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異世界駐留記(不幸で奇妙な物語)  作者: ふじひろ
反撃の英雄たち
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笑ってくれ、虎に惚れられた哀れな男だよ

なんせ怪我人を抱えての山道ですから思うように進まない。急かしてもしょうがないのだけど俺の家がある村はちょうど季節の変わり目で雨期となる。豪雨になる前にどうしても家につきたかった。


「コクテンさんの魔力も少なくなってきたし…これ以上はテレポートは無理ですよ」


魔法を使って急げないのかとジェスチャーで会話するコクテンさんだがこれ以上は歩き疲れて動きたくないのはわかるがこれ以上コクテンさんから魔力は取れない。


「がんばってもらうしかない…薄情かもしれないけど…俺も腕の力が入らないんだ、抱き上げてやることもできない…情けないけど」


コクテンさんは本当に休憩が必要な人が誰なのか知っていた。その人は自分より相手を気遣い、そして自己嫌悪に陥っている。物言わぬ自分の性とその親切な人が弱ってる原因だから行動で示す。その場で固まらず歩き出す。杖を確りと握りユウと歩調を合わせて隣に並んだ。


「この下り坂を越えれば家が見えてくるんだが…こりゃヤバイぞ…」


雷鳴が近づいてくる。辺りは暗くなり道が見えなくなってくる。まだ日は沈んではいないが暗闇に包まれる。どうやら今日から雨期のようだ、悪い予感が的中してしまった。俺は上の装備を脱いでシャツ1枚になるとコクテンさんの頭に被せる。


「雨避けに使ってくれ、なにこんな雨へっちゃらさなんてことないね!!」


強がりはすぐバレるもので迫り来る豪雨に目も開けられない…てか痛い!!体がバラバラになる!!そんなときコクテンさんがドラゴン化し、俺を抱え込む。


うーん…ここら辺コクテンさんの胸だよな…恥ずかしいのですがまぁドラゴンに欲情したりしないので今は平然としてますが、歩けるの?俺が目を開けられなければ道案内もできないから…これが選択としては正しいのだけどな。


「傷に染みるよね…ごめん、道が悪いけど歩ける…わけないよな俺がボコボコにして…雨宿りも出来そうな場所もないしおっとっと…このまま行くつもりか?」


コクテンさんは巨体を揺らしながら降りていく。杖もないのに…ヨタヨタとしながら道を下る。歩幅も大きいのですぐに下の道に出た。


「もうすぐそこなんだ、そののまま小道…今は雨水で小川になってるところを上に上がってくれ」


コクテンさんが上っていくと一軒、明かりの灯った家が建っていた。暖かそう…我が家に到着した。


















「お茶を入れました、休憩にしませんか?」


グロリアが机にティーカップを並べてソファーベッドに腰かけて裁縫に四苦八苦するネリアに声をかけた。苦戦してる割りにはネリアの裁縫の腕はユウより良い。どうやらユウに気に入ってもらえるようユウの趣味を考えてみるもののどんな色合いが好きなのか、わからないようで悩んでいる。あーでもないこーでもないと独り言が増えてきたので気分転換にグロリアが気をきかしたのだ。


「んー考えれば考えるほどわからなくなる…」


「私はどんな色でも喜んでくれると思いますけど」


お茶うけを探すグロリアにネリアがお皿の入った戸棚をゆびさす。


「前に何に使うかわからない大きなお皿買ったの覚えてます?ユウが無駄な買い物するなって怒ったやつ」


「もちろん、大きなピザを焼くんだーって言ってましたもんね。覚えてます」


「ピザじゃないけど…ケーキ焼いてみたの。味についてはノーコメントで、料理上手の主夫がいない間に食べよ♪そろそろ焼けると思うから盛り付けはお任せ、美味しそうに不味いケーキを誤魔化すように盛り付けて…」


言って自滅するネリア。イスに座ると頭を机に擦り付けてボヤく。ユウが家を出て数日、口には出さないが精神的にまいっているようだ。保存庫から生クリームや摘み取った果物を取り出すと机に置いてどれを使うかネリアに相談する。ユウに渡す訳じゃないしグロリアの好きなようにと言われたのでとりあえず大きな果物は食べやすい大きさに切ることにした。


「お出迎えのサプライズケーキですよね?」


「うーイヤ、練習台…じゃなくて気まぐれかな?練習内容がたまたまケーキだっただけ…他意はないかな…」


「ふふ…そうですか」


焼き上がったか確認するためにネリアが立ち上がった時に外から地響きが聞こえた。落雷ではない、テンポよく、まるで巨人が歩いてるかのようにこちらに向かってくる。ネリアは驚いて鍋を頭に被りフライパンを持って素早く机の下に逃げ込んだ。グロリアは警戒しながら扉に近づきドアを開けると人がこちらに向かって歩いてくる…もう雨期になる、誰か訪ねて来るはずがない。相手が人間かも知れないので地下のグロリアの隠れ部屋に入る。ドラゴンが人間界にいてはまずいから。


こうなれば確認するのはネリアの役目、ガクガク震えながらドアに手をかける前にノックの音が響く。ネリアは自分の心臓が爆発しそうなのを押さえ声をかける。


「どちら様で?」


なぜか鍵の開く音が聞こえたこれにはネリアは驚きを隠せず机の下に逃げ込んだ。そっと様子を伺うと男と女が二人、ずぶ濡れになって立っていた。


「すまん、驚くなよ。隠れてないで出てこいよこっちは…」


「コクテン!」


隠れ部屋からグロリアが飛び出す。それにつられてコクテンさんも走る。弾かれて薪の山に追突する俺な…いったーい(涙)


















「誠に申し訳ございませんでした!!」


二人して正座して謝る、俺は濡れた頭をごしごし拭きながら笑って許す。ネリアに風呂を沸かすように頼むとコクテンさんを風呂まで案内するようにグロリアに言いつける。


「それから話は聞くよ」


人がいなくなったリビングでソファーベッドに崩れ落ちるとすやすやそのまま寝入ってしまった。家についた安心感からか力が抜けていく。グロリアの話は起きてから聞くことにしよう。どうせ起きても雨降りだ家の中で暇してるだけだ。俺は全ての面倒事を後回しにして寝ることにした。


日は落ちて外は真っ暗だが窓の外から雨が降る音は聞こえてくる。ボーと窓を眺めていると起きてることに気がついたネリアとグロリアがこちらに来る。


「何か食べる?と言っても作り置きしてた分もあの女の人が食べたんだけど…ケーキならあるけど」


「もらう」


ネリアがキッチンに向かうとグロリアと二人きりとなる。案の定謝罪と感謝が止まらない。泣きながら詫びるグロリアだが俺の関心はそこにはなかった。


「コクテンさんは?」


「コクテン?お風呂から出たあと少し食べたら疲れてるようだったから二回の部屋で休ませています。ご用があれば起こしますが」


「いや寝かしてあげてくれ、疲れてるだろうから。怪我の具合はどうだった?一応治したけど異変とかは…」


「無いです。ご心配ありませんそれよりユウ様でしょう」


「様はやめてくれ、そこまで偉いご身分じゃない」


俺は胸を撫で下ろすとさっきの少し食べたらに引っかかった。少し?だと…なんてこった。雨期で食糧難になったら一貫の終わりだぞ。


ネリアが切り分けたケーキを持ってくると俺は腕が動かないことをいいことにネリアに食べさせてもらうことにした。頭だけ持ち上げて噛みつく…


「んー砂糖が多い、節約しなさい」


「ケチ臭い、贅沢品だろうとなんだろうとこれくらいないと」


ムシャムシャと食べるとグロリアからどうして腕が動かないのか説明を求められた。ここは嘘をつかず正直に申し上げるか、グロリアも状況は色々と察してるようで恐怖にガタガタ震えてるようですけど。

現実は残酷ですが教えてあげます。本気のコクテンさんと戦うにはこれしかなかったと。


「明日アオイ医院で見てもらってくる。大丈夫瞬間移動して行くから一緒じゃなくても大丈夫だよ」


「ですがまた…」


「敵なんて攻めてくるか?アオイの代門みたら魔界の連中なら裸足で逃げ出すぞ?大丈夫だあの村には…その師匠もいることだし?」


「あ、道場にも顔を出してくるんですか」


「…………絶対ねーよ!!」


ガタガタ震えてる…こっちも震えてる!!あー恐怖で身がすくんできた!!中途で逃走してきたからな…アオイ医院に何回お世話になったことか!!あやふやにして逃げてきたからな…師匠に遭遇したら何されるか!?


「アウー!!ガクガクブルブル」


「お疲れでしょうから私が運びます。確りと掴まってくださいね」


グロリアに支えられ痙攣しながら歩く俺は2階につづく階段の下にある作業部屋に敷いてある徹夜用の仮寝布団に寝かしつけられた。あっちこっち地図や紙が散乱している通称作戦部屋、よくグロリアとここで魔王軍の進行について話し合ったていた。


「ごめんね…俺が無茶したばかりに…」


「いえ、明日お話を…」


「聞かない…謝罪もういらない」


布団に潜り込むとグロリアは部屋の明かりを消すと静かに部屋を出ていった。ふぅ明日アオイ医院でなにされるだろう…嫌だな、注射やだな。明日なんてこなければいいのに…


無情にも明日になる。神様のアホ(子どもですね)


「では行ってまいります」


「あっユウ様には大変ご迷惑お…」


瞬間移動!!


話が…目が合うなりそんな話聞きたくない!!速効でテレポートしてやったわ!何回も謝らなくてもよろしい!喧しいの!


「あれ?ユウ朝ごはんも食べずに出ていったの?コクテンさんがいるからいいけどさ」


キッチンからフライパンとフライ返しを持ってネリアがひょっこりと顔を出す。


「ふぅー!!まいた!!」


「お久しぶりですね予約はとられてないですよね今日はどうされましたか?」


「いつもの技の使いすぎで神経痛めちゃって…」


「そうですか、今回は骨折打撲は無しですか?なら早く治りますよ!待合室のイスでお待ちください」


「はーい」


呼ばれるのを待ちながら待合室のイスでじっとするが飽きるね、てか先客がいるとはてっきり俺一人だと思ってた。受付の人、たしか小声で今すぐ逃げろみたいなこと言ってたな。それは診察室から出てきた獣人のヒサメさん(チーターの獣人)が出てきたことで確信する。注射じゃなけりゃこれは…

あ、師匠がいるな。


「最強鬼畜白衣の悪魔!!デビルヒサメが出てくるとはなぜだ!!」


大声で叫ぶから頭を小突かれる。てか縛り上げるのが目的でないなら…ヒサメさんの顔を見ると手遅れだみたいに手を置いてやれやれと首を振っていた。助けてくれようとしてたのね…悪い予感が的中している。うーんこれはどうしましょう(涙)


「その声は…」


出てきた患者…忘れようもない。白と黒のしましまの模様。ホワイトタイガーの獣人で虎視眈々流の師範でありスパルタの…


「師範~(涙)」


「何をやらかしたこのバカ息子がぁー!!」


出会って早々鉄拳制裁、ボロボロのまま立ち上がるこのままでは半殺しにされる!!


「無茶をするなとあれほど言って聞かしたのに!!」


殴りながら話は進む…ヒサメさん助けて…もう無理かもです。


「何回も言わすな!!」


殴り飛ばされた衝撃で待合室を跳ね返って師匠の足下に転がる。おう、もう今日が命日になるかもしれない。生きて帰れる自信がない。


「可愛い可愛い愛娘が待ってる。帰るぞ」


「あの俺は怪我人なのですが…」


「帰ったら針治療してやる」


「それが嫌だからアオイ医院に来てるんでしょうが離せ…」カク…

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