22:みんなでカードゲーム
昼下がり。
薔薇の香りが充満する東屋で、私たちはカードゲームに興じていた。
刺繍魔法が使えるとわかり、安心してそのまま帰ろうとしたら、セルジュ様に引き止められたのだ。
現在遊んでいるのは『爆弾』というゲーム。手札の同じ数字のカードを2枚一組にして捨てていき、手札を減らしていく。最後まで『爆弾』のカードを持っていた人が負け。それがルール。
「さて、どっちでしょう?」
尋ねてきたラディアス様の手元には二枚のカードがある。
私の手元に残ったのは『4』のカード一枚。
つまり、ラディアス様の手元にあるカードは当たりの『4』と、『爆弾』のカードだ。
「うーん……」
絵柄が描かれた二枚のカードを見つめて、私は唸った。
私は二連続で負けている。さすがに三回目の敗北は避けたい。
だって絶対、ラディアス様にからかわれるし。
既に上がったセルジュ様は紅茶を飲みながら、穏やかに微笑んでいる。さっきから何も言わず、傍観者に徹していた。
「……こっちですっ!」
悩みに悩んだ末、私は向かって右側のカードを引いた。
結果は『爆弾』……外れた。
「ああ……」
「残念でした」
がっくりと肩を落とした私を見て、ラディアス様は楽しそうに笑った。
「なんの! 勝負はまだ終わってませんよ!」
私はテーブルの裏で何度もカードをシャッフルさせて、ラディアス様の前に出した。
「どっちでしょう!?」
「じゃあこっち」
「あっ!?」
ラディアス様は悩むことなく、あっさりと当たりの『4』を引いた。
「当たった。おれの勝ち」
ラディアス様は唇の端を上げて、テーブルの上にカードを置いた。
「なんでわかったんですか!? はっ、まさか魔法でズルを……!?」
「言いがかりは止めろ。たかがカードゲームで魔法なんて使うわけないだろ。ただの勘だよ、勘」
「……じゃあなんで、そんなにあっさり引いたんですか?」
「気負ったところで結果は変わらないだろうが」
「うう……」
正論だ。ぐうの音も出ない。
「というわけで、今回もまたユミナの負け。これで三連続か。弱いなー」
ラディアス様は心底楽しそうだ。
なんでこの人、私をからかうときだけこんなに良い顔をするんですかね?
「……ラディアス様って、ときどき子どもみたいですよね。ああそうだ、私のほうが年上でしたねー」
負けじと、ニッコリ笑ってみせる。
ラディアス様と私は同じ学年だけど、私は5月生まれなので、ラディアス様より先に十六歳を迎えたのだ。
「確か、お生まれは7月でしたよね。やっぱり王族となると、お城でパーティーが開かれるんですか?」
「ああ。おれと一番上のアイザック兄上は生まれ月が近いから、毎年合同で8月に開催している。アイザック兄上の誕生日を祝うのがメインで、おれはほとんどオマケ扱いだな」
「……不公平じゃないですか? 同じ王子なのに」
「健康な王太子と、病弱な末の弟の扱いが違うのは当然のことだろう。別にいいんだ。おれの誕生日には、セルジュ兄上が毎年ケーキを作ってくれるしな。豪華な贈り物もくれるんだ」
「……一国の王子がケーキを手作りされるんですね……」
さすがブラコン、と私は心の中で呟いた。
普通は弟にケーキを贈るとしても、宮廷料理人に命じるだけで終わると思う。
「それはもう、ラディがこの世に生を受けた最も記念すべき日だからね。私が王だったらその日は祝日にして、国を挙げての祭りを開催したいくらいだ」
「あはは。たまに、兄上はおかしなことを言いますよね」
『たまに』かな!?
ラディアス様のことになると、結構な頻度で狂ってる気がするんだけどな!?
「え、えーと。ラディアス様がオマケ扱いされるのは納得できませんけど。王宮で開かれるパーティーとなると、それはそれは盛大で楽しいパーティーなんでしょうね。機会があれば行ってみたいです」
想像して、胸をときめかせる。
煌びやかなシャンデリア、綺麗に装った人々、楽団が奏でる音楽、美味しそうなビュッフェ……いけない、涎が出そうだわ。




