放課後と雑談
本編1章4話です
よく来たな、まあ……ありがとう
1章4話
チャイムが鳴り終わると同時に、教室にざわめきが戻った。
テスト返却の緊張感が消えたせいか、みんなの声がやけに明るい。
「ふぁ〜〜、やっと終わったねぇ〜。今日も一日、頑張ったって感じ!」
椅子の背もたれに体を預け、だらりと伸びをしながら冷夏が言う。
「お前、“頑張った”って言葉、意味わかって使ってるか?」
「もちろん! “全力で生き抜いた”って意味でしょ!」
「お前の全力、いつも先生との口ゲンカじゃねぇか」
今日の授業中も、案の定そのパターンだった。
最初はまだ真面目だった。
式の簡略化の根拠とか、模範解答の意図とか――。
けれど数分も経たずに、流れは崩壊した。
「先生、答えって何をもって“正解”になるのかなー!」
「人の考え方が違うなら、答えも無限にあるんじゃないかな?
たとえば1+1でも、満杯のコップが二つあった時、
重ねたらこぼれて残るのは“ひとつの満杯”でしょ? つまり“1+1=1”なのだ!」
「哲学の時間かよ...」
呆れて天を仰ぐ俺をよそに、先生の眉間にはしっかりシワが刻まれていた。
「授業妨害だぞ、正心!」
「答えないのは職務放棄じゃないかー!」
冷夏自身は至って真面目だったらしい。
...その瞬間、教室の空気が凍った。
もう誰も笑わない。俺も、頭を抱えるしかなかった。
「うーん、なんかさ。熱くなると、“知らなくてもいいこと”まで気になっちゃうんだよね〜」
放課後になっても、冷夏はケロッとしていた。
「そういうとこがウザいって言ってんだよ。逆の立場で考えろって」
「ボクがボクに質問するのか!?
それは...ワクワクするね!」
「違ぇよ。そういう意味じゃ――」
「あー、もしかしてハルの言うウザいってこういうこと?」
そう言うなり、冷夏はスタスタ近づいてきた。
白銀の髪がふわりと揺れ、俺の鼻先でゆらゆらと踊る。
「...やめろ。マジでくしゃみ出そう」
「ほれほれ〜、反応が素直でかわいいねぇ〜」
細い髪がかすかに触れるたび、くしゃみが出そうで出ない。
あの“出そうで出ない”ってやつ、精神的に一番くる。
「鬱陶しいわ、このバカタレが!」
「みゃー!? 叩くことないじゃないかー!」
軽く頭を小突くと、冷夏は予想していたように頭を押さえながら笑った。
「100%この未来、見えてただろ!」
「いや、7億%は読めてた!」
「ならやるなよ!」
「でもさ、やらずに後悔するより、やって怒られたほうがいいじゃん?」
言葉があまりに堂々としてて、思わず笑ってしまった。
「お前、人生は毎日が飽きなさそうだよ」
「でしょ? ボクは特別だからね!」
くだらないやり取りを続けながら、教室を出た。
とりあえず異世界行くまで上げときます




