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恋人『役』の刺繍令嬢ですが、気づけば王子の最愛になっていました  作者: 星名柚花


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22/41

22:みんなでカードゲーム

 昼下がり。

 薔薇の香りが充満する東屋で、私たちはカードゲームに興じていた。

 刺繍魔法が使えるとわかり、安心してそのまま帰ろうとしたら、セルジュ様に引き止められたのだ。


 現在遊んでいるのは『爆弾』というゲーム。手札の同じ数字のカードを2枚一組にして捨てていき、手札を減らしていく。最後まで『爆弾』のカードを持っていた人が負け。それがルール。


「さて、どっちでしょう?」

 尋ねてきたラディアス様の手元には二枚のカードがある。

 私の手元に残ったのは『4』のカード一枚。

 つまり、ラディアス様の手元にあるカードは当たりの『4』と、『爆弾はずれ』のカードだ。


「うーん……」

 絵柄が描かれた二枚のカードを見つめて、私は唸った。

 私は二連続で負けている。さすがに三回目の敗北は避けたい。

 だって絶対、ラディアス様にからかわれるし。

 既に上がったセルジュ様は紅茶を飲みながら、穏やかに微笑んでいる。さっきから何も言わず、傍観者に徹していた。


「……こっちですっ!」

 悩みに悩んだ末、私は向かって右側のカードを引いた。

 結果は『爆弾』……外れた。


「ああ……」

「残念でした」

 がっくりと肩を落とした私を見て、ラディアス様は楽しそうに笑った。


「なんの! 勝負はまだ終わってませんよ!」

 私はテーブルの裏で何度もカードをシャッフルさせて、ラディアス様の前に出した。


「どっちでしょう!?」

「じゃあこっち」

「あっ!?」

 ラディアス様は悩むことなく、あっさりと当たりの『4』を引いた。


「当たった。おれの勝ち」

 ラディアス様は唇の端を上げて、テーブルの上にカードを置いた。


「なんでわかったんですか!? はっ、まさか魔法でズルを……!?」

「言いがかりは止めろ。たかがカードゲームで魔法なんて使うわけないだろ。ただの勘だよ、勘」

「……じゃあなんで、そんなにあっさり引いたんですか?」

「気負ったところで結果は変わらないだろうが」

「うう……」

 正論だ。ぐうの音も出ない。


「というわけで、今回もまたユミナの負け。これで三連続か。弱いなー」

 ラディアス様は心底楽しそうだ。

 なんでこの人、私をからかうときだけこんなに良い顔をするんですかね?


「……ラディアス様って、ときどき子どもみたいですよね。ああそうだ、私のほうが年上でしたねー」

 負けじと、ニッコリ笑ってみせる。

 ラディアス様と私は同じ学年だけど、私は5月生まれなので、ラディアス様より先に十六歳を迎えたのだ。


「確か、お生まれは7月でしたよね。やっぱり王族となると、お城でパーティーが開かれるんですか?」

「ああ。おれと一番上のアイザック兄上は生まれ月が近いから、毎年合同で8月に開催している。アイザック兄上の誕生日を祝うのがメインで、おれはほとんどオマケ扱いだな」

「……不公平じゃないですか? 同じ王子なのに」

「健康な王太子と、病弱な末の弟の扱いが違うのは当然のことだろう。別にいいんだ。おれの誕生日には、セルジュ兄上が毎年ケーキを作ってくれるしな。豪華な贈り物もくれるんだ」

「……一国の王子がケーキを手作りされるんですね……」

 さすがブラコン、と私は心の中で呟いた。

 普通は弟にケーキを贈るとしても、宮廷料理人に命じるだけで終わると思う。


「それはもう、ラディがこの世に生を受けた最も記念すべき日だからね。私が王だったらその日は祝日にして、国を挙げての祭りを開催したいくらいだ」

「あはは。たまに、兄上はおかしなことを言いますよね」

『たまに』かな!?

 ラディアス様のことになると、結構な頻度で狂ってる気がするんだけどな!?


「え、えーと。ラディアス様がオマケ扱いされるのは納得できませんけど。王宮で開かれるパーティーとなると、それはそれは盛大で楽しいパーティーなんでしょうね。機会があれば行ってみたいです」

 想像して、胸をときめかせる。

 煌びやかなシャンデリア、綺麗に装った人々、楽団が奏でる音楽、美味しそうなビュッフェ……いけない、涎が出そうだわ。

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