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02伝説の赤龍・ヴォルガニス

 退院するまでの間、初期デッキの考察をしていた。

 基本デッキとしては多すぎるくらいの色んな効果のカードがあるけど逆に言えば全部ということらしい。

 その辺は陰というメカクレ少女が毎日お見舞いに来てくれたので聞けた事だが、転生初日の初対戦で使わなかったアイテムカードとそれに付随する消耗効果。エリアカードと詠唱効果で一通りの特殊効果は揃うらしい。

 とりあえずアイテムカードは場に一枚まで置いて、効果が発動するたびに消耗する。

 例えばアイテムカード『薬草』。


 消耗1 効果発動により消耗。自分のユニットが破壊されたとき、破壊されなかったことにする。防御力は1になる


 というテキストで、消耗カウンターと呼ばれるものが一個置かれて、ユニットが破壊された時に消耗カウンターを取り除く。するとカウンタ―がゼロになったアイテムは取り除かれる。それまでは場に残り続ける。

 これがアイテムと消耗効果。

 続いてエリアカード。例えば『朽ちた城塞』。


 すべてのユニットの攻撃時に破壊する障壁の枚数を+1する


 というテキストで、このすべてというのは相手ユニットも含まれる。場の全体に効果を与えるカードだ。厄介なのはこの効果を消すためには新しいエリアカードを出すしかないということ。また、相手に新しいエリアカードを出されると前に出したエリアカードは墓地に送られる。自分と相手のどちらか一方の最後に出した一枚だけが全体に効果を発揮するということ。

 最後に詠唱。これも厄介な効果だ。裏メモリとして置かれている詠唱カードは条件を満たすとコストを支払い、裏メモリになっている詠唱効果のカードを墓地に送ることで効果を発揮する不意打ちカード。

 例えば『濃霧』。


 詠唱=相手ユニットの攻撃 その攻撃を無効にする


 効果で見れば分かって貰えるだろうか。つまりこのカードは裏メモリとして出るので非公開情報。ここからトドメを刺せると思って無理な攻撃をしたところを妨害される可能性があるわけだ。その代わり使った詠唱カードは墓地に置かれるから裏メモリが一枚減る。多用はできない。

 そんなに怖いかって? ちょっとこんな状況を想定してみよう。

 俺は序盤、障壁を直接破壊できる狙撃兵やファイヤボールで順調に障壁を破壊してきた。相手の障壁は残り五枚。メモリの合計は6で自分の場には見習い守護天使。相手の場には6/4スタッツの狼男じゃあここでブロセッサフェイズを宣言してビリビリ神を切札ゾーンから手札に加える。これで使えるメモリは4。英雄効果が発動して障壁を三枚破壊。速攻持ちの二重殺なので進化して相手を直接攻撃して障壁は0。まあここまではいい。

 相手のターン。6/4スタッツの狼男が5/5のスタッツを持つビリビリ神を破壊。相打ち。相手は適当なユニットを出した。だが構わない。

 俺は自分のターンにメモリを置いて5。なんと俺はここでさらにプロセッサフェイズを宣言。メモリは3になるが構わない。なぜならここで切札ゾーンから手札に加えたのは速攻を持つ1メモリの襲い掛かるゴブリン。こいつでフィニッシュして終わり! ……というところで濃霧の詠唱が発動。すると攻撃は無効化されてしまえば状況は一変。二回のプロセッサフェイズで消費したメモリ4、相手は詠唱一回で裏メモリ1消費。無茶な攻撃の代償は3マナ差。あまりにも絶望的だ。

 正直この詠唱カードを聞くまでは襲い掛かるゴブリンは一枚、絶対に切札ゾーンに入れた方がいいと思っていた。

 だが、基本デッキに濃霧が入っているという事はみんな持っているということだ。切札ゾーンに襲い掛かるゴブリンが入るようにデッキには濃霧を入れるのはなんらおかしなことじゃない。

 とはいえ強い動きではあるんだよな、障壁が無い状態での切札襲い掛かるゴブリン。ただ信頼度が百パーセントから八十パーセントくらいになったってだけで。

 というか切札ゾーンに入れるカードってのがそもそも五枚にするべきなんだ。そうすればデッキ圧縮になるんだから。カードが揃うまではバニラで1/1の武装する民なんかを切札ゾーンに詰めてもいい。

 とはいえ、だ。初期デッキの事を考えるのはもう終わりだ。こんなのはほとんどただの思考実験。襲い掛かるゴブリンと濃霧がもしかしたらデッキにまだ入るかも、くらいだ。

 なぜなら退院したから。

 帰宅。結構広めの一軒家。俺と両親の三人暮らしのようだ。兄弟はいない。

 で、今は学校休みだったらしい。なんか小学校卒業して中学校に入るまでの短い期間であの記憶とデッキ消失する神の裁き事件が起こったらしい。大丈夫? 神の裁き受けてるような中学生とかいじめに合わない?

 ちなみになんで父親じゃなく俺の方に裁きが来たかというと、父親は何かあった時のために俺に自分のカードを託していたらしい。なので一番被害がでかいのが俺に裁きをぶち当てる事だったそうな。女神様よく見てるな……そういう裁き回避とかをさせない訳だ。

 で、今日は朝から両親ともいねえ。研究所とかいうところで働いてるらしいのだが。代わりにメカクレ少女の陰が家にいる。なんで? なんなら朝飯作ってくれてる。なんで?

 いやありがたいけどね。というかスカート短い。

 なんか聞いたところお隣さんなんだって。あと同い年らしいよ陰ちゃん。中学も同じらしい。


「エイトくんのサポートは任せ、て」


 との事なのでなんかもうあれだ。思った事言うわ。


「俺達、許嫁だったりする?」

「い、許嫁……!? 違うよ。そうだったら嬉しいけど……その」

「違うんだ。家庭的だし優しいし嫁にしたい。いっそ婚約しない?」


 俺は話の早い男。優良物件には粉をかける。


「あう。うん……うん! 喜んで!」


 好感度高っ。いいのか本当に。

 ということで婚約者が出来ました。

 めっちゃ嬉しそうな陰ちゃんと一緒にデートです。当初の予定通りカドショに出かけます。

 そんでまあ外では皆デュエルしてるわ。なんならカードも落ちてる。あ、車に轢かれた。……曲がるどころか汚れもねえ!?


「カードには神性が宿ってるから普通のダメージは入らないんだ。拾ってもいいよ。もしかしたらレアカードの可能性もあるし」


 よっしゃ。そう言う事なら。ドロー!


 C 人『平凡な狙撃兵』3-0 1/1 射撃3


 まあ……悪くないか。射撃持ちなんていくらいてもいいからな。


「ちなみにレアリティはコモン(C)、アンコモン(U)、レア(R)、レジェンドレア(L)の四種類あるよ。大体の人はコモンとアンコモンでデッキを組んでるね。例外もあるけど……それはもうちょっと後で話すね」


 ということでショップについた。そこの店員はみんな紅白の制服を着ていた。

 巫女。そう巫女さんだった。


「いやなんで巫女……?」

「だってカードっていうのは神様が与えてくれた物なんだよ? 取り扱うのもある神聖な人達だよ」


 てことはアメリカでは修道女か……? うーむ疑問が残る。

 というかね、見た事ある人がいるのよ。

 誰だと思う? ヒントは俺が会ったことがある人は限りなく少ないってこと。

 なんかこっちに気付いて近づいてきたわ。


「はじめまして、カードショップの巫女長です。記憶が無くて大変だろうけど頑張ってね!」


 そういってでけえ胸を揺らすのは……そう、この爆乳は間違いなく。


「女神様なにやってんすか」

「ふふふ、ある時は女神、ある時は巫女長。その実態は……ただの一般男性」


 悲しい事言うなよ。


「巫女長さんはね、神通力で分身してるの。どこのカードショップにもいるよ」


 分霊かあ……などとは思うがあんまり深く突っ込むのも面倒ではある。


「この見た目だからね、色んな人に見て欲しいという気持ちとコスプレしたいという気持ちのコラボレーション、ダブルアクション」


 何言ってんだこの女神。


「さて、今日はカードの購入かな? それとも異世界に飛ぶ?」


 すげえ選択肢が出てきたわ。異世界転生の次は異世界転移かよ。一週間も経たないうちに?


「この『人世界』の他に『魔世界』『天世界』『機世界』があってね? そこに遊びに行ったり修行したり、カードを拾ったりしにいくんだよ」


 はぁ……そりゃすごい。いやでも待て。


「見た感じこの世界になんか異世界人いなかったと思うんだが」

「そ、それはね……人世界で拾えるカードは『種別:人』しかいないから……」

「うん」

「人はバランス型って話をしたよね? だから特化したカードより弱いから異世界人に人気無いの」

「せちがれえ」

「でもその分安全だからね! 人世界もいいところだよ!」


 そりゃなんか魔族とか天使とかいなくてよかったとは思うが。


「ついでに説明しておくと、人族はそのまま人間のカード。魔族はファンタジー生物の大半。天族はエルフや妖精、動物や天使に神様のカード。機族は機械やホムンクルスみたいな無機物系のカードが多いよ」

「陰ちゃん、説明ありがと。さてエイトくん。今日はデッキの強化に来たんだよね。パックを買うかい? それともシングルを買うかい?」


 ちなみに両親から軍資金として十万円を貰っている。これはデッキ消えた詫び代も兼ねているので小学生卒業程度に持たせるような金じゃねえ! というツッコミからは逃げさせてもらう。


「シングルっていくら?」

「コモンは一枚で百円から、アンコモンはカードによるけど千円から数万円。レアが十万円からで値段は青天井。レジェンドはもうやばいくらい。パック引いて当てて? 巫女長のお告げ的に神の救済措置もあるから」

「救済措置?」

「それは私が説明するね? あまりにもパックの引きで強さが決まるのが面白くないと考えた創造神様は、一生に一度だけ運命の出会いをするパックが感覚で分かる力を人々に与えたの。そこにはその人の特徴と噛み合ったレジェンドレアが絶対に入っている、らしいね」


 へぇ、カードゲームだけ広めてはい終わりってわけじゃないんだな。そもそもこうやって正体隠して……隠してるのか? まあ分からんが人と接してる時点である程度は人に親身ではあるのか。


「パックは未だに新弾出てますよー。再録とかもあるからどんどんお布施していってね!」


 お布施……確かに神へのお布施なのかなあ。細かいとこ突っ込むと面倒になりそう。

 とりあえず俺は主人公として、王道を行こうと考えてる。


「ドラゴンのたくさん入ってるパックが欲しい。とりあえず六万円それに突っ込む」

「ひゃあ! お大尽様! おっけーもってくる!」

「ライトくん……? なんでドラゴンなの? もしかして運命の出会い、感じた?」

「そういうわけじゃないが、絶対引き当てて見せるさレジェンドレア」


 ここがチートの切り時だな。今から持ってきてもらうパックの一番レアなドラゴンを生成する!

 お金を払い、巫女長(女神)がもってきたパックを剥く。

 剥いたパックから出たカードをスマホに登録する。するとカードがスマホの中に収納され、データが登録される。もちろんいつでも取り出せる。

 パックを剥く、収納する。六万円分のパックを剥き終える最後の一パックでそれをした。カード生成のチート。

 それによって現れたカードの名前は『伝説の赤龍・ヴォルガニス』

 効果はこれだ。

 L魔『伝説の赤龍・ヴォルガニス』 8-0 10/10 速攻 五重殺 英雄=相手の障壁を三枚破壊する


 コスト以外はビリビリ神の上位互換のようなカード。

 上手く通せば障壁八枚破壊の超攻撃的カード。その代わりコストは重い。

 パックで当てたカードと組み立てて、残り四万円で相性の良さそうなカードをシングル買い。

 こうして俺のデッキは格段にパワーアップする目途がついた。家でじっくり調整したいぜ。


 ということで次回! 『構築されたドラゴンデッキ』! 人魔天機、奉納!

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