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第6話 離婚願望刑事

警察と言えばやっぱりカツ丼がまっさきに思い浮かびますよね(≧∇≦)

 俺は急いで明さんの手を引いて家に連れ戻した。明さんも、絹江さんと似たような感じで困惑しながらも家に戻って来てくれて、瑠香がまた鏡を持って来て見せた。


「…………貴様っ――!」

 鏡を見た明さんの強面が真っ青になり、絶句し、すぐに真っ赤になって、俺に掴みかかろうとした。


「彰人君、すぐにこれをやめろ! やめないと――」

「だ、だから違いますってば!」


「ちょっと待ったぁ!」

 俺と明さんの間に母が割り込んできて、明さんの肩を両手で押して止めてくれた。


「横山さん、落ち付いて! 17歳の頭の悪い子が、こんなすごい技術あるわけないでしょう!」


 母強い! 体の大きい刑事さんにもびびらない! 頭が悪いのは本当だ!

 それに比べて瑠香のやつ……


 パシャパシャパシャ


と、俺をスマホで連写してた。なにやってんだか。


「……すまない、それもそうだ。君にこんなオーバーテクノロジーみたいなことができるわけない」

 言い方はアレだけど、納得してくれたようだ。


「瑠香君、写真は困るんだが」

「だいじょうぶです、お(にい)しか撮ってないので。お兄の怯えた顔が受け顔……じゃなくて、面白くてつい」

 まじで何してるの我が妹よ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 明さんはちょっと落ち着いた。顔色はまだ悪いけど。


「それにしても、なぜ外に出たらこの”称号”とやらが表示されてしまうとわかった?」

「奥さんが家を出たとたんに、字が浮かんだんです。それを俺と瑠香が見てました。……すいません、もう少し早く思い出していれば」


「そうか……いや、まさかこんな仕組みがあるとは。君のせいじゃない。だが、今の計画は見直す必要がある。上と相談するから、別の部屋に行かせてもらっていいですか?」


 明さんは母にだけは丁寧語だ。


「はい、じゃあお父さんの書斎がいいかしら。防音もしっかりしてますから」

「ありがたい、ではしばらくお借りします。君たちはだれが来ても家から絶対に出ないで」


 明さんはそう言って母に先導されてスマホを片手にリビングを出て行った。強面にはかなり焦りが浮かんでいた。それはそうだよな。もしここに署員? とか他の警察官が来たら称号見られちゃうし、広がっちゃうもんな。奥さんにだって知られるだろうし。


『不倫願望主婦』と『離婚願望刑事』


 ――この夫婦、もう詰んでないか?


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


 明さんは小一時間くらい父さんの書斎にこもってた。

 出て来てから言ったことは。


「とある著名なエキスパートに来てもらうことになった。本来なら国営の施設へ行ってもらうべきだが、君たちを移動させることで多くの署員の目に触れることになってしまうから、まずは1人、この家に来てもらい状況把握し、のちに本格的に対応策を立てる。あと、この家の周辺には、複数人の見張りを付けるが、なるべくいつも通りでいてもらいたい。学校や、奥さん(俺の母)の職場への連絡は、各自”コロナで一週間程度休む”とお願いします」


「わかりました。で、エキスパート? の人、来てもだいじょうぶなんですか? 称号付いちゃうことになりそうだけど……」

 これ以上、変な称号が増えるのは心配だ。


「ああ。彼女本人はオーケーだと言っている。むしろ大喜びをしているよ。すごい体験ができる、ってね」

 あ、女性なんだ。喜んでるなんて変わった人だなあ。


「それで、何のエキスパートなんです?」

 瑠香が興味津々で聞いた。


「MRだ」


「「「MR……?」」」

 湯浅家3人は首を傾げた。VR(Virtual Reality)は知ってるけどMRってなんだっけ?


「Mixed Reality。複合現実だな。精密な3Dオブジェクトをまるでその場にあるみたいに仮想空間に配置して360度自由に回転させたり、操作することができる。遠隔操作で協力作業を行うこともできるから、医療でも活躍している」


「へえ、まるでSFみたい」

「そのSFみたいなことが現実に今起きている。この原因、私はわからないが、MRの専門家であれば、なにか手がかりを掴めるかもしれない。彼女は3時間後に到着する予定だ」


「わかりました。そのエキスパートさんと、横山さんもうちに泊まることになります? その予定でしたら寝るところ用意しますけど」

 よくそこまで頭が回るなあ。主婦って生活のエキスパートだよな。


「あー、私は寝袋を持って来てもらってそこらへんで寝ます。彼女には、よかったら布団かベッドを用意していただけると」


「そういうことでしたら、客間が空いてますのでその女性にはそこで。横山さんは、折り畳みベッドがありますからそれ使ってくださいな。リビングに持って来ますね」


「……恐縮です。急にこんなことになって申し訳ありません。あ、食事はこちらで全部用意しますので。なにかアレルギーはありますか? なければこちらで適当にご用意しますが」


「はーい! うちはみんなアレルギーありません。……私カツ丼がいいな!」

「こら、瑠香!」

「いいじゃん、お兄。警察の人といっしょに食べるんならカツ丼でしょ」

「あーなるほど?」


「……わかりました。湯浅さんの奥さんもカツ丼でいいです?」

「いいわね! じゃあ、か●やのカツ丼弁当・松をお願いしてもいいかしら」


 おかああさあああああああん!


「か●や……京王八王子の駅そばにありましたね。それならここから近いし。私も同じものを頼むことにします。彰人君たちも”松”でいい?」

「やったー! あたしは”松”でいいでーす」


 あ、いいんだ。これって税金から出るんだよな……まあいいか、警察の都合だし!


「俺は海老ヒレロースかつ丼でお願いします」

「……いいけど」

 明さんは、ギロリって音が聞こえそうなくらい怖い顔で俺を睨んだ。


 あれ? なんか明さんて俺にだけ塩対応? なんで?

 一番高い奴頼んだの、だめだった?

彰人、空気読めないタイプでした(ノ∇≦)

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