戦略と卑怯は紙一重
ちっ、と舌打ちしてからコイン入れに手を翳す。
コインを入れる音の代わりにバチッと静電気のような音がして、機械の0の文字が1になった。
「まだやるの?」
「今ラスボスまで行ったし」
「それで最後にしてね」
「はいはい」
隣の格闘ゲームの椅子に座り、退屈そうにうちを見てる。
「どうせならクレーンのお菓子にすればいいのに。うまい棒とか」
「この前取ったじゃん」
「それはポッキー」
……どっちも大して変わらないけど。
うちの隣にいるのは、うちと同じと言わんばかりの顔。
ただ互いの思考は真逆で、宵は形が残るものが好き。例えそれがお菓子でも。
形が残るものなんか邪魔くさい気がするけど。
「これがラスボス?」
「そう。超卑怯な攻撃してくる」
「ふーん」
宵は聞いたくせに興味ない返事をして、自分の腰まであるツインテールを弄りはじめた。
前に雑誌で、女が髪を触るのは退屈な時って書いてたけど本当だ。
画面の向こうではラスボスとの戦いが始まる。
リーチに差があるせいで中々相手の体力を減らせない。
「このっ!」
苛立ってボタンを強く押すと、うちのキャラクターの必殺技が入った。
「よし勝った――」
宵に勝ったと言う気だったのに、画面に突然乱入者を示す英文が現れた。
おい。冗談じゃない。こっちは今クリア寸前だったんだぞ。
「依」
名前を呼ばれ宵を見ると笑ってた。
――やっちゃえ。
楽しそうに口を動かした、姉を見ながらうちも笑った。
戦略は卑怯と紙一重
有り得ないほど勝てない強さを見せてあげるよ。