛そうに地べた転がりまくってる。はいざまぁー!
城ももうぼろぼろで楽にどこからでも入れるようになったもんだ。待たせたな、お前ら。
「ユウさん?なにをなさってるのですか!」
顔を真っ赤にして怒るナウシカアちゃんを見ることもできない。目をつぶって上を向くことだけ。涙が溢れないように。ミカサをお姫様抱っこして登場!キスマークだらけの俺の顔、機嫌よさげにミカサはゴロゴロ喉をならしている。ほり投げたいが万力のように首に手を回している。もう駄目だぁ~
「たっ助けてください(涙)」




