第5話 目撃者談
「…で?どうすんだ?」
「…は?何がよ?」
山野と小林のもとを去った後、2人は校舎内を歩いていた。
もちろん、雄太が率先して歩いているのではなく、飛鳥の後を雄太がついて歩いているのだが…。
「何が…って、この後どうするのか、ってことだよ」
「…アンタはバカね。本当に」
真剣に聞いてきた雄太に対し、飛鳥ははあぁぁぁ…と大きなため息をついた。
「な…っなんでだよ!俺別に変なこと聞いてないだろ!?」
「だから…本人に聞いた後は周りに聞くの!今までもそうしてきたの!何で気づかないわけ?」
最終的に、飛鳥は呆れた顔をしている。
雄太はというと、不貞腐れたように顔をそむけていた。
「ったく……。じゃあ、そういうことでさっさと行くわよ」
雄太はどこに?とは聞かなかった。
どうせ聞いても、アンタ馬鹿?と言われることが容易に想像できたのだ……。
そこで2人が捕まえたのは、山野と小林、2人が所属しているテニス部の女子、天野だった。
「…2人の仲?メチャクチャよかったわよ!ダブルスのときは2人必ず組んでたし」
「……それは、山野…さんに無理強いされた、とかじゃなくて?」
天野の発言に反応した雄太は、さりげなく、でも核心をついて問いかけた。
雄太の言葉に、天野は怪訝そうに首をかしげた。
「いや…。むしろ、小林さんの方がどっちかと言うと山野さんにべったりだったわよ?」
「え……」
天野の言葉に、雄太は目を丸くした。
飛鳥は、別に驚いた様子もなく、にっこりと笑った。
「そう…。ありがとう」
それだけ言って立ち去ろうとする飛鳥の後を、雄太は慌てて追いかけたのだった…。