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第2話

 あれからユキは、カイラの家で住み込みすることになった。

 カイラは、自分がユキのかけられた呪いの魔法にかかってしまったのが相当悔しかったらしい。

「絶対に、俺のプライドにかけて解呪してやる」


 そんなわけで、ユキは問診を受けたり採血されたり、色んな薬を飲まされたり魔法をかけられたり。

 カイラは色々してくれてはいるが、なかなか呪いは解けなかった。


 ユキもそんなカイラの為に掃除をしたりご飯を作ったりすることにしたが、カイラは迷惑そうだった。


「掃除や食事など、魔法で済ませる事ができる。ウロチョロして俺の視界に入ってくるな」


「すみません。やっぱり、私と目が合って、また甘えん坊になっちゃうの怖いですよね」

 ユキは申し訳無さそうに俯いたまま言った。


 カイラはフン、と鼻を鳴らす。

「馬鹿にするな小娘が。この俺が貴様の呪いごとき、怖いわけないだろう。……まあ一瞬意識が途切れるからそれが不便だと思っているだけだ」

 ああ、なるほど、とユキは頷いた。

「そう言えば、他の人は、誘惑魔法にかかったら、一日経つか、冷たい水でも浴びせない限り解けないんですよ。でも、カイラ様は十分くらいで自力で意識を戻せてますよね。さすが大魔法使い様ですよね」


「まあな。ちょっと貴様の呪いの威力が想定外に強くて油断したが。今度は大丈夫だ。これを見ろ」


 カイラはドヤ顔で、真っ赤な眼鏡をユキに見せた。

 シンプルな赤、というより夕焼けを閉じ込めたような柔らかな赤色だ。キレイ、と思わずユキは呟いた。


「えっと、これは?」


「これは、貴様の誘惑魔法を抑える眼鏡だ。これをかければ魔法の威力が弱まる。解呪に時間がかかりそうだからな。これをつけて威力を弱めれば、まあ俺くらいの魔力のある魔法使いなら誘惑されたりしなくなるだろう」


「す、すごい!ありがとうございます!!」


 ユキは早速眼鏡をかけた。視界がほんのり赤く染まったが、そこまで違和感は無い。


「試しにカイラ様に目を合わせても大丈夫ですか」


「構わない。もう俺にその誘惑魔法がかかることはないだろうからな」


「それでは……」


 ユキは眼鏡をかけたまま顔をあげて、カイラの目を見つめた。


 ………

 …………

 ……………


『別に、俺はユキの事好きじゃないんだからなっ。まあ別に?ユキから抱きしめてくれるっていうなら近づいてやってもいいけどな。……え?なんでしないんだよ。ねえ、抱っこして……、いや!別に好きじゃないけど!!……ふふふ。仕方ないなあ。抱っこさせてやるよ。ユキは俺の事好き?好きだよな?いや、別に俺は好きじゃないけど?……いや、ごめんね。ウソウソ。やだよう。もっと抱っこしてよぉ』


 ………

 …………

 ……………


「多少魔法の威力が弱まって理性が残った結果、ツンデレみたいになりましたね……」


「……言うな」


 意識を取り戻し、記録魔法を確認したカイラは、ぐったりと頭を垂れて死んだような声になっていた。頭を抱え、絶望に打ちしがれている。


「なんだか前より面倒でキモい奴になってるじゃないか」


「そ、そんな事ないですよ!!ツンデレ可愛いですよ!まあ確かに面倒っちゃ面倒でしたけど、それはそれで甘えたいのが丸見えで可愛……」


「うるさい、黙れ」


 カイラに睨まれて、ユキは素直に口を閉じた。


「この眼鏡は失敗作だ」


 カイラはよろよろと、眼鏡を持って自分の部屋へ戻って行った。



「カイラ様って、好きな人には抱っこしてもらいたい派なんだな」


 ユキは、カイラの後ろ姿を見ながら、ぼんやりと呟いた。

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