表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どらむぢよん  作者: ジョゼ
21/32

まぼろし






ガラス張りの部屋いっぱいの緑


太陽の攻撃はまともに降り注がれる


薬剤と液体で沢山のガラス器具


零れた紅い汁に落とされたままの白衣が染められた


にぶく光る銀時計が奥の暗い貴方を照らす


対する明暗に瞳孔はふらつき


貴方が手にした美しい陶器に浅く波打つ紅い汁は


その細い喉の深くへ消えて行った


多くのしおりが挟まれた巨大な植物図鑑


開かれたままのペエジがめくれた


天窓から流れ込む熱っぽい空気が


調べたばかりの紙切れを遊ばせてしまう


光が惜しみなく注がれるガラス部屋を


眩しそうに何か苛立つように眺めた


時計は十五時を告げた


壁に乱暴に張り巡らされた地図の金の文字を


指でたどって闇に笑う


夢物語 痛みの有る場所を指されても


お前は胸を張って探す事を辞めずにいられるか?


応えは無い


植物は微動だにせず白衣は休むことなく紅く成るだけ


音も無く焼けてゆく空気に瞬く陽光


気付いてしまったのだ


屈折するだけのグラフには飾れない


決して逢うことの叶わぬ種が


何よりも貴方を蝕んでいることに・・・




突然 割れる音がして太陽は去った


一気に冷気を帯びる空間に錆びついた銀時計が


幻を観たこの実験室に与えられた終わりを静かに伝えている


貴方は跡形も無く失せきり


紅いはずの白衣は黄色味を強調している


金の砂が僅かに落ちているようだ


それ以外は水槽のなか


地図も もう 読めない










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ