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恋人『役』の刺繍令嬢ですが、気づけば王子の最愛になっていました  作者: 星名柚花


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23/41

23:聖女様も参戦しました

「『恋人役』じゃなく、正式なラディの『婚約者』になれば行けるよ?」

「まさか、ありえませんよ。身の程はわきまえておりますので」

 パーティーと聞いて真っ先に「ビュッフェ食べたい」とか考える女は王子妃に相応しくないだろう。

 セルジュ様の言葉を笑い飛ばしたとき、セルジュ様の側近がやってきた。


「失礼いたします、セルジュ様。ロザリア様が来られました。お通ししてもよろしいでしょうか?」

「おれは元気だから用はないと追い返せ」

 セルジュ様が発言するよりも先に、ラディアス様が冷たく言った。


「こら。ラディを心配して、わざわざ今日も足を運んでくれたロザリア嬢を邪険にしてはいけないよ」

「今日『も』? ロザリア様は毎日、蒼星館を訪れておられるのですか?」

 驚いて問うと、ラディアス様は渋い顔で頷いた。


「そうだ。学校がある平日でも、昼休みになれば必ずおれの元に来る。たとえ体調が良くても『念のため』だと言って回復魔法をかけてくるんだ。具合が悪ければこちらから呼ぶと言っているのに、聞かない。あまり強く言うと泣かれるし……本当に厄介だ」

「いいよ。通して」

 ラディアス様がため息をつく傍らで、セルジュ様は側近に許可を出した。


「かしこまりました」

 一礼して、側近が引き返していく。


「ラディ。くれぐれもロザリア嬢に失礼なことを言わないように。ロザリア嬢はラディの生命線なんだよ? もしも機嫌を損ねてしまったら、ラディが危険だとわかってる? 私は回復魔法を使えるけど、たとえ薬草茶で魔力増幅ブーストしたところでロザリア嬢には敵わないんだ」

「それはそうでしょう。ロザリアも薬草茶を飲んでいるのですから、敵うわけがありませんよ」

 ぼそっと、ラディアス様が呟いた。


「いいから黙って聞きなさい。ラディが重篤な症状に陥っても、私は助けてあげることはできない。後で自分の首を絞めることのないように、言動には気をつけなさい」

 セルジュ様がこんこんとお説教している間に、華やかな黄色のドレスに身を包んだロザリア様がやってきた。


「こんにちは、セルジュ殿下、ラディアス殿下。今日はユミナ様もご一緒なのですね。皆様でカードゲームに興じておられたのですか?」

 ロザリア様はテーブルの端に置かれたカードを見て微笑んだ。降り注ぐ陽の光を浴びて、プラチナブロンドが雪明りのように輝いている。


「良ければ、ロザリア嬢も私たちと一緒に遊ぶかい?」

 セルジュ様はカードを手に取り、ロザリア様を見上げた。


「まあ、よろしいんですの? 是非、混ぜていただきたいですわ」

「…………」

 嬉しそうに胸の前で両手を合わせたロザリア様を見て、ラディアス様は苦虫を嚙み潰したような顔をしている。

 それでも反対しないのは、セルジュ様のお説教が効いているからだろう。


「どうぞ、お使いください」

 私は立ち上がり、ロザリア様のための椅子を用意した。

 セルジュ様とラディアス様も席を整え、改めて四人でテーブルを囲む。


「今日はラディアス様の顔色が良さそうですわね。安心しましたわ」

 セルジュ様が配ったカードを手元で並べながら、ロザリア様が微笑む。形の良い爪に塗られたピンク色の爪紅が、光を反射して煌いた。


「いちいち毎日確認しに来なくていいと言っているだろう。せっかくの休日だ。おれに構わず、どこかに遊びに行けばいい」

「そんなことできませんわ。私がいない間に殿下の具合が悪くなられたらどうするのです。事実、先々週の休息日は寝込んでおられたではありませんか」

 ロザリア様は懇願するような目でラディアス様を見つめた。


「私は国王陛下に殿下のことを頼まれているのです。どうか、私にお役目を果たさせてくださいませ。お願いです……」

「……ああ、わかった。わかったからこっちを見るな。穴が開きそうだ」

 ラディアス様はふいっと顔を背け、二枚揃ったカードを場に捨てた。


「まあ。面白い御冗談ですこと」

 ロザリア様はくすくす笑って自分のカードを摘まみ、ラディアス様が捨てたカードに重ねて場に置いた。


「忘れないでくださいませ。殿下のお役に立つことが、私の喜びなのです」

 ロザリア様が見つめているのは、場に捨てられたカードの山――いや、違う。

 ロザリア様が見ているのは、さっきラディアス様が捨てたカードと、それに重ねて置いた自分のカード?


 ……あれ?

 もしかして、ロザリア様って……ラディアス様のことがお好きなのでは?


「どうされましたの、ユミナ様。体調が優れないのですか? 回復魔法をおかけしましょうか?」

 ぼうっと見つめていると、ロザリア様が心配そうに眉尻を下げた。

 ロザリア様は学園でもこんな調子で、具合の悪そうな人を片っ端から癒している。おかげで彼女は《聖女》の称号の他にも《癒しの天使》と呼ばれ、男女問わず大人気だ。


「いえ、ご心配には及びません。私は至って元気です。ゲームを続けましょう」

 私は笑顔を作ってみせ、揃ったカードを場に捨てた。

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