第2話 裏切り
裏切られているとはどういう事だろうか。絵里が何を言っているのかよく分からずに俺が固まっていると、馬鹿にするような口調で絵里が口を開く。
「まだ分かんないの? 私はあなたの事なんか好きじゃないし、むしろ大嫌い。アンタが今日告ろうとしてるって聞いてあんたの事をはめてやったのよ」
大嫌いってどうゆう事だろうか。それになんで俺が今日告ろうとしてたことを知っているんだ。俺は頭の中がこんがらがっていて、そのせいで少し詰まりながらも返事をする。
「……なん、で、俺が今日告ろうとしてたことを知ってるんだ?」
「え? そんな事も分かんないの?」
……違う。分からないんじゃない。考えたくないだけなんだ。そんなことある訳ない。そう信じたい俺と疑う俺が交互に囁いてくる。
俺が何も言わなかったのを見て、絵里が後ろの草むらに顔を向ける。
「出てきていいよ~、2人とも」
絵里がそう言うと、海星と瑠璃がベンチの後ろから出てきた。いつから居たのだろうか。いや、きっと最初から居たのだろう。ここまで来ると、もう絵里の発言を信じざるを得なかった。
「よー優希! どうだ? 信じてた、幼馴染だった俺達に嵌められた気分は!」
「アンタみたいな気持ち悪いヤツ、幼馴染だなんて思ってなかったけどね」
「もー、海星も瑠璃もすぐ言っちゃうじゃん」
……俺は嵌められたのか。幼馴染だと思って信じていたヤツらに。そう認めると、今まで考えないようにしていたことが次々と浮かんできた。
瑠璃が来て、海星が明るくなったあと。俺はほとんど絵里と二人で遊ぶことは無くなった。それだけではなく、俺は3人と遊ぶことが殆ど無くなっていた。まだ一緒に登校することはあったし、少し学校内で離れていても気には留めなかった。
今思えば俺だけハブられていたのでは無いだろうか。遊びに誘うため電話したとき、後ろで声が聞こえたような気もする。
「ずっと、そう思っていたのか?」
「そうだよ。お前みたいなヤツ、俺たちと比べると地味だし、邪魔でしか無かった。」
と、海星。
「絵里と2人で遊びたかったのに、地味なアンタがいつも着いてきて、ホント邪魔で邪魔でしかたなかったよ」
と、瑠璃。
「好意丸出しでいつも着いてきて、ほんとウザかった。なんで幼馴染なのか後悔したくらいにね!」
と、絵里。
「お前の事なんか誰も幼馴染と思ってないし、友達だとすら思ってない。だからこうして嵌めてやったんだよ!」
ようやく理解出来た。コイツらにとって、俺は要らないらしい。それなら俺だってこいつらは必要ない。
「……分かった。俺はもうお前たちに関わらない」
「ようやく分かったか、全く。これまで時間をーー」
「ただし、俺がお前らのためにやってた事もやらなくていいよな?」
「話を遮るな!」
海星はそう言うと俺を突き飛ばした。
だが、俺は気にせずに喋り続けた。
「俺が作った弁当はお前たちに渡さなくていいな?」
「アンタが作ったものなんて食べたくもない! 今までは食べ物が勿体ないから食べてあげてたけど、そんなものこっちから願い下げよ!」
「そうか。なら俺はもう何も言わない」
これで俺の負担が減る。それぞれに合わせて弁当を作る必要は無いのだ。長い間続けていたが、これで大分楽になるだろう。
基本的に食べ過ぎてしまう神楽坂さんのために作るヘルシーな弁当も。
サッカー部のエースだから、運動をするのに適した弁当を鳳くんに作ることも。
肌が荒れやすい神坂さんのための弁当も。
面倒臭い作業が減る。いつも家を出るのが遅くなる理由の1つはこれなのだ。
「じゃあな」
もう話は済んだと思い俺が帰ろうとすると、
「待てよ、今まで我慢しててストレス溜まってるんだよ。別にお前で発散しても構わないよな?」
そう言って鳳くんは俺を蹴り飛ばし、地面に押し倒して顔を踏み潰してきた。それに乗じて神楽坂さんと神坂さんも俺の腹を蹴ってきた。決して殴るという事はしなかった。触るのも嫌ということなのだろうか。
10分くらい抵抗もせず蹴られていると、三人は満足したのか俺を蹴るのをやめて、
「もう二度と話しかけてくんなよ!」
「顔も見たくないわ!」
「じゃあね、気持ち悪い根暗クソ野郎!」
と、捨て台詞のような言葉を吐いて帰って行った。
鳳くんに神楽坂さんと神坂さんがくっついて歩いていたので、そう言う事なのだろう。2人ともなんて凄いな。
ぼんやりとした頭でそんな事を考えながら、立ち上がってベンチに座り直した。不思議と悲しくは無い。なにか大事なものを無くしたような感じだ。
もうあの3人に思い入れは無いので、少しよろけつつも思い出の公園を後にして家に向かった。
☆☆☆
???side
あそこにいるのは優希くんと神楽坂さんだよね。あの幼馴染の四人はそこそこ有名だ。何してるんだろう。
出ていける雰囲気でもなさそうなので窓から見ていると、突然誰かが出てきた。あれは……鳳さんと神坂さんだろうか。何をしてるんだろう。
???はそのまま起きた事を見ていた。出ていくと自分も蹴られそうな気がして、怖くて助けには行けなかった。
許せない。優希くんにあんな事を。きっと優希くん傷ついてるよね。私にできることはあるだろうか。
そう考えて???はカーテンを閉めた。
初めて書くので難しいですね。次話、家族とのやり取りです。
誤字脱字、アドバイスなどよろしくお願いします。