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水飴海で、漂流。

あなたの海からあがれない。絡みつく水はあなたそのものだから…



どうしよう…

躰が、動かない……

このままじゃ


沈んじゃう!!



夢から醒めた躰には、じっとりと汗が滲んでいた。

今みたばかりの悪い夢と現実の不快感を洗い流す為、昨晩の気怠るさを引きずったまま、のろのろとバスルームへと向かう。


シャワーのコックを捻ると、少し熱めの湯が私のぼんやりとした思考を刺激する。

湯は当たり前だが、さらりとしていて、さっきまで私に絡みついていた粘着質な液体を洗い流してくれている様だった。



水飴の、だだっ広いだけの海。

私だけが存在する、どろりとした海。


もしかしたら他に誰かいたかも知れないけれど、その姿は沈んでしまったのか、見つける事は出来なかった。


いつの間にかその海に浸り、身動きが取れないでいた私は、ただ漠然とした不安に駆られ、助かりたいけど此処に留まりたいという矛盾した気持ちで、自由を奪われ、甘んじていた。



おかしな夢……



再びシャワーのコックを捻り、湯の放出を止めると共に、夢も一緒に封じ込めた。と思っていた。


しかし現実には覚えのない、そのねっとりとした感覚は私の躰から取れる事はなく、何時までも纏わりついて、忘れさせてはくれなかった。



まるで昨日の鷹臣だわ



そう思った殺那、昨晩充分愛された筈の躰は反応して、瞬時に熱を持つ。

それは今浴びたシャワーのせいなんかではなくて、間違いなく、彼の仕業だった。

いや、言い訳をする私こそ、その犯人かもしれない。


いやらしい私。

本当は何時までもあなたをこの体内にすっぽり包んで、収めていたい。

けどね?そう思う度にちらつくのよ。

みたこともない、あなたの隣にいる女子高生が。

私の知らない、あなたに熱い眼差しを送る健気な女の子が。


海に動きを封じられた私は、ただ沈んで、その風景を眺めるだけ。


なんて寂しいのかしら?

なんて愚かなのかしら?


それでも、この海に沈む心地よさを知った私はそのうねりに抵抗もせず、埋もれゆくだけ。


そして、この海の感覚は一生消える事なく、私の官能を擽るのよ?



ほら、今でさえ、こんなに……



昨晩鷹臣を埋めた部分から、鷹臣の分身のような海の雫が流れ出た。

もしかしたら私自身が作り出した雫かもしれなかったが、そんなことはどちらでも良かった。


だって、結局のところ、同じ液体なのだから。



何とか気を取り直して、私は再びシャワーを浴びる。

昨夜の出来事を思い出せばきりがないし、家を出る時間も押し迫っていた。


私はバスルームから飛び出し、簡素な身支度を整えて玄関まで急ぐ。



「あっ」



思い出したように慌ててドレッサーに戻り、フレグランスを空中にひと吹きした。

その香り雨を浴びながら、足首にもひと吹きする。



舞い戻った玄関で携帯を開き、昨日保存しておいたメールを送信、パンプスをつっかけるようにして履いて慌てて家を後にした。



【日曜出勤だから定時に終わると思います。】



強がりの私の返信と、鷹臣のお気に入りのベビードールの香りが主不在の部屋に、まだ色濃く漂っていた。






遅ればせながら、小夜子担当、林野雛子の片割れです。美しき純愛(卑猥の間違い)を描くべく、全力で頑張ります!

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