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開く音  作者: 紅井さかな
3/4

3





「コンコン」





背筋が凍る。トイレの方から音がする。トイレのドアを叩く音だ。気のせいではない。何度も何度も聞こえてくる。足音の正体は部屋から出ようとしているのだろうか?


しかし、音がするトイレから自力で出る事は出来ないようだ。その事実に少しだけ安心する。でもこのままではいけない。どうするべきか考えているうちに、ドアを叩く「コンコン」と言う音が次第に大きく強くなっていく。


一人で戦う?キッチンまで来る事が出来たのだから、武器代わりになる物はいくらでもあるが。家族を起こして直ちに警察に通報するべきだろか。起こすには二階に行かなければならない。二階に行くにはトイレの前をまずは通らなければ……。



俺はキッチンの引き出しをいくつか開けると、一番丈夫そうなフライパンを握った。もしもの事があった時の為の武器だ。包丁を持った方がいいのかとも考えたが、さすがに何かあっても相手を刺す勇気はないし、自分が怪我をしそうだと思ったのでやめた。



まず、二階へ行こう。


そして、俺の第二の戦いが始まった。




足音の正体はもう捕まえているのだから、なるべく早く二階へ上がった方がいい。トイレの前さえ上手く通り過ぎる事ができれば問題ない。トイレの前の本棚も動いていなければ良いが。


俺はフライパンを構えながら早足で進んだ。また心拍数が上がっていく。一度はおさまった汗がまた額に噴き出してくる。今度は汗が流れて音がでても大丈夫。まずは一刻も早く二階へ行きたい。


廊下へ出るとトイレの明かりはやはりついているようで、ドアの隙間から柔らかな光がもれていた。相手も暗闇では目が使えないタイプのようだ。


トイレの前の本棚はまだ一ミリも動いていないように見える。やはり、自力では出られないようだ。ずっとドアを叩く音は鳴り止まない。



「出して!助けて!!」



その声はトイレの前を通りすぎた時に聞こえた。俺はハッとして振り返る。



女性の声のような気がした。……足音の正体は女性か?そう思ったが正体が何であろうと不審者には代わりないので、俺は急いで階段を駆けあがろうとした。早く皆を起こさなければ何が起こるかわからない。


「誰か!開けて!」




その時、またハッとした。姉さんの声に似ている?泥棒かもしれないし、宇宙人かもしれないけど、もしかしたら、姉さんかもしれない。


もしも、姉さんだとしたら一晩中トイレに閉じ込めておく訳にはいかない。俺はその声に引き寄せられるようにまたトイレの前へと戻って来てしまった。先に姉さんの部屋に確認に行けばよかったものを、俺は何も考えずに戻ってしまった。



フライパンをいつでも振りかざせるように、構えながらトイレの中から聞こえる声に聞き耳をたてる。


「あのさ、姉さん?!」


「何言ってるのよ!閉じ込めたのアンタ?!」



俺は本棚を動かして、手の力だけでトイレのドアを押さえた。足音の正体が内側から開けようとしているようでドアがすごく重い。押さえるのがやっとだ。


片方の手でフライパンを構え、もう片方の手は少しだけ力を抜き、ドアを少しだけ開けた。



俺は好奇心を抑えられなかった。








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