25:星を見る会
生徒会主催の『星を見る会』には、予想以上の生徒たちが参加してくれた。
校庭に用意された椅子に座って星空を見上げる者もいれば、食堂やカフェテリアで軽食を摘まむ者もいる。生徒たちは思い思いに夜の学園という非日常を楽しんでいた。
「ユミナ。そろそろ休憩しろ。会が始まってから、ずっと動きっぱなしだろう」
校庭にいる生徒たちに飲み物を配ったり、空いたグラスや皿を回収したりしていた私は、左手にお盆を持ったまま振り返った。
夜風に髪をなびかせながら、ラディアス様が立っている。
「でも、私は生徒会役員補佐ですから。こういうときこそ、働いて皆様のお役に立ちませんと――」
「ちょっとお、そこの給仕ー。このグラスも持って行ってちょうだいー」
酔っ払っているらしい女子生徒が、空になったグラスを持ち上げた。
ダルモニアでは十五歳から飲酒が許されているため、生徒たちは堂々とお酒を楽しめるのだ。
「はーい。ただいま参りまーす」
「……飲食店の店員か?」
キビキビとグラスを回収する私を見て、ラディアス様は呆れ顔になった。
「あら? ラディアス様は飲食店に行ったことがあるんですか? 王子様なのに?」
「王子でも、城下を視察することくらいある」
「と言いつつ、本当はお忍びで出かけたり?」
私は首を傾げ、悪戯っぽく笑いながら尋ねた。
「……まあ、何度かな。兄上が、ずっと部屋に閉じ込められているのは苦痛だろうと言って。半ば強引に連れ出してくれたんだ」
「待ってください。部屋に『こもっている』のではなく、『閉じ込められている』とは?」
自分の眉間に皺が寄るのがわかった。
「おれは身体が弱いからな。心配だからという名目で、何をするにも監視がつき、ほとんど軟禁状態だったんだ。父上は学園に通うことさえ難色を示された。父上や上の兄たちの反対を押し切ってくれたのがセルジュ兄上とロザリアだ。特に、ロザリアの存在は決定打になった。ロザリアが『何があろうと自分の回復魔法でおれを支える。聖女の称号にかけておれを守ると誓う』と父上に言ってくれなければ、おれはここでユミナに会うこともなかったかもしれない」
「そうだったんですね……」
やっぱり、ロザリア様はラディアス様のことが好きなのではないだろうか。
「どうした? 考え込んで」
「いえ。その。ラディアス様はロザリア様と一緒に星をご覧になるべきなのではないかと思いまして……」
「なんでそうなる? おれの恋人はユミナだろう。一緒に星を見ると約束したじゃないか」
たちまち、ラディアス様は不機嫌そうになった。
――いや、恋人じゃなく、恋人役なんですけどね。
そう言いたいけれど、人がいる場所では言えない。
「しましたけど……。わかりました。少しお待ちください。食器を片付けてきます」
ラディアス様の射るような強い眼差しに負けて、私は食堂に向かった。




