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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
反撃の英雄たち
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双者ここに集いし者

「シュラたーん?どうしたってんだ急に?」


問答無用に食い荒らした挙げ句逃走。そのまま敵が潜むセレーネ王国方面へ走っていく。そして大樹に上ったかと思うとそれっきり顔を出さない。


「もう怒ってないから下りてこい!」


今度はおとなしく幹にへばりつきながら根元の俺の表情を伺いながら不安そうに下りてきた。珍しくお耳ぺったんこだ。そこまで皆も俺も怒るわけないしどうして悲しんでるのかわからない。下りてきても何やら様子がおかしい。悲しんでるより怯えてる方が正しいかな。怯えてる?何に?


「何怖がってんの」


「別に」


「嘘つけ!全部耳に出てるんだよ!そんなに怖がってどうした?」


真顔で整然を装っているが下りてくるときのあの顔といいお耳ぺったんこといいなんか隠してるな…俺は指を突きつけて食糧庫荒らしの件を言及する。するとシュラはげんなりと項垂れて観念したのかこれまでの異変について説明しだした。


「わからないが…聖都の方で嫌な予感が…これについては私も把握できないが胃がおかし」


「胃が?邪神の遺骸がどうかしたのか?」


「後悔しないように食べないといけない、そんな気がするんだ。腹が空くんだ…どうしても胸騒ぎ…いや胃が騒いでる…」


「騒ぐねー」


何かしら聖都での動きを察知してるのか、シュラは消化活動が活発になっているようだ。俺は気のせいだと言うがシュラは首を横に振る。


「大概のことでは驚きはしないが…なぜか嫌な予感がする。冗談じゃないぞ、マジだ」


「わかってるそれは…」


喉まで出かけた言葉も詰まる。前に灰色のマントを羽織った女が現れたから…いつからそこにいたのかわからない。なんの気配もなくいつのまにかそこにいる。


「どうした?」


「敵か?殺意は感じないが…」


敵という言葉に反応したシュラだが俺の視線の先には確かにいるその女が見えていない。


「どこだ?からかうなよ。何もいないぞ」


シュラはお構いなしに進んでいくが俺はシュラの肩を掴む。シュラは倒れそうになるがその文句も俺の顔を見て何も言わなかった。


「どこかで聞いた…精霊!?そうか…バンシーか!!」


「精霊?誰だ使役しているのは」


「いや、自然に湧いたってことだろ。シュラの不安が肉付けされたってわけだ。やな空気だぞ…」


死者が出る前に泣いてそれを知らせる。死を予言して泣く精霊、バンシー…


長い髪に青白い顔、眼は泣きはらしているためにいつも真っ赤に充血している。緑色の服を着て灰色のマントを羽織っている。伝承の通り一致する。


「ア…アア…アアアアアアアアア!!」


「ぐっ!くそ!」


「どうした!?バンシーの攻撃か!?」


バンシーの声は悲しみのあまり上げた絶叫だ。最初は人だったのが二人、三人と数えられないほど増えていく。俺は耳をふさいでその場に膝をつく。立ってられない…なんて絶叫だ!!シュラはなおも俺の体を揺らす。やがてシュラの声もバンシーの絶叫にかき消されバンシーの絶叫が最高潮まで達すると音が消え無音となる。意識が保てなくなるほどの絶叫。バンシーがこれほどまで現れる人の死が間近に迫っている。


目の前にはシュラの顔、何か言ってるのか知らないが口パクで何言ってるのか探る。苦笑しながら読み取っていくと


「ちちかあく?近くか?何も聞こえない、何も聞こえないんだ。音がかき消されて…いい!攻撃してるんじゃないんだ!そんな殺気だして見渡してもバンシーは見えない」


シュラは目を細めたりして探すも辺りは何もない。

大樹の周りを囲むようにいるバンシーがこの距離から見えないわけがない。シュラはバンシーの存在を感じとれない。つまりこれは俺の大事な人でシュラとは関係ない人の死が近い。誰なのだろう。バンシーの顔がすぐそこにある。涙なからに誰の死を予言しているのか?俺にはあてはない。










「静かになった…耳がいて…キーンてなる!」


「もう大丈夫なのか?そのバンシーは消えたんだな

?もう動いても平気か?」


2.3回右手で頭を叩いてから正常に機能しているか確かめる。口を大きく開けたり…うん、耳は大丈夫だ音は聞こえている。


「予言だ、誰かが死ぬ。あれほどバンシーが現れたとなると…そうとう力のある人物だな」


「死ぬか…そうか、ようやくミカサに止めが刺せるのだな」


「あいつが死ぬのにバンシーが集まるか!!」


何とかシュラの腕をつかんで立ち上がるともう前線基地に戻らない事を伝える。案外シュラはあっさりと納得し、このまま聖都な向かうことまでお見通しだった。


「もうここは敵陣だ、つってもまだ怖じ気ずいて帰れる距離だぞ」


意志を確かめるつもりで言ったがシュラは腰に差している刀をバシンッと叩くと「こいつがあればどこへでも行ける」と大見得を切って笑い飛ばした。俺もたいして用意が要らない(無限ポーチにだいたいなんでもある)からこのまま勝機もないのに突撃するのに命だけで足りる。


「旅行ー旅行~♪新婚旅行~」


「旅行違うよね?遊びになんか行かないぞ!?」


「腹がへったら戦をするぞ~ごはんーごはんー」


「わかったから行こう…さて、勇者パーティーのために活路開いたるか!?ついでにごはんも探すか」


グラムを抜いて掲げる。シュラもノリノリでその辺走り回ったりしているがこの時もバンシーの予言が自分の胸にひっかかっていた…
























「距離はあるな…肌の色は黄色に赤色、茶色がかったのが多いな。体格のデカイのもいる…おっと?ありゃトロールか!?シュラたん大喜びだな…食って再生して食って再生して…きっと再生がおっつく前にシュラの腹の中におさまるだろう」


高台から廃墟の村を見下ろす…魔王軍って訳じゃ無さそうだ。装備もばらばら、魔界からこっちに移り住んできたやつらか?砦や集落にしている様子もない。獲物を探してこの廃村にやって来たようだな…


「シュラたんはどごだ?えーといたいた…ぷっ…鳩じゃあるまいし…」


まるで女子高生がクレープ片手に歩いてるようにこっちはゴブリンを後ろから捕まえて頭を丸かじり…そのまま次の獲物の後ろまで歩いて見つかる前にひょいと捕まえて食べる。シュラの能力は肌からでも敵を補食するスライムみたいな全身消火器官…ムシャムシャ食べながらゴブリンやトロールが固まってる中央へと自然と向かってる。


「俺は逆から、シュラから逃げるゴブリンを狩るとするか…逃さんぞ…ゴブリンめ」


頭に被った木の枝をほって見つからないように下っていく。窓から中を確認しながら建物に潜むゴブリンを見つけていく。


ヒョッコリ…


「グガウ…」


見張りが一人…入り口にもたれてるの…他には漁ってるのか鍋の中を覗き込んでいる…よし、一人ずつ始末するか。グラムを抜いて水平に構える、きっと死んだことにさえ気づかないだろう不意討ち…


「RPG無識剣、水平二段切りっと」


胴体、そして頭が寸断こりゃまあ確実に死んだだろ残りはお前だ…気づかず宝探しご苦労様だ。真っ直ぐ降り下ろす。熱したナイフでバターを切る感覚。

触れてないようでなんの力も要らず敵は真っ二つ。ドラゴンみたく硬くなくていいわ~

残骸が2つ、ゴブリン始末さぁ次だ…

部屋を覗きながら狩っていく…サイレントキルの才能があるようだ。気づかれず敵を仕止める、しかしここときて。


「ギギャー!!グガガー!!」


ゴブリンの罵声?野太い声が響いてくる。探索していたゴブリンもこの声に次々と中央へ走っていく。シュラが無双していることでしょう。グラムについた血をゴブリンが身に付けている布に擦り付ける。

応援の心配もいらんでしょう。怒号もいまや悲鳴みたいな声に変わりつつあるから。


ゴブリンの集団は狭い路地を我先にと押し合いへし合いしながら廃村から逃げ出そうと死に物狂いで逃げてくる。そんな先頭の一匹が足を止めると集団全部の足が止まる。


「グギアッ!ギャーギャー!!」


「そう責めてやんな、どうせ聞こえてないんだからなー?」


先頭のゴブリンは俺の足元を血を吐きながら倒れた曲がり角から不意の一撃。グラムを突き刺し…たってより剣先出しといたら自動的に刺さった。曲がり角から突如姿を現した俺にゴブリンたちの間に動揺が走る。皆で手に持った粗末なダガーで突如現れた人間に立ち向かうか、引き返して安全なルートを探すか。目の前の自分の仲間があっさり殺られたので俺が一歩近づくと一歩下がっていく。明らか恐れてるな~殺気だしたら一目散に逃げるだろうなぁ~


「おいおいあんまり時間は無いようだぜ?」


最後尾の奴は下がっていって何かに当たる。壁ではない感触のなにか?そんな道にいきなり壁ができるわけないだろ。


「ギギ?」


シュラが軽く手を払えばゴブリンの体は潰れて消える。確認する間もなく上半身が潰され下半身だけが訳もわからずふらふらと歩いている。ほらボケッとしてるから挟み撃ちだぞ。

両脇を俺とシュラに挟まれ身動きがとれない。こうなりゃ空でも飛ぶか?ちびっこくて汚そうで醜い顔面なゴブリンが可哀想に思えてくる。全員で突破口を拓くため俺に向かってくる。シュラよりかは俺を殺しに来ても結果は同じだぞ。ぶらりと右手に持っていた剣先。ゴブリンは俺の手ばかり見てたからな俺が腕を動かさないと見えると飛びかかってきた。


「詰んでんだよ、お前ら。終わりにしようぜ」


爪先で軽く剣先を蹴りあげる。グラムは先頭のゴブリンを股から真っ二つに裂いて3番目の脳天に突き刺さる。俺は2番目のダガーを振り上げて固まるゴブリンの頭を鷲掴みにする。


「お勉強になったか?こんな閉鎖空間でもバカは剣を投げるんだぜ?まぁ投擲したら全員貫通してシュラたんの腹にも穴があくだろうけど。お勉強会はこれでおしまいだ」


ぶちゅり…無邪気な子どもが蛙を何気なく握りつぶすように俺はゴブリン頭を潰す。木の実が潰れるように赤色の血を撒きながらゴブリンは絶命した。3番目のゴブリンに刺さったグラムを抜くとシュラとの距離を詰める。間のゴブリンは気の毒だが。


「どっちに殺されたい?どちらも苦しまずに死ねるからおすすめだよ!」


シュラは上の着物を脱ぎ捨て上裸で下にショートパンツみたいな袴のほぼ全裸に近い姿。目の前のあそこをおったててるゴブリンを掴むと胸に引きづりこんだ。まさかあの場で興奮するあたり繁殖力旺盛なんだなと思う。悪いな~雌ゴブリンも人間の女性も姦することなく天に召されることになるとは。童貞勇者の俺が同情するわ。


「やけくそになってこっちに来るか?いいぞ」


凪ぎ払うように向かってくる三匹、俺がグラムを振るうと綺麗に隣の建物と一緒にスッパリ切れる。ほい、全部片付いた。シュラと俺との距離はグラムの刃渡り分、あの数で俺とシュラ相手にするのは無理だろ。廃村に侵入したゴブリンはこの村で全員殺害されたと。俺が1割後はシュラの腹の中…


「少しは空腹もましになったろ。てか上着ろよ!!上をよ~!」


恥じらいもなく…てか見せつけるようにクネクネすんな!思わず後ろを向くも茶化すように耳元に息を吹きかけてくる。止めろ!!


「なんだとこいつ、もう少し見ておくとかしないのか?しないのか?うむ…冗談もわからんのか」


呆れられる覚えはないが!!いい乳だな…我を失っとる場合か!!でぇーなんで土煙が迫ってくるの?倒壊した建物が津波のように…いや?なんだ!?


「シュラって逃げるの速いぞ!なんて速さだ!」


俺のとなりに猫耳ついた人型の点線が点滅してる。

俺も逃げるか…と思った矢先…殺気だ!?しかも俺にだ!!一瞬動けない俺、油断してたのもあるけどこれほどの殺気が…


「ユウさまぁー…あの女誰ぇ~?」


「うぉっ!?」


勢いよく振り返る。真後ろから、吐く息が首筋にかかるのを感じた!そんなに接近されたら普通は気づく!気づくはずなのに!そんなこと思いながら振り返ったのだが無人…誰もいない。そんな馬鹿な…


「そうだ、それより早く逃げないと…」


一歩足を踏み出したとたん異変に気づいた。頭上が暗くなりなにか…なにか落ちてくる…丸い物体。避けきれないほどに、上からの重圧で丸い物体の直径分だけ重圧が…地面に沈む~!

村は全壊、俺は太陽の光が届かないほど落ちていくいや、落とされていく…なんだこれ!脱け出せねーぞ!?どうなってんだ!地面との間に挟まれて潰されないようにするのに必死でピクリとも動けない。それどころかどんどん沈む…両手で支えるがバカ力で何とかなるか!?グラムで切ることもできない。力を抜いたとたん潰される!そのままずるずると潰されていく…
















「浮気ですよね、どう思います?嫁に貰う約束して他の女とゴブリンハンティングしてるんですよ?完璧浮気ですよね~?いーけないんだいけないんだ。

浮気するユウ様がわるいんだぁー?」


「こんな思いにさせて…自分も胸が押し潰されそうで苦しいのに!!ユウ様も同じ痛みを与えないと…」


生気のない目?卑屈に歪んだ笑みを時おり浮かべるデレドレ。かつてのか弱い村娘の面影はない。気に病みすぎるデレドレ。


「ちょっとぉ~やり過ぎなぃ~?勇者だから死なないとは思うけどぉ~こうなったらダンが止めてよぉ

私はご覧の通り魔物の殲滅とぉ~幹部の足止めぇ、しておくから」


「はぁ…僕ですか…ひぃ?」


ダンの首筋に切っ先を向けるシュラ、どうやらこの三人の仕業らしい。見たところ人間ようだったので賢くて可愛いと思ってるシュラはユウに怒られるのが嫌で殺しはしなかった。寸止め、こうなるまで気がつかなかった。


「ちょっと!殺さないでください!味方ですよ!刀を退けて~(涙)」


「だとしたらなんだ…ん?」


デレドレの振り回したハンマーがシュラいたところをピンポイントで振り下ろし潰す。シュラも黙って潰されるほど呑気でもはないから軽く避ける。


「いきなりなんだ…」


「ユウに蔓延る~雌犬ー!!」


「何を激怒しているか知らないが私は猫だ」


息巻いてゆらゆらと足取りがおぼつかないながらもハンマーを引きずってシュラに殺気を放つ。か細い腕でオーガのような巨体が持つようなハンマーを引きずっている。シュラも少なからず困惑する。


「あーユウも首輪をして従順な子猫ちゃんにすればいいんだー♪私だけを見てくれる…あ~なんて素敵なの?私のユウで私だけのユウなの…わかる?」


「考えただけで幸せで死にそう♪」


「そうか…なら死ね!」


シュラの刀とデレドレのハンマーがぶつかる瞬間!

上空から何かが落ちて二人の間に割り込んだ。


「なんだ!貴様!」


シュラとデレドレの攻撃を易々と無力化、同じ力をぶつけて相殺してしまった。よくみると少年のよだが…茶色い髪の毛、整った顔つきの平凡な少年にこりと笑顔が素敵なごく普通の青年。おそろしいほど表面が普通だがそれがまたシュラには不気味に思えた。


「何してるの?幹部も化け物ももう来るよ?ナウシカアさん!急いでったら!」


ユウのような皮の鎧に業物に見える光輝く剣、ここでただ者じゃないのがわかる。シュラには見覚えがあった。こいつらは…


「すっすいましぇーん…もう足止めも無理です疲れました…」


そのあとに神官のナウシカアと魔導師を思わせる少女…それに前髪で目が隠れたいかにも怪しげな男が遅れて登場した。


刀を正面の少年に構えながら自分が抱いた思いを口にする。ユウと同じ、異世界からやって来たもう一人の…


「お前らは…勇者パーティー…か?」


シュラが話しかけると少年は刀を退けてにっこりと人懐っこい笑顔で頷くと


「ずいぶんとお待たせしてすみませんでした。もう一人の勇者さんの後を追って来ました勇者の…」


「ローラン・シャルルマーニュです。一緒に悪しき魔王と戦いましょう!」


「お前がその…」






















一方その頃、地下のユウ


「おっ?だいぶと力が弱くなってきたんじゃないかな?おーい!誰か!!このままだったら潰されるよ!

シュラたーん!聞こえないのー?ねー?どうなってんの?誰かー!助けてー!!」


悲痛な叫びをあげていた。





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