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医薬品や食品添加物の「害」に関する一考察

作者: よろ研

書籍や雑誌では「こんな薬は飲むな」「食品添加物は悪」といった内容が多く見受けられます。まあ、タイトルとしては「安全」とするよりも「害」とした方がウケがいいのはわかりますし、その方が多くの人に読んでもらえるからなのでしょうが、はたして医薬品や食品添加物は「害」なのでしょうか。そのあたりを考察してみました。



そもそも「医薬品」や「食品添加物」とは


MSDマニュアルによれば、薬とは「体自体や体の一連の働きに作用するあらゆる化学物質ないし生理活性物質」とされていますし、日本食品添加物協会によれば、食品添加物とは「食品添加物とは、食品の製造過程で、または食品の加工や保存の目的で食品に添加、混和などの方法によって使用するもの」とされています。要するに化学物質ですね。


私自身、かつて「毒性学」で「すべての化学物質は発癌物質である(Dr.Ames)」ということを学びました。まあ、発癌性を発揮する前にその化学物質の作用で別の効果を発揮してしまうものが多いのですが、突き詰めれば化学物質はすべて発癌性を内包している、というのが当時の教授の解説でした。

つまり、食品も含めた化学物質は大なり小なり毒性を有しており、使い方次第で毒にも薬にもなる、ということでしょう。

醤油だって1L一気に飲めば致死量(LD50)に達してしまうわけですので、どこまでが許容できる範囲か、というのが食品も含めた身の回りの化学物質に言えることだと思います。



医薬品の害と益


医薬品を使う理由って何でしょう。オーバードーズやらのリクリエーション的使用は論外として、普通は何らかの疾病を治すために投与されるわけですよね。で、ある程度の不利益(肝臓や腎臓への負荷等)があるとしてもその疾病を治さなければ体にとってより害が多くなるから医薬品が投与される、という考え方だと思います。


ほとんどの薬が肝臓や腎臓で代謝されるわけですから、これら臓器に負荷がかかるのは当たり前で、そのリスクを踏まえたうえで医師が投与を決定し「さじ加減」をしているわけですので、雑誌掲載の「飲んではいけない薬」のように患者を診てもいない第三者から文句を言われるのはちょっと筋が違うのではと思います。


もちろん、意味もなく漫然と薬を使い続けるのはよくないと考えますので、投与の必要性やさじ加減については医師の力量も重要になってくるかとは思いますが。



食品添加物の害と益


食品添加物は医薬品と違い、食品の加工や保存目的で使用されているものですので、医薬品とは目的が違います。で、こちらは食品を食べ続けると添加物も取り続けることになるのでよくないのでは、という論調でしょう。基準値は設定されていますが、「添加物=害」と考える方も多数おられるようです。

確かに、食品添加物が体に害を及ぼすのでは、という報告は数多くあります。


大腸癌だけを例にとっても、添加物が若年性大腸癌の増加の原因ではという仮説が提唱され、その原因物質として、加工肉の硝酸化合物、清涼飲料水の果糖、お菓子の着色料である酸化チタン、加工食品の乳化剤やトランス脂肪酸などが挙げられています。


確かに、必要のない添加物は排除していく方がいいと思いますが、現代社会の食品流通を考えますと、保存に関係する添加物は入れざるを得ないと思われますし、長期的に大量に摂取するならいざ知らず、体の働きでリカバーできる量であれば闇雲に排除しなくてもいいと思います。どのみち、食品を口にすればそれを分解するために各臓器に負荷をかけるわけですし、タンパク質を摂ればその分解過程で生じるアンモニアの処理に肝臓はがんばらないといけないわけですし。


食品添加物の例として、よくやり玉に挙げられる「硝酸化合物(亜硝酸ナトリウム等の硝酸塩)」を挙げてみます。ベーコンやハム等に添加されていますが、これは元々は岩塩をハム等に使用すると、発色が良く、風味もよくなり、食中毒が起こらないことが経験的に知られ、その起因物質として特定されたものです。目に見える効果としては発色効果ですが、熟成の風味形成やボツリヌス菌の増殖抑制効果など目に見えない重要な役割もあります。


硝酸塩として人工的に添加した場合、使用量が明確になるのが利点です。岩塩は天然物質のため、成分量が安定しません。ですので、単味の化学物質として使用した方がむしろ安全性は高くなると思われます。現在では食品衛生法により食肉製品の亜硝酸根の残存量は0.070g/kgとされており、この量では長期摂取でも発癌性と関係がないとされています。


また、食品添加物の基準値は一生食べ続けても害のない量のさらに1/100量を上限としていますので、まず問題になる量ではないでしょう。

原発事故の後の放射線量でも話題になりましたが、この許容量というのは17歳男子の食事量(人生で一番食べる時期)で100年間食べたとして、その1/100とのことです。一生食べる量としてはかなり余裕を持った計算式なのかなと思います。



硝酸塩中毒の実際


硝酸塩中毒の危険性としてベーコンやハムがやり玉に挙がっているのですが、実際には野菜等による中毒事例が散見されます。肉製品を直接の原因とした硝酸塩中毒は見当たりませんでした。


実例をあげますと、ドイツではホウレンソウによるメトヘモグロビン血症(亜硝酸態窒素がヘモグロビンと結合し酸素運搬機能が消失することによって起きる)が1959~1965年の間に15件起きています。すべて3ヶ月齢以下の乳児で、これは乳児では胃内pHが高いため硝酸塩から亜硝酸塩が生成されやすいためとされています(ブルーベビー症候群)。

その他にも井戸水や配管不良による亜硝酸塩含有防腐剤の混入などにより、それらの水で作られた粉ミルクでメトヘモグロビン血症が起きています。


もちろん、基準値というものは存在していますが、コントロール不能である野菜や井戸水の方が危ないのに、コントロール下に置かれたベーコンやハムが叩かれるのは不思議な気がします。



現代社会に生きるヒトという生物として


高度にシステム化された現代社会、すべてのものを自給自足で賄うというのはほぼ不可能で、流通によって運ばれた食品を消費して生きていくしか手がありません。


現代社会の食物循環は、自然界とはかけ離れた世界となっており、「食品」というものがいきなり完成形で手元に現れます。

狩りをしなくても肉製品が手に入るわけですし、畑の野菜が食べごろになるまで待たなくても店頭に並んでいます。場合によってはそのまま食べられるものが手元にやってくるわけです。

当然そこには流通というシステムが存在し、流通時間中に変質・変敗しないように添加物が使われるわけです。

低温にすれば細菌の繁殖は防げますが、温度だけでは酸化等による変質は避けようがありません。

ある意味、この自然界からかけ離れたシステムの恩恵を受けている以上、許容すべきは許容していくしかないと思います。


幸いにして、医学も栄養学も発展している現代では平均寿命は延び続けています。現在寿命を迎えてる方々は、子供のころに現在のような医薬品や食品添加物の規制が厳しくない時代を生き抜いてきたわけですが、医薬品や食品添加物が「害」であったなら、ここまで寿命は延びるでしょうか。むしろ恩恵の方が大きかったのではと推察します。



医薬品や食品添加物も元をただせば自然界に存在する物質から有用なものを探し出し、それを応用してきたものがほとんどのはずです。もちろん、偏ってしまえば薬も害になりますので、すべてはバランスよく、というのが基本でしょうか。


和食は健康にいいと言われたころもありましたが、和食は脂質が少なく塩分が多いためか、過去には脳出血など血管破綻による疾病が多かったとされています。

現代では栄養学の発展に加え、降圧剤などで高血圧をコントロールできるようになったこともあり、寿命が延びていると考えられます。

海外ではハンバーガーを主食にしても長寿な米国の投資家などもいらっしゃいますが、平均的に見れば日本人の寿命の方が長寿でしょう。何事もバランス、なのではと思います。


・・・さて、冷蔵庫のベーコンで今日は何を作りましょうかね。



駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
とても有意義なエッセイをありがとうございます 色んな経験上「全ての基本は遺伝子」と思っています。 もちろん例外や、後天的なものもありますが。 びっちり安全管理された食品しか食べない天皇陛下でさえ、癌…
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